パナマ経済(2024年8月報)

令和6年12月11日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                             
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FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●パナマ、歳入増と補助金削減の課題に直面
●パナマとコスタリカ、経済統合を強化へ
●トクメン国際空港、旅客数が1,110万人超す
●パナマ運河、インディオ川コミュニティーの国勢調査を開始
 
 
 

1 経済全般、見通し等

(1)パナマ、歳入増と補助金削減の課題に直面
パナマは経済規模に比して低い税収に直面しており、2024年はGDPの4%以上に相当する、34億7,540万ドルの財政赤字が予測されている。経済成長にもかかわらず、税収が減少しているため、チャプマン経済財務大臣は、予算の歳入予測が非現実的であったと認めた。アナリストやエコノミストは、パナマは増税する代わりに、徴税効率を改善し、免税を見直し、課税ベースを広げるべきだと指摘している。現在、パナマの税収はラテンアメリカで最も低く、GDPのわずか8.5%である。また、購買力や投資に影響を与えることなく財政収入を増やすために、労働非正規雇用の削減、徴税プロセスの強化、経済の多様化を推奨している。
(2)パナマとコスタリカ、経済統合を強化へ
8月23日、コスタリカのチャベス大統領がパナマを公式訪問し、パナマのムリーノ大統領と会談した。両首脳は、外交、商業、農業、安全保障上の関係を強化することに合意し、両国が互いの経済を補完し、地域の繁栄を高めるために団結する可能性を強調した。また、ベネズエラの最近の選挙における民意の尊重を支持することを再確認し、さらに国境協力の強化やグローバルな半導体サプライチェーンに関する協力など、いくつかの戦略的合意がなされた。
(3)ディノ・モン氏が社会保障基金総局長に就任
8月8日、ムリーノ大統領は、ディノ・モン氏を社会保障基金(CSS)の新事務局長に任命したことを発表した。モン氏はリスク管理と保険分野で25年以上の経験を持つアクチュアリーで、エンリケ・ラウ・コルテス氏の後任となる。ムリーノ大統領は、モン氏のCSSでの豊富な経験を称賛し、診察予約の待ち時間の長さなど現在の問題を取り上げた。改革プロジェクトは10月に国民議会に提出される予定で、11月と12月には社会保障を議論する臨時議会が予定されている。モン氏は、破綻状態にある年金サブシステム、深刻な管理上・技術上の問題、巨額の投資を目前に控えたCSSにとって最も重要な時期に着任した。
 

2 経済指標

(1)JPモルガン、パナマの成長見通しをアップグレード
JPモルガンはパナマの成長見通しを修正し、2024年のGDP成長率の予測を従来の3.5%増から5.2%増へと修正した。背景には、内需と運河交通量の増加による予想以上の経済成長がある。同行は、楽観的な見通しとは裏腹に、高止まりする財政支出、社会的需要への圧力、社会保障基金の継続的な問題などの課題を指摘している。同行はまた、ムリーノ大統領の政権下での前向きな進展により、短期的には格付け引き下げの可能性は依然として低いと述べた。同行の予測は、2024年の成長率を2.5%から2.7%と予測するIMFや世界銀行などの組織のより慎重な予測とは対照的である。また、シティグループも7月にパナマの経済成長率を2.4%と予想したばかりだった。
(2)パナマの6月のインフレ率は前年同月比0.9%
2024年6月、パナマの年間インフレ率は前年比で0.9%となった。主な上昇項目は、住宅、水道、電気、ガス(2.6%)、レストラン、ホテル(2.5%)、交通(1.8%)であった。逆に、衣料・履物、通信は2.3%の減少、家具・家庭用品は0.6%の減少となった。
 

