パナマ経済(2025年2月報)

令和7年4月23日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                                                                                
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●投資適格を回復するまでに長い年月が必要
●運河庁、インディオ川貯水池の建設資金承認
●パナマ・ポート・カンパニー(PPC)のコンセッション契約は違憲
●不法移民を本国へ送還する作戦が開始される
 

1 経済全般、見通し、経済指標等

(1)投資適格を回復するまでに長い年月が必要
年金制度改革に関する国民議会での討論において、ファウスト・フェルナンデス経済財務省副大臣は、改革案が承認されない場合、投資適格を失い、債務コストが増加し、財政が逼迫する可能性があると警告し、再編を行わない場合、最大10億ドルが社会保障基金(CSS)への資金ではなく債務支払いに流用される可能性があると強調した。また、投資適格の回復には10年から20年を要し、年金やインフラプロジェクトに影響を及ぼす可能性があると指摘した。2025年のCSSへの資金として割り当てられた9億6,600万ドルは、予算の再配分と財務管理の節約から捻出されると説明した。
(2)財政危機にもかかわらず、政府は「寄付金」として790万ドルを計上
パナマは史上最大の財政赤字に直面しており、ムリーノ大統領は緊縮財政を呼びかけている。しかし、2025年度予算では、監督不足がたびたび指摘されているコンサルタントとの契約を含む予算が3,000万ドル増額され、合計1億4,200万ドルとなった。この中には依然として裁量的な「個人への寄付金」として790万ドルが計上されており、この寄付金は以前、汚職スキャンダルと関連付けられていた。経済学者は、こうした裁量的支出を排除することが財政の安定化につながると主張しており、政府が真の財政規律を維持する意思があるのかどうか懸念が高まっている。
 

2 通商、貿易、国際経済関連

(1)トクメン国際空港はコンセッション計画から除外
ムリーノ大統領は、政府の空港コンセッション計画にトクメン国際空港は含まれないと述べた。一方、政府は、コロン、チリキ、コクレの空港のコンセッションに焦点を当て、ボカス・デル・トロのホセ・エセキエル・ハル空港の改善と改装を行い、観光サービスを強化する包括的なプロジェクトを計画いている。政府はまた、主要空港の老朽化した滑走路の修復工事の入札も発表する予定である。すでに企業からの関心はあるものの、コンセッションの最終的な構造は依然として不明である。
(2)パナマ、差別的なリストからの除外に向けた支援を求める
ハビエル・マルティネス・アチャ外相は、ブリュッセルでの会合において、欧州連合(EU)における戦略的パートナーとしてのパナマの役割と、多国間主義および国際協力へのコミットメントを強調し、EUの主要人物と共有する価値観や、パナマを差別的な金融リストから除外するための取り組みについて話し合った。また、ハーグでは、国際刑事裁判所の関係者と会談し、国際法の重要性を強調した。今回の訪問は、パナマの外交関係を強化し、貿易、投資、ガバナンスにおける新たな協力の機会を開くものとなった。
(3)40メガワッのソーラーパークが始動
 チリキ県にあるパナマ大学農業科学部の敷地で建設されていた40メガワット(mw)の太陽光発電所が2月に始動した。この発電所によってパナマ大学はラテンアメリカで初めて100%再生可能エネルギーで運営される公立大学となり、9万人以上の学生が再生可能エネルギーの恩恵を受ける、。このプロジェクトはグリーンウッド・エナジー(米国)との提携によって進められた。同社との契約では、20年間の運営後、当該発電所は無償で大学に譲渡されることになってる。
 

