パナマ経済(2025年5月月報)

令和7年7月7日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                                                                                
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主な出来事
●国の債務、増加が続く
●道路封鎖によりパナマと中米の陸上貿易が危機
●パナマ人船員の雇用が増加
●政府がパナマ・ダビッド鉄道建設計画の詳細を発表
●パナマ港湾のコンセッション契約の値上げ

 
1 経済全般、見通し、経済指標等

(1)パナマ、新事業誘致のため経済のデジタル化を加速
 パナマは、公共サービスを強化し、投資を誘致するため、デジタル変革を進めている。フォーラム「デジタル時代の接続性と競争力」では、政府関係者が2026年までに385の主要な政府プロセスをデジタル化し、統一した市民用のポータルサイトを立ち上げ、電子署名などのツールを導入する計画を発表した。通信会社マスモビルは、3,100校以上の学校をインターネットで接続する大規模プロジェクトを含め、光ファイバーと5Gネットワークの拡大に1億ドルを投資すると発表した。法律専門家のデビッド・スクレ氏は、銀行や不動産などのセクターを近代化するために、デジタル契約と署名を採用することの重要性を強調した。
(2)国の債務、増加が続く
 パナマ政府は経常収支がマイナスであり、投資のためではなく、給与と補助金を賄うために借入を行っていることを認めた。2025年第1四半期の経常支出33億3,500万ドルに対し、経常収入は19億9,500万ドルで、13億4,000万ドルの赤字となり、前年同期の8億3,500万ドルの赤字より悪化した。チャップマン経済財務相は、「過去政権から継承した財政不均衡だ」と説明した。政府は2029年までに経常収支をプラスにする計画だが、社会保障基金への9億6,000万ドルの支払いのような計画外の支出もある。専門家は、非課税枠を減らし、公共支出を効率化する改革の必要性を訴えている。
(3)政府は24億5,200万ドルの新規融資を交渉
 パナマ政府は、エネルギー、観光、環境、交通、社会インフラプロジェクトを支援するため、国際金融機関と24億5,000万ドルの新規融資を交渉していると明らかにした。これにより、2025年3月に546億ドルに達したパナマの公的債務はさらに増えることになる。パナマ政府は第1四半期に27.8億ドルの債務返済を行った。大手格付け会社フィッチ・レーティングスは、今後も債務の増加が続くと予想しているが、パナマ政府は歳入の増加と財政規律により、2029年までに債務残高の対GDP比を56%まで引き下げることを目指している。

 
2 通商、貿易、国際経済関連

(1)道路封鎖によりパナマと中米の陸上貿易が危機
 パナマと中米を結ぶパンアメリカン・ハイウェイを中心に、断続的な道路封鎖が発生し、コロン・フリーゾーンや主要物流拠点から、中米への物流が大きく滞っている。ロジスティクス・ビジネス・カウンシル(COEL)のダニエル・イサザ会長は、数百台の貨物トラックが抗議デモの恐怖のために倉庫で立ち往生しており、サプライチェーンと安全なロジスティクス・ハブとしてのパナマの地位に悪影響を与えていると警告した。現在、中米の港湾が手一杯の中、アジアからの多くの貨物がパナマを経由地としている中で、大幅な遅延は経済的損失を引き起こしている。
(2)パナマ~コロンビア間送電線接続プロジェクト、2026年開始か
 ラテンアメリカのエネルギー統合にとって最も重要なプロジェクトのひとつとして注目されているパナマ~コロンビア間送電線接続プロジェクトの理事会が開催され、2026年下半期にプロジェクトの建設が開始されるように、組織的、技術的な業務内容を定めた詳細な作業スケジュールが提示された。
 ウリオラ・エネルギー庁長官は、「本プロジェクトは、我々の電力システムを強化し、新たな地域市場を開拓するチャンスであるだけでなく、物理的および社会的に他の地域から孤立していた40以上のコミュニティとの歴史的な負債を清算することに役立つだろう」と述べた。本会合には、パナマの同庁長官意外にも、コロンビアのホルヘ・クリスタンチョ鉱山エネルギー副大臣や、在パナマ・コロンビア大使、両国の技術チームが参加した。
 ムリーノ大統領は、定例記者会見において、本プロジェクトの重要性と政治的支援を強調し、「本プロジェクトにより、業務を効率化し、より多くのエネルギーを確保するとともに、エネルギー生産マトリックスの全セクターへの拡大が可能になる。コロンビアとの送電網接続を早期に実現できれば、エネルギーを販売する自然な市場が生まれ、エクアドルまで拡大する可能性もある。本プロジェクトは実現しなければならない。私はこのプロジェクトに非常に自信を持っている」と述べた。
(3)パナマ、カリブ海での炭化水素探査開始に向けてコロンビアと協議
 パナマ政府は、コロンビアの国営石油会社エコペトロール社と協力し、カリブ海域に埋蔵されている石油・ガスの可能性を調査すると発表した。パナマのチームとコロンビアの専門家が協力し、潜在的な探査入札のための提案書を作成している。これと並行して、パナマは世界エネルギー・ウィーク2025を開催し、500人以上の参加者が世界的なエネルギー転換について議論する場を提供し、エネルギー・ハブとしての地位を築こうとしている。このイベントは、持続可能なエネルギー、技術革新、国際協力におけるパナマの役割を強化することを目的としている。
 

