パナマ経済(2025年10月月報)
令和7年12月5日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:小竹書記官
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主な出来事
●8月までのパナマ経済成長率は4.2%
●パナマの公的債務が587億円に
●運河庁が港湾プロジェクト説明会を開催
●パナマ運河、ガスパイプライン計画の第2段階へ
1 経済全般、見通し、経済指標等
(1)8月までのパナマ経済成長率は4.2%国家統計・国勢調査院(INEC)によると、パナマ経済は2025年1~8月期に4.24%成長し、8月時点の前年同月比では1.61%増となった。成長を牽引したのは主に運輸業や倉庫業、通信業で、運河収入と港湾コンテナ取扱量の増加も寄与した。また、金融業、観光業、娯楽業、エビやパイナップルなどの農林水産業も好調だった。一方で、製造業や建設業は、建設許可件数の減少、工業生産の減退などにより不調だった。パナマの2025年における通年のGDP成長率は3.9%~4.2%と予想されている。
(2)社会保障基金(CSS)年金制度の改善を目的とした融資契約を締結
パナマ政府は、社会保障基金(CSS)年金制度を強化するため、米州開発銀行(IDB)と3億5,000万ドルの融資契約を締結した。この資金は現行及び将来の予算を賄い、障害・老齢・死亡(IVM)プログラムの持続可能性向上ために使用される。
(3)パナマの公的債務が587億円に
経済財務省(MEF)によると、パナマの公的債務は1年間で63億2,000万ドル増加し、2025年9月末時点で587億ドルに達している。この額は1日あたり約1,730万ドル債務が増加し、一人当たりの債務が約13,000 ドルとなっていることを意味している。この20年間で債務は急激に拡大し、特にコルティソ政権下では、パンデミック関連の支出を理由に債務が250億ドル以上増加した。2026年の予算は過去最高の340 億ドルとなっているが、チャップマン経済財務大臣は、2026年はパナマが利息の支払いのために借入を行わない最初の年になると強調している。
2 通商、貿易、国際経済関連
(1)カリブ開発銀行がパナマの空港を支援カリブ開発銀行(CAF)は、パナマの航空システムの近代化・拡張に向けた包括的計画を策定するために、300万ドルの無償資金提供を決定した。パナマ政府はこの資金で30ヶ月の間コンサルタントを雇用し、空港の効率性・安全性・環境性能の向上を図る計画を策定する。トクメン国際空港では現在1時間あたり約35機の航空機が離着陸できるが、現在の需要をカバーするのに十分ではない。航空システムの近代化により、離着陸の運用改善とインフラ整備を行い、1時間あたり最大80機まで離着陸が可能となることを目指す。CAFは、空域と地上運航の最適化が、地域ハブとしてのトクメン空港の競争力維持に不可欠であると強調した。
(2)パナマ人の雇用増加に向けた課題
パナマの2025年における経済成長率は堅調で、IMFは4.0%、世界銀行は3.9%の成長率を予想している。しかし専門家は、堅調な経済指標にもかかわらず経済成長が雇用に結びついていないと警鐘を鳴らす。経済アナリストのレネ・ケベド氏は、2012年以降パナマの債務が390億ドル増加した一方で、正規雇用は減少し、非正規雇用が増加した旨指摘し、2025年末には失業率が10%を超える可能性があると予想している。経済拡大が銀行業や物流業といった雇用創出の少ない分野に集中している点に問題があり、雇用と消費を促進するためには建設業、製造業、インフラへの投資が必要だとしている。また、持続可能な成長には、より強固な教育制度の整備や、投資家の信頼回復、財政規律が必要であると強調した。
(3)パナマとパラグアイがメルコスールを通じて関係を強化
パラグアイとパナマ両首脳は貿易・物流・投資分野などで二国間関係を強化することで合意した。ムリーノ大統領は、パラグアイ産牛肉をパナマに輸入する計画と、医薬品・農業関連分野における合弁事業促進に関して協議を開始すると述べた。ペーニャ・パラグアイ大統領はパナマの良好なビジネス環境を称賛し、パナマ投資家に対しパラグアイでの事業機会模索を呼びかけた。両首脳は安全保障分野での協力についても確認した。ムリーノ大統領は2026年1月にパナマで開催されるCAF経済フォーラムにペーニャ大統領を招待した。
(4)ファースト・クオンタム社、銅の国有化を受け入れる
ファースト・クオンタム社は、ドノソ鉱山の操業再開と引き換えに、パナマ政府が採掘された銅など鉱物の所有権を保持することを認め、交渉への意欲を示し、採掘再開に向けた協議において進展が期待されている。ファースト・クオンタム社は今年初め、対話促進のため仲裁手続きを撤回・停止していた。抗議活動と契約無効を命じた最高裁判決を受け2023年末に閉鎖された同鉱山は、交渉再開前に独立した環境・技術評価が必要となる。
3 パナマ運河、海事、インフラ関係
