パナマ経済(2025年6月月報)

令和7年8月6日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                             
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主な出来事
●2025年第1四半期の経済活動が5.2%増加
●経済協力開発機構(OECD)への加盟を正式に申請
●教員ストライキにより学校閉鎖が長期化
●鉱山開発停止に伴う失業問題、組合が問題提起
●コパ航空CEOの成長戦略
●海事庁が港湾インフラの改修を発表
 

1 経済全般、見通し、経済指標等

(1)2025年第1四半期の経済活動が5.2%増加
 2025年第1四半期、パナマの都市交通部門は成長を遂げ、MiBusの乗客数が5.1%、メトロの利用者数が6.7%増加した。パナマ運河は前年の干ばつによる減少から回復し、通行料収入が43.6%増加した。また、小売は5.6%増加、新車販売は14.1%と大きく増加した。輸出活動も大きく成長し、バナナ(50.7%増)、エビ(45.7%増)、鮮魚(23.6%増)となった。
(2)ラテンアメリカの成長には経済統合の強化が必要
 パナマで開催された国際貿易会議で、専門家は、米国と中国などの主要国間の貿易緊張の高まりによる将来の不透明さに対処するため、ラテンアメリカは地域経済統合を加速する必要があると警告した。
 ラテンアメリカ銀行連盟(FELABAN)のジョルジオ・トレッテネロ氏は、インフレや世界経済の成長鈍化、米国の景気後退などのリスクを指摘し、ラテンアメリカが貿易の分散化と原材料輸出への依存により脆弱な状態にあると強調した。
 ラテンアメリカ対外貿易銀行(Bladex)のグスタボ・アセロ氏は、この地域の比較的低い関税を競争上の優位性として指摘し、域内貿易と産業能力の強化の必要性を強調した。また、両氏は現在の世界的な貿易の課題を、持続的な成長のための長期的な機会に変えるためには、地域協力、市場の多様化、教育と技術への投資が不可欠であると述べた。
(3)経済協力開発機構(OECD)への加盟を正式に申請
 パナマは、経済協力開発機構(OECD)への加盟を正式に申請し、国際協力、透明性、持続可能な開発への取り組みを表明した。マルティネス=アチャ外相は、フランスで OECD のマティアス・コーマン事務総長と会談し、加盟申請書を提出した。OECDへの加盟は、公共政策の改善、外国投資の誘致、国家の発展を目的としている。
(4)セメント企業は需要の低迷に対し、投資、多角化、輸出で対応
 2025年第1四半期、パナマシティとコロンを除くパナマの建設部門は、新たに認可された建設・修繕の総額が前年同期比0.4%減の220.8百万ドルと減少を記録した。建設労働者の長期ストライキにより主要なインフラプロジェクトが停止したことで悪化した。回復の兆候はみられるものの、コンクリートやセメントなど関連産業はパンデミック前の水準を下回り、生産量が大幅に減少している。セメント業界は、投資を誘致するため政治的・経済的安定の必要性を強調する一方、優遇金利法の不明確さや政府の支払い遅延といった課題も指摘している。ムリーノ大統領のインフラ投資計画が業界を再び活性化させる可能性に期待を寄せつつ、輸出(特にカリブ海市場向け)を拡大し、製品の多様化を進めて事業を維持している。
 

