パナマ経済(2024年2月報)
令和6年3月8日
在パナマ日本国大使館
担当:小竹書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:小竹書記官
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主な出来事
●政府は過去最大規模の国債を発行
●ドノソ銅山閉山の余波は費用負担・訴訟リスク・経済停滞・失業率悪化など多岐に
●パナマ運河の2023年度収益は過去最高を記録、2024年度も増収見込み
●双日株式会社がシラバグループの100%を取得
1 経済全般、見通し等
(1)2023年11月の経済活動は2.94%減少国立統計・国勢調査研究所(INEC)が公表した数字によれば、2023年1月の経済活動指数は、前年同月比-2.94%となった。鉱業に対する抗議デモが、貿易、サービス、観光セクターに影響を与え、またパナマ運河の通航制限などもマイナスに影響し2022年11月の経済活動指数を下回った。
(2)MEF、31億ドルの債券を国際市場に投入
閣僚審議会は、予算の一部を賄うために最大35億ドルの債務を発行することを承認していたところ、2月22日木曜日、最終的に31億ドルが発行され、条件が異なる3つの債務に分かれている。それぞれ2031年満期(金利7.5%)、2038年満期(金利8%)、2057年満期(金利8,25%)となっている。政令では、「これらの証券発行で調達された資金は、それに関連するストラクチャリングコストをカバーした後、2024会計年度および/または将来の会計年度の一般国家予算を支援するために使用される」としている。これは、2年前にパナマが25億ドルで行った債券発行以来、最大規模の債券発行となる。
(3)フィッチ、パナマの格下げ圧力が強まると警告
ドノソ銅山の閉鎖により、フィッチ・レーティングスはパナマのソブリン格付けを「BBB-」に引き下げる事を検討している。ネガティブ・アウトルックは、金利コストの上昇、歳出の増加につながり、財政への影響が懸念される。
(4)観光は鉱業に取って代わることができる
ドノソ銅山の操業停止により、直接・間接合わせて約4万人の雇用が消滅すると言われているが、パナマ全国観光会議所会長のディアス氏は27日、観光産業が鉱業に取って代わることは可能であり、3万人ないし4万人の雇用を観光産業に置き換えることはそれほど難しいことではないと述べた。
2 経済指標
(1)産業界、今年の失業率は8.7%に達すると警告パナマ製造業者協会のラウル・モンテネグロ会長は、次期政府にとって社会保障プログラムの赤字に対処することに加え、運河の水危機に対処し、国民に水を保証することが急務であると述べた。
また、同協会の報告書によると、ドノソ銅山の閉鎖に伴い定収入を得られない人々が増加し、失業率を悪化させ、2023年8月に7.4%だった失業率は2024年に8.7%、2025年は8.5%に増加すると予想されている。
(2)パナマの月収
2023年8月に実施された国勢調査調査によると、平均給与は735.4ドルに留まり、2022年4月に行われた前回調査の782.2ドルからわずか1%しか上昇していない。月収2,000ドルを超える労働者は全体のわずか8%で、労働者の70%以上が1,000ドル以下の月収となっている。
(3)建築許可金額
2023年の建築許可金額は、住宅が前年比18.6%増の745百万ドルとなり、オフィスなどの非住宅は511百万円ドルと前年比75.7%の大幅な増加となった。
3 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)パナマの港湾におけるコンテナの荷動きは2.4%減少パナマ海事庁(AMP)のデータによると、2023年のコンテナ取扱高は合計831万TEU(20フィートコンテナ)だったが、2022年に851万TEUを超えた前年と比べ、202,129個減少した。水不足による運河の通航制限によりトランジット数が減少し、また1ヵ月半に及ぶデモ活動による道路封鎖は、物流業界全般にとって痛手となった。
(2)トクメン国際空港利用者数 2024年1月は前年同期比割れ
20日、トクメン空港は2024年1月の旅客数が1,443,864人だったと発表した。1月5日に発生したアラスカ航空便の事故により、ボーイング737MAXの一時的な運航停止を余儀なくされたことが影響し、1,521,148人の利用があった2023年1月より少ない結果となった。2月はほぼ正常に運航が再開されているため、増加が見込まれる。
(3)観光収入はパンデミック前の数字をまだ超えていない
観光庁は、2023年度の11ヶ月間で観光業は49億9200万ドルを生み出したが、総額70億ドルを超えた2019年の数字にはまだ及ばないと報告した。現在、収入は2019年の合計を29.17%下回っており、この数字に到達して観光業が完全に回復したと主張するには20億ドル以上が不足していることになる。
(4)双日株式会社がシラバグループの100%を取得
双日は2月20日付けでシラバグループの株式を100%取得した。この買収には、車両販売とアフターセールス事業だけでなく、保険仲介事業、保税倉庫、配送センター、パナマで戦略的に確立された一連の不動産など、その他の資産も含まれている。
(5)ファーストクォンタム、パナマに200億ドル請求へ
ファースト・クアンタム社のトリスタン・パスカルCEOが市場アナリストと電話会談を行い、パナマの銅鉱山閉鎖に伴う200億ドルの国際仲裁の金額根拠について、「初期投資の推定公正市場価値を反映した最低額を提示した」と説明した。
一方でパスカルCEOは、パナマ国民と会社にとって最良の結果となるような合意をパナマ国と結ぶことを望んでいるとも述べた。
(6)コパ航空、12%の成長と630人の雇用創出を計画
コパ航空のペドロ・ハイルブロン社長は、同社の今年の目標は1,750万人の旅客を動員することであり、これは1,440万人の旅客を動員した2019年と比較して旅客数が21.52%増加することを意味すると述べた。さらに旅客動員数の増加により、630人の雇用を創出するとも述べた。
4 パナマ運河、海事関連
(1)2023年度パナマ運河収支運河庁(ACP)の発表によると、2023年度(2022年10月~2023年9月)の総収入は前年度比15%増の49億6,800万ドル、国庫納付となる総収入から必要経費を除いた利益は32億3400万ドルとなった。
(2)2024年度パナマ運河収支予想
干ばつによる通航隻数制限もかかわらず、2024年度の収入は2023年度比で2.7%増加する見込みとなっている。2023年に引き続き2024年にも実施された料金体系の改変や、競売などのその他海運収益により、通航隻数の減少分をカバーしている。予想が達成されれば、運河の総収入は約1億3,430万ドル増加し、初めて51億200万ドルに達する。
5 インフラ関連
(1)メトロ3号線事業のトンネル建設は2024年第2四半期に開始予定地元メディア「ラ・プレンサ」紙が報じたところによると、メトロ公社の話として、パナマ運河を渡るトンネル部の建設工事開始時期は2024年第2四半期を予定しており工事期間は22ヶ月である。また、現在、トンネル掘削機の組み立てがファルファンで行われている。
(2)パナマ運河第四架橋の建設工事が3月に開始予定
地元メディア「ラ・プレンサ」紙が報じたところによると、公共事業大臣は、パナマ運河第四架橋の建設工事について、3月7日に本工事が開始されパナマ運河西側において地盤改良工事に着手するとともに、その後1ヶ月以内にパナマ運河の東側での地盤改良工事が開始される見込みであると述べた。
パナマ主要経済指標