経済月報(2024年11月報)

令和7年1月15日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                                                                                
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●ムーディーズ、投資適格格付けを維持するもアウトルックを変更
●2025年は平均給与3.8%増加見込み
●パナマ運河、水不足のリスクが残る
●インディオ川へのダム建設進捗
 
 

1 経済全般、見通し等

(1)ムーディーズ、投資適格格付けを維持するもアウトルックを変更
 格付け会社ムーディーズは、パナマの投資適格格付けBaa3を維持したが、財政課題の悪化を理由にアウトルックをネガティブに引き下げた。同国の債務は2024年10月にGDP比61.6%に達し、財政赤字はGDP比6%を超えた。債務コストの上昇と、社会保障問題やドノソ銅山の創業停止にともなう訴訟リスクが同国の評価を下げている。
(2)クリーンエネルギー
 パナマの電力は現在98%が再生可能エネルギーで、水力発電所が92%、太陽光発電が6%を占め、環境への影響を軽減している。一方で、電気料金の削減はほとんどなく高止まりしており、専門家は、再生可能エネルギーの節約分を利用者に還元し、再生可能エネルギーの発電がピークに達している時間帯に消費する電力にインセンティブを与える仕組みを提案している。しかしながら、水力発電が大部分を占める場合、気候変動の影響を受けやすく、水量が減少すれば再び化石燃料への依存度を増やすことになるため、エネルギー源の多様化や、蓄電システムと合わせて改善していく余地がある。
(3)米国による対中課税のパナマへの影響
 パナマの長年の戦略的パートナーである米国は最近、中国が投資したペルーの新港チャンカイを通過するいかなる国の製品にも60%の関税を課すと警告した。この動きは、経済的にも軍事的にも世界的影響力を拡大しつつある中国に対する米国の懸念を反映したものだ。パナマ運河では、通過する貨物の21.4%を中国発着貨物が占めている。専門家は、パナマがこれらの大国の間で微妙な立場にあり、地政学的な緊張を乗り越えながら多様な国際的パートナーシップを育む必要があることを強調している。また、アナリストたちは、パナマの主権を維持し、両大国とバランスの取れた外交を行うことが、パナマの長期的な戦略的利益に不可欠であると説明している。
 

2 経済指標

(1)パナマシティのアパート、ラテンアメリカの都市では安価
 アルゼンチンのトルクアト・ディ・テラ大学は、9月のデータに基づき、ラテンアメリカ8カ国13都市の中流以上のアパート(マンション1部屋)の販売価格を分析した報告書を発表した。この報告書によると、パナマシティのアパート販売価格は、1平方メートルあたり1,762ドルとなり、ラテンアメリカ諸国の都市の中では比較的安価となった。他の安価な都市には、エクアドルのキト(1,215ドル)や、アルゼンチンのコルドバ(1,528ドル)、同国のロサリオ(1,547ドル)などがある。一方、最も高価な都市には、ウルグアイのモンテビデオ(3,454ドル)、メキシコのメキシコシティ(2,706ドル)、同国のモンテレイ(2,561ドル)、アルゼンチンのブエノスアイレス(2,540ドル)などがランクインした。
(2)2025年は平均給与3.8%増加見込み
 調査会社マーサーの最新調査結果によると、ハイテク、ライフサイエンス(製薬、ヘルスケア)、エネルギー部門などの企業を中心に、2025年に平均3.8%の昇給を見込んでいることが明らかになった。昇給を見込む背景には、個人の業績や市場競争力、会社の良好な財務状況などである。しかし、労給与決定が公正かつ公平であると考える労働者は34%に過ぎず、男女間の賃金格差は依然として懸念事項であり、パナマの女性賃金は男性より32%低く、これは中南米地域で最も悪い水準である。この問題は管理職や専門職レベルにも及んでいる。
(3)パナマへの観光客は増加傾向
 2024年9月末時点でパナマへの観光客は185万人を超え、167万人だった前年同期と比較して、11.2%増となった。特に夏期休暇シーズンである7月から8月、クリスマス・年末年始休暇の12月から1月に観光客が多くなっている。
 

