パナマ経済(2024年5月報)
令和6年6月18日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:小竹書記官
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主な出来事
●パナマの公的債務、4月に500億ドルを突破
●3月時点の年間インフレ率が1.7%に到達
●パナマ運河、通航隻数制限・喫水制限を緩和
●メトロ3号線プロジェクトのコストが増大
1 経済全般、見通し等
(1)パナマの公的債務、4月に500億ドルを突破経済財務省によると、パナマの公的債務は500億ドルを超え、4月末時点で505.41億ドルに達した。2024年に入り4ヶ月間で7億7,200万ドル増加したことになる。債務の増加は、次期政府の財政の柔軟性を制限するため、格付け会社の懸念材料となっている。負債総額のうち430億1,700万ドルが対外債務で、主な財源は債券発行の331億8,700万ドルである。内国債は75億2,300万ドルで、国内債券、財務省証券、その他の金融商品で構成されている。
(2)チャップマン「歳入の状態を理解しなければならない」
次期経済財務省大臣のフェリペ・チャップマン氏は、利払いを賄うための借り入れを行わないことを約束し、政府、企業、個人の資金調達コストの削減を目指し、財政責任法に沿って、持続可能で信頼性が高く実現可能な5カ年計画を実施する予定であると述べた。チャップマンは、初めて完全に設計された2025年予算を準備し、5年間の財政計画を策定することを目指し、投機を排除するための透明性の重要性と、15年間放置されてきた社会保障基金の年金危機への対応が急務であると強調する。また、チャップマン氏は、パナマが直面している財政上の課題を認識し、フィッチ・レーティングスが格下げした投資適格の地位の回復を目指している。同氏は、金融市場における信頼とコミットメントを醸成し、借入コストを削減することを計画し、世界の金利が低下し、最終的にパナマ経済に恩恵をもたらすと期待している。
(3)パナマの観光部門は2024年第1四半期に大幅な伸びを示す
2024年第1四半期の観光客数は前年同期比12%増の586,045人となり、平均8日以上滞在した。この成長により、ホテルの稼働率は3月末までに61.6%に達し、過去8年間で最高の第1四半期の実績を記録した。クルーズ客や短期滞在者を含む総訪問者数は857,235人に達し、10%増となった。観光客の消費は16億100万ドルとなり、前年同期比8%増となった。全国観光会議所(Camtur)のオビディオ・ディアス会頭は、特に新しいクルーズ会社の誘致や、ホテルの稼働率を上げるための会議・ミーティング分野の強化によって、年間を通してこのポジティブな傾向を維持する必要性を強調した。一方で世界経済フォーラムによる2024年旅行・観光競争力指数で、パナマは119カ国中57位から63位へと順位を6つ下げた。ラテンアメリカでは、ブラジル(26位)、メキシコ(38位)、アルゼンチン(49位)、コロンビア(50位)、コスタリカ(51位)、ペルー(62位)に次いで7位となっている。パナマは、ビジネス環境、航空インフラ、治安、観光サービスなどの分野では高得点を獲得したものの、熟練労働者の確保や自然・文化資源を観光に活用する項目で低得点となった。
2 経済指標
(1)3月時点の年間インフレ率が1.7%に到達2024年3月、パナマのインフレ率は前年比1.7%上昇し、前月比0.3%上昇した。これは主に輸送費の上昇によるものである。航空旅客輸送費と燃料費が大幅に上昇した。その他の要因としては、雑貨・サービス、アルコール飲料、タバコが上昇した。一方で、食料品、非アルコール飲料、衣料品、履物の価格はわずかに低下した。全体として、消費者物価指数(CPI)は経済の様々なセクターで様々な傾向を示した。
(2)パナマ国民は基本的な品物に月273ドルから332ドル費やす
