パナマ経済(2023年12月報)
令和6年1月11日
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事担当:小松原書記官
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●2024年度予算案を修正(予算規模306億9,000万ドル)
●新規雇用創出率は前回調査から60.3%減少し、若年失業率は15.4%
●パナマ運河は2024年1月から1日あたり24隻通航へ
●アラフエラ湖の水位が回復、運河運営はひとまず安心。他方で2024年にもエルニーニョ現象が発生
1.経済全般、見通し等
(1)2024年度予算案を修正(予算規模306億9,000万ドル)18日、閣議はアレクサンダー経済財務大臣が数週間前に発表した2024年度一般国家予算案の修正を承認した。最新の予算額が306億9,040万ドル(前年比11.13%、31.10億ドル増加)であり、当初提出された327億5,450万ドルより26億4,420万ドル大幅な削減となった。
19日、経済財務省(MEF)は2024年度の一般国家予算の削減には、専門職給与14.8%削減及び補助金36%廃止が含まれていることを発表した。アレクサンダー経済財務大臣は、「当該予算削減は年金受給者及び公共部門で働く退職者のための特別退職プログラムに影響を与える。また、財政の維持にはパナマソリダリオにかかるエネルギー関連補助金、ガスタンク補助金、施行中の税制優遇措置を見直す必要性が生じた」と述べた。
28日、当初案(2023年8月策定)より20億ドル以上削減された306億9,040万ドルの2024年度予算を定める法案第1041号について、3回目の最終討論が実施された。その後に行われた投票で賛成44票、反対16票、棄権2票で当該法案は国会承認された。翌日、コルティソ大統領は署名を行い、当該法律第418号が年末の土壇場で成立した。
(2)2023年上半期、GDPは前年比8.8%増
会計検査院の報告によると、2023年上半期GDPは381億60万ドル(前年比8.8%増加、基準年:2018年)となったと発表した。内訳をみると、2023年第1四半期は9.3%増、第2四半期は8.2%増となり、特に直近の第2四半期に関しては建設業(53.3%増)を筆頭に卸売・小売業、製造業、電気・水道業、飲食店、陸上輸送業など様々な国内経済活動の好業績によるものである。他方で、水資源問題により水力発電が37.9%減、畜産が2.8%減となった。
2.経済指標
(1)新規雇用創出率は前回調査から60.3%減少し、若年失業率は15.4%国立統計センサス局(INEC)によると、2022年5月から2023年8月(16ヶ月間)は、新規雇用創出率が前回2022年4月(同月までの16ヶ月間)と比べて、60.3%鈍化したと発表した。今次雇用データでは月平均6,750人(前回調査16,996件)の新規雇用が登録され、正規雇用率65%(前回調査73%)であった。また、パナマの15歳以上の人口は3,354,784人(全体の62.4%を占める)であり、その内の経済活動人口(EAP)は2,094,241人である。EAPのうち、15~29歳の若者:23.9%、30~59歳:62.1%、60歳以上:14.0%である。国内失業者総数は155,625人であり、前回調査(2022年4月)の203,253人から23.4%減少した。他方で、若者の雇用環境に関しては前回調査からあまり改善しておらず、失業者全体の54.3%を占め、若年失業率は15.4%である。
(3)28万7,000人のパナマ人が極度の貧困状態
ECLAC(ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)によると、パナマでは貧困状態(平均月収126.1ドル/人以下)にある人の割合が2021年の15.6%から14.3%に低下したが、パンデミック発生時(2020年)95万3000人をピークに減少しているものの、61万8,000人が該当している。更に、極度の貧困状態(平均月収66ドル/人以下)にある人の割合は、2021年の5.7%から2022年には6.6%に増加し、28万7,000人が該当する。ジニ指数に関しては2022年にわずかに低下したものの、少なくとも過去8年間は0.5前後と比較的一定、言い換えれば、不平等の削減において大きな進展は見られないと指摘している。
(4)パナマの平均月収は昨年からわずか1%上昇のみ
国立統計センサス局(INEC)によると、23年8月のパナマの平均月収は全国で735.4ドル(前回2022年4月調査728.2ドルから1%増)となったことが明らかになった。内訳をみると、雇用され給与を得ている118万人のうち、中間層(平均月給400~599ドル:13.1%、600~799ドル:30.1%、1,000~1,499ドル:12.9%)、高所得層(平均月収1,500~1,999ドル:6.7%、2,000~2,999ドル:4.7%、3,000ドル以上:3.3%)である。男女別では男性が727.2ドル、女性が746.8ドルで、初めて平均で女性が男性を上回った。地域間では、都市部で769.1ドル、農村部で521.5ドルとなり、所得格差は大きい。
(5)住宅及び食品が消費者物価上昇の先頭を走る