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)パナマの民間セクター、水管理機関の設立を主張
 パナマの民間セクターは、水資源を効率的に管理する中央当局を設立し、現在パナマ運河庁と上下水道庁(IDAAN)に分かれている機能を統合するよう要望している。キャパック社のアレハンドロ・フェレール社長は、「水の安全保障、アクセス、衛生」フォーラムで、普遍的な水へのアクセス、戦略的貯水池、資源を維持するためのインフラ整備の必要性を強調した。イカサ運河担当大臣は、水道施設の改修という短期的な計画と、ガバナンス強化という長期的な目標を強調した。IDAANのルティリオ・ビジャレアル所長は、一人当たり毎日平均100ガロンという過剰な水の消費を減らすよう呼びかけた。水ガバナンスの改善は、国家の持続可能性とパナマ運河の運営に不可欠であると考えられている。
(2)基本的食品バスケット価格は1ヶ月当たり285.20ドル
 消費者保護・公正取引庁(ACODECO)の報告によると、1世帯あたりの基本的な食品バスケットの価格は8月末時点で285.20ドルとなった。パナマ市とサンミゲリート市にある52のスーパーと36のファストフード店(含むミニスーパーや食料品店を含む)の合計88店舗が調査対象で、洗剤やパーソナルケア製品、ベビー用品は含まれていない。パナマの平均最低賃金は636.80であり、収入の多くが食費に消える計算となる。
 

4 パナマ運河、海事関連

(1)パナマ運河、水不足のリスクが残る
 パナマ運河の貯水池の水位は2024年の雨季によって回復しつつあるが、流域に降った雨水を自然に貯留する役割を担っている帯水層には十分な水が溜まっていない。特にチャグレス川流域の帯水層は、住民への飲料水の供給とパナマ運河の運営に不可欠なものであるため、その水位が低下すると、地域社会への水の供給と、世界貿易の5%を支える運河の運営の両方が危険にさらされることになる。パナマ運河の水源を研究しているアヤックス・ムリージョ・ブルゴス氏によれば、ガトゥン湖やアラフエラ湖などの表面上の推移は上昇しているが、帯水層は安定した貯水量を維持できておらず、これは2013年以降、統計的に運河の流域で十分な降雨が記録されていないことに起因しているという。
(2)インディオ川へのダム建設
 バスケス運河庁長官は、「パナマ運河通航の安定性を高め、持続可能性を確保し、二酸化炭素排出量を削減し、パナマ運河によりパナマが多くの利益を取り入れることができるよう、新しい技術の訓練と教育を継続的に実行していく必要がある」と述べた。また、「運河の持続可能性の確保について、インディオ川に新たな貯水池を建設する案が進んでおり、影響を受ける地域の住民に適切な補償を行うための調査が90%完了している。」と報告した。約500世帯が影響を受ける見込みで、補償には影響を受けた家屋の建て替えや、新たな入植地の土地取得、道路やサービスインフラの改善などの地域社会事業なども含まれる。住民への補償は、影響を受けるすべてのコミュニティとの合意が得られれば開始される。現在の運河庁の計画では地域社会事業は2025年にも開始される予定で、この事業は約4年で完了し、ダム建設にさらに2年かかるため、全ての作業が終わるには少なくとも6年はかかる見込み。バスケス長官は、パナマ運河が同国の国内総生産の約30%を占めていることを強調し、「私たちは、国の予算のバルボア(ドル)1ドルにつき約20セントをパナマ運河から拠出しており、社会保障基金(CSS)の主要な拠出者であり、所得税にも貢献している」と強調した。さらに、大西洋と太平洋間の貨物輸送を補完するものとして、ガスパイプラインの建設など新たな事業を検討していると付け加えた。
 

5 インフラ関連

国際マングローブセンターに創設メンバーとして参画
 11月6日、国際マングローブセンターが設立され、パナマを含む18カ国が創設メンバーとなった。設立に係る調印式は、中国の広東省深センで行われた。

パナマ経済指標(2024年11月)