パナマ経済(2023年10月報)

令和5年11月1日
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●金融活動作業部会(GAFI)はパナマをグレーリストから除外することを決定
●銅生産にかかる新契約が制定。他方で、当該新契約に対し、大規模かつ激しい抗議活動が全国で発生
●パナマ運河庁は節水対策を強化
●2024年第1四半期に日本で製造したメトロ3号線モノレール車両がパナマに到着予定
 

1.経済全般、見通し等

(1)金融活動作業部会(GAFI)はパナマをグレーリストから除外することを決定
26日、GAFIは、パナマをグレーリストから除外することを決定した。当該決定は、パリで開催されたGAFI本会議で発表され、アレクサンダー経済財務大臣及びベッキオ・マネーロンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器拡散資金供与防止国家委員会(CNBC)技術顧問が参加した。本会議では、2019年6月のグレーリスト指定以来、パナマがマネーロンダリング防止及びテロ資金対策のためのシステムを強化し、国際的な透明性に向けた重要な一歩を踏み出すことを可能にする実質的な基準制定と行動を実施したと判断された。
 
(2)政府は来年度以降の特定税収の前倒しを承認
コルティソ内閣は2024年及び2025年に対応する特定税収を前倒しで徴収することを認める法律を承認した。当該法律は予算を下回る歳入に対応した苦肉の策であり、来年大統領選を控える現政権の対応に批判の声がでている。当該対象税収は「不動産税」であり、2023年11月30日迄に2024年課税期間に対する不動産税を前払いで100%収めた納税者には25%割引が適用され、2025年課税期間に対する不動産税にも同様となる。
 
(3)欧州連合はパナマを租税非協力国リストに残留、一方コスタリカはリスト除外
17日、EU理事会は租税非協力国リスト(通称:租税ブラックリスト)からコスタリカ、ヴァージン諸島、マーシャル諸島を除外した一方で、アンティグア・バーブーダ、ベリーズ、セーシェルを登録した。これにより対象国は次の16カ国となり、パナマは残留となった。
 
(4)建設業、工業、畜産業向け貸出金利が7%超に急上昇
パナマ会計検査院によると、金融機関の貸出基準金利(四半期)が2019年以降でほぼ1%ポイント上昇し、畜産、工業、建設セクターのローンでは基準値7%を超えたと発表した。いずれのセクターも今年に入ってから傾向が変わり増加基調となっている。2019年3月末時点から2023年6月末時点でのセクター別金利変化をみると、建設業では6.84%から7.45%へ、工業では6.46%から7.14%へ、畜産業では6.77%から7.16%へ上昇した。国内エコノミストによると、パナマは中央銀行を持たないため金利上昇による調達コスト増は経済に直接的な悪影響を及ぼす可能性があると指摘している。
 

2.経済指標

(1)世界銀行及び国際通貨基金はパナマの2023年GDP見通しを引き上げ
4日、世界銀行はパナマのGDP見通しを2023年6.3%(前回4月:5.7%)、2024年6.4%(前回4月:5.8%)、2025年6.5%に上方修正し発表した。
16日、2023年のパナマの国内総生産(GDP)成長率予想を5%から6%への引き上げを発表したバッカー国際通貨基金(IMF)パナマ・ミッションチーフによると、「国内主要経済指標である月間経済活動指数(IMAE)が力強い伸びを示し(6月:8.8%増)、GDP成長率の引き上げが適当であると判断した。その後、17日に経済財務省(MEF)は2023年のGDP予測を上記と同様に、5%から6%へ引き上げた。
 
(2)2023年9月の消費者物価指数(CPI)は2.3%上昇
国立統計センサス局(INEC)によると、2023年9月の消費者物価指数(CPI)は単月で2.3%上昇、1月から9月までの累積では1.4%となったと発表した。とりわけ、大きな上昇を記録したカテゴリは「住宅、水道、電気、ガス」の9月単月で9.7%上昇であり、そのなかでも電気料金は2022年12月まで継続されたCovid-19による電気料金安定基金(FET)への臨時補助金廃止の影響で39.5%上昇となった。
 なお、11日、パナマ大統領府は91オクタン価及び軽油を対象とした燃料価格上限(B/.3.25)の凍結措置の1ヶ月延長(10月16日から11月14日まで)を閣議承認した。
 
(3)Vale Digitalプログラムに2,213百万ドル
政府イノベーション事務局(AIG)の報告書によると、2020年にパンデミックにより開始されたVale Digitalプログラムに対し、2023年9月までに2,213百万ドル(2022年6月時点から413百万ドル増)の拠出が明らかになった。現在も13万9,000人が同プログラムを受給しているが、開始からの累計受給者は130万人にのぼる(最終所得申告額が年間11,000ドル以下の公務員を除く納税者が対象)。
 