(1)運河庁が港湾プロジェクト説明会を開催運河庁はコンテナ港湾運営と海運事業において実績のある企業に対し、パナマ運河の大西洋側と太平洋側の港湾ターミナル開発について、ワーキングミーティングを実施した。この会合にはAPM Terminals社、Cosco Shipping Ports社、CMA Terminals-CMA社、DP World社、Hanseatic Global Terminals社、PSA International社などの港湾会社を始め、CMA CGM社、Evergreen社、 Hapag Lloyd社、HMM社、Maersk Line社、MSC社、OOCL社、COSCO社、Yang Ming社、ZIM社などの海運会社も参加した。日系企業は、商船三井(MOL)社、ONE(Ocean Network Express)社が参加した。
パナマ運河庁の2025-2035年戦略ビジョンにおいて、コンテナターミナルは閘門・航路に次ぐ運河支援インフラの最重要構成要素であり、開発により港湾キャパシティを拡大し、競争力を維持する。本取り組みの目的は、年間500万TEUのコンテナ積み替え能力増強、世界有数の競争力を持つインターモーダルハブとしてのパナマの地位強化、現在限界近くで稼働している港湾能力拡大にある。ターミナルへの投資総額は推定260万ドルと見込まれ、パナマGDPの0.4%から0.8%に相当する経済効果をもたらすと予測される。また、さらに、直接雇用、間接雇用、誘発雇用を併せて、建設期間中に約8,100人、運用開始後は約9,000人の雇用創出が見込まれている。
(2)パナマ運河、ガスパイプライン計画の第2段階へ
パナマ運河庁(ACP)のバスケス長官は、同庁が主導するガスパイプライン計画が第2段階へ移行すると発表した。11月には本事業に関心を持つ企業との個別面談を実施する。第1段階の事業説明会では、エクソンモービル、シェル、三菱商事、住友商事、JBICを含む23社のグローバルエネルギー企業から45名の代表者が参加した。本プロジェクトは、世界的なガス生産の増加(特に米国のシェールガス)を背景に、運河沿いにパイプラインを建設し、運河のビジネスモデルを多様化し、世界的な需要拡大に伴い新たなエネルギー貿易の流れを取り込むことを目指している。
(3)パナマ運河庁が米国フロリダ国際大学と国際貿易や物流等で協力
パナマ運河庁とフロリダ国際大学(FIU)は、国際貿易、物流、持続可能性、水管理、公共政策など、相互に関心のある分野における協力強化を目的とした覚書(MOU)に署名した。
式典はパナマ運河庁庁舎で開催され、イカサ運河担当大臣の出席のもと、パスケス運河庁長官とヌニェスFIU学長がMOUに署名した。また、FIUの代表団はミラフローレス閘門を視察した。
式典において、アレン運河庁副長官(労働関係担当)は、本学術協定の重要性と、両機関が教育・革新・公共サービスに共有する取り組みを強調した。
バスケス長官は、教育と研究が持続可能な開発の基盤であると指摘し、本協定が国際的機関との教育・知見・学術協力促進に向けた運河の継続的取り組みを反映していると述べた。
ヌニェス学長は、次世代を育成し地域の発展に貢献するため、研究・イノベーション・相互交流の強化につながるパートナーシップ構築の重要性を強調した。
本協定は、両組織間の学術・研究協力ならびに知見・専門技術の交換に関する枠組みを確立するものである。また、パナマ運河庁が戦略的分野における人材育成、研究、専門的訓練を推進する取り組みを強化するものである。
本協力を通じ、パナマ運河庁は、パナマおよび世界における持続可能な開発の主要な推進力として、革新と知見に対する連携を促進するコミットメントを改めて確認するものである。
(4)海洋安保に係るマルティネス=アチャ外相と欧州外交団の会談
マルティネス=アチャ外相は、欧州外交団等と会談し、影の船団問題、海上交通の安全、航海に伴う環境問題にについて意見を交わした。会談には、パナマ側はゲバラ・マン次官、ガルシア・ボイド国際経済関係局長、欧州側はマトゥシュEU大使、欧州諸国、日本の大使・公館長等が出席した。
EUは、海上保安分野におけるパナマの取り組みに感謝の意を表し、サイバーセキュリティやデジタル化などの新たな分野での協力の意思を改めて表明した。この協力には、財政支援、機器の提供、技術支援、供与などが含まれる。
外交団は、違法な船団が安全な航海、海洋生態系、船員の安全に及ぼすリスクについて懸念を表明し、パナマやその他の戦略的同盟国とより緊密に協力することの重要性を強調し、引き続きパナマの海事政策の強化を支援することを強調し、同国がこの分野における世界的なリーダーシップを発揮しており、より安全で持続可能な航行に向けた取り組みがプラスの影響をもたらしていることを評価した。
(4)メトロ3号線のトンネル工事進捗
本プロジェクトは、モノレール線路での試験運行開始に向けて準備を進めており、パナマ・パシフィコ駅からシウダ・デル・フトゥーロ駅までの高架区間の工事進捗率は、81%である。また、パナマ・パシフィコ駅からアルブルック駅の区間の工事進捗率は42%であり、そのうち、トンネル部の工事進捗率は53%である。本工事には、現在約3,900人の労働者が直接従事している。
パナマ主要経済指標(2025年10月)