パナマ経済月報(2024年10月)

令和6年12月18日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                                                                                
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FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●パナマと中国間のFTA、2025年に協議再開の見込みか
●2025年のGDP成長率は5%、インフレ率2%
●パナマ・ダビッド鉄道建設計画、コスタリカ国境までの延伸を検討
●パナマ~コロンビア間送電線プロジェクトの再開に合意
 
 

1 経済全般、見通し等

(1)パナマと中国間のFTA、2025年に協議再開の見込み
 モルト貿易産業相は、パナマと中国間の自由貿易協定(FTA)の可能性について、2025年に協議が再開される可能性が高いと述べ、これまでの交渉が強固な基盤を築いたことに触れつつ、中国が当初提案した条件を再検討する前に、パナマのニーズと利益を再評価することの重要性を強調した。モルト貿易産業相は、特に中国への食肉やその他の製品の輸出において、パナマに大きな機会があると見ており、アジアやその他の地域の物流ハブとしてパナマが機能する可能性についても言及した。中国とのFTA交渉は2019年に開始されたが、新型コロナウイルスによるパンデミックにより中断され、すでに6年近く頓挫している。
(2)GDPの1%を科学技術に充当する法案が成立
 10月2日、パナマの国会の教育・文化・スポーツ委員会は、科学技術および研究に充当する公的支出を、2029年までに段階的にGDP比1%相当まで引き上げる法案第98号を承認した。ラテンアメリカでは平均してGDPの0.76%が科学技術に投資されているが、現在のパナマの投資額はGDP比0.15%に留まっており、パナマ経営者協会(APEDE)と科学技術革新局(SENACYT)が後押しし、投資額を増加させるための法案が成立した。
(3)経済財務省(MEF)は2024年の財政赤字が4.5%を超えると予測
 チャプマン経済財務相は、パナマは社会責任法で定められた財政赤字の限度を超え、2024年度はGDP比4.5%を超える32億から35億ドルの赤字になる見通しであるだと述べた。現在の歳入は、昨年比では若干上回っているものの、依然として予想を下回っており、政府は今年後半に13億8,700万ドル以上の支出削減を余儀なくされた。チャプマン経済財務相によれば、公的債務のコストが高く、債務返済に35億ドルが割り当てられ、パナマ運河の収益を上回っていると指摘した。
 

2 経済指標

(1)2025年のGDP成長率は5%、インフレ率2%
 チャプマン経済財務相は、IMFや世界銀行、国連経済社会局(CEPAL)の予測を基に、2025年の名目GDP成長率を5%、インフレ率を2%と予測した。
(2)パナマの総輸出額は昨年同期比で増加
 2024年の8月までの総輸出額(銅を除く)は8億6,060万ドルに達した。このうち、経済特区(コロンフリーゾーンやパナマ・パシフィコなど)からの輸出は前年同期比21%と大幅に増加し、2億2,320万ドルとなった。全体の輸出は4,250万ドル増加し、2023年から5.2%増加した。この成長を牽引した主な製品のトップはバナナで、エビ、サトウキビ糖、魚油、魚粉、医薬品などが続く。米国が主な輸出先であり、オランダ、台湾、インドが続いた。輸出の78.3%が既存の貿易協定を結んでいる国々向けであった。
 

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)高品質ロブスタコーヒーの国内生産
 パナマではアラビカ種のコーヒーが一般的だが、ロブスタ種の栽培も増えて来ており、スペシャリティコーヒーとして人気が高まっている。チリキ商工会議所によれば、主要な生産地はチリキ県、コクレ県、パナマ・オエステ県、コロン県であり、現在、パナマ・オエステ県のカピラ市では1,700の生産者がロブスタ種の生産に重点的に取り組んでいる。OBCロブスタコーヒー協会のイヴァン・モレノ会長は、適切な貯蔵、低技術の農場、労働力不足などの課題に対処し、ロブスタ種をパナマのコーヒー産業の将来を担う重要な品種として位置づけたいと述べた。
(2)トクメン空港第2ターミナルの容量拡大に3,000万ドルを投資
 パナマのトクメン国際空港は需要が増加しており、2024年の利用客は1,900万人に達する見込みで、2025年には2,300万人を超えると想定されており、キャパシティーの拡張が必要となっている。足下ではエミレーツ航空、カタール航空、そしてヴァージン・アトランティック航空などの、新規航空会社の誘致活動も進行している。ブランコ・トクメン空港ゼネラルマネージャーは、今後2年以内に8~10の新しい搭乗ゲートが必要であるとし、ターミナル2の搭乗ゲートの新設に3,000万ドルを投じると述べた。このプロジェクトは滑走路の補修や第3滑走路の建設計画と並行して、来年にも着工される予定である。ブランコ・ジェネラルマネージャーは、将来の需要に対応し、より多くの航空会社を誘致するためにはインフラの強化が不可欠であると説明した。プロジェクトには、ターミナル2の構造上の問題への対処や、シャトルバスによるターミナル1とターミナル2間の移動の改善も含まれている。また、トクメン空港は8億ドルから12億ドルをかけて第3滑走路の建設も検討しており、資金調達のために、債券発行や民間企業との利権契約などの案が候補にあがっている。
 