消費者保護・公正取引庁(ACODECO)が提供したデータによると、2024年4月、パナマでは家庭で必要不可欠な食料品の価格が最大で7.16ドル上昇した。この査定は、パナマとサンミゲリト地区のスーパーマーケット、地元商店、商店で販売されている59品目のバスケットに基づいている。最高価格、中間価格ともに上昇したが、最低価格は横ばいであった。基本バスケットの最高価格は332.55ドルに達し、前年の325.39ドルから上昇し、平均価格は289ドルから290ドルへとわずかに上昇したが、最低価格は273ドルに据え置かれた。
(3)金利上昇続く、銀行監督庁が警告
パナマ銀行監督局(SBP)アマウリ・カスティーリョ総裁は、2023年に住宅ローンが58.5%増、個人ローンが28.7%増と、消費者ローンが大幅に増加していると強調した。また、パナマ銀行協会(ABP)のラウール・ギサド氏は、パナマの基準金利は米国連邦準備制度理事会(FRB)の金利に連動しており、現在5.25%から5.50%であると説明した。クレジットカード金利は20.01%から21.20%に、個人ローン金利は8.55%から9%近くに上昇した。延滞率は2022年の4%から2023年には10%に上昇し、2024年初頭には11.96%に達した。景気減速、失業率の上昇、銅の採掘停止などの要因が、この延滞率増加の一因となっている。
3 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)新車販売台数、4月までで8%増加パナマ自動車販売店協会(ADAP)によると、パナマの自動車販売台数は、最初の4ヶ月で17,045台を販売した。この数字は、前年同期の販売台数を1,266台上回っている。パナマ市場では、月平均4,261台の自動車が販売され、特に日本と韓国からのアジア車の供給が多く、アメリカ車も販売で大きな存在感を示しているが、中国ブランドがここ最近、大幅な伸びを示している。同協会によると、2023年のブランド別新車販売台数で初めて中国ブランドがトップ10入り(第7位)を果たしている。2022年まではトップ10している中国ブランドはなかった。
(2)パナマにおける4つの優先バリューチェーンに関する機会調査発表
PROPANAMAと国連食糧農業機関(FAO)が実施した調査により、パイナップル、コーヒー、ココア、チョコレートがパナマの農産物・食品部門における4つの優先バリューチェーンとして注目され、これらの産品は国際化、開発、投資の機会として大きな可能性を秘めていることが明らかになった。この調査は、パナマの輸出向け農業部門の持続可能な発展のために、協調的かつ補完的な行動を促進することを目的としている。パナマのパイナップルセクターはチリキ州とパナマ・オエステ州に集中しており、投資額1ドル当たり0.74ドルの高い収益性を提供している。2021年には、約50の生産者が1,264ヘクタールを栽培し、主に米国とEUに12,000トンを輸出している。コーヒー部門は、年間1,600万ドルから2,500万ドルの直接販売収入を生み出し、サプライチェーンや関連サービスを通じて間接的な経済効果を及ぼしている。米国はパナマコーヒーの主要市場であり、2017 年から2023年5月までの輸出の79%が米国向けとなっている。コーヒーは生豆だけでなく、インスタントコーヒーやエナジードリンクなどコーヒー由来の製品も輸出が拡大する余地が残されている。主なコーヒー生産地はチリキ、コクレ、パナマ・オエステ、コロンである。パナマのカカオは99%がボカス・デル・トロで栽培され、2023年には2,170のカカオ生産者がおり、生産量は562トンに達し、そのうち70%が輸出された。2023年のカカオセクターの経済貢献は5,010万ドルで、2021年の3,770万ドルから増加した。
(3)トクメン、土地取得の選択肢を探る