2 通商、貿易、国際経済関連

(1)鉱山開発停止に伴う失業問題、組合が問題提起
 労働組合と企業団体は、鉱業開発が停止したことにより、2023年11月以降、数百万ドルの損失が記録されたと主張し、鉱業操業停止により直面している大規模な失業問題について、政府の対話を呼びかけた。
 マイケル・カマチョ・Utramipa(パナマ鉱山労働者組合)代表は、失われた4万人に及ぶ直接・間接雇用について懸念を表明した。
 また、レオナルド・カルサコ・UGT(一般労働者組合)代表は、鉱業活動は憲法で規定されていると述べ政府及び議会に呼びかけた。
 Apimpa(パナマ鉱業産業供給業者協会)の代表者は、パナマで訓練を受けた鉱山労働者は現在、世界の他の地域で働いている、彼らはここで得られる収入を外国で稼がなければならない、操業を停止して雇用を失い続ける状況は好ましくないと主張した。
(2)ポルトガル企業がトクメン国際空港の主要滑走路改修を受注
 ポルトガル企業のEngil-Mota Engenharia Construcao, S.A. と Constructora Mecoによるコンソーシアムが、5,690万ドルでトクメン国際空港の主要滑走路の改修と維持管理を行うプロジェクトを落札した。入札には2つのコンソーシアムが参加した。
 Eterc-Dogalコンソーシアムは、基準価格である5,230万ドルを下回る5,090万ドルを提示し、必須の要件を満たしていないと判断され失格となった。契約では、改修工事は着工から4年以内に完了することが定められている。滑走路の1つは2016年にメンテナンスが行われたが、舗装が劣化してきたため、滑走路の全長の中央部の舗装(幅18メートル、厚さ5.0)等の打ち替えが予定されている。もう一方の滑走路は1975年に建設され、これまで舗装の大規模なメンテナンスや改修は実施されていない。改修後の滑走路のメンテナンスは、改修工事完了後の2年間実施される。
(3)教員ストライキにより学校閉鎖が長期化
 40日以上にわたる教員ストライキにより授業が停止し、生徒たちは4月末から登校できず、生徒たちは不安と失望を抱えている。学校は6月9日に再開したが、授業は実施されていない。多くの教員がストライキに参加しており、連絡も取れない状況が続いている。ストライキは、社会保障制度に関する法律第462号に対し、4月23日から開始された。会計検査院は職務放棄と判断し、約15,000人の教員の給与の支払いを停止した。
 アグネス・デ・コテス教育次官は、ストライキによる学習機会の損失を認め、全国で約40日分の授業が失われたと説明した。特にボカス・デル・トロ、先住民地域、ベラグアス県が深刻な影響を受けている。教育省は、失われた学習を補うための戦略マニュアルを作成し、大学との連携による補習支援も進めている。モリナール教育相は、授業再開を強く呼びかけ、「子どもたちの権利を犠牲にしてはならない」と訴えた。
(4)大規模太陽光発電所が開業
 ナイアド・リニューアブル・エネルギー・グループ社が7,000万ドルを投資した太陽光発電所、「サンティアゴ・ソーラー」が開業した。この発電所は86,333MWPの発電能力を有する。貿易産業省(MICI)は6月3日、ベラグアス県のラ・メサ市のサンティアゴ・ソーラー発電所がイタリアのエンエル・グループと長期契約を締結し、本発電所に13万枚の両面ソーラーパネルが設置され、300人の雇用が創出されるとともに、環境面での取り組みとして、1万5,000本の植樹が行われたと発表した。
 ナイアド・グループ社は、財務面および運営面の安定性を確保しているエネルグループ社と長期の電力売買契約を締結していると説明した。また、「パナマは投資にとって安全な国である。今回の経験は、そのことを再確認するものとなった。」と述べた。
