パナマ経済(2024年12月報)
令和7年2月18日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
担当:小竹書記官
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FAX:507-263-6019
主な出来事
●パナマがメルコスールの準加盟国に
●国際航空運送協会が航空輸送の価値に関する報告書を発表
●トクメン空港利用客、11月までに1,750万人超え
●パナマ~コロンビア間送電線接続プロジェクトに関する当局間会合の開催
1 経済全般、見通し等
(1)パナマがメルコスールの準加盟国に12月6日、パナマはメルコスールの準加盟国となり、2億7,100万人を超える人口と4兆5,000億ドルの経済規模を誇る市場へのアクセス権を得た。加盟により、パナマは貿易面で優遇措置を受けられ、輸出を拡大する機会を得る。また、外国からの投資を誘致し、インフラを強化し、国際貿易の架け橋としての地位を高めることができる。一方でパナマはメルコスールに対して、パナマ運河を軸とした物流ハブ、23の貿易協定を通じた世界市場へのアクセス、および炭素取引システムへのアクセスなどを提供する。
他方、パナマの農業セクターが交渉の透明性の欠如と、地元農業への潜在的な影響に懸念を示している。パナマ米穀生産者連合(Fapagrap)は、政府からこの統合の利点についての詳細な説明がないことへの不安を表明し、パナマの小規模生産者がメルコスールのより大きな経済圏との競争に苦戦するのではないかと懸念している。彼らは、農業開発大臣および大統領との緊急会議を要請し、明確な説明を求めるとともに、農業セクターを保護する対策を確保しようとしている。実業家たちも、パナマがメルコスールに商品を輸出するのは「非常に難しい」と考えている
(2)パナマはフィッチによる投資適格を依然として回復できず
12月17日、フィッチ・レーティングスはパナマ国債の格付けBB+の継続を決定した。パナマは投資不適格の格付けを3月以来回復できていない。フィッチは、パナマの一人当たりGDPの高さ、低インフレ率、ドル化に支えられたマクロ金融の安定性、そして物流とパナマ運河に牽引された堅調な中期的成長見通しに基づき、見通しは「安定」を維持した。フィッチによると、パナマの公的債務は2024年末までにGDP比63.5%に達すると予想されており、高額な債務返済コスト、狭まる公共収入、ガバナンスの課題が、同国の投資適格への復帰を妨げている。ムリーノ大統領は、社会保障改革、財政の信頼性、公的債務比率の削減など、増大する課題に直面している。
(3)パナマ政府、収入が予想を17億7,100万ドル下回る
2024年1月から11月までの政府の収入は62億ドルとなり、予測額を17.7億ドル下回った。専門家は、税収の低さ、特に15億ドルに上る高い脱税率を指摘している。ムリーノ大統領は、税の順守を改善するために検査の取り組みを強化している。アナリストらは、パナマの税制の近代化と世界的な財政基準との整合性を求め、外国からの投資を誘致する同国の競争力を維持しながら改革を進めることを求めている。
2 経済指標
(1)公的部門の給与支出が財政を圧迫パナマにおける失業率は9.5%へと悪化し、2023年8月以来54,107人の雇用が減少した。また、非正規雇用率も49%に上昇した。専門家は、高金利と生産部門への融資の減少が原因であるとし、財政規律、民間企業への投資、持続可能な雇用を促進し、赤字を削減するための改革を強く求めている。一方で、政府は今年、4,736人の常勤職員を新たに雇用し、公共部門の人員は10月時点で259,856人に達し、給与支払額は月々4億3,340万ドルに上った。フィッチやムーディーズなどの格付け機関が国家の給与支出の削減を呼びかけているにもかかわらず、政府の人件費は増え続けている。
(2)2023年のパナマへの外国直接投資は3.5%増加
