パナマ経済(2018年10月報)

平成30年11月12日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
 
 
主な出来事
●財政責任法及び貯蓄基金法の改正法案が発効。
●世界銀行は、パナマのGDP成長率見通しとして、2018年が4.5%、2019年が5.4%、2020年が6.3%である旨発表。
●議会本会議にて、2019年国家予算が236億69百万ドルで承認された。
●中国とのFTA交渉は、パナマにて第3回交渉ラウンドが開催された。
●パナマ運河の2018会計年度の通航隻数は13,795隻、通航貨物量は2億55百万トンとなった。
 

1.経済全般、見通し等

(1)財政責任法及び貯蓄基金法の改正
9日、議会本会議において、財政責任法及び貯蓄基金法の改正法案が承認、10日、バレーラ大統領により署名され、同日発効した。本改正法において、各年の名目GDPに対する財政赤字上限額は、2018年及び2019年は2.00%、2020年及び2021年は1.75%、2022年は1.50%以下とする旨規定された。なお、各年の名目GDPに対する公的債務残高を40%以下とする現行規定は維持されている。また、パナマ運河庁より国庫納付される金額の内、各年の名目GDPに対し、2018年及び2019年は2.50%、2020年以降は2.25%を超過する分の50%は貯蓄基金の資産の一部として預託され、自然災害及び経済減速等の場合の財政支援の手段として活用されることも併せて規定された。
 
(2)GDP成長率見通しの発表
世界銀行は、パナマのGDP成長率見通しとして、2018年が4.5%、2019年が5.4%、2020年が6.3%である旨発表。2018年は年初に発生した建設ストライキ等の影響を受け失速するものの(2017年実績は5.4%)、2019年以降は運河を中心とした物流の活性化、トクメン国際空港の拡張、メトロ2・3号線の建設及びミネラパナマ社による銅鉱山開発等の各種プロジェクトにより反転するとした。他方、マイナス要因として、米連邦準備制度理事会による追加利上げの検討、米中等による貿易摩擦及び財政責任法改正による各年の財政赤字額の拡大等を挙げた。
 
(3)フィッチ・レーティング社によるパナマの評価
大手格付け機関フィッチ・レーティング社は、パナマの評価として、GDP成長率は依然堅調であるが、税収が少ないこと及び歳出が多いことが問題である旨発表。また、財政責任法改正による財政赤字額の拡大に伴い、歳出の更なる増加をもたらすことから格付の改善は遠のく旨発表した。なお、パナマの格付として、同社は「BBB」投資見通し「安定的」としている。(※S&P社は「BBB」同「ポジティブ」、ムーディース社は「Baa2」同「ポジティブ」としている。)
 
(4)世界経済フォーラムによる世界競争力報告
17日、世界経済フォーラム(WEF)は、2018年版「世界競争力報告」を発表。今回の調査対象は140か国・地域で、パナマの総合順位は前年より14位下がり64位。中南米では、1位チリ、2位メキシコ、3位ウルグアイ、4位コスタリカ、5位コロンビア、6位ペルー、7位パナマの順である。大項目において、パナマは「健康」が33位、「金融システム」が41位と評価が高い一方、「労働市場」が87位、「スキル」が85位と評価が低い。なお、今回から労働市場の多様性や起業文化などを重視し、本報告の評価方法は大きく変更されている。
 
(5)エールフランス航空によるパリ・パナマ間の直行便の増便
29日、エールフランス航空は、パリ~パナマの直行便を現行の週6便から毎日就航に増便した。なお、グループ企業のKLMオランダ航空は、アムステルダム~パナマの直行便を毎日就航させている。
 
(6)2018年国家予算の承認
31日、議会本会議において、2019年国家予算が236億69百万ドルにて承認された。経済財務省は、当初予算案を233億18百万ドルとして提出したが、議会は当初案を差し戻し、再度審議されていた。
 

2.経済指標

(1)9月末時点の公的債務残高
経済財務省は、9月末時点の公的債務残高が249億38百万ドルで、前年同月比15億57百万ドル(6.6%)、前月比2億16百万ドル(0.9%)増加した旨発表。
 
(2)9月期の消費者物価指数
会計検査院は、9月の消費者物価指数が105.5(2013年=100)で、前年同月比0.8%上昇、前月比横ばい、1~9月累計は前年同期比0.8%上昇した旨発表。9月の費目別で前年同月比上昇したのは、教育が3.7%と最も大幅で、アルコール飲料・たばこ及び外食・ホテルは2.5%、交通は1.9%等と続く。
 
(3)1月~8月期の新車販売台数
会計検査院は、1月~8月の新車販売台数が33,343台で、前年同期比4,870台(12.7%)減少した旨発表。8月単月の販売台数は4,379台で、前年同月比1.2%減と下げ幅は緩慢になった。
 
(4)1月~8月期のコロンフリーゾーン取扱高
コロンフリーゾーン庁は、1月~8月のコロンフリーゾーン取扱高が144億41百万ドルで前年同期比12億73百万ドル(9.7%)増加した旨発表。輸入額は68億76百万ドル、再輸出額は75億65百万ドルで、家電製品及び薬品等の取扱いが堅調であった。
 