 また、アランゴ貿易産業次官は、パナマを世界クラスのグリーンエネルギーハブにすることを目指して、安定性、簡素化、戦略的インセンティブ、民間部門との継続的な対話を促すことで、サンティアゴ・ソーラー発電所のようなさらなる投資を誘致するために必要な条件を整えていると述べた。
 エネルギー庁のデータによると、2024年は、国内の主な発電量は、13,096.36GW時で、電源構成は、水力発電59.69%、天然ガス17.13%、再生可能エネルギー(太陽光発電及び風力発電)12.92%であった。また、公共サービス庁のデータによると、パナマには少なくとも49の太陽光発電施設があり、2024年には国の総発電量の7.7%を占めた。
(5)コパ航空CEOの成長戦略
 ペドロ・エイルブロン・コパ航空CEOは、「ラテンアメリカ・カリブ海地域の航空交通量は、昨年比で10.9%増加しており、この傾向は本年末まで続くと予測されている。航空機の納入遅延など課題はあるが、2025年までに最大8%の容量拡大を見込む」と述べ、同社の戦略を語った。
 ア 新機材の投入
  コパ航空は今年、数年前と比較し多くの輸送能力の増加を見込んでいるが、航空機の 納入機数に大きく左右されている。2024年に13機の737MAXが納入される予 定だったが、最終的に6機しか納入されなかった。今年は13機の納入を見込んでお  り、そのうち7機は昨年の納入分である。5月に2機が納入されたので、今年は予定通 りの13機の航空機が納入される見込みで、新規路線の開設が期待される。
 イ ハブとしてのパナマ
  パナマは、ラ米で最初のハブとして、過去20年から30年の間に大きな影響を与え てきた。この地域は現在、より競争が激化しており、パナマが地位を維持するために  は、コストやサービスの競争力を高め、接続性を最適化する必要がある。パナマは   1990年代からオープンスカイ協定を締結しており、ラテンアメリカのほとんどの国 と協定を締結している。トクメン空港のインフラは、約2年前に、第2ターミナルに  20ゲートが増設され、順調に稼動している。現在、キャパシティの限界に近づいてお り、トクメン空港は今後3年間でキャパシティを拡大する予定である。
 ウ 各市場における戦略
  メキシコは、ラテンアメリカで2番目に重要な航空市場であり、大都市や重要な観光 地など、魅力的な目的地が数多くある。コパ航空は、メキシコの4都市(メキシコシ  ティ、グアダラハラ、モンテレー、カンクン)に就航している。他の都市への就航の可 能性も検討している。航空機の納入遅延のため、フライトを削減せざるを得なかった  が、将来的には、トゥルム空港やフェリペ・アンヘレス国際空港へのフライトを再開す るであろう。サッカー・ワールドカップに向け、新しい可能性を模索しており、メキシ コや米国へのフライトを増便する必要がある。
  アルゼンチン市場は、ラテンアメリカで最も活況を呈している市場である。様々な理 由により、航空業界は長年にわたり困難な状況にあったが、現在では安定と確実性が  高まり、旅客数が大幅に増加している。現在、ブエノスアイレス、ロサリオ、コルド  バ、メンドーサに就航しており、観光地として魅力的なサルタへの就航も再開し、   トゥクマンへも就航する。また、イグアスは非常に魅力的な目的地であり、将来的な可 能性は検討 しているが、多くのことを実現するためには航空機が不足している。
  パナマとチリのサンティアゴを毎日複数便運航している。チリは競争力が高いラタム 航空を有す。コパ航空は、機会があれば新規路線の開設の可能性も模索していく。
  最近再開したベネズエラ便は、最初は1日1便だが、2週間後には2便に増便する。 現在は、カラカスへの運航のみ許可されているが、以前は5都市に週40便以上運航し ており、他の都市への運航も徐々に再開する予定である。
 

