パナマ経済(2019年6月報)

令和元年7月9日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●経済財務省は、本年のGDP成長率見通しは5.3%と発表。
●会計検査院は、2019年第1四半期の実質GDPが105億99百万ドルで、前年同期比3億16百万ドル(3.1%)増加した旨発表。
●ミネラ・パナマ社は、銅の初出荷として31,200トンを中国向けに輸出した。
●金融活動作業部会(FATF)は、パナマを再度グレーリストに掲載することを決定。
●パナマ運河庁は、2020年1月より適用する予定の通航料改定案を公表した。
 

1.経済全般、見通し等

(1)経済財務省によるGDP成長率見通しの発表
 経済財務省は、本年のGDP成長率見通しとして、前回2018年12月発表の5.9%から引き下げ5.3%と発表。世界経済の失速及び米中貿易摩擦等の影響による足元の成長率低迷を反映したものだが、下半期は銅の輸出開始等に伴い回復する旨発表。なお、本年のGDP成長率見通しとして、世界銀行は5.0%、米州開発銀行は5.5%と発表している。
 
(2)2019年第1四半期の実質GDP成長率
 会計検査院は、2019年1月~3月の実質GDPが105億99百万ドルで、前年同期比3億16百万ドル(3.1%)増加した旨発表。運輸・倉庫・通信業の成長率は4.3%と引き続き安定している一方、製造業及び漁業等が前年同期を大きく下回った。
 
(3)多国籍企業本部制度(SEM)の新規認定
 貿易産業省は、本年の多国籍企業本部制度(SEM)企業として、新たに米国Uber Technologies社、米国General Electric社、中国China Railway Construction社等12社が新たに認定を受け、2007年の本制度開始以降、現在までに合計154社が認定されている旨発表。
 
(4)エア・ヨーロッパ社によるマドリッド~パナマ間の直行便就航の開始
 3日、スペイン系航空会社エア・ヨーロッパ(AIR EUROPA)社は、マドリッド~パナマ間の直行便(週4便)就航を開始。当初は本年2月より就航予定であったが、延期されていたもの。
 
(5)ミネラ・パナマ社による銅輸出の開始
 14日、ミネラ・パナマ社は、開発を進めてきたコブレ・パナマプロジェクトの開所式を行い、初出荷として31,200トンの銅(42百万ドル相当)を中国向けに輸出した。総投資額は63億ドル、コンセッション契約は34年間、輸出量は本年が14万~17万5千トン、2020年以降は年間30万トン前後となる見込み。今後の価格相場によるものの、輸出額は年間20億ドル程度で、GDP成長率引き上げへの貢献が期待されている。他方、コルティソ次期大統領は、同社に付与した鉱山採掘権の内容を見直す方針を明らかにしている。
 

2.経済指標

(1)1月~4月期の建設許可金額
 会計検査院は、1月~4月の建設許可金額が3億22百万ドルで、前年同期比1億27百万ドル(28.2%)減少した旨発表。総額の内、住宅部門は1億91百万ドルで前年同期比25.5%減少、非住宅部門は1億31百万ドルで同31.9%減少。
 
(2)1月~4月期の新車販売台数
 会計検査院は、1月~4月の新車販売台数が15,771台で、前年同期比1,327台(7.8%)減少した旨発表。なお、3月単月の販売台数は前年同月比25.2%減と大きく減らしたが、4月単月では同0.0%と持ち直している。
 
(3)1月~4月期のコロンフリーゾーン取扱高
 コロンフリーゾーン庁は、1月~4月のコロンフリーゾーン取扱高が59億89百万ドルで、前年同期比11億51百万ドル(16.1%)減少した旨発表。輸入額は29億31百万ドルで同12.0%減少、再輸出額は30億59百万ドルで同19.7%減少した。米中貿易紛争及び世界経済の伸び悩み等の影響とみられている。
 