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)国交停止はパナマとベネズエラの貿易に影響なし
ムリーノ大統領は、ベネズエラの選挙後の危機に伴うパナマとベネズエラの国交停止は、二国間貿易にまだ影響を与えていないと発表、コロン・フリーゾーン(ZLC)が、ベネズエラ市場への供給を続けており、商流は安定していると述べた。2023年、ベネズエラはZLCからの再輸出の13.8%を占めるトップバイヤーであった。
(2)パナマの銀行預金口座数は650万以上
パナマ銀行監督庁によると、パナマの有効な個人銀行預金口座数は2013年10月の340万件から11年間で91%増加し、2024年7月までに650万件となった。主な要因として、2020年のパンデミックによる年金支給をデジタル化したことが挙げられる。銀行預金残高は2024年6月時点で、総額1,060億ドルに達し、前年同期比で約5%の伸びをみせた。銀行口座数が増える一方で、パナマでの取引の96%は依然として現金で行われているというデータもある。
(3)6月までの観光客数、為替収益、ホテル稼働率が増加
パナマ観光庁(ATP)によると、2024年上半期末までのパナマへの訪問者数は、前年同期比8.7%増の1,443,424人となった。主な市場は、中米(39.6%増)、南米(19.7%増)、北米(11.9%増)であった。また、2024年上半期のホテル稼働率は51.8%であった。この期間の観光による総収入は30億万ドルを超え、2023年から10.3%増加した。観光客はパナマに平均8日間滞在し、合計約2,135ドル、1日あたり約267ドルを消費する。
(4)中国との関係の可能性を生かすための統一努力が必要なパナマ
ムリーノ大統領の政権発足以来、パナマは中国との貿易関係を活性化している。政府は自由貿易協定(FTA)の締結を望んでおり、製品集荷センターの設立を模索している。中国側も世界的な物流ネットワークの拡大を目指し、パナマとの関係強化を望んでいる。2022年の対中貿易額は28.4億ドルに上り、2023年にはパナマの食肉加工会社が中国への食肉輸出の許可を得ている。また、中国はパナマ運河の第2位の利用国でもあり、さらにパナマコーヒーのプレゼンテーションや二カ国語書籍の出版を含む文化交流も進行中である。
(5)トクメン国際空港、旅客数が1,110万人超す
トクメン国際空港の2024年1月から7月における旅客数は2023年の同時期に比べ9%増加し、1,110万人を超えた。7月だけでも、同空港は前年比10.1%増の172万人以上の旅行者を扱った。一方で、旅客の69%はトランジットで、パナマへの出入国は31%に留まった。7月の上位目的地は、ボゴタ、マイアミ、メデジン、サンホセ、プンタカナであった。旅行者の44%を南米が占め、次いで北米が29%、カリブ海諸国が12%となっている。
 

4 パナマ運河、海事関連

(1)パナマ運河、通常に戻る
パナマ運河庁のバスケス長官は、インタビューで2024年9月1日から1日あたりの通航隻数を36便に増便し、運河を通常運航に戻すと発表した。また、ネオパナマックス船の最大喫水は50フィートに設定され、制限がなくなった。
(2)2025年度パナマ運河予算承認
パナマ運河庁(ACP)の2024年10月1日から2025年9月30日までの2025年度予算(当館注:運河庁の会計年度は政府の暦年とは異なる)は、総額56億2,350万ドルが議会によって承認された。この予算には、運河から国庫への拠出金として27億8,950万ドルが予定されており、2024年年度に見込まれる24億7,000万ドルの拠出金に比べ、3億1,800万ドルの増額となっている。この予算には2024年度と比較して3.5%の一般経費増加が含まれており、主な分野は個人サービス、サービス契約、手数料となっている。イカサ運河担当大臣は、キャナルの収益性が向上しており、62%の収益率を記録していることを強調し、この成功は8,000人を超える従業員の努力によるものだと述べた。
(3)パナマ運河、インディオ川コミュニティーの国勢調査を開始
2019年現在、インディオ川流域地域の総人口は2,264人と推定され、将来の貯水池プロジェクトによって影響を受ける可能性のある地域には約2,000人が居住していると推定されている。パナマ運河庁(ACP)は、住民数を正確に把握するため、新たな国勢調査を開始した。この取り組みは、家屋数、家族数、経済活動、企業や学校や教会などの施設を含むコミュニティー全体の動態に関する詳細な情報を収集し、コミュニティーのニーズを完全に把握し、影響を受けた住民に、現在よりも良い条件を提供することが目的である。

パナマ主要経済指標(月次ベース)2024年8月