3 パナマ運河、海事、インフラ関係

(1)パナマ産のマグロが順調に伸びる
 2025年1月から5月の間に、パナマ海事局(AMP)管轄下の港湾において、987万2,143ポンドの水産物を輸送した。輸送量が多かった3つの港湾は、プエルト・バカモンテ港(556万9,980ポンド)、プエルト・ペドレガル港(107万6,944ポンド)、プエルト・パナマ港(94万8,330ポンド)であった。パナマ海事局(AMP)が管轄する港湾で最も頻繁に水揚げされる水産物は、マグロ、ドラド、コルビナ、タイ、エビなどである。特にプエルト・バカモンテ港では、米国とヨーロッパ向けに375万2,567ポンドのマグロを輸出量している。ペレスAMP計画局長は、「漁業管理と水産物水揚げ量の管理は、資源の持続可能な利用を確保し、海事・港湾セクターの活動を強化し、国内の様々な地域で経済的利益を生み出すために不可欠である」と述べた。
(2)海事庁が港湾インフラの改修を発表
 パナマ海事庁(AMP)は、運用情報、全国的な技術展開に基づく戦略の一環として、現政権期間中(当館注:2024年~2029年の5年間)に港湾インフラの50%以上を改修することを目指している。この目標は、国内の24の国営港湾が深刻な老朽化の状況であるとする技術調査の結果を受けて設定された。この結果に基づき、専門スタッフ、政府コーディネーター、地方当局、中央政府の支援を受け、複数の港湾(プエルト・ジャビサ港、プエルト・キンバ港、プエルト・ムティス港、イスラ・コロン船着場、プエルト・ペドレガル港、アスカレロ桟橋、プエルト・メンサベ港)において、予防的・改修的な保守作業が既に開始されている。
 サモラAMP港湾局副局長は、AMPは、物流ネットワークと海上貿易の再活性化の鍵となる、工事の優先順位付けと、国家港湾開発計画の実施能力確保に注力していると述べた。また、AMPは、法的枠組みと持続可能性を確保するための技術調査に基づき、港湾プロジェクトへの投資を誘致するという確固たる方針を維持していると改めて強調した。
(3)パナマ運河理事会メンバーの変更
 パナマ運河庁は、パナマ運河理事会のメンバーを発表し、新たに、ドミンゴ・ラトラカ・ミラン氏、ディエゴ・エレーラ・デュタリ氏、ホルヘ・エンリケ・バジャラリーノ・ミランダ氏の3人が新たに就任した。
 ドミンゴ・ラトラカ・ミジャン氏はテキサス工科大学(米国)で生産工学の博士号を取得した。計画と分析、コーポレートガバナンス、財務アドバイザリー、プロジェクト管理を専門とするコンサルティング会社Elemente社の創設パートナーである。以前は、デロイト・パナマのCEOをおよび地域取締役会のメンバーを務めた。過去には、パナマ商工農業会議所の会長や経済次官(2000年~2003年)を歴任した。
 ディエゴ・ヘレラ・ドゥタリ氏はサンタ・マリア・ラ・アンティグア大学で法学と政治学の学士号を取得(1991年)した。その後、テュレーン大学(米国、1993年)で学び、コスタリカのINCAEビジネススクールでMBAを取得(1995年)した。1986年からガルディノ・アリアス・ロペス法律事務所で勤務し、マネージング弁護士として改革と再編プロセスを主導する役割を果たしてきた。法律実務は、金融、製造、公共サービス分野における多国籍企業および国内企業への助言を中心に取り組んでいる。
 ホルヘ・E・バジャリノ氏は米国スタンフォード大学で経済学の学士号を取得(2000年)し、米国デューク大学フクア経営大学院でMBAを取得(2005年)している。グローバル・バンク・コーポレーションの執行役員を務める。また、INCAEビジネススクールの理事会メンバーや教育の向上を目的とする非営利団体「エンセニャ・ポル・パナマ」の会長を兼任している。また、ラティネックス・ホールディングス、パナマ証券取引所、レイ・ホールディングスといった主要企業で指導的立場を歴任してきた。
 パナマ運河庁理事会はパナマ運河基本法に基づき、運河の運営、改善、近代化に関する政策を策定し、憲法、法律、関連規則に従って、運河の管理を監督する責任を負っている。理事会は11名の理事で構成されている。9名は行政府により指名され、国会で承認される(当館注:今回の3名は当該区分である)。1名は立法府により指名される。残りの1名は大統領により指名され、運河担当大臣を兼任し、理事会の議長となる。
 
パナマ主要経済指標(月次ベース)2025年6月