パナマ経済(2025年11月月報)
令和7年12月17日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●物流セクターがパナマ経済の中心となる
●2026年初めに銅山に関する計画を発表か
●チキータ社、2026年1月にバナナ生産と輸出を再開する見込み
●パナマ運河庁、ヒューストンでガスパイプラインと新港湾プロジェクトを発表
チャップマン経済財務大臣は、増税を行う代わりに、徴税における技術改革や、財政宝くじなどの取り組みを通じて、徴税効率改善に注力すると述べた。同大臣は、パナマが18ヶ月間にわたり投資適格格付けを維持し、リスクプレミアムを低下させ、市場の信頼を回復していることを強調した。また、政府が、特定の機関への予算配分や公務員の給与増額など、自動的に増額となる現在の法律を見直し、限られた予算を投資や教育の質向上に振り向けることを検討していると付け加えた。
(2)物流セクターが経済の半分以上を占める見込み
パナマの物流セクターは現在、国内総生産(GDP)の約35%を占めているが、現在計画されているパナマ・ダビッド鉄道プロジェクトを始めとした、運河拡張工事、新港湾ターミナル、トクメン空港拡張、主要道路改良などの大規模インフラプロジェクトにより。10年後にはGDPの50%超を占めると予測されている。これらのプロジェクトは今後10年間で12万5千以上の新規雇用を創出する見込みだが、工学やITなどの専門知識を持った労働者を育成することが急務となっており、専門家は、教育改革の必要性を強調し、INADEH(国家雇用開発庁)、ITSE(高等技術教育機関)、SENACYT(国立科学技術革新庁)を通じた技術訓練の強化を求めている。
ムリーノ大統領は、ドノソ銅山に関する計画を2026年初めに発表すると述べ、鉱山はパナマに属するという原則を尊重すると述べた。また、同大統領は2023年に閉鎖した銅山の雇用喪失などによる経済的影響を認めつつ、これらの雇用を埋め合わせる即効性のある解決策はないと説明した。また、112億ドルの公共投資と、運河関連インフラ・港湾・ガスパイプラインなど大型プロジェクトへの外資誘致により、2026年に景気回復が見込まれると予測するものの、雇用創出は民間セクターに依存すると付け加えた。
(2)ムリーノ大統領、12月中にメルコスールへの正式加盟を申請すると発表
ムリーノ大統領は、コスタリカを公式訪問中に、12月20日にメルコスールへの正式加盟を申請し、現在の準加盟国の地位から脱却すると発表した。ムリーノ大統領は、南米の加盟国であるブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイとの関わりを深めると同時に、パナマの物流プラットフォーム、港湾、運河を地域貿易の支援に提供することを目標としていると述べた。訪問中、ムリーノ大統領とロドリゴ・チャベス・コスタリカ大統領は、貿易・農業・移民・物流・観光・安全保障分野での協力強化で合意した。コスタリカ政府は二国間関係発展への貢献を称え、ムリーノ大統領にフアン・モラ・フェルナンデス勲章(大十字金章)を授与した。
(3)パナマ、輸出向け新海外市場を開拓
パナマ2026年、ドミニカ共和国、キューバ、ジャマイカなどの新市場への進出を目指し、米国への依存度低減と国際競争力の多角化を図る。関係者は貿易使節団の派遣や、1月に120社以上の国際バイヤーを招くCAFビジネスミーティングといった主要イベントの活用を通じ、パートナー誘致と輸出多様化を推進する計画である。現行データでは輸出の約69%が米国、台湾、オランダを中心としたわずか10カ国に集中している。当局はパナマがメルコスールに加盟することでさらなる拡大を見込こんでいる。
(4)2025年の輸出額は13億ドル予測、エビが牽引
パナマの輸出は2025年1月から9月までで9億8,800万ドルに達し、前年同期比1,7%増加した。エビは堅調な成長を維持し輸出首位を維持し、次いでコーヒー、医薬品、セメントなどが続いた。貿易産業省(MICI)は2025年輸出総額を約13億ドルとし、2026年にはバナナ輸出回復によりさらに5%成長を予測する。エビを中心とした養殖業への投資は増加しており、エビの輸出額は1億ドルを突破し、水産物輸出総額は2億9,000万ドルに達すると見込まれる。輸出業者は、金額自体は小さいものの新たな製品として、ハーブや建設資材、さらにはビデオゲームに至るまでパナマの輸出品目は多様化が進んでいる点を強調している。
