パナマ経済(2023年8月)
令和5年9月7日
パナマ経済(2023年8月報)
2023/9/6
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
2023/9/6
在パナマ日本国大使館
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FAX:507-263-6019
主な出来事
●米国S&P社はパナマのゾブリン格付けをBBBと評価
●パナマに本社を置く多国籍企業で構成されるパナマ多国間企業本部商工会議所が設立
●米国はパナマの投資環境を「良好」と評価
●パナマ運河、少雨・乾燥により2024年度に200百万ドルの収入減と試算
●パナマ首都圏都市交通3号線整備事業の工事進捗率は42%
1.経済全般、見通し等
(1)米国S&P社はパナマのゾブリン格付けをBBBと評価米国格付会社Standard & Poor's (S&P)社は、パナマのゾブリン格付けをBBBとして見通し(アウトルック)を安定的に引き上げた。同社は、「GDPが2021年に15.8%、2022年に10.8%と同社予想を超える水準であり、2022年のGDPはパンデミック前の水準を上回った。今次評価はパナマの政治的安定性と主要な経済政策の継続性を反映している。次期政権が慎重な財政運営と健全なマクロ経済政策を維持し、財政赤字のレベルを低く抑えることを期待している。」と指摘した。
(2)国税局はデジタルプラットフォームの納税を求める
7日、デ・グラシア国税局長は、「デジタルプラットフォームへの納税を促進するため、徴収体制を強化するための行動を取る予定である。論点としては、消費税(ITBMS)がどのように課金されるかの評価であり、他国では付加価値税(VAT)として、Netflix、Instagram、Facebook、Messengerなどのプラットフォームから売上の7%を徴税している。しかしながら、パナマではそういった仕組みがなく(ケーブルテレビのみ課税制度有り)、例えば、インフルエンサーとして収入を得て活動している個人・団体は納税されなければならない。」と述べた。
(3)財政赤字は2023年6月時点で2,546百万ドルに達する
パナマ経済財務省(MEF)の報告書によると、非金融公共部門は2023年上半期に2,546.3百万ドル(前年同期比33%増、636.3百万ドル増)の財政赤字を計上した。財政責任法により規定される財政赤字対GDP比の上限は3%と規定されているが、上半期終了時点では約3.11%に相当する。政府財政の内訳を見ると、2023年上半期の歳入は5,783.3百万ドル(前年同期比3.3%増)、歳出は8,329.5百万ドル(前年同期比10.9%増)であり、経済が回復基調ににもかかわらず歳出の伸び率に比べ、歳入の伸び率は小さい。
(4)上半期の歳入は予算を444.9百万ドル下回る
1日、パナマ国税局(DGI)は、2023年上期の政府歳入は総額3,256百万ドル(予算比12.03%減、444.9百万ドル減)となったと発表した。歳入の内訳をみると、大半(78%)を税収が占め、総額2547.2百万ドル(予算比345.5百万ドル減)となった。デ・グラシアDGI局長は6月までの歳入の動向に関し、「昨年末に納税者への納税期限延長した為(2023年1月13日迄)、今期は歳入減少に見えるが、2023年6月単月でみると、納税額は前年同期比から147百万ドル(22%)増加した。」と先行きに楽観的な見方を示した。他方で、租税関係の国内専門家からは政府の徴税制度・体制に対して疑問を投げかける声が挙がっている。
2.経済指標
(1)7月の住宅・水道・電気・ガス料金カテゴリは9.2%上昇パナマ会計検査院(INEC)によると、7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.6%となり、1月~7月の累積変動率は1%であったと発表した。他方で、住宅・水道・電気・ガス料金カテゴリは平均9.2%上昇となり、なかでも電気料金は、7月は前年同月比で39.5%上昇を記録した。
(2)パナマ・デジタルの新プログラムに60百万ドル投資
23日、政府イノベーション事務局(AIG)はDX、サイバーセキュリティ、データ保護、行政とのやりとりの最適化、強固な情報管理などの側面を包括的に取り組むため、パナマ・デジタル・プログラムの開始を発表した。当該事業は米州開発銀行(IDB)から60百万ドルの償還可能資金を通じて融資され、第一段階ではデジタルハブ自体の入札を開始し、その後、地理空間戦略、手続き、サイバーセキュリティに順に取り組む予定である。第2段階では更に1,300万ドル投資も計画されている。
