パナマ経済月報(2024年3月報)
令和6年4月11日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:小竹書記官
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主な出来事
●2023年のGDP成長率は7.3%
●2024年のGDP成長率は2.5%予想
●フィッチがパナマ格付けをBB+へ格下げ
●メトロ3号線事業の進捗は50%
1 経済全般、見通し等
(1)会計検査院、2023年のパナマのGDP成長率を7.3%と発表会計検査院(INEC)によると、2023年におけるパナマの実質GDPは、788億2,340万ドルとなり、2022年から53億7,410ドル増加し、7.3%の成長を遂げた。しかしながらコロナ禍の反動で15.3%を記録した2021年、2022年の10.8%の成長からは成長率が低下していると述べた。
(2)IMF、パナマのGDP成長率は2024年に2.5%に鈍化すると予測
国際通貨基金(IMF)は、鉱山閉鎖の結果、パナマのGDP成長率は2024年に2.5%まで低下し、その後中期的には徐々に改善すると予測している。この減速はGDPの約5%に直接的及び間接的に貢献していたドノソ銅山の閉鎖を反映したものであるとされている。この予想に対しパナマ政府は、2024年の成長率予想には明確に反論せず、「2025年、2026年には4%程度に回復するであろう」と述べた。
(3)フィッチがパナマ格付けをBB+へ格下げ
28日、フィッチ・レーティング社(フィッチ)がパナマのソブリン債格付けについて、BBB-からBB+に引き下げ、一方でアウトルックを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。銅鉱山の操業停止によって、直接的及び間接的にパナマのGDPの約5%が失われ、経済成長の減速することが明らかになったことや、GDP比で約6割を占める公的債務が同国のリスクを高めていることが引き下げの背景としている。一方で同国のロジスティクスやパナマ運河が引き続き経済成長を牽引することや、1人当たりGDPが15,000ドルを超える高い水準にあること、低インフレであることなどを鑑み、アウトルックは「安定的」とした。格下げは様々な金融商品の金利上昇につながる可能性があり、また、ムーディーズやスタンダード&プアーズ社もこれに追随する可能性は大きく、さらなる経済的困難を招くリスクをはらんでいる。
(4)EU、パナマをマネーロンダリングのハイリスク国から除外
14日、欧州委員会は、「パナマはもはやマネーロンダリング(AML)およびテロ資金供与(TF)法の枠組みにおいて、戦略的欠陥を呈することはなく、また、EUの金融システムに対して重大な脅威をもたらすこともない」と結論づけ、マネーロンダリングのハイリスク国リストから「パナマを除外することが適切である」と発表した。EUが管理するリストには、マネーロンダリングのハイリスク国リストと、税務非協力国リストがあり、もうひとつの懸案リスト(税務問題)については引き続き取り組みが必要だとし、リストに残した。
2 経済指標
(1)消費者物価1.5%上昇会計検査院(INEC)の月次報告によると、2月の消費者物価指数は前年同期比で1.5%上昇した。上昇を牽引したものは主に美容院、パーソナルケア、美容製品、日用品、宝石、時計、健康保険、住宅、自動車などがある。
(2)1月のパナマ輸出、銅を除き9%以上の伸び
貿易産業省貿易情報局(Intelcom)の発表によると、2024年1月、パナマの輸出額(銅を除く伝統的輸出額)は6,290万ドルとなり、2010年以来最も高かった2013年の6,820万ドルに次ぐ2番目に高い額を記録した。具体的には、2024年1月の輸出額は、2023年の同月の輸出額(5,750万ドル)に比べ、9%以上増加している。この9%の伸びには銅は含まれず、バナナ、冷凍エビ、薬などが貢献している。
