パナマ経済(2025年1月報)

令和7年3月25日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                                                                                
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主な出来事
●メルコスール参加、議会承認
●政府の債務は2024年末までに537億ドルに
●経済成長率、2025年に3.3%、2026年に4.3%予想
●トクメン空港、2024年の利用者数が1,900万人を突破
 

1 経済全般、見通し、経済指標等

(1)メルコスール参加、議会承認
 パナマ議会は2024年12月に署名されたメルコスールとの経済補完協定第76号を承認した。これにより、パナマは中米で最初のメルコスール加盟国となった。メルコスールはアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ブラジル、ボリビアで構成され、世界第5位の経済規模を誇る。この協定は貿易の促進、段階的な統合の円滑化、パナマの地域的影響力の強化を目的としている。パナマは貿易の多様化、投資の誘致、地域協力の強化を戦略的に推進することができるようになった。
(2)ムリーノ大統領、マッタレッラ・イタリア大統領と会談
 ムリーノ大統領は、イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領とキリナーレ宮殿で会談し、イタリアを通じてパナマと欧州連合(EU)の関係を強化し、EUのタックスヘイブン(租税回避地)ブラックリストからパナマを除外する支援を求めた。ムリーノ大統領は、国連安全保障理事会での非常任理事国としての役割を含め、パナマの国際貢献を強調し、ダビ鉄道や物流開発などのプロジェクトを通じて二国間貿易を強化することを提案した。両大統領はまた、麻薬密売やウクライナ、ベネズエラの危機を含む世界的な安全保障問題についても話し合った。
(3)ムリーノ大統領、ファム・ミン・チン・ベトナム首相と会談
 ムリーノ大統領は、ベトナムのファム・ミン・チン首相と会談し、外交樹立50周年を記念して、貿易、文化、教育、科学、安全保障における二国間関係の強化を図った。協議では、ベトナムのラテンアメリカおよびカリブ海地域への輸出を促進するために、コロン自由貿易区にベトナムの貿易事務所を開設するというパナマの提案や、パナマにおけるVinfast社の電気自動車の流通についても話し合われた。さらに、ムリーノ大統領はベトナムの先進的な米生産技術、特に持続可能な稲集約システム(SRI)に関心を示し、ベトナムは、さらなる知識の交換と協力のために、パナマに貿易使節団を派遣することを約束した。
(4)政府の債務537億ドルに
パナマ政府の債務2024年末までに537億ドルに達し、GDP比61.6% を占め、2023年のGDP比56.4%から上昇した。政府の2025年から2029年までの戦略計画では、財政改革、税収の増加により、2029年までに債務の対GDP比率を56%に引き下げることを目指している。しかし、アナリストからは、外部資金への依存、金利負担の増加など、根強いリスクが指摘された。
(5)パナマの経済成長率、2025年に3.3%、2026年に4.3%予想
 国連の報告書によると、パナマの経済は2025年に3.3%成長し、ラテンアメリカおよびカリブ海地域の平均2.5%を上回る見通しである。これは、個人消費、金融政策、資本流入、輸出の伸びが原動力となっている。また、国連は2026年のパナマの成長率を4.3%と予測している。
 

2 通商、貿易、国際経済関連

(1)パナマの水産物輸出が順調に増加
 パナマ水産資源庁(ARAP)は、2024年に水産物輸出が大幅に増加し、FOB価格で2億4,680万ドルに達したと報告した。これは2022年比で42.98%の増加となる。輸出額トップはエビで9,250万ドル、ここ3年間で69%の成長率を記録した。次いで、生鮮および冷凍魚のフィレが7,860万ドルで、40%の増加となった。魚粉と魚油も著しい成長を見せ、業界の多様化に貢献した。ARAPは、品質、持続可能性、競争力に対する同業界の取り組みを称賛し、オープンな対話、技術支援、持続可能な開発政策を通じて支援を行うと述べた。
(2)パナマとチリ、貿易関係強化
 パナマとチリは、現行の自由貿易協定(FTA)の枠組みの下、農業貿易を強化するための衛生植物検疫措置委員会の会合を開催した。会合では、両国は技術、有機認証、リスクの低い製品に対する遠隔検証などの二国間協力の強化に合意した。ムリーノ大統領は、ダイナミックな二国間関係の促進と国際貿易協定の利益の最大化に尽力していると述べた。
(3)ドノソにおける鉱業の影響を精査
 環境省(MiAmbiente)は、コロン県ドノソにあるコブレ・パナマ鉱山の独立した包括的な環境監査を実施するための重要なステップとして、環境条件に関する公開協議プロセスを開始した。当該協議では、環境監査の環境面を強化するために、環境保護団体、地域社会、学識経験者、民間部門の利害関係者、および一般からの参加を求めている。監査の目的は、環境への影響を評価し、緩和策を提案し、地域の生物多様性を回復するための環境に配慮した閉山コストを決定することである。
(4)SEM・EMMA制度利用企業による投資増加
 2024年、新たに12社が多国籍企業本部(SEM)に登録し、2,420万ドルの初期投資を行った。さらに、新たに19社がEMMA制度に参加し、1億6,340万ドルの投資を行った。SEMとEMMAは、パナマの戦略的な立地、交通の便、財政上の優遇措置を活用し、半導体やニアショアリングの機会といった分野の誘致を目指している。主な対象産業には、テクノロジー、ロジスティクス、金融サービス、製薬などが含まれる。現在、これらの制度は1万人以上の高品質な雇用を支えており、貿易産業省が厳格なコンプライアンス基準に基づいて管理している。
(5)国際原子力機関(IAEA)事務局長がパナマを訪問
 1月18日、外務省は、ラファエル・グロッシ国際原子力機関(IAEA)事務局長がパナマを訪問し、パナマ外務省で講演するとともに、保健省及び農業開発省との間の協力覚書に署名した
 