(4)月間経済活動指数(IMAE)は2023年7月に前年同月比12.59%増
国立統計センサス局(INEC)によると、2023年7月の月間経済活動指数(IMAE)は前年同月比12.59%増を記録した。2023年1月~7月では前年同期比8.53%増加となった。主な要因は新車販売台数及びコロン・フリーゾーンからの再輸出(商業)が好調であった為である。
 
(5)パナマの住宅環境(国勢調査データ)
国立統計センサス局によると、2023年度2月~3月に実施した国勢調査では国内に1,592,168戸が登録され、1,201,809世帯が1名以上の住民が居住した住宅である。居住住宅の平均居住者数は3.3人であり、2010年国勢調査3.2人を若干上回っている。他方で、コマルカ(先住民自治区)地域の世平均帯居住者は、平均5.0~6.1人であり、ボカス・デル・トロでは平均4.5人である。また、住宅総数のうち86.3%が一軒家、12.1%がアパートメント、1.1%がその他となっている。なお、パナマの住宅供給不足率は、2000年30.4%、2010年15.2%、2015年14.1%と減少傾向となっている。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)銅生産にかかる新契約が制定。他方で、当該新契約に対し、大規模かつ激しい抗議活動が全国で発生
10日、パナマ大統領府はミネラ・パナマ社との銅生産にかかる新契約に関して、国会の経済通商委員会から指摘されていた事項に関して修正を行い、両者で合意したと発表した。
20日、パナマ国会は第三審議を実施して(前日までに第二審議まで通過)、賛成44票、反対6票、棄権2票にて、銅生産にかかる新契約を承認した。即日、コルティソ大統領は署名を行い、法律第406号が制定された。
23日、パナマ大統領府はミネラ・パナマ社が今後30日以内(官報掲載日20日を基準)に、2021年~2022年のそれぞれの会計期間に相当するロイヤリティ及び税金に相当する金額を支払わなければならないと発表した。総額は、770百万ドルに達すると推定される。なお、同日、最高裁判所(CSJ)は、フアン・ラモン・セビジャーノ弁護士がパナマ政府とミネラ・パナマ社との新契約を定める法律第406号第1条に対して起こした違憲訴訟の受理を認めた。
23日以降、当該新契約に対し、大規模かつ激しい抗議活動が全国で発生している。
27日、コルティソ大統領は国営テレビでの放送中に、国土全域における金属鉱物の探査、開発、そして利益活動のための新規ライセンス付与を禁止する行政令に署名した。当該措置は政府とミネラ・パナマ社との銅生産にかかる新契約によって発生した危機に対応するための暫定的なものである。
 29日、コルティソ大統領は、選挙裁判所に対し2023年12月17日(日)に国民投票の実施を要請し、パナマ国民が銅生産にかかる新契約に関する法律406号を廃止するか否かを投票できるようにすると発表した。
 
(2)バルー港はパナマの農産物輸出を促進
11日、バルー港開発プロジェクトの責任者であるイスマエル・ゴンザレスGMは、プロジェクトの進捗状況に関して、次の段階(工事着工)に進むための重要なステップである環境影響調査カテゴリ3の承認について、環境省からの回答を待っていると述べた。当該港はパナマ西部の農作物輸出を行う拠点として、チリキ県からメキシコ西海岸、アメリカ、カナダなどの重要な市場への輸出拠点としての役割を期待されている。
 
(3)2023年9月のトクメン空港利用者は140万人
トクメン空港公社によると、2023年9月のトクメン空港利用者(トランジット含む)は、140万人(前年同月比13.1%増)、トランジット率74%になったと発表した。内訳を見ると、南米(45%)、北米(27%)、カリブ海(12%)、中米(11%)、ヨーロッパ(5%)であり、民間航空会社16社を通じて87目的地への直行便が就航している。アラブ総裁は、「第3四半期を好調に終えたことで、2023年末までに空港利用者1,700万人以上を記録するという予測が裏付けられた」と述べた。
 
(4)2023年9月までの新車販売台数36,318台を達成
パナマ自動車販売協会(ADAP)によると、2023年1~9月までの新車販売台数は36,318台(前年比8.19%減少)、年間販売台数52,000台(前年比23.3%増、2019年比8.6%増)見込みであり、昨年はパンデミック後に購入が急増したこともあり本年経過は減少となっているが、通年では増加見込みとなっている。また、国家エネルギー庁によると、9月までの同時期の電気自動車の販売台数は273台(前年比70.1%増)であり、2015年~2023年9月までに販売された電気自動車の累計台数は562台に達したと発表した。
 