3 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)航空会社、パナマへの観光客誘致のため増便と戦略強化世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、2024年はラテンアメリカとカリブ海諸国におけるトランジットがコロナ禍から完全に回復し、トクメン国際空港を経由する国際旅客輸送量が13%増加すると見込まれる。4月にはユナイテッド航空がパナマ・シティから新たな就航都市を増やし、6月にはコパ航空が3つの就航都市を増やす予定。また、ターキッシュ・エアラインズは新機材でキャパシティを強化し、ボリビアのボア航空がパナマ市場への参入を計画している。
(2)デジセルがパナマから撤退
16年間電気通信部門に携わってきたデジセル・パナマの閉鎖が決定的した。政府は市場における3つの通信会社の維持を試みたが、入札募集は失敗に終わり、その結果、現在パナマの携帯電話事業者(当館注:TIGO社とMAS MOBILE社)は2社となることとなった。同社の撤退の理由について公共サービス庁(ASEP)アルマンド行政官は、市場がよりデータ中心のアプローチに移行しつつある中で、デジセルのビジネスモデルは、データ通信ではなく音声通話に重点を置いていたことが重要な要因の一つであると指摘した。また、パナマの電気通信市場に新規参入する企業を奨励するためには、テレビと電話に関する規制を1つの法律に統合するなど、法改正が必要であると述べた。
(3)パナマにおける半導体産業の可能性
経済協力開発機構(OECD)は、半導体産業発展のための提言や規制・政策の確立を目的として、パナマの半導体産業における潜在力を調査している。この調査は、2023年7月に米国が発表した、半導体産業を後押しし、グローバルチェーンを強化するためのパートナーシップに関連している。パナマ商工省(MICI)は、OECDの専門家ミッションが同国を訪問し、組立、テスト、パッケージングなどの活動に重点を置いた情報を収集したことを報告した。パナマにおける半導体産業の発展は、専門的な雇用を創出し、地元の人材育成と輸出に貢献することが期待されている。
(4)企業の過半数が労働力拡大を計画
マイケル・ペイジ中米の労働市場調査2024によると、企業の53%が今年労働力の拡大を計画しており、その優先課題は従業員のモチベーションとエンゲージメントの強化、人材の獲得・育成、コミュニケーションの透明性の向上となっている。77.9%がデジタルツールやテクノロジーへの投資を計画している一方で、28.3%はこうした投資を活用できる人材が不足していると回答している。
4 パナマ運河、海事関連
(1)通航可能隻数が増加8日、運河庁(ACP)は現在のガトゥン湖の状況や気象情報を鑑み、25日よりパナマ運河におけるパナマックスの通航隻数を1日あたり計20隻へ変更すると発表した。ネオパナマックスは現在と変わらず1日あたり計7隻で、1日あたりの通航隻数は計27隻になる。(当館注:変更前は1日あたり計24隻(ネオパナマックス7隻、パナマックス17隻)に制限されていた。)また、増加する3隻のうち、1隻は通常予約枠(14日前より予約可能)、2隻はオークション枠(7日前より参加可能)となっている。
(2)5月以降の通航可能隻数の見込み
パナマ運河庁のマロッタ副長官は、3月12日~14日に米国・コネチカット州で開催されたCMA SHIPPING会議で、パナマの雨季が4月下旬~5月上旬に始まることで、通航量が徐々に増加し、5月末までに(通航可能隻数は)最低34隻まで回復し、9月までに正常化することを期待していると述べた。
5 インフラ関連
(1)メトロ3号線事業の進捗は50%12日、メトロ公社は、メトロ3号線事業の進捗率が50%であると発表した。詳細な進捗率としては、最も建設が進んでいるシウダ・デル・フトゥーロ駅は47%、橋脚は90%、車両組立・整備や管理棟のある車両基地エリアは65%である。
(2)パナマ運河第四架橋の工事開始
12日、公共事業省は、パナマ運河第四架橋の建設工事が着工したと発表した。工事は、パナマ運河の西側の地盤改良から開始する。また、公共事業省はこの事業の完成を4年半後と見積もっている。
(3)東パンアメリカンハイウェイの道路補修並びに維持管理契約が正式承認
15日、公共事業省は、PPP方式で行われた最初の入札である東パンアメリカンハイウェイの道路補修並びに維持管理事業について、同日、会計検査院の正式承認を受けたと発表した。本事業は2月7日にINTERVAL CHILE S.A.社と契約を交わしていた。
パナマ主要経済指標