トクメン国際空港は、2024年には2023年比6%増の1,900万人の利用客を見込んでいる。新ターミナル(T2)により、年間2,500万人まで収容能力が拡大した。現在の成長が続けば、空港は2029年までにこの容量に達する。それまでに、T2を拡張するか、第3ターミナルを建設するかを決定する必要があり、2035年までを見据えたマスタープランには、第3、そして最終的には第4滑走路の建設が盛り込まれている。トクメンは将来の拡張のために750ヘクタールを取得する必要があり、その費用は5億ドルと見積もられている。また、トランジットの改善や新規航空会社の誘致などの強化も必要である。コパ航空は今年10%の成長を見込んでおり、年末までに保有機を115機に拡大する。
(4)パナマの半導体産業は70億ドルの収益をもたらす可能性
フロリダ州立大学(FSU)の非常勤教授であるアンスベルト・セデーニョ氏によると、パナマで半導体産業を発展させれば、将来70億ドル近い収益をもたらす可能性があるという。パナマ技術会議所主催のフォーラムで講演したセデーニョ氏は、2029年までに予測される1兆4,000億ドルの半導体市場で5%のシェアを達成することは、パナマにとって重要であり、パナマの経済とイメージを押し上げると説明した。パナマが米国国際技術安全保障・革新(ITSI)基金に組み入れられれば、半導体サプライチェーンの強化に5億ドルを確保できる。パナマの魅力的な投資環境と経済特区に支えられ、設計、パッケージング、組立、テストにチャンスがある。科学技術革新局(SENACYT)のマーク・バレト・バジャダレス氏は、サプライチェーンにとって重要な中小半導体企業がパナマに関心を示していることを指摘し、インフラと教育のアップグレードの重要性を強調した。
4 パナマ運河、海事関連
(1)5月7日、パナマで正式に雨季が始まる5月7日、パナマ運河は正式に雨季に入り、ガトゥン湖とアラフエラ湖の水位が徐々に上昇している。パナマ運河庁(ACP)の気象・水文学部長アヤックス・ムリーリョ氏によると、予想される降雨が発生し、水が過度に蒸発しなければ、この改善により、7月までに運河を通過する1日の船舶数は34隻に増加する可能性があるという。
(2)パナマ運河、ネオパナマックス閘門の喫水を引き上げ
パナマ運河庁(ACP)は5月30日、ガトゥン湖とアラフエラ湖の水位改善により、ネオパナマックス閘門を通過する船舶の最大許容喫水を引き上げると発表した。当初は6月15日に予定されていたが、喫水の引き上げは直ちに有効となった。喫水とは船舶の水没部分の深さを指し、44フィートから45フィートに引き上げられ、喫水の深い船舶はより多くの貨物を運河を経由して運ぶことができるようになった。ただし、5月30日現在、ガトゥン湖の水位は81.17フィートに上昇したが、依然として理想的な86.6フィートには達していない。
5 インフラ関連
(1)メトロ3号線の進捗率は56%パナマ地下鉄3号線の高架区間は56%完成し、パナマ・パシフィコからシウダー・デル・フトゥーロまでの25キロメートルに及ぶ。ヒュンダイ・エンジニアリング&コンストラクションとポスコE&CからなるコンソーシアムHPHジョイント・ベンチャーは、必要な構造要素の設置に注力している。シウダー・デル・フトゥーロ駅が最も進んでいる。全長6キロの地下区間では、トンネル掘削機(TBM)の組み立てが間もなく始まる。TBMの直径は13.51メートル、長さは94メートルで、1カ月あたり220メートルのペースで進み、トンネル完成までに約22カ月かかる見込みである。
(2)メトロ3号線プロジェクトのコストが増大
このプロジェクトは、コストの不確実性に直面している。当初、トンネルは28億4,400万ドルの契約に含まれていなかったが、2020年3月に追加された。保留中の3億5,000万ドルの追加契約は、特定のトンネル関連経費をカバーしている。現在の総投資額は31億9,400万ドルで、2027年後半には3号線の完全運行が予定されている。各6両編成の全28列車は、2025年までにパナマに到着する予定である。今後の計画としては、3号線をコスタ・ベルデまで延伸するほか、サン・ミゲリートと市中心部を結ぶ2A号線、ベラビスタとエル・クリソルを結ぶ5号線など、新たなプロジェクトの建設が予定されている。これらの拡張は、実現可能性調査と予算の有無によることとな
る。
パナマ主要経済指標(2024年5月)