4.パナマ運河、海事関連

(1)パナマ運河庁は節水対策を強化
9月29日、パナマ運河庁(ACP)はプレスリリースを発表し、11月1日より運河を通過する平均隻数は再度減少し、1日あたり31隻(ネオパナマックス・ロック9隻、パナマックス・ロック22隻)と発表した。
当該通航船舶制限措置は、7月30日以降に1日平均36~38隻(通常)から32隻に減少させたものから更なる減少措置となる。
 12日、ACPは、ネオパナマックス閘門での対策(喫水制限)以外にもパナマックス閘門でも節水対策を強化することを発表した。パナマックス閘門では、既に「閘門の片側のレーンの水をもう一方のレーンで再利用する」方法を採用している。それに加え、パナマックス閘門を2隻の船が同時に通過する運用をとる。当該運用は船型(船の大きさ)に左右され、2隻の船の長さの合計が825フィート(251.46m)を超えてはならない。
24日、ACPは、2023年10月24日(即日)~31日の期間でネオパナマックス船への臨時および特別通峡スロット競売及び、パナマックス船に対するデイリーの通常競売を一時的な停止を発表した。
 
(2)2023年度のパナマ運河通航船舶隻数は2.8%減
6日、ACPは2023年度(2022年10月~2023年9月)の通航船舶隻数を12,638隻、前年度比2.8%減(前年13,003隻)、予算比0.8%増(予算12,527隻)を発表した。2023年度の内訳をみると、ネオパナマックス船は合計3,623隻(前年度比0.11%増)で全通航量の28.67%を占め、残りがパナマックスで合計9,015隻(前年度比3.9%減)であった。
 
(3)クルーズシーズンに210隻以上のクルーズ船が通峡
クルーズシーズンが開幕し、パナマ運河庁は2023年10月~2024年4月のシーズン期間中に210隻以上(内、45隻がネオパナマックスサイズで残りがパナマックスサイズ)の運河通航が見込まれる。ACPによると、クルーズ船のネオパナマックスの必要喫水は44フィート以下である、現状、今期の喫水制限が影響を与えることはない。
 
(4)港湾貨物取扱量(トランジット含む)は依然として減速
パナマ海事庁(AMP)によると、パナマ全国港湾システムによるコンテナ取扱量は、2023年1~8月で543万TEU(前年同期比4.9%減)となり、8月単月は709,101TEU(9.4%減)となり今年最大の減少幅を記録するなど、減速傾向が鮮明となっている。各港湾別では、バルボア港及びボカス・フルーツターミナルを除いた港湾で減少となった。
 

5.インフラ関連

(1)2024年第1四半期に日本で製造したメトロ3号線モノレール車両がパナマに到着予定
5日、メトロ公社は円借款「メトロ3号線」事業において日本で製造が行われているモノレール車両について、第1編成目が完成後の試験段階であり、12月に日本から輸送され2024年第1四半期にパナマに到着予定と発表した。車両はパーツで輸送され、パナマで組み立てられる。
 
(2)メトロ3号線モノレールシステムの特徴と仕様
5日、メトロ公社はメトロ3号線モノレールシステムの特徴と仕様を発表した。モノレールは26編成からなり、各編成は6両編成で、全長89メートル、幅約3メートル、全高約5メートル。乗客定員は1,000人で、うち250の座席を有する。最高運転速度は時速80kmで1編成あたり130キロワットのエンジンが16基、モノレール1本あたり約2,500馬力を発揮する。バッテリーシステムを搭載し、停電発生時でも次の駅に移動することができる。
 
(3)政府は干ばつによる電力制限を否定
10日、リベラ・エネルギー庁長官は「パナマ国内は降雨量の減少により乾燥状態が長期化しており、水力発電用ダム及び貯水池の水位は低下しているものの、発電そのものや電力供給には影響を及ぼしていない。また、パナマ運河や農業活動とは異なり、エネルギー分野では太陽光、風力、天然ガス、火力など代替発電が可能である。現在、水力発電に変わり火力発電が増加しているが、来年の需要予測を適切に実施し、これまでの分析で発電量や供給不足の問題は見当たらない。引き続き、国内のエネルギー環境のコントロールに注力する。」と述べた。
なお、国家発送電センター(CNP)の最新データ(10月発表)によると、合計12,300.16GWhの発電量比率は、51.98%が水力(6,393.56 GWh)、35.91%が火力(4,416.77GWh)、7.29%が太陽光(896.28GWh)、4.83%が風力(593.56GWh)となっている。
 
(4)総合的災害リスク管理のための国家戦略計画2022-2030を承認
 13日、コルティソ大統領が議長を務める災害リスク統合管理閣僚会議は、「総合的災害リスク管理のための国家戦略計画2022-2030(PENGIRD:Plan Estratégico Nacional de Gestión Integral del Riesgo de Desastres 2022-2030)」を承認した。当該国家戦略計画は、災害リスク管理に関する上位政策「総合的災害リスク管理のための国家政策2022―2030(PNGIRD:Política Nacional de Gestión Integral del Riesgo de Desastres 2022-2030)」に基づく主な実施手段として策定された。



パナマ主要経済指標(月次ベース)