(5)チキータ社、2026年1月にバナナ生産と輸出を再開する見込み
チキータ社はボカス・デル・トロの農園を復旧するために、新たな労働者を雇用し、2026年1月にバナナ輸出を再開すると表明した。同社は既に2,000人の従業員を雇用しているが、2月までに雇用数を5,000人に増やし、3月にはフル稼働を目指す。これはブラジルで署名された覚書に基づき作成された計画の一環で、5,000ヘクタールの農地の回復、若者と女性の雇用安定、約3,000万ドルの投資が定められている。
パナマ運河庁は、継続的な豪雨によりアルハフエラ湖とガトゥン湖が運用限界水位に近い状態にあると警告し、ガトゥンダムとマデンダムで予防的放流を実施すると発表した。11月20日早朝の時点で、アルアフエラ湖は251.85フィート、ガトゥン湖は88.59フィートに達しており、予測ではガトゥン湖が数日中に最大水位に達する可能性がある。当局は近隣住民や一般市民に対し、警戒を呼びかけ、放流直前の警報サイレンに注意し、河川や水路から直ちに離れ、高台へ避難するよう促した。
(2)パナマ運河庁、ヒューストンでガスパイプラインと新港湾プロジェクトを発表
ヒューストン国際海事会議において、バスケス運河庁長官は、エネルギー需要の増加と気候変動の課題の中で、運河の効率性と競争力を強化することを目的とした主要戦略プロジェクトを発表した。プロジェクトはガスパイプライン建設とコロサル港、テルフェルス港の整備などが含まれていた。同長官は、LPG取扱量が10年以内に倍増すると予測されること、拡張に失敗すればパナマが米国とアジアを結ぶ貿易の重要なシェアを失う可能性があると説明した。同長官は、透明性を確保すると強調し、26億ドル規模の港湾開発に関する事前審査プロセスの一環として、12月初旬から港湾運営会社や海運会社との個別協議を開始することを発表した。
パナマ主要経済指標(2025年11月)
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●物流セクターがパナマ経済の中心となる
●2026年初めに銅山に関する計画を発表か
●チキータ社、2026年1月にバナナ生産と輸出を再開する見込み
●パナマ運河庁、ヒューストンでガスパイプラインと新港湾プロジェクトを発表
1 経済全般、見通し、経済指標等
(1)チャップマン経済財務大臣が増税は行わない方針を表明チャップマン経済財務大臣は、増税を行う代わりに、徴税における技術改革や、財政宝くじなどの取り組みを通じて、徴税効率改善に注力すると述べた。同大臣は、パナマが18ヶ月間にわたり投資適格格付けを維持し、リスクプレミアムを低下させ、市場の信頼を回復していることを強調した。また、政府が、特定の機関への予算配分や公務員の給与増額など、自動的に増額となる現在の法律を見直し、限られた予算を投資や教育の質向上に振り向けることを検討していると付け加えた。
(2)物流セクターが経済の半分以上を占める見込み
パナマの物流セクターは現在、国内総生産(GDP)の約35%を占めているが、現在計画されているパナマ・ダビッド鉄道プロジェクトを始めとした、運河拡張工事、新港湾ターミナル、トクメン空港拡張、主要道路改良などの大規模インフラプロジェクトにより。10年後にはGDPの50%超を占めると予測されている。これらのプロジェクトは今後10年間で12万5千以上の新規雇用を創出する見込みだが、工学やITなどの専門知識を持った労働者を育成することが急務となっており、専門家は、教育改革の必要性を強調し、INADEH(国家雇用開発庁)、ITSE(高等技術教育機関)、SENACYT(国立科学技術革新庁)を通じた技術訓練の強化を求めている。
2 通商、貿易、国際経済関連
(1)2026年初めに銅山に関する計画を発表予定ムリーノ大統領は、ドノソ銅山に関する計画を2026年初めに発表すると述べ、鉱山はパナマに属するという原則を尊重すると述べた。また、同大統領は2023年に閉鎖した銅山の雇用喪失などによる経済的影響を認めつつ、これらの雇用を埋め合わせる即効性のある解決策はないと説明した。また、112億ドルの公共投資と、運河関連インフラ・港湾・ガスパイプラインなど大型プロジェクトへの外資誘致により、2026年に景気回復が見込まれると予測するものの、雇用創出は民間セクターに依存すると付け加えた。
