パナマ経済月報(2024年4月報)
令和6年5月9日
2024/5/8
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
在パナマ日本国大使館
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主な出来事
●3月の消費者物価指数(CPI)が急上昇
●2月までの建設部門は19.8%減
●パナマ運河通航可能隻数が増加
●メトロ1号線の延伸工事が竣工
1 経済全般、見通し等
(1)3月の消費者物価指数(CPI)が急上昇国立統計国勢調査研究所(INEC)の報告によると、3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.7%上昇した。運輸(5.5%)、雑貨・サービス(3.1%)、レストラン・ホテル(2.8%)、住宅・水道・電気・ガス(2.3)、健康(1.3%)、食品・非アルコール飲料(0.9)、教育(0.7%)、アルコール飲料・タバコ(0.5%)などの分野で上昇を記録する一方、衣料・履物(2.0%)、娯楽・文化(0.8%)、家具・家庭用品・住宅維持(0.4%)、通信(0.3%)では減少が見られた。
(2)欧州議会はパナマをマネーロンダリングハイリスク国から除外せず
欧州委員会はパナマが特定の戦略的欠陥に真剣に取り組んでいることを認め、2024年3月14日にパナマを高リスク国リストから除外することを欧州議会に提案したが、同議会はマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策におけるパナマの進展は認めたものの、いくつかの懸念が残っていることから4月23日に否決し、除外は延期された。欧州委員会は、残された懸念に対処し、高リスクリストからの確実な除外を達成するために、パナマと協力していくとしている。
(3)パナマ政府、歳入の16%を利払いに費やす
パナマは歳入の16%を利払いに費やすという財政上の課題に直面している。ムーディーズは、次期大統領は金利上昇、公的収入の減少、財政の硬直性など、重大な財政問題を引き継ぐことになると警告し、2023年の財政赤字は予想をわずかに下回ったものの、土地売却などの単発的な措置に頼っていると指摘した。また、政府の給与支出の増加と補助金、社会保障削減の困難さが、財政の硬直性を高め、水資源の確保が懸念されているパナマ運河の収入への依存度は高く、追加的な歳入源がなければ、2024年以降の予算目標を達成することは難しいと述べた。
(4)3月にダリエンジャングルを通過した非正規移民は3.7万人
パナマ移民局は、コロンビア国境に位置するダリエンジャングルを通過した非正規移民について、3月の通過者数が36,841人であり、そのうち男性50%、女性28%、子供22%であると発表した。
2 経済指標
(1)IMFラテンアメリカ・カリブ海地域(LAC)の経済成長予測を2.0%に国際通貨基金(IMF)は、今週発表した最新改定版で、ラテンアメリカ・カリブ海地域(LAC)の11カ国の2024年の経済成長率を2.0%とした。今年の成長見通しが最も低い地域の国々は、エクアドル(0.1%)を筆頭に、アルバとコロンビア(1.1%)、ボリビア(1.6%)、ジャマイカ(1.8%)、チリ(2.0%)、メキシコ(2.4%)、トリニダード・トバゴとセントルシア(2.4%)、パナマとペルー(2.5%)の順となった。一方、ガイアナ(33.9%)、アンティグア・バーブーダ(6.1%)、ドミニカ共和国(5.4%)、セントビンセント・グレナディーン(5.3%)、セントクリストファー・ネイビス(4.7%)、ドミニカ(4.6%)はより高成長が見込まれている。
(2)建設部門、19.8%減でスタート
国立統計国勢調査研究所(INEC)によると、1月、パナマの建設部門への投資は19.8%の大幅減となり、建設総額は前年同月の9,940万ドルに対し、7,970万ドルとなった。投資の大半はパナマ県を中心とした住宅(6,150万ドル)と非住宅(1,820万ドル)のプロジェクトに向けられ、パナマの住宅建設は21%増の3,973万ドルであったが、ダビデ、サンティアゴ、チトレ、アグアドゥルセ、チョレラなどの地域では、2023年1月と比較して建設投資が47.8%減少し、総額1,821万ドルとなった。アライハンも18%減少し、投資額は958万ドルであった。パナマ建設業協会(CAPAC)のソリス氏は、これらの課題は、現在進行中の選挙プロセスの影響、低い財政収入、高い公的債務、信用力に影響を与える金利上昇に起因するとした。同氏は、最近のソブリン格付けの引き下げについて懸念を表明し、デベロッパーへの支払いの遅れは、このセクターの課題をさらに複雑にしていると述べた。
(3)2月までの新車販売数が順調に伸びる
パナマ自動車販売協会(ADAP)によると、2024年1月から2月までの新車販売台数は7,980台と、7,112台だった前年同期比で12.2%増となった。
(4)2024年、非正規雇用が増える可能性
パナマ私企業評議会(CONEP)のアントニオ・フレッチャー氏は、パナマにおける非正規雇用が2024年に減少する可能性は低いと表明した。ドリス・サパタ労働大臣も、銅山やその他の企業の閉鎖により失業率が1.5%増加する可能性があることを認めている。2023年8月の非正規雇用率はすでに47.4%に達しており、元鉱山労働者が収入を得るために非正規雇用に転じることで、非正規雇用率はさらに上昇すると予想されている。非正規労働者は社会的保護を受けられず、信用やその他の便益を利用することもできない。非正規雇用への取り組みには、非正規労働者の社会保障基金への拠出を認めることについての議論も含まれる。サパタ労働大臣は、非正規労働者の加入を容易にするための選択肢を探ることに言及したが、パナマにおける官僚主義が進展を遅らせている。非正規雇用を減らすには、経済の再活性化から始める構造改革が必要であり、観光業や建設業のような雇用集約的なセクターを支援することが重要であるとフレッチャー氏は強調した。社会保障基金の年金プログラムや医療サービスなどの問題に取り組むことは、非正規雇用を減らし、全体的な経済回復を確保するために不可欠である。