2023年、パナマは648億ドルの外国直接投資(FDI)を誘致し、2022年と比較して3.5%増加し、2017年以来最高の数値を記録した。 投資のほとんどはアメリカ(464億ドル)からで、ヨーロッパ(135億ドル)とアジア(45億ドル)が続いた。
(3)国際航空運送協会が航空輸送の価値に関する報告書を発表
12月10日、国際航空運送協会(IATA)は、航空輸送の価値に関する報告書(THE VALUE OF AIR TRANSPORT TO PANAMA)を発表した。報告書において、航空輸送がパナマ経済に寄与する影響は、直接効果として、GDPの約1.2%に相当する年間10億ドルの経済効果と2万2,800人の航空部門での直接雇用、間接効果として、GDPの約8.2%に相当する年間68億ドルの経済効果と約19万3,800人の直接・間接雇用を創出しているとした。また、航空産業に支えられた観光業は、パナマのGDPに49億ドルの経済効果と14万6,200人の雇用を創出しているとした。さらに、観光客による消費活動を通じて、年間90億ドルの経済効果を創出していると推定されるとしている。
パナマは、国際線の発着が2023年の発着数の90%を占めており、利用者は260万人であった。また、ラテンアメリカの国際航空旅客のうち、同地域で最大となる全体の57%にあたる約150万人がパナマを利用した。北米の約79万人(全体の30%)、ヨーロッパの約26万人(全体の10%)がこれに続く。2014年以降、パナマの国際航空接続指数はラテンアメリカ地域内で38%、他の地域との間で51%増加した。パナマの場合、海外からパナマに到着した旅客の71%が、別の国を目的地としている。
また、2023年には12万100トンの航空貨物がパナマの空港を経由して輸送された。
3 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)多国籍企業本部制度の利用企業数が185社に2024年、パナマは多国籍企業本部(SEM)制度に12社を新たに迎え入れ、2,420万ドルの投資を誘致し、雇用と経済成長を促進した。注目すべき新規参入企業には、ラテンアメリカとアジアでの事業拡大を目指すハイセンス(中国)や、パナマを拠点に14カ国で事業を展開するCMI Alimentos(グアテマラ)、総合商社の伊藤忠商事(日本)などがある。SEM制度には現在、テクノロジー、再生可能エネルギー、運輸、アグリビジネス、製造などさまざまな業界から、185社が参加しており、2007年の制度創設以来、SEM企業は約11,000人の直接雇用と25,000人の間接雇用を生み出しているとされている。
(2)ファースト・クァンタム、江西銅業の夏漢俊氏とを取締役に
2024年12月24日、コブレ・パナマの親会社であるファースト・クァンタム・ミネラルズ社は、第2位株主である江西銅業との株主間協定に従い、江西銅業で20年以上の経験があり、マーケティングと貿易のリーダーシップ経験がある夏漢俊(ハンジュン・シア)氏を新たな取締役に任命したと発表した。この発表は、パナマ最高裁が同社の契約を違憲と宣言した2023年11月27日以降閉鎖されているドノソ銅鉱山の再開に向け、CEOのトリスタン・パスカル氏がドナルド・トランプ次期米大統領の支援を求めてから3日後のことだった。また、鉱業のガバナンスと投資で25年以上の経験を持つ財務アドバイザリーパートナーのフアニータ・モンタルボ氏も取締役に加わった。
(3)トクメン空港利用客、11月までに1,750万人超え
トクメン国際空港は、2024年1月から11月までの利用者数が1,757万人に達し、2023年の同時期と比較して8%増加したと発表した。11月だけでも、161万人が利用した。71%が乗り継ぎである。利用客が多かった路線は、ボゴタ、マイアミ、メデジン、サンホセ、プンタカナだった。離着陸回数は139,340回で、2023年と比較して9,308回増加した。
(4)パナマ、NASAと協定を締結、宇宙探査に参加
