パナマ経済(2017年6月報)

平成29年7月31日
在パナマ日本国大使館
担当:大森書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

2017年6月のパナマ経済の主な動きを以下の通り報告する。

主な出来事
●12日の中国との外交関係樹立を受け、ワン駐パナマ中国通商事務所代表は、大使館の設置に向けた調整を行っており、今後は政治、経済、貿易、社会、人道、観光、投資及び検疫に関する二国間協定の交渉を始める予定である旨発言。
●28日、「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」の審査において、パナマが「概ね遵守(Largely Compliant)」に評価された。

1 経済一般

(1)IMFによる国内経済分析レポートの発表
IMFは、国内経済の見通しに関するレポートを発表。今後のパナマ経済は、合計約166億4,000万ドルの公的及び民間のインフラ投資が、成長を牽引していく見込みであることに加え、新プロジェクトは、今後のパナマの生産性を向上させ、成長の可能性を強化する旨指摘。

(2)世界銀行による2017年の経済成長見通し
2017年のパナマ経済成長見通しを5.4%から5.2%に下方修正した。なお、ラテンアメリカ地域の経済成長率はブラジルとアルゼンチン経済の好転により、平均で0.8%まで回復する見通し。

(3)Soho Mall売却の合意
17日、Soho Mallはメキシコ企業2社に対し売却された。関係者によると、売却金額は3億5,000万ドル。なお14日、本合意を受けSoho MallはOFACリスト(通称:クリントンリスト)から削除された。

(4)パイロット組合による賃上げ及び労働環境改善要求
コパ航空に勤務するパイロット約1,000人が所属するパナマ・パイロット組合(UNPAC)は15日にストライキを決行する旨発表していたが、同日未明、コパ航空との合意に至ったと発表。賃上げ率は23%、その他、労働環境の改善が約束された。またコパ航空は5月期の利用者数が前年比11.5%増の780万人であったと発表。ブラジル及びコロンビアの経済回復により、利用者が増加したと分析。

(5)コパ航空による新就航先
(ア)27日、コパ航空は11月15日からアルゼンチン・メンドーサへの直行便を就航する旨発表。アルゼンチン国内でも観光地として人気の高い都市であり、往路は月曜、水曜、金曜及び日曜、また、復路は月曜、火曜、木曜及び土曜の週四便を運航予定。
(イ)28日、コパ航空は12月11日から、デンバーに週四便運航する旨発表。域内空港からデンバーへの直行便はメキシコに次ぐ2都市目であり、ヘイルブロン・コパ航空社長は「米国とラテンアメリカのビジネスに貢献することを期待する」旨発言。

(6)グローバル・フォーラムにおけるパナマの評価
28日、当国経済財務省は、「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」の審査において、パナマが「概ね遵守(Largely Compliant)」に評価されたことを受け、コルテス国税庁長官による「風評のみならず実務面にも悪影響を及ぼす非協力国・地域リストに掲載されないことは、これまでパナマが進めてきた租税情報交換に関する法的整備等の努力が認められた明かしである」旨のコメントを発出した。同評価は4段階評価のうち上から2番目であり、パナマは今般、ファスト・トラック制度を利用して審査を受けるため、国内の規制強化や改善、また法的整備等やオフショア・カンパニーの登記に関する制度を導入した他、「租税に関する相互行政支援に関する条約(MAC)」に加盟した。

(7)コロン・フリー・ポートの運用開始
30日、コロン・フリー・ポートの運用が開始した。本プロジェクトではフリーゾーンの外であるコロン市にある計16本の街路に免税店を設置することで、コロン市の観光を促進させるものであり、今般、そのうちの2店舗がオープンした。なお来客第一号はバレーラ大統領。

2 経済指標、経済見通し等

(1)1月~4月期訪問者数
 移民局は、1月から4月までの訪問者数(クルーズ船による入国者は含まない)が、昨年同期比1.5%減となる、180万326人であった旨発表。国籍別には米国(13万1,561人)、コロンビア(12万5,179人)、ベネズエラ(12万5,074人)が上位。
 
(2)第1四半期のGDP成長率
 会計検査院は、第1四半期の実質GDP額が95億8,100万ドル、経済成長率は6.2%であった旨発表。主にコロン・フリーゾーンの回復に牽引され、商業が前年同期比9.7%増した他、拡張運河の影響を受けた流通が同10.4%増となった。
 
(3)1月~4月期コンテナ取扱量
 海事庁(AMP)は、1月から4月期における国内主要港湾のコンテナ取扱量が、前年同期比14.4%増の220万TEUであった旨発表。特に、コロン・フリーゾーンに最も近いPPC港が前年比60%増となった。
 
