パナマ経済月報(2024年7月報)
令和6年8月13日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●ムリーノ大統領、メルコスール加盟へ意欲
●MEF、サプライヤーへの未払いに対処する予定
●銅以外の輸出品は好調
●パナマ運河、制限緩和が進む
●鉄道事務局が新たに発足
1 経済全般、見通し等
(1)メルコスール加盟へ意欲ムリーノ大統領は7月8日にメルコスールへの加盟希望を正式に表明した。パラグアイのアスンシオンで開催されたメルコスール首脳会議に出席したムリーノ大統領は、パナマの戦略的重要性を強調し、パナマ運河を含むパナマの金融と物流のコネクションが、メルコスールにとって貴重な資産であることを強調した。パラグアイのサンティアゴ・ペーニャ大統領は、今回のムリーノ大統領の招へいを歴史的な機会であるとし、統合の拡大を通じて地域の課題を解決することを強調した。パナマのメルコスールへの統合プロセスの開始は、ビジネス界のリーダーたちにとってチャンスである。パナマ商工会議所(CCIAP)のフアン・アルベルト・アリアス会長は、「パナマにとって新しい市場はポジティブなものであり、メルコスール加盟国は人口が多く、パナマにとって非常に重要な輸出機会となる可能性がある。メルコスールへの加盟によりパナマの輸出がより成長し、よりダイナミックになるというムリーノ大統領の意向を好意的に捉えている。」と述べた。また、パナマ私企業評議会(CONEP)のテミストクレス・ロサス会長は、「貿易協定によって輸出が促進され、これらの貿易協定が双方にとって有益であり、生産部門が関税の制限を受けずに製品を輸出できるのであれば、それは好ましいことだ」と述べた。
(2)MEF、サプライヤーに8億7,700万ドルの支払いを発表
7月30日(火)の閣議終了後、フェリペ・チャプマン経済・財務大臣は、国の納入業者であり、数年にわたり債務を負っている企業に対し支払いを行うことを明らかにし、「正式に文書化され、法的に裏付けされた買掛金の額は8億7,700万ドルで、今年中に帳消しになる予定だ」と述べた。また、内閣審議会が30日に歳出抑制計画の一環として承認した13億8,700万ドルが原資となると説明した。
(3)ムリーノ大統領「仲裁手続き中は鉱山交渉に応じるつもりはない 」
ムリーノ大統領は、コロン州ドノソでの銅鉱山操業停止をめぐるファースト・クォンタム社などの仲裁圧力にパナマは屈しないと明言した。7月18日に行われた初の大統領定例記者会見で、「いかなる交渉も仲裁手続きが中断された場合にのみ進められる」と述べた。ムリーノ大統領は、パナマのGDPの5%を占める重要な投資の突然の停止によるこれらの請求の正当性を認めつつも、最高裁が採掘契約を違憲としたため、再稼働は不可能であるとも述べた。関係企業との正式な会談は予定されていないが、政府閣僚との非公式な話し合いは続いている。同大統領は、鉱山はパナマが所有し、操業条件はパナマが決めると強調した。鉱山の現状と潜在的な環境リスクを評価するため、現在、国際的な専門家による3~6ヶ月間にわたる環境監査が行われている。
2 経済指標
(1)シティグループ、2024年パナマの経済成長率2.4%と予想シティグループは、パナマ経済は2024年に2.4%成長し、2025年には4.5%まで回復すると予測している。これらの予測は、世界銀行やIMFの予測と一致している。同社の中米・アンデス諸国担当チーフエコノミスト、エステバン・タマジョ氏は、市場は新政権の経済運営にポジティブな反応を示していると指摘する。しかし、パナマは6月時点で5億2,100万ドルの経常赤字という大きな財政課題に直面している。タマジョ氏は、政府は2024年後半におよそ30億ドル、年間では総額60億ドル以上の借金をする必要があると見積もっている。同氏は、補助金を廃止することが、増税せずに州歳入を改善する手っ取り早い方法である可能性を示唆した。
(2)パナマのオンライン市場の売上高は11億ドルを超す勢い
パナマのデジタル市場は、総売上高の24%を占める電化製品の力強い成長に牽引され、急速に拡大している。2024年末までに、オンライン売上は11億7,300万ドルに達すると予測され、前年比10%増の顕著な増加を反映している。パナマのインターネット普及率は78.8%で、2024年初頭の時点で354万人のユーザーが存在する。ソーシャルメディアの利用は堅調で、アクティブ・ユーザーは257万人おり人口の57%を占める。携帯電話への接続率は特に高く、人口の118.6%に達し、モバイル機器の利用が広がっていることを示している。人口統計学的に、パナマのオンライン利用者は多様で、平均年齢は29歳、男女比は50%ずつとバランスが取れている。
3 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)1~5月の輸出は5.4%の伸び銅鉱山の閉鎖に伴い、輸出額は全体的に減少したものの、パナマのバナナ、サトウキビ、チークなどの製品の輸出はプラスの数字を示している。2024年5月31日までに、パナマの輸出は銅を除き3億8,280万ドルになり、2023年同時期比で5.4%増加した。
(2)パナマは地域半導体のハブになる