(5)8月期の基礎食料品バスケット
経済財務省は、8月の基礎食品バスケットがパナマ市及びサンミゲリート市において304.75ドルで、前月比0.62ドル上昇した旨発表。足元の農作物等の生産量減少により、本年に入り4月、7月に次いで3番目に高い増加幅となった。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)メルロ伊外務次官のパナマ訪問
3日、メルロ伊外務次官は、パナマを訪問し、サイン・マロ副大統領兼外務大臣及びインカピエ外務次官と会談し、二国間政策協議に関する覚書に署名を行った。投資分野に関し、メルロ次官は、パナマにおける公共事業への入札に引き続き参加する用意がある旨伊企業側の関心を表明した。
 
(2)中国とのFTA交渉
9日から13日にかけて、パナマ及び中国のFTA交渉団は、パナマにて第3回交渉ラウンドとして、知的財産、二国間協力及び原産地規制等の分野を中心に合意に向けた調整が行われた。第4回ラウンドは11月19日から23日にパナマで開催予定。
 
(3)バレーラ大統領のオーストリア訪問
15日から17日にかけて、バレーラ大統領はオーストリアを公式訪問し、政府及び関連機関代表者と会談し、多角的及び二国間での協力関係強化について協議した。クナイスル外務大臣との会談においては、観光、文化、安全保障、貿易及び接続性等二国間テーマについて協議した。特に、航空面での接続性強化に資することとなる二国間航空協定の署名に向けた交渉は現在進行中である。
 
(4)ナバロ外務次官の日本訪問
16日、ナバロ外務次官は、日本政府の招待により訪日し、山崎外務審議官及び中前外務省中南米局長との間で日・パナマ政策協議を実施した。17日及び18日、同次官は、複数の日本企業幹部と会合を持った。また、松井大阪府知事を訪問し、2025年万博開催に向けた大阪の立候補に係るパナマの支援につき協議した。
 
(5)サイン・マロ副大臣兼外務大臣のアジア訪問
(イ)タイ
22日、「サ」副大統領兼外務大臣は、タイ王国を公式訪問し、プラユット首相及び関連閣僚と会談を行い、各々の地域において物流のハブである両国間の接続性拡大のため、協力関係を強化していく旨確認した。
(ロ)シンガポール
23日から24日にかけて、同副大統領兼外務大臣は、シンガポールを公式訪問し、ヤコブ大統領を表敬した他、シェンロン首相及び関連閣僚と会談し、航空サービス協定及び政策協議に係る覚書に署名した。なお、ワン運輸大臣とは、地域において金融、物流及び観光の中心である両国の接続性強化を目的とした、シンガポール航空による、パナマ・シンガポール間でのヨーロッパを経由する航空ルートの開設について協議した。
(ハ)インドネシア
25日から26日にかけて、同副大臣兼外務大臣は、インドネシアを公式訪問し、カラ副大統領及び関係閣僚と会談し、貿易、海事、移民及び安全保障分野における協力関係の強化に向けた協議を行った。
 
(6)バレーラ大統領のキューバ訪問
29日から30日にかけて、バレーラ大統領は、カネル・キューバ国家評議会議長の招待を受けキューバを訪問した。首脳会談において、両首脳は、二国間関係の現状について協議し、両国国民及び政府間での歴史的な友好協力関係に触れ、特に貿易、科学、教育、スポーツ、農業、文化面での協力及を引き続き強化していくことで一致した。また、観光分野に関し、両首脳は、パナマ訪問を希望するキューバ国民向けツーリストカード発行の簡素化に係るパナマ政府による政令に言及した。
 

4.パナマ運河

(1)LNG船の通航状況
(イ)1日、4隻のLNG船が同日に第三閘門を通航した(内訳は、北向き及び南向きのそれぞれ2隻)。本年4月17日、同日に3隻のLNG船が同閘門を通航したが、この記録を塗り替えた。同日より、LNG船の事前予約枠が1日あたり2隻に拡大され、またLNG船の夜間通航の一部緩和やガトゥン湖でのLNG船同士の行き合いも解除された。
(ロ)24日、4隻のLNG船が同日に第三閘門を同方向(北向き)に通航した。これらのLNG船は、チリ、韓国及び香港等を起点とし、米国東岸へ向かう。なお、本年9月、第三閘門の平均通航隻数は、LNG船が7.5隻/週、ネオパナマックス船が7.9隻/日であった。
 
(2)2018会計年度の通航実績
2018会計年度(2017年10月1日~2018年9月30日)の通航実績として、通航隻数は13,795隻(パナマックス船11,306隻・ネオパナマックス船2,489隻)で、前年度の13,548隻(パナマックス船11,720隻・ネオパナマックス船1,828隻)から247隻増加した。また、通航貨物量は2億55百万トン(パナマックス船1億74百万トン・ネオパナマックス船81百万トン)で、前年度の2億41百万トン(パナマックス船1億80百万トン・ネオパナマックス船61百万トン)から14百万トン増加した。
 

5.経済指標は別添資料をご参照下さい。