パナマは、国際的な宇宙探査への取り組みにおいて重要な節目を迎え、NASAのアルテミス協定に加盟する中米初の国となった。パナマのホセ・ミゲル・アレマン大使とNASAのビル・ネルソン長官がワシントンで署名した協定により、平和的な宇宙探査と、月や火星に関するプロジェクトにおけるパナマとNASAの協力関係が確立した。この合意により、気候変動、生物多様性のモニタリング、自然災害管理などの分野における応用が期待される。ネルソン氏は、パナマ運河を通じてNASAのミッションを促進してきたパナマの歴史的な役割を強調し、2025年1月に同国を訪問することを発表した。
4 パナマ運河、海事関連
(1)パナマ運河の舵取りを担う25年間2024年12月31日、パナマはトリホス・カーター条約に基づきパナマ運河の管理を引き継いでから25周年を迎えた。パナマが運営を引き継いで以来、パナマ運河はパナマにとって重要な経済的推進力であるとともに、繁栄を続け、2002年の区間制料金システムや、2016年に運用が開始された拡張運河など、大幅な改善が図られてきた。今日、運河は依然として世界貿易の重要な要素であり、パナマに多大な収益をもたらしている。
(2)パナマ運河、2024年度の国庫納付額は24億7,000万ドル
パナマ運河は2024年度(2023年10月~2024年9月)の会計期間を終え、最終的な利益から24億7,000万ドルを国庫に納めた。干ばつによる通航制限もあり、2023年度の納付額より7,400万ドル少ない額となった。運河庁の計画では、2025年度には前年比3億1,900万ドル増加の27億8,900万ドルを納付する見通しである。
(3)パナマ外務次官が国際海事機関(IMO)事務総長と会談
12月14日、ゲバラ・マン外務次官(マルチ・協力担当)は、アルセニオ・ドミンゲス国際海事機関(IMO)事務総長と会談し国際海事分野におけるパナマの地位を向上させ、課題に対応するための戦略について意見交換を行った。
インフラ関係
(1)パナマの人権状況に関する2024年報告書を発表
12月4日、オンブズマン事務所は、パナマの人権状況に関する2024年報告書を発表した。同報告書では、保健、教育、飲料水、廃棄物管理などの不可欠なサービスに依然として重大な欠陥があることや、農村部と準都市部の教育格差、ジェンダーギャップ、廃棄物管理などの課題を指摘するとともに、政府への対応等を要請した。
(2)パナマを介した中米への陸路による輸送を実施
12月7日、パナマ海事庁(AMP)は、コスタリカ・カルデラ港が飽和状態であることを受け、コスタリカ向けの貨物がパナマの港湾を介して陸路でコスタリカへ輸送されていると発表した。マックス・フロレス・AMP港湾・海事補助産業局長は、パナマは強固な物流システムを維持し、他国の不測の事態に対応できることを改めて証明するとともに、パナマのインフラは中米地域の基本的な柱であることが証明され、年間を通して、米国、メキシコ、コロンビア、ブラジル、ジャマイカ、ハイチなど、同時多発的なニーズに対処してきたと述べた。
(3)パナマ~コロンビア間送電線接続プロジェクトに関する当局間会合の開催
12月16日、パナマ外務省は、パナマ~コロンビア間送電線接続プロジェクトに関し、両国のエネルギー、環境、規制、財政当局により、会合が開かれ、両国間の電力相互接続プロジェクトが再開された。本会合により、コロンビアとパナマは、電力連系プロジェクトを再開することで、国民に利益をもたらし、資源を最適化し、地域の持続可能性を推進する統合エネルギー市場を強化する決定を再確認したと発表した。
(4)大西洋まぐろ類保存条約改正議定書にかかる法案の承認
12月17日、大統領府は、閣議において、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書を定める法律案を承認したと発表した。なお、パナマ共和国は、1998年11月10日法律第74号によって承認され、1998年11月17日付け官報第23673号で公布された大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約の締約国である。
経済指標(2024年12月)