3 パナマ運河、海事、インフラ関係

(1)リオ・インディオ地域の765世帯以上がパナマ運河国勢調査に参加
 パナマ運河の水源確保のための新たな貯水池の建設によって、影響を受ける可能性のあるリオ・インディオ地域の住人765世帯以上が、パナマ運河庁(ACP)が実施した会合に参加した。この会合の参加者はプロジェクトに対する支持や拒否を表明するものではない。イリヤ・エスピノ・デ・マロッタACP副事務局長によると、75の人口密集地からのデータが収集され、コミュニティの継続と発展、環境保護のバランスをとるための政策を検討するデータに反映される。
(2)パナマ人船員の雇用が増加
 パナマ海事局(AMP)は、同庁の船員委員会の取り組みにより、2025年1月から4月の4ヶ月間で、パナマ人船員の雇用契約が12%増加したと発表した。同委員会の第17回会合の閉会式で、フェリペ・アリアス海員総局(DGGM)局長代理は、AMPが海事、物流、港湾分野における雇用機会の創出への取り組みを再確認するとともに、同取り組みは、共同作業によって推進される国家のビジョンであると述べた。
 マイテ・ブルゴス海事労働局(DALM)局長は、2025年1月から4月に307件の契約が登録され、2024年の274件と比較して12.04%増、2023年の253件と比較して21.34%増となったと発表し、この増加は、他の海事当局との二国間協定や、大手海運会社、Mission to Seafareres(当館注:英国国教会の慈善団体として、50カ国の約200の港湾でサービスを提供している。)との覚書(MOU)の締結によるものであると付け加えた。
 船員委員会は、今後の取り組みついて、教育省および高等専門技術学院と協力して、海事教育課程を業界のニーズに合わせて更新することが合意された。さらに、労働開発省との協力により、海事関連の雇用機会に関する統一データベースを構築することが提案された。
(3)政府がパナマ・ダビッド鉄道建設計画の詳細を発表
 ムリーノ大統領は、同政権の旗艦プロジェクトであるパナマ・ダビッド鉄道建設計画に関し、路線ルートを首都パナマ市からコスタリカ国境の都市パソ・カノアスまでとしたと発表した。駅数は14駅で、パナマ・パシフィコ-ダビッド間の路線延長は475キロメートルとしている。
 同大統領は、「この列車は、パナマの進歩が止まらないことを象徴している。それはパナマの原動力の生きたイメージであり、発展を推進する大きな機関車のような勤勉な国民を体現している。この建設工事は5万人以上のパナマ人が雇用され、この国の偉大さを築くための新たな一歩となり、自分(ムリーノ大統領)が残したい遺産となるだろう」と述べた。
 同プロジェクトは、パナマ市とダビッド間を3時間以内で結ぶ高速路線を整備し、旅客列車の最高設計速度は時速180キロメートル、貨物列車の最高設計速度は時速100キロメートルであり、近代的でマルチモーダルな鉄道輸送の国際基準に合致していることを強調した。
 工事は、パナマ・パシフィコとディビサ間の第1フェーズから開始され、技術的な調査と進行中の行政手続きが完了した後、2026年に土工工事が開始される予定である。
 駅の選定は、地下鉄、港湾、空港、道路などの既存の接続性およびインターモーダル性を基に、各地域の物流および商業の可能性、人口集中度、都市成長予測を基準にしたことを強調した。また、農業、観光、サービス業の動向も検証されたほか、世界の主要な鉄道回廊あるドイツのハンブルク港(港湾との効率的な相互接続)や、韓国の鉄道システム(高速鉄道と工業地帯の統合)なども参考とした。
(4)パナマ港湾のコンセッション契約の値上げ
 パナマ海事庁(AMP)理事会は、2024年11月27日付け決議J.D.第029-2024号(2025年3月28日(金曜日)付け官報にて公告)により、AMP長官に対し、港湾コンセッション事業者のコンテナ取扱い料金および岸壁利用料、停泊料、灯台等利用料、その他の料金を調整する権限を与えた。