15日、国立統計センサス局(INEC)によると、2023年11月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.0%と発表した。内訳をみると、食品・非アルコール飲料グループの11種類の商品が値上がりし、そのうちの野菜は前月比4.8%、果物は前月比2.1%値上がりした。同傾向は10月から11月にかけてチリキ県とボカス・デル・トロ県で30日以上にわたって行われた道路封鎖による供給不足に関連しており、同期間に破棄された製品を中心に値上げが続いている。
14日、コルティソ内閣は燃料補助金の延長を閣議承認して、12月15日~1月15日まで延長となった。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)過去5年間で海外直接投資額(FDI)は年平均30億ドル増加7日、パナマ会計検査院は、FDIが2022年に29億618万ドル(前年比13億5,010万ドル増)となり、パンデミックからの回復により持続的な増加となったと発表した。また、FDI上位10カ国は、米国(18.6%)、コロンビア(18%)、バルバドス(11%)、スイス(7%)、英国(4.4%)、スペイン(3.9%)、中国(3.8%)、ブラジル(3.8%)、カナダ(3.4%)、メキシコ(2.6%)である。
(2)トクメン国際空港利用者実績(1~11月)が1,620万人を突破
12日、アラブ・トクメン空港公社総裁は、「トクメン国際空港利用者実績(1~11月)が1,620万人(前年同期比12.2%増)に達した。当該実績はパンデミック前の2019年の歴代最多記録に並ぶ勢いであり、年末までに1,700万人突破は確実だろう」と発表した。11月単月では150万人(前年同月比10.3%増)、31航空会社(15社:貨物便、17社:旅客便)を運航している。また、トランジット比率73%であり、同空港からは87都市に就航し、発着地別では、南米46%、北米27%、カリブ海諸国12%、中米11%、欧州4%となっている。
4.パナマ運河、海事関連
(1)パナマ運河は2024年1月から1日あたり24隻通航へ19日、パナマ運河庁(ACP)は顧客への通知を通じて、2024年1月16日から1日あたり計24隻通航へ変更すると発表した。ACPは1日あたりの通航予約隻数を11月:24隻、12月:22隻、1月:20隻、2月:18隻と段階的に調整することを決定していたが、11月雨量が想定ほど落ち込まずに実施された節水対策と制限の結果が相まって、2024年1月16日から若干の増加を決めた。
(2)アラフエラ湖の水位が回復、運河運営はひとまず安心。他方で2024年にもエルニーニョ現象が発生
21日、パナマ水文学研究所はアラフエラ湖の水位は252.24フィートと報告され最大貯水量に達したと発表した。これは11月の降雨量が平年より25.8%下回ったものの、国内の各種節水対策が功を奏した結果であり、運河庁(ACP)は12月現在の降雨量も勘案して、2024年1月の通航隻数を当初見通しの22隻から24隻に引き上げた。他方で、パナマ運河の運営に不可欠なガトゥン湖の水位は81.4フィート(最大貯水量87.50フィート)であり、今後の乾期の状況によっては予断を許さない状況が続いている。
22日、ドゥクルエ国立水道局(Idaan)所長は取材に応え、「2023年5月30日の非常事態宣言発出を受け、政府は水資源確保に取り組んできた。Idaanは現在緊急時の対応として地下水源(井戸)の利用を検討しており、全国200カ所の取水場が機能できるように掘削設備、ポンプ、給水車等を整備している。現在、アラフエラ湖の最大貯水量(上述)に近いが、210フィート以上であれば、市内への水供給に問題はないと判断している。他方で、現在も強いエルニーニョ現象が発生しており、当該現象は前例のない乾燥状態を引き起こしている。少なくとも2024年3~5月まで続く可能性がある」と述べた。
(3)パナマの「クオリアシップ21」プログラムの格付けが危機に瀕す
2023年4月、パナマ船籍船は米国沿岸警備隊の「クオールシップ21」プログラムに加盟した。当該資格は、船舶が到着する米国の港での検査や拘留の回数を減らすことができるため、船舶運航会社や船主にメリットがある。加盟自体は朗報だったものの、それも束の間に2023年7月時点(4ヶ月間)で対象船舶が2回もディテンションとなり、2024年6月に実施される加盟資格定期審査(年一回)を経て、資格喪失の可能性が高まった。
(4)コロン2000港では2023年~2024年のクルーズシーズンに50万人近い観光客を見込む
2023年~2024年のクルーズシーズンにおいて、コロン2000港では202隻のクルーズ船に乗客約50万人、乗組員10万人を想定しており(週4~5隻)、乗客の70%はアメリカ人である。パナマ海事庁によると、同港寄港する乗客客はツアー・食事・土産物の購入などで約100ドルを消費し、更に同港が母港であれば現地の宿泊も伴うためその消費額が350ドルに増加する。
5.インフラ関連
(1)メトロ1号線の延伸工事の進捗は92%地元メディア「ラ・プレンサ」紙が報じたところによると、メトロ1号線のビジャ・サイタ駅までの延伸工事の進捗率は92%であり、2024年第2四半期に開通予定である。また、本事業延長は2.3キロメートルで事業費は約1億7,797万ドルである。
(2)アメリカ橋とセンテナリオ橋の維持管理事業は2024年1月の工事開始に向けて準備中
地元メディア「ラ・プレンサ」紙が報じたところによると、公共事業省特別プロジェクト室長は、アメリカ橋とセンテナリオ橋の維持管理事業が2024年1月の作業開始に向けて、関係機関への許可申請段階であると説明した。
パナマ主要経済指標(月次ベース)