(3)正規雇用は2019年比5%減、失業率は32%増を記録
国立統計センサス局(INEC)によると、2023年7月時点の失業率8.9%、失業者数は19万3,200人(2019年比32%増)であり、失業率は前回2022年4月比1.0%減、他方で、パンデミック以前の水準(7.1%以下)からはほど遠い水準である。雇用者内訳をみると、非正規雇用者73万8,000人(非正規雇用率48.2%)、正規雇用1,105,926人(2019年比5%減)であり、雇用者のうち公共機関では31万1,515人(2019年度比6%増)、民間部門では700,740人(2019年度比9%減)である。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)パナマに本社を置く多国籍企業で構成されるパナマ多国間企業本部商工会議所が設立3日、パナマ多国籍企業本部商工会議所(CASEM)がパナマで多国籍企業本部(SEM)及び多国籍企業製造サービス(EMMA)として認可された企業14社で発足した。同日、貿易産業省(MICI)及びCASEMは協力協定に調印し、投資促進活動、SEM制度及び経済活動に影響を与える可能性のある政策についての協議や対話、データ、経験、ベストプラクティスの交換などの面で協力することを発表した。
(2)米国はパナマの投資環境を「良好」と評価
米国国務省は報告書「パナマ投資環境2023」を発表し、パナマの外国直接投資(FDI)環境を「良好」と評価する一方、問題がないわけではないとし、構造的な欠陥がビジネス環境を圧迫していると指摘した。具体的には、「パナマはパナマ運河、世界第2位のフリートードゾーン、高度な物流・金融業務を擁し、何十億もの外国直接投資を誘致している一方で、パナマの構造的欠陥である高レベルの汚職、政府の遅延や債務不履行、教育水準の低い労働力、脆弱な司法制度が新規投資を妨げ、既存の投資を複雑化する要因となっている。」と分析している。
(3)トクメン空港は2023年末までに1,720万人の利用者を見込む
2日、アラブ・トクメン国際空港公社総裁は、2023年度のトクメン空港ターミナル利用者数の見通しに関して、「2019年は記録的な利用者数約1,600万人であったが、2023年はその数字を上回る1,720万人を見込む。当面のあいだ、トクメン空港はヨーロッパからのバカンスによる観光需要の増加など航空需要は旺盛であり、増便が続くことで過去最多を更新する。現在は16社の民間航空会社を通じて、86の目的地への直行路線が就航しており、6月に入出国地域別では南米(44%)、北米(28%)、カリブ海諸国(12%)、中米(10%)、ヨーロッパ市場(5%)であり、トランジット比率は67%である。」と述べた。
(4)パナマは2023年1~4月で100万人以上の観光客を受入れ
パナマ観光局(ATP)の最新の報告書によると、2023年1~4月の観光客は100万1835人(対前年同期比73.2%増)となり大きく増加した。内訳をみると、国内目的地に24時間以上滞在した観光客が672,468人(同49.1%増)であり、24時間未満の滞在で入国した旅行者数103,490人(同13.2%増)と比べると伸びが大きい。また、最も大きな伸びを示したカテゴリが「クルーズ船観光客」であり、225,877人(同529.9%増)である。また、同時期の観光業界からの外貨収入は、19億6,130万ドル(同28.5%増)となり、パナマへの旅行者の平均滞在日数は約8日間で、1回の滞在で1,957ドル(1日平均245ドル)が算出されている。
(5)パナマ・コンベンション・センター(PCC)は第1四半期に1,500万ドルの収入
PCCは2023年第1四半期に1,500万ドルの収入と55,000人の来場者(その内60%が海外からの来場者)を記録したと発表した。ロドルフォ・デル・バジェPCCダイレクターは、「2023年通年では100以上のイベント、15万人の訪問者を達成する見込みである。当該記録は過去最高であり、年末までこの数を更に伸ばせるようにすべての月で大規模イベント誘致等の取り組みを強化する。これまで、PCCはパナマ観光局(ATP)から運営資金として助成金を年間140万ドル受け取っていたが、今年からは停止しているので、2年間で自助努力での運営を達成した。」と述べた。