 同決議によると、パナマ・ポート・カンパニー(PPC:Panama Ports Company, S.A.)、コロン・コンテナ・ターミナル(Colon Container Terminal, S.A.)、マンサニージョ・インターナショナル・ターミナル(Manzanillo International Terminal - Panama, S.A.)、PSAインターナショナル・ターミナル(PSA International Terminal, S.A.)は、港湾コンセッション契約で定められている料金の10%を追加で支払う必要がある。
 コンセッション契約では、5年ごとの見直しが規定されているが、これまで値上げは実施されていなかった。AMPは、今回の調整により、初めてコンセッション契約の全ての料金の値上げを実現した。料金の値上げは2025年1月1日に遡及して適用される。
(5)パナマ海事局(AMP)、「影の船団」を排除
 パナマ海事局(AMP)は、国際海事機関(IMO)の基準に沿った措置として、いわゆる「影の船団」を排除し、責任ある旗国としての地位を強化するため、パナマ籍のタンカーが関与する瀬取り(STS:ship-to-ship)石油移送作業に関する要件を強化し、オフショアでのSTSによる石油製品の移送に対し、より厳格な管理と追跡可能性の義務化を導入した。パナマ船籍で総トン数150トン以上の船舶は、STS作業を実施する少なくとも48時間前までに、旗国に対し詳細な技術的、物流的、および運用上の情報を通知しなければならない。
(6)国際原子力機関(IAEA)からの援助
 パナマ外務省は、国際原子力機関(IAEA)から、がんの早期診断および治療能力の強化を目的とした乳房X線撮影装置(マンモグラフィー装置)2台の供与を受けた。
 本供与は、本年1月にラファエル・グロッシIAEA事務局長がパナマを訪問した際に、IAEAの「希望の光(Rays of Hope)」イニシアチブの枠組みにおいて署名された覚書に基づくものであり、保健分野における安全かつ平和的な原子力利用を通じた協力の強化を目的としている。
 マルティネス=アチャ外相は、式典において、IAEAによる本件供与が、国内の医療サービスの質の向上に資するものであると評価し、同機関の尽力に謝意を表した。
 フェルナンド・ボイド保健相は、当該機器が、先進的な技術と訓練を受けた人材によって、プライマリ・ケアの強化およびタイムリーな診断の実現に寄与するものであると強調した。
 エステル・モンロイ・ゴンサレスIAEAプログラム管理官は、連絡事務所を通じた外務省との協力関係を高く評価するとともに、パナマ政府が推進する「2019~2029年がん予防・管理国家戦略計画」への支援を継続する意向を表明した。
 供与された機器のうち1台は、パナマ県パコラのラス・ガルサスにあるMINSA CAPSI(パナマ保健省が運営する総合診療所)に設置され、パナマ東部およびダリエン地域の40~65歳の女性15,000人以上に裨益するものである。別の1台は、チリキ県ボルカンにあるMINSA CAPSIに設置され、23,912人以上の住民(そのうち23%が妊娠可能年齢の女性)に対してサービスを提供する。
(7)メトロ3号線プロジェクト進捗 
 ムリーノ大統領は、西パナマ県とパナマ市を結ぶ運河渡河部のトンネル掘削工事の進捗率が25%であると発表した。本トンネルは、西パナマ県に住む多くの人々の生活を改善する一大プロジェクトであるメトロ3号線の開通を可能にするものである。この進捗には、パナマ運河の水深約50メートルの深さに建設された1,132メートルのトンネルが含まれる。
 

パナマ経済(2025年5月月報)