(2)ムリーノ大統領、12月中にメルコスールへの正式加盟を申請すると発表
ムリーノ大統領は、コスタリカを公式訪問中に、12月20日にメルコスールへの正式加盟を申請し、現在の準加盟国の地位から脱却すると発表した。ムリーノ大統領は、南米の加盟国であるブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイとの関わりを深めると同時に、パナマの物流プラットフォーム、港湾、運河を地域貿易の支援に提供することを目標としていると述べた。訪問中、ムリーノ大統領とロドリゴ・チャベス・コスタリカ大統領は、貿易・農業・移民・物流・観光・安全保障分野での協力強化で合意した。コスタリカ政府は二国間関係発展への貢献を称え、ムリーノ大統領にフアン・モラ・フェルナンデス勲章(大十字金章)を授与した。
(3)パナマ、輸出向け新海外市場を開拓
パナマ2026年、ドミニカ共和国、キューバ、ジャマイカなどの新市場への進出を目指し、米国への依存度低減と国際競争力の多角化を図る。関係者は貿易使節団の派遣や、1月に120社以上の国際バイヤーを招くCAFビジネスミーティングといった主要イベントの活用を通じ、パートナー誘致と輸出多様化を推進する計画である。現行データでは輸出の約69%が米国、台湾、オランダを中心としたわずか10カ国に集中している。当局はパナマがメルコスールに加盟することでさらなる拡大を見込こんでいる。
(4)2025年の輸出額は13億ドル予測、エビが牽引
パナマの輸出は2025年1月から9月までで9億8,800万ドルに達し、前年同期比1,7%増加した。エビは堅調な成長を維持し輸出首位を維持し、次いでコーヒー、医薬品、セメントなどが続いた。貿易産業省(MICI)は2025年輸出総額を約13億ドルとし、2026年にはバナナ輸出回復によりさらに5%成長を予測する。エビを中心とした養殖業への投資は増加しており、エビの輸出額は1億ドルを突破し、水産物輸出総額は2億9,000万ドルに達すると見込まれる。輸出業者は、金額自体は小さいものの新たな製品として、ハーブや建設資材、さらにはビデオゲームに至るまでパナマの輸出品目は多様化が進んでいる点を強調している。
(5)チキータ社、2026年1月にバナナ生産と輸出を再開する見込み
チキータ社はボカス・デル・トロの農園を復旧するために、新たな労働者を雇用し、2026年1月にバナナ輸出を再開すると表明した。同社は既に2,000人の従業員を雇用しているが、2月までに雇用数を5,000人に増やし、3月にはフル稼働を目指す。これはブラジルで署名された覚書に基づき作成された計画の一環で、5,000ヘクタールの農地の回復、若者と女性の雇用安定、約3,000万ドルの投資が定められている。
3 パナマ運河、海事、インフラ関係
(1)パナマ運河、アルハフエラ湖とガトゥン湖の水位上昇を受け予防的放流を発表パナマ運河庁は、継続的な豪雨によりアルハフエラ湖とガトゥン湖が運用限界水位に近い状態にあると警告し、ガトゥンダムとマデンダムで予防的放流を実施すると発表した。11月20日早朝の時点で、アルアフエラ湖は251.85フィート、ガトゥン湖は88.59フィートに達しており、予測ではガトゥン湖が数日中に最大水位に達する可能性がある。当局は近隣住民や一般市民に対し、警戒を呼びかけ、放流直前の警報サイレンに注意し、河川や水路から直ちに離れ、高台へ避難するよう促した。
(2)パナマ運河庁、ヒューストンでガスパイプラインと新港湾プロジェクトを発表
ヒューストン国際海事会議において、バスケス運河庁長官は、エネルギー需要の増加と気候変動の課題の中で、運河の効率性と競争力を強化することを目的とした主要戦略プロジェクトを発表した。プロジェクトはガスパイプライン建設とコロサル港、テルフェルス港の整備などが含まれていた。同長官は、LPG取扱量が10年以内に倍増すると予測されること、拡張に失敗すればパナマが米国とアジアを結ぶ貿易の重要なシェアを失う可能性があると説明した。同長官は、透明性を確保すると強調し、26億ドル規模の港湾開発に関する事前審査プロセスの一環として、12月初旬から港湾運営会社や海運会社との個別協議を開始することを発表した。
パナマ主要経済指標(2025年11月)