3 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)パナマはグリーン水素ハブとして「興味深い位置」にラテンアメリカ・エネルギー機構(OLADE)のアンドレス事務局長は、エネルギー転換と脱炭素化におけるラテンアメリカの躍進について見解を述べた。特に、パナマの再生可能エネルギー容量は70%近くに達しており、グリーン水素のハブになる可能性があると述べ、支援的な政策や規制を実施することの重要性を強調した。パナマが持続可能なモビリティや産業におけるグリーン水素の利用といった取り組みが極めて重要な役割を果たすとし、同地域の温室効果ガス排出量を大幅に削減できる可能性を語った。
(2)5G通信ネットワーク導入のためのパイロットテストを開始
パナマの大手通信会社マスモビル社は、3.5GHz帯における5G通信ネットワークのパイロットテストを開始した。マスモビル社のCEO兼ゼネラルマネージャーであるロシオ・ロレンソ氏によると、消費者市場への展開は間もなく発表される予定である。計画されているプロジェクトのひとつは、小売セクターのパートナーとともに管理された環境で実施され、流通・保管センターのビデオ監視システム向けに拡張LAN5Gネットワークを導入するものである。またもうひとつは、パナマの主要港において、5GWiFiネットワークがテレコントロール・プラットフォームを管理し、作業効率やセキュリティ、監視を強化するものである。2023年12月時点ではウルグアイ、チリ、ブラジルが5G技術を積極的に導入していた。ロレンソ氏は、5Gの開始はパナマと顧客へのコミットメントを強化し、最先端技術へのアクセスを提供し、ネットワークサービスの変革に貢献すると述べ、パナマを世界的な新技術の最前線に位置づけ、人々をつなぎ、感動させるエキサイティングな技術を通じてユニークな体験を提供すると強調した。
(3)港湾における荷動き16.4%増
パナマの港湾における第1四半期の貨物輸送量は16.4%増加し、229万TEUに達した。干ばつによるパナマ運河の通過制限のため2023年7月に1日の通過量を減らして以来、船社は太平洋港または大西洋港のいずれかでコンテナを荷揚げし、陸上トラックまたは鉄道で輸送しているため、一時的に増加していると推定される。これにより積み替えに重点を置く港湾ターミナル、鉄道、陸上輸送が恩恵を受ける一方で、海運代理店や船舶補助業者は通航隻数減少により苦境に立たされている。運河庁は6月1日から1日の通過を32回に増やす予定だが、物流関係者は次期政権が水資源を確保し、安定した通航隻数が維持されることを期待している。また、最近では物資積み替えのためのマルチモーダル乾式運河が承認され、このことはパナマの物流にとって前向きな一歩と見られている。
4 パナマ運河、海事関連
(1)通航可能隻数が増加15日、運河庁(ACP)は現在のガトゥン湖の水位や4月に入ってから降雨状況を鑑み、パナマ運河における1日あたりの通航隻数を2024年5月16日より以下の通り段階的に変更する。(当館注:現在は1日あたり計27隻(ネオパナマックス7隻、パナマックス20隻)通航している。)
ア 5月16日より31隻(ネオパナマックス7隻、パナマックス24隻)
イ 6月1日より32隻(ネオパナマックス8隻、パナマックス24隻)
ウ 5月7日から15日まではガトゥン閘門のメンテナンスのため、一時的に24隻(ネオパナマックス7隻、パナマックス17隻)となる。
(2)SEA JAPAN2024 東京で開催される
4月10日から12日にかけて東京で開催されたSEA JAPAN2024にパナマが出展し、ペレ駐日大使の冒頭挨拶の後、セグマル東京のゲバラ氏がパナマ船籍のメリットについて説明した。ゲバラ氏は2023年中に総重量トンベースで4百万トン相当の日本の新造船がパナマ船籍に加わり、日本船舶の44%がパナマ船籍に登録されていると説明し、パナマは他の便宜置籍国と異なり、国直営で事故や他国との障害事項が出てきた場合に政府が介入することが可能で、それが大きなメリットであると強調した。また、世界53箇所に事務所を有し、新たなRENサービスの提供により時差に関係なく24時間いつでも各種手続きが可能となると説明した。一方で、SEA JAPANに参加した日本船主の評価は、障害時の対応よりもコスト面や手続きの円滑な対応など、サービス面を重視していた模様。
5 インフラ関連
(1)アマドール・クルーズターミナルが竣工3月26日、パナマ政府はアマドール・クルーズターミナルの竣工式典を開催した。同ターミナルの事業費は2億600万ドルで建設され、最大5,000人乗りのクルーズ船にサービスを提供することができる。今年は既に17件が母港として利用されており、23,000人以上が到着している。
(2)メトロ1号線の延伸工事が竣工
4月25日、メトロ1号線のSan Isidro駅からVilla Zaita駅までの延伸工事の竣工式典が開催され同区間が開業した。同延伸事業は、2億3,000万ドルが投じられ、2.3キロメートルの高架線が建設された。この延伸工事で1日平均3万人の利用者が増加し、1号線の利用者は1日あたり30万人に増加することが見込まれている。
(3)メトロ3号線の進捗率は53%
4月25日、パナマ政府は、メトロ1号線延伸工事の竣工式典においてメトロ3号線の進捗率が53%であり、高架橋の大部分がすでに建設されており、今後数ヶ月以内に全長4.5キロメートルのトンネル工事が開始されると発表した。
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