経済月報(9月)

令和6年11月1日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
                                                                                                                
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FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●ムリーノ、差別的リストに反対の立場を表明
●パナマ新車登録台数9.3%増
●半導体非公式交流ネットワークセッション、12月にパナマで開催
●パナマ港湾のコンテナ輸送量は8月までで18.4%増加
●メトロ3号線事業のパナマ運河渡河部が着工
 
 

1 経済全般、見通し等

(1)格付け会社フィッチ、「パナマが短期的に投資適格を回復する可能性は低い」
 大手格付け会社フィッチのトッド・マルティネス・シニア・ディレクターは、ラテンアメリカ証券取引所(Latinex)の投資家フォーラムにおいて、パナマが短期的に格付けを回復する可能性は低く、財政赤字の削減には数年かかる可能性があると述べた。ムリーノ大統領率いる新政権は財政課題に取り組む意向を示しているものの、具体的な対策が待たれる。中期的には、物流、インフラ、観光セクターに牽引され、4.5%の経済成長が予測されているものの、フィッチは、経済成長だけでは信用格付けの改善には不十分で、労働市場の回復の遅れと、徴税率の低迷は依然として重要な懸念事項であると指摘した。
(2)ムリーノ、差別的リストに反対の立場を表明
 9月23日、ムリーノ大統領は、米国を拠点とする経済団体、米州評議会との会合で、パナマをマネーロンダリングハイリスク国などの差別的なリストに載せている国、あるいはそのようなグループに参加している国は、パナマとのいかなる取引も禁止されると述べた。これには、入札、契約、コンサルタントの役割から除外されることも含まれる。ムリーノ大統領は「ある国がパナマをリストに載せたり、パナマをリストに載せるようなグループに参加したりすれば、パナマとのビジネスはできなくなる。」と述べ、これらの行為は「パナマを誹謗中傷するものであり、不当である」と主張し、不当な扱いからパナマを守るためのキャンペーンを展開すると強調した。
(3)7月までに国が支払った賃金総額は29億ドルを超す
 パナマ政府が2024年1月から7月までに支払った賃金総額は前年同期の28億7,100万ドルを上回り、29億8,600万ドルに達した。コルティソ前大統領が就任した時点で、国家公務員は238,248人だったが、任期満了の2024年6月には262,330人となり、2019年7月から2024年6月までの間に、国家公務員給与は24,082人増加したことことになる。また、コルティソ前政権の5年間では累計237億6,600万ドルの給与が国家公務員に支払われ、これは過去5年間で増加した国の負債総額252億ドルに近い数字である。国家公務員への賃金総額増加は、歳入が大幅に減少する中で、財政悪化の一因となり、フィッチ社による投資適格格付けの取り下げにもつながった。ムリーノ大統領は、就任した最初の1ヶ月で国家公務員を3,471人削減し、7月単月の給与支給額は4億2,350万ドルで、前月比1,620万ドルの減少となった。
 

2 経済指標

(1)GDP拡大は昨年同期比で鈍化
 国立統計調査研究所(INEC)によると、2024年上半期のパナマ経済成長率は2.2%で、2023年同期の8.2%から低下した。GDPは前年比8億1,430万ドル増の386億4,570万ドルに達した。減速の原因は、選挙年であることもさることながら、鉱業生産の停止による影響が大きい。また、畜産業は6.6%減少し、パナマ運河収入も11.7%減少、コロン・フリーゾーンの活動も12.5%減少した。一方で、観光業ではホテル業が13.2%増加し、金融業は融資の増加により7%増加、漁業ではエビの輸出が82.9%と急増した。2024年の成長率は2.5%と引き続き緩やかで、2025年の成長率は3.0~4.5%と予測されている。
(2)パナマ新車登録台数9.3%増
 2024年1月から7月にかけて、パナマの新車登録台数は2023年比9.3%増の30,782台となった。これは過去5年間で最高である。SUVが15,822台登録され、15.1%増でトップであった。自動車登録が多かった月は4月と5月で、2月と6月は少なかった。燃料販売量は2.6%減の6億6,039万ガロンであった。
 