3 パナマ運河、海事、インフラ関係

(1)トランプ大統領の要請についてパナマが反応
 バスケス・パナマ運河庁(ACP)長官は、現在の料金は法外であると主張したトランプ米国大統領の声明に対し、「ルールはルールだ」と強調し、いかなる国に対しても例外を設けることは中立条約および国際法に違反し、混乱を招くことになると述べた。トランプ大統領は、ソーシャルメディアや公の場を通じて、運河の米国への返還を要求すると脅し、軍事介入も排除しないと述べた。バスケス長官は、中国が運河の運営を管理しているという疑惑を否定し、「中国は関与していない」と述べた。また、アチャ外相は、パナマの運河に対する主権は「交渉の余地がない」と述べた。
(2)ムリーノ大統領、マースクCEOと会談
 ムリーノ大統領は、ダボスで開催された世界経済フォーラムの期間中に、A.P.モラー・マースク社のCEOであるヴィンセント・クレア氏と会談し、パナマの商業競争力の強化と港湾およびロジスティクスインフラの近代化について協議した。会談では、パナマの戦略的かつ地理的な位置を活かした持続可能な港湾運営、およびパナマの開発優先事項に沿った革新的なサプライチェーンソリューションの導入について話し合われた。この会談では、効率性と国際貿易の促進を目的としたインフラの近代化と先進技術の統合におけるマースクの役割が強調された。
(3)パナマ海事局、パナマ船籍の審査厳格化
 パナマ海事局(AMP)は、米国財務省外国資産管理局(OFAC)が米国制裁リストに挙げたパナマ船籍の船舶68隻の登録抹消手続きを開始した。これは、パナマ船籍を国際制裁に適合させることを目的とした、2024年の行政命令第512号に基づくより広範な取り組みの一環である。この取り組みは、ロシアの「ダーク・フリート」や英国が制裁対象としている船舶にも焦点を当てている。2024年12月時点で、AMPはすでに17隻の船舶の登録を抹消しており、さらに17隻が手続き中であり、追加の68隻が現在対象となっている。2024年10月時点で8,459隻の船舶が登録されていたパナマ船籍船は、悪用を防ぐために厳格に審査されている。
(4)トクメン空港、2024年の利用者数が1,900万人を突破
 トクメン国際空港のホセ・アントニオ・ルイス・ブランコ総支配人によると、2024年の同空港の利用者数は1,900万人を超えた。2025年には、同空港の利用者数は2,300万人から2,400万人に達する見込みである。ルイス総支配人は、滑走路とプラットフォームの修理に6,000万から7,000万ドルを投じる2件の入札を実施すると明らかにした。また、パナマ工科大学による技術調査では、オデブレヒト社が建設した第2ターミナルに構造上の欠陥があることが判明し、同社に対する訴訟が提起されたと発表した。さらに、以前パナマへのフライトを運航していた中国国際航空の復帰も模索していると述べた。
(5)パナマ・ダビッド鉄道建設計画のマスタープラン更新に係る業務を契約
 大統領府は、同府鉄道事務局と米国企業のAECOM USA社との間でパナマ・ダビッド鉄道建設計画のマスタープラン更新に係る220万ドルの契約を締結したと発表した。マスタープランの更新には、パナマ・パシフィコとパナマ市を結ぶ区間や、ダビッド市からコスタリカ国境パソ・カノアスまでの区間など、当初の2019年のマスタープランにはなかった事項が対象となっている。
(6)2024年にダリエン地域を通過した非正規移民は、30万人
 パナマ移民局は、パナマとコロンビアとの国境に位置するダリエン地域を通過する非正規移民について、2024年の通過者数が過去2番目に多い30.2万人であると発表した。通過者のうち、一般に脆弱な立場に置かれている女性と子供が49%を占めている。
(7)英国との間でパナマ・ダビッド鉄道建設計画に係る協力覚書に署名
 1月20日、外務省は、英国との間で、パナマ・ダビッド鉄道建設計画に係る資金調達と効果的な実施を支援するための協力枠組を確立することを目指した協力覚書に署名した。

パナマ経済(2025年1月報)