(4)1月~3月期のパナマに対する海外直接投資
 会計検査院は、1月~3月のパナマに対する海外直接投資額が16億48百万ドルで前年同期比2億53百万ドル(18.2%)増加した旨発表。業種別の主な投資先は、金融・保険業、商業、運輸・倉庫・通信、鉱業等であった。なお、2018年のパナマに対する海外直接投資額は、前年比21.4%増の55億49百万ドル。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)FATFグレーリストへのパナマの掲載
 21日、金融活動作業部会(FATF)は、パナマを再度グレーリストに掲載することを決定。直近の動向として、パナマは2014年6月に本リストに掲載され、その後2016年2月に脱却し、以降資金浄化及びテロへの資金供与の防止に向けた各種対策を行ってきたが、FATFはこれを不十分と判断し、今般再度本リストに掲載された。なお、今回パナマに加え、バハマ、ボツワナ、カンボジア、エチオピア、パキスタン、スリランカ、シリア、トリニダード・トバゴ、チュニジア、イエメンが掲載されている。
 
(2)バレーラ大統領による中国との外交関係樹立2周年記念祝賀式典への出席
 バレーラ大統領は、パナマ・中国間の外交関係樹立2周年記念祝賀式典に出席した。同大統領は、二国間関係の成果に係る発言として、経済面では、1)空路の接続性の促進に係る努力に加え、中国国際航空の直行便の開通により、中国からパナマへの観光客及びビジネスマンの数が、2017年の16人から一年間で3万3千人に増加した。2)現在までにパナマに地域拠点を置く中国企業の数は14社となる他、中国企業は、太平洋側のクルーズターミナル、アマドールのコンベンション・センター及び第四架橋等の大規模インフラ事業に参画するなど、パナマ経済に貢献してきた。3)中国によってF/Sが行われた物流プラットフォーム及び観光の多角化を強化するパナマ・チリキ間鉄道は、現政権のプロジェクトではなく国のプロジェクトであり、実現することを期待する旨述べた。
 

4.パナマ運河

(1)パナマ運河庁による通航料改定案の公表
 14日、パナマ運河庁は、通航料の改定案を公表し、7月15日まで意見(パブリックコメント)募集の期間を設け、7月24日に公聴会を開催する旨発表。運河庁は、パブリックコメント及び公聴会での意見について評価及び分析を行い、必要に応じ修正した後、閣議での正式承認を要する。なお、本改定の施行日は2020年1月1日を予定している。キハーノ同庁長官は、本提案は、世界の海運業界に対してより良いサービスを提供するため、従来以上に透明性及び柔軟性を有した内容としている。パナマ運河は、今日の世界中の産業にとって競争力があり最適な存在であり続ける旨コメントした。
 
(2)次期運河担当大臣の公表
 25日、当初、次期運河担当大臣として公表されていたレゥイス氏は、自身のツィッターにて同大臣職への就任を辞退する旨公表し、右を受けてコルティソ次期大統領は新たにロヨ元大統領を次期運河担当大臣に任命する予定である旨公表した。
 
(3)運河通航船舶に対する第6回目喫水調整開始日の延期
 28日、パナマ運河庁は、運河通航船舶に対する第6回目の喫水調整の開始日を7月16日に延期する旨船会社に通知した。本調整では、第5回目の調整において44フィートに制限されていた第三閘門を通航するネオパナマックス船の喫水を43フィートに制限するものである。また、第一、第二閘門を通航するパナマックス船にも38.5フィートの喫水調整が課されることとなった。なお、第6回目の調整については、足元での降雨量増加に伴い開始日が複数回延期されている。
 

5.インフラ関連

(1)2040年に向けたメトロ・プロジェクトの計画
 ロイ・メトロ公社総裁は、2040年までのメトロ・プロジェクトの計画を公表した。本計画では、メトロ1号線及び2号線の延伸区間事業が2020年までに完了する他、2023年~29年には、新たな交通手段としてサン・ミゲリート市におけるメトロ・ケーブルや旧市街における路面電車の整備が予定されている。
 
(2)メトロ1号線延伸区間事業
 公共調達局は、OHL社及びMota Engil社が組むコンソーシアムが最高得点を得たメトロ1号線延伸区間事業における入札評価が不適当である旨の他入札参加コンソーシアムが呈した異議申立を認め、入札評価委員会に対して新たに入札評価を行うよう命じた。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。