4.パナマ運河、海事関連
(1)パナマ運河、少雨・乾燥により2024年度に200百万ドルの収入減と試算3日、バスケス運河庁長官は、「現状では運河に水を供給する人工湖の水位が、乾季が始まったとき(2024年1月頃)には最大容量に達していることを想定・希望しているが、そうならなかった場合、より厳しい制限(30隻~32隻/日の通航)を検討しなければならない。現状、2024年度(2023年10月1日~2024年9月)は約200百万ドル(182.69百万)の収入減少を見込んでいる。今年度(2023年度)は予算目標を達成し、定められた拠出金を拠出できると考えているが、他方で、現在、国会審議中の2024年度予算規模は約4,900百万ドル(フル稼働時:5,700百万ドル)への減収を想定している。」と述べた。
(2)運河の喫水制限により、一部の貨物を陸上に迂回させる
運河庁の隻数制限措置により一部の船社は、大西洋や太平洋の港でコンテナを荷揚げしてトラックや鉄道の陸路で輸送して重量を減らし、水路での輸送を継続することを選択している。パナマ海事会議所会頭は、「ここ数週間で、週末に港でのコンテナ荷降ろしを選択した船会社に対応するため、陸上輸送会社の貨物輸送能力が40%から50%増加した。」と指摘した。また、貨物鉄道を運営するパナマ運河鉄道会社のトーマス・ケナ社長によると、「鉄道サービスに対する需要も高まっており、今年に入って貨物輸送量はプラスに転じ、この2ヶ月で輸送量は20%増加した。」と述べた。
(3)パナマ運河庁は2万ヘクタールの原生林地帯を取得予定
パナマ運河庁(ACP)は流域管理、水資源管理用地及び物流計画の実施のため、土地と水域を含む総面積約20,169ヘクタールを政府に要求した。該当地域はパナマ国西部のココリ川とトリニダード川の間に位置し、ACPは具体的な位置を特定していないがほぼ原生林地帯である。政府は総面積約20,169ヘクタールのうち、89%は無償でACPへ譲渡され、残りの11%は売買契約(商業的価値のある土地に相当)に基づいて取得される。売買契約に基づく土地は約2,300ヘクタールであり、運河理事会承認(会計検査院を経て)を取得し、価格は500~550百万ドルで既に経済財務省(MEF)で手続き中である。
(4)鉱山開発中の流域は運河流域と相互作用しない
24日、パナマ運河庁(ACP)は、ミネラ・パナマ社が鉱山開発中の流域は、運河の水系と相互作用や接触・影響はないことを明らかにした。政府とミネラ・パナマ社とのあいだの協議で、議会承認待ちの採掘契約のなかで、該当する鉱山が北コクレ川流域(流域番号105)とベレン川流域(流域番号103)を使用していると記載されている。他方で、2つの流域(流域番号103と105)の排水体系は、カリブ海方面に流れ込み、現在の運河水路流域(流域番号115)とは完全に独立している。
5.インフラ関連
(1)パナマ首都圏都市交通3号線整備事業の工事進捗率は42%
31日、メトロ公社はパナマ首都圏都市交通3号線整備事業(メトロ3号線事業)の工事進捗率が42%であると発表した。現在は主にシウダ・デル・フトゥーロ駅に付帯する車両基地からビスタ・アレグレ駅までの区間の整備が行われており、橋脚やモノレールが走行する桁の設置が進んでいる。
(2)メトロ3号線事業のトンネル掘削機を運用する下請け契約に調印
25日、メトロ公社はメトロ3号線事業のメインコントラクターであるHPH・ジョイント・ベンチャー・コンソーシアム(HPH JV)がパナマ運河横断部でトンネルを掘削する際のトンネル掘削機の運転について、CRTG社、China Railway Tunnel Group社と下請け契約したことを発表した。下請け業者の選定はHPH JVの権限であり、複数社から入札を受けた上で選定され、メトロ公社は同社が業務に必要な条件を満していることを確認した。
(3)バルー港は2024年に建設開始
17日、パナマ国際海事大学(UMIP)で開催された「国家物流統合会議:パナマ西部地域の海上輸送連結」において、チリキ県ダビの「バルー港」の建設が2024年第1四半期に開始される予定であることが明らかになった。100%米国資本により建設が予定され、建設段階では250百万ドルの投資額が見込まれており、約1,200人、操業段階で約650人の直接雇用を創出されると見込まれている。
- 主要経済指標(2023年8月)(Excel)(175KB)