 

4 パナマ運河、海事関連

(1)パナマ運河、水不足ながらも目標収入を上回る
 パナマ運河は、干ばつにより通航量が通常時より21%減少したにもかかわらず、2024年度の暫定的な収入を49億8,600万ドルと報告し、目標を2億900万ドル上回った。この増収は、運営の効率化とコスト削減、オークション制度、料金システムの値上げによって達成された。また、水不足は通航料の値上げにつながり、4億5,000万ドルの特別収入をもたらした。バスケス運河庁長官は、十分な水量があれば、さらに2,000隻の船舶が通過し、8億ドルの追加収入を得ることができたと指摘した。2025年については、運河は12,582隻の通過と56億2,400万ドルの営業収入を見込んでおり、十分な資源を確保するための水供給プロジェクトが継続的に必要であるとしている。
(2)物流閣僚会議を再開
 10月16日、ムリーノ大統領は、物流閣僚会議と国家物流戦略の再開を発表した。本戦略は、税関システムの近代化、港湾コンセッション、道路インフラの改善(ドライ・キャナルや物流回廊の実現)、パナマ・ダビッド鉄道建設計画などを明確にするものである。
(3)国連貿易開発会議が海上輸送に関する報告書を発表
 10月22日、国連貿易開発会議(UNCTAD)が、海上輸送に関する報告書「REVIEW OF MARITIME TRANSPORT 2024」を発表した。同報告書では、パナマ運河やスエズ運河などの海上交通の要衝(チョークポイント)が、地政学的な緊張と気候変動による圧力の高まりに直面しており、輸送ルートの延長や、サプライチェーンへの負担、コストの上昇を引き起こしているとともに、世界の貿易量の80%以上が海上輸送されており、食料安全保障やエネルギー供給、世界経済にも影響を及ぼしていることを指摘している。
 

5 インフラ関連

(1)パナマ・ダビッド鉄道建設計画を公共事業と認定
 10月15日、パナマ・ダビッド鉄道建設計画を公共事業とすることが閣議で承認された。また、ムリーノ大統領は、経済財務省に対して、同事業の調査に必要な予算措置を行い、政府の公共投資五カ年計画に組み込むよう指示した。
(2)パナマ・ダビッド鉄道建設計画のルートをコスタリカ国境まで延伸
 10月17日、ムリーノ大統領は、パナマ・ダビッド鉄道建設事業をコスタリカ国境の都市パソ・カノアスまで延伸する検討を行うと発表した。また、本プロジェクトの事業費は40億ドルから45億ドルと見積もられており、プロジェクト実施に向けて、法的、経済的、財政的な検討などが順調に進んでいると述べた。
(3)サン・ミゲリート市ケーブルカーのケーブルカー事業に係る環境影響評価の入札を一時停止
 パナマ・メトロ公社は、サン・ミゲリート市ケーブルカーのケーブルカー事業に係る環境影響評価の調査を行う事業者を選定する入札プロセスを停止した。同公社は、調査が環境影響の評価項目が適切かの技術的検証を行うためと説明した。
(4)パナマ~コロンビア間送電線プロジェクトの再開に合意
 10月30日、国家エネルギー庁(SNE)は、パナマ・コロンビア両政府が、15年前に計画された二国間電力接続プロジェクトを再開するとともに、具体的な行動計画を定めるために、12月に会合を開催することで合意したと発表した。本プロジェクトは、全長約500キロメートルの送電線で400メガワットの電力を供給するもので、2009年の情報によると5億ドル以上のプロジェクトである。
 
パナマ主要経済指標(2024年10月)