3 パナマ運河、海事、インフラ関係

(1)運河庁、インディオ川貯水池の建設資金承認、補償も検討
パナマ運河庁(ACP)理事会は、将来の干ばつに備えた水の確保戦略の一環として、インディオ川流域に新たな貯水池を建設するための資金提供を承認した。ACPは、このプロジェクトは運河の持続可能性と競争力を維持するために不可欠であり、近隣コミュニティへの水の供給も確保できると強調した。影響を受ける家族への公正な補償と移転プロセスは最優先事項であり、2025年4月まで国勢調査が実施されている。すでに地元住民の90%からデータを収集しており、残りの10%はプロジェクト自体に強く反対している。ACPは、住民との関わりを深め、プロジェクトに関するコミュニケーションを強化するために、40回以上の地域住民との会合を開催している。運河庁は2025年の初期投資額を5,000万ドル、持続可能性への取り組みを含めた総補償費用は20億ドルを超えると予測している。
(2)環境省がインディオ川貯水池を推進
フアン・カルロス・ナバロ環境大臣は、飲料水の供給とパナマ運河の効率的な運営を確保するためのインディオ川貯水池プロジェクトの重要性を強調した。同氏は、このプロジェクトにより約5,000ヘクタールが水没し、2,000人以上に影響が及ぶことから、厳格な環境評価と地域社会の参加の必要性を強調し、また、ミネラ・パナマの環境影響についても言及し、同鉱山の建設に反対する立場を再確認しつつも、シアン化物や水銀による汚染はないと確認した。さらに、ダリエンでの違法採掘について警告し、同鉱山の環境監査を実施し、結果を年半ばまでに発表すると発表した。
(3)パナマ・ポート・カンパニー(PPC)のコンセッション契約は違憲か
ルイス・カルロス・ゴメス司法長官は、パナマ・ポート・カンパニー(PPC)のバルボア港とクリストバル港のコンセッション契約に関する1997年1月16日法律第5号第1条を違憲と宣言することを勧告した。本違憲訴訟は、ノーマン・カストロ弁護士とフリオ・マシアス弁護士によって2月3日付けで提訴されたものである。ゴメス司法長官によると、PPCは港湾管理に関する「広範な権利」が与えられ、追加費用なしで拡張できる可能性や、第三者よりも優位に立つことができる過剰な特権を有しており、財政と行政の透明性を損ない、公共財産を公正、公平かつ効率的に管理し、公共の利益のために再分配するという憲法上の義務に違反している。
(4)2024年パナマ港湾取扱貨物量に占めるハチソンの影響
パナマの主要な港湾は、取扱貨物取扱量(重量(トン)ベース)が多い順に、SSA Marine MIT、バルボア、CCT(コロン・コンテナ・ターミナル)、PSA(PSA Panama International Terminal)、クリストバルである。
上記5港湾の取扱貨物量のうち、41%は、中国(香港)企業のハチソン系列のパナマ・ポート・カンパニー(PPC)が運営する港湾(バルボア、クリストバル)で取り扱われている。上記5港湾の取扱貨物(重量(トン)ベース)の大宗(平均96%)は、コンテナ貨物が占める。また、コンテナ貨物のうち、約90%(TEUベース)は積替え貨物である。
(5)不法移民を本国へ送還する作戦が開始される
 パナマ共和国と米国の間で、大量の不法移民に対処し、両国のパートナーシップを強化することを目的として署名された覚書(MOU)の枠組みに基づき、パナマを経由して米国から不法移民を本国に送還する作戦が開始された。2月12日、米国から送還された移民119人を乗せた最初の飛行機がパナマ・パシフィコ空港に到着した。移民の国籍は次の通り:イラン(12人)、ウズベキスタン(19人)、トルコ(3人)、中国(33人)、ベトナム(9人)、インド(35人)、ネパール(3人)、パキスタン(2人)、スリランカ(1人)、アフガニスタン(2人):合計119人で、女性37人、男性82人。
 パナマで発生する費用も含め、米国から第三国への移民の送還にかかる費用は米国が負担する。 パナマと米国の協力により、本年1月にダリエン地域を通過した移民は、昨年の同時期と比べて90%以上減少した。
 

パナマ経済(2025年2月報)