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)半導体非公式交流ネットワークセッション、12月にパナマで開催
 OECDは、半導体非公式交流ネットワーク(SIEN)セッションを12月10日と11日に開催する国としてパナマを選定した。モルト貿易産業相は、このイベントがパナマに貴重な見識をもたらし、戦略的パートナーシップを促進することで、パナマの競争力を強化し、この分野における雇用創出を促進する機会であると述べた。これは、パナマを半導体のハブとしするという政府の目標に沿ったものであり、インフラと人的資本への投資を目的とした米国国際技術安全保障イノベーション基金(ITSI)への参加によって支えられている。
(2)第四送電線とコロンビアとの接続を推進
 パナマのウリオラ・エネルギー庁長官は、エネルギー市場、再生可能プロジェクト、電動モビリティなど様々な分野に焦点を当てた2024~2029年国家エネルギー政策を発表した。主要プロジェクトには、9億ドルと見積もられる第4送電線計画と6億ドルのコロンビア-パナマ間の相互電力供給計画が含まれている。第4送電線計画は、ボカス・デル・トロからパナマ市まで371kmに及び、費用は官民パートナーシップ(PPP)によって資金調達される予定である。500kmに及ぶコロンビア-パナマ間の相互電力供給計画は両国の電力供給を改善し、光ファイバー通信システムを含んでいる。さらに、プンタ・チャメ近郊の洋上風力発電所や、7,000ヘクタールをカバーするリオ・アトのエネルギーシステムの計画、アジアに輸出するためのアンモニアに変換できるグリーン水素、サンブラスでの天然ガス埋蔵量の探査なども計画に含まれている。ウリオラ長官は、これらの取り組みが成功すれば、パナマのエネルギープロファイルが大幅に強化されると述べた。
(3)パナマ、観光客に再び無料保険を提供へ
 ムリーノ大統領は、ニューヨークのアダム・スミス経済自由センター主催のフォーラムで、パナマ政府が同国を訪れる観光客に無料で保険を提供するための準備を進めていることを発表した。パナマ全国観光商工会議所のマルティネス副会長は、この発表を前向きな動きとして賞賛した。同氏は、この優遇措置を導入していた前政権時代、観光業は顕著な成長を遂げており、観光業は農業やアーティスト、航空業界など経済のさまざまな分野にプラスの影響を与え、同国のGDPに貢献していると強調し、同制度が継続することを歓迎した。
(4)トクメンの8ヶ月間の利用者数は1,200万人
 トクメン国際空港の2024年1月から8月までの旅客数は、前年同期比9.16%増の1,276万人を超えた。8月だけで160万人を超える旅客が同空港を利用し、前年比8%増となった。トクメンは地域の重要なハブ空港として機能しており、73%の旅行者が乗り継ぎ地として利用し、180万人以上がパナマに入国した。
 

4 パナマ運河、海事関連

(1)パナマ運河の新たな会計年度始まる
 パナマ運河に水を供給しているガトゥン湖の水位が昨年に比べ改善され、運河は1日あたり36隻の船舶が通航できるようになり、2024年10月から始まるパナマ運河の新たな会計年度は干ばつのあった昨年より良い条件で始まる。当面の水不足は解消されたように見えるが、運河は2028年までに予想されるエルニーニョ現象に備える必要があり、課題に対処するための水源を模索している。また、デジタル化への取り組みや、環境に優しい船舶へのインセンティブ付与、船舶牽引車の電気化、新しいタグボート、太陽光発電所の整備によって、持続可能で環境に優しい物流ハブになることを目指している。
(2)パナマ港湾のコンテナ輸送量は8月までで18.4%増加
 パナマの2024年1~8月におけるコンテナ輸送量が大幅に増加し、前年同期比で18.4%増加し、6.4百万TEUを超えたと発表した。最も取扱が多かったのは大西洋側のマンサニージョ国際ターミナル(MIT)で、前年比9.6%増加し、1.8百万TEUを超えた。前年比9.7%増加の1.7百万TEUを超えた太平洋側のバルボア港がこれに続く。コロン・コンテナ・ターミナルは前年比21.9%増加し、1.1百万TEUとなった。2024年上半期の港湾部門のGDP成長率は2.2%で、これらの好調な荷動きが大きく貢献している。
(3)パナマ、商船隊のクリーン技術を促進
 日本の商船三井と大島造船によるウインド・チャレンジャー・セイル・システムを搭載した「グリーン・ウィンズ」号がパナマの船籍に加わった。風力エネルギーを利用するこの技術は、燃料使用量と温室効果ガス排出量を7~16%削減することが期待されている。パナマ船籍は世界に8,000隻以上あり、世界最大の船籍国であるパナマは環境に配慮した取り組みを推進している。
 

5 インフラ関連

(1)サン・ミゲリート市のケーブルカー事業を公共事業と認定
 8月20日、閣議において、サン・ミゲリート市のケーブルカー事業を公共事業と認定するとともに、パナマ・メトロ公社がプロジェクトの調査及びコンセッション方式の入札プロセスを開始することが承認された。パナマ・メトロ公社は、4ヶ月以内に入札図書の草案を内閣に提出することとなる。
(2)鉄道プロジェクトに関する韓国との覚書に署名
 9月11日、韓国ソウルで開催されたグローバル・インフラ協力会議(GICC 2024)において、ヘンリー・ファールップ鉄道事務局長は韓国国土交通部との間で、両国の鉄道部門の改善を目的とし、鉄道政策、法令、規則の共有を中心とした二国間協力を確立することとする覚書(MOU)に署名した。
(3)メトロ3号線事業のパナマ運河渡河部が着工
 9月18日、ムリーノ大統領出席のもと、メトロ3号線事業でパナマ運河を渡河するためのトンネル工事の着工式が開催された。トンネル掘削機は、約14ヶ月以内にパナマ運河を渡河し、バルボア港の近くのエリアに到達する予定。また、ピンソン・パナマ・メトロ公社総裁は、事業の進捗率が63%であることを発表した。

主要経済指標(9月)