パナマは、その戦略的な地理的位置、物流の優位性、強固な技術インフラを生かし、半導体生産の地域ハブになることを目指している。パナマのカルロス・オジョス対外貿易副大臣は、半導体業界の主要イベントであるセミコン・ウェスト2024で、技術開発に対する政府のコミットメントを強調した。同副大臣は、コスタリカのインディアナ・トレホス副大臣と半導体産業の可能性に焦点を当て、地域協力について議論した。2023年に制定された米国チップ科学法は、半導体産業を強化し、世界の半導体の60%を生産する台湾への依存を軽減することを目指している
(3)コロン市に建設予定のバイオ燃料精製所プロジェクト
コロン市に建設予定のバイオ燃料精製所プロジェクトが、SGPバイオエナジー社(本社ニューヨーク)によって貿易産業省に正式に提出された。同社のランディ・デルベルグ・レタン最高経営責任者(CEO)は7月11日、ニューヨークからパナマ・シティに到着し、日本の住友商事グループの代表とともにフリオ・モルト貿易産業大臣と会談した。当初の投資見積もりは70億ドルで、パナマに1日あたり18万バレル、年間26億ガロンのバイオ燃料をもたらす予定だ。2023年10月、SGPバイオエナジー社はグローバル・エマージング・マーケッツ(GEM)から2億5,000万ドルのコミットメントを獲得した。このプロジェクトは、3段階に分けられ、2027年初頭に第1段階の生産を開始する予定である。
(4)トクメン国際空港、2024年上半期末時点で74,954回
統計報告によると、トクメン国際空港は、2024年上半期末時点で74,954回の航空機を運航し、2023年同期より5,499回多かった。2024年6月のトクメン空港の運航回数は12,768回で、2023年6月より1,367回増加した。この数字は、パナマの航空業界にとって、計画的かつ継続的な成長というポジティブな傾向を裏付けるものである。トクメン空港は16の民間航空会社を通じて37カ国、約90箇所の目的地に就航している。
(5)パナマ・ベネズエラ間のフライトが一時運航停止
7月31日(水)午後9時(ベネズエラでは午後8時)より、ベネズエラとパナマとの間の民間航空便の一時運航停止が開始された。パナマのムリーノ大統領が7月29日にベネズエラの外交官の撤退を発表した後、ニコラス・マドゥロ政権がこの措置を命じたためである。トゥルピアル航空、ベネソラナ航空、コパ航空が就航しており、コパ航空はベネズエラに週42便(カラカス(23便)、マラカイボ(6便)、バレンシア(7便)、バルセロナ(3便)、ベネズエラ(3便))を運航している。トクメン国際空港の統計によると、2024年1月から6月までの間に、同ターミナルからベネズエラへの旅客数は合計311,624人であった。
4 パナマ運河、海事関連
(1)パナマ運河、制限緩和が進むパナマ運河庁(ACP)は、1日の船舶通過数の増加と船舶の最大許容喫水の調整を順次発表しており、7月11日に33隻、22日には34隻に緩和した。8月5日には35隻まで緩和する予定で、通常時の36隻まで近づいてきている。また、喫水制限は7月11日に48フィートまで緩和され、通常時の50フィートに近い水準まで戻ってきており、より大型で積載量の多い船舶が運河を通過できるようになっている。
(2)流域の再定義が運河と鉱業へ影響を与える
7月2日、最高裁は2006年法律第20号を違憲とする判決を下した。この判決により、ACPは重要な流域の支配権を取り戻し、供給と運河の運営を安定させるためにインディオ川流域の水事業を進めることができるようになる。ただし、貯水池の建設を明確に許可するための新たな法律が必要となる。また、ミネラ・パナマ社が操業していた流域も含まれるため、この判決は鉱山事業にも影響を与えることとなり、同社のいかなる活動もACPの承認が必要となった。ACPは、パナマの水危機に対する長期的な解決策を見出すため、ムリーノ大統領及び同政権と調整を続ける。
(3)コンテナ荷動き、18.2%増加
パナマ海事庁(AMP)によると、パナマの港湾における今年上半期のコンテナ荷動きは前年同期比18.2%増加し、470万TEUとなった。この増加は、地域貿易の増加、運河通過制限による積み替えの増加、輸入の増加に起因する。積み替え貨物量は19.9%増加し、合計425万TEUとなった。パナマの全6港がプラスを記録した。
5 インフラ関連
(1)鉄道事務局が発足7月3日、新政権発足後の初閣議において鉄道事務局(La Secretaria Nacional del Ferrocarril)の設置が承認された。同事務局は大統領府に属する組織で、ヘンリー・ファールップ氏が事務局長を務める。また、パナマ・ダビ鉄道の物資・旅客輸送システムの開発と建設に必要な調査、計画、実施を担う。同事務局長によれば、同鉄道事業の事業費は50億ドルを見込む。
(2)サン・ミゲリート市のケーブルカー事業は2024年末に入札を開始
7月12日、ムリーノ大統領は、サン・ミゲリート市長との会談において、同市で計画されているサン・ミゲリート・ケーブルカー事業の入札を2024年末までに開始することを目標としていると発表した。また、サン・ミゲリート市によると、本事業は、パナマ・メトロ公社がサン・ミゲリート市等と共同で開発する。
(3)トクメン国際空港の第3滑走路建設を発表
7月8日、ムリーノ大統領は、メルコスール首脳会合のため訪問しているパラグアイにおいて、トクメン国際空港第3滑走路の建設を発表した。同事業の事業費は、8億ドルから15億ドルと見込まれている。
パナマ主要経済指標(7月)