(4)5月末時の公的債務残高
 経済財務省は、5月末における公的債務残高が、前年比15億4,000万ドル増の229億5,900万ドルであった旨発表。国外債務の180億9,800万ドルには、パナマが発行する国債も含まれており、右合計額は約124万8,300万ドル。
 
(5)1月~4月期のトクメン空港利用客数
 トクメン空港公社は、1月~4月期の利用者数が前年同期比6.6%増の470万人であった旨発表。内訳は、310万人がトランジット目的、160万人がパナマに入国目的であり、入国者数は前年同期比3%増となった。
 
(6)第1四半期における直接投資額
 会計検査院は、第1四半期における直接投資額が前年同期比10.7%増の3億1,540万ドルであったと発表。内、再投資額は前年同期比25%増であった。
 
(7)2016年の財政収支
 22日、サラック経済財務次官は、2016年の財政収支(確定値)を発表。財政赤字は10億6,500万ドルで、対GDP比は、昨年よりも0.4ポイント改善のマイナス1.9%であった。サラック次官は、財政赤字の状況は改善されているものの、「前政権からの負債」の負担が大きく、「適切」レベルを上回ってしまった旨発言。

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)中国との経済協定締結に向けた動き
15日、中国・パナマ商工会議所の昼食会において、ワン駐パナマ中国通商事務所代表は、12日の中国との外交関係樹立を受け、現在、大使館の設置に向けた調整を行っており、今後は政治、経済、貿易、社会、人道、観光、投資及び検疫に関する二国間協定の交渉を始める予定である旨発言。併せて、パナマは対中輸出製品として魚介類(特に伊勢エビ)、牛肉及びトロピカルフルーツに関心を有しており、いずれも検疫に関する協定が締結され次第、輸出が可能になるとの見解を示した。また投資に関しては、これまで外交関係がなかったことで実現が難しかった、公的プロジェクトへの参加に多くの中国企業が関心を寄せている旨明かした。

(2)バレーラ大統領による訪米
19日から22日にかけて、バレーラ大統領は米国ワシントンDCを訪問した。訪問中、米国企業に対し、パナマの投資環境及び税の取締りに関する透明性の強化につき説明を行った他、AirBnB社、Twitter社、Boeing社、CAT社等と面談し、パナマの経済状況につき説明をした。

(3)台湾との断交に伴うFTAの扱い
貿易産業省関係者は当地主要紙であるラ・エストレージャ紙のインタビューに対し、台湾との断交後における同国とのFTAの扱いにつき、パナマとしては断交後も台湾とのFTAを続ける意思がある旨明かした。

(4)インカピエ外務次官の発言(太平洋同盟及び台湾との経済関係見通し)
(ア)28日、インカピエ外務次官は訪問先のコロンビア・カリにて、太平洋同盟への参加については関心はあるものの、現在、加盟のメリット・デメリットにつき分析中である旨発言。
(イ)台湾との断交については、台湾との商業関係が継続するような法的整備について現在検討中である点強調しつつ、断交にあたっては、パナマにて経済活動を行うすべての台湾企業と協議を行い、政治的な決断は商業関係を変えることはない旨説明したことを明かした。

4 パナマ運河及びインフラ関連

(1)パナマ運河通航料改定案
1日、パナマ運河庁は、運河通航料改定案を公表し、7月3日までのパブリックコメントの受付を開始した。新運河通航料は7月5日に予定される公聴会での運河利用者等からの意見及びパブリックコメントを踏まえ、必要に応じて修正した後、閣議で正式に承認される。同改定料金の適用開始日は10月1日の予定。
なお、改定案の概要は以下のとおり。
(ア)コンテナ船(ネオパナマックス船に限る):往航時(太平洋側から大西洋側に向かう際)に船舶の積載容量に対して70%以上の実入コンテナを積載し、かつ25日以内(大西洋側のパナマの港湾に停泊等する期間を除く)に復航した場合のみ、復航時に割引した通航料を適用。
(イ)LNG船及びLPG船:増額。

(2)メトロ3号線整備プロジェクト
2日、メトロ公社が実施した同プロジェクトの入札に係る事前資格審査の受付において、9コンソーシアムが提案。今後、同公社における提案書類の審査を経て、30日(営業日)以内に入札参加企業の選定及び通知がなされる。入札仕様の公開は8月頃の見込み。

(3)パナマ・コロン・コンテナ・ポート(PCCP)建設
7日、China Landbridge Group(中)は、コロン県のマルガリータ島に位置するパナマ・コロン・コンテナ・ポート(PCCP)の建設の鍬入れ式をバレーラ大統領出席のもと実施した。建設される3つの岸壁のうち、2つはスーパーポスパナマックスサイズ(ネオパナマックスを超えるサイズ)の船舶を、残りの1つはネオパナマックスサイズ の船舶及び多目的船の着岸が可能となる見込み。

5 経済指標は別添資料をご参照ください。