パナマ経済月報 (2023年4月報)

令和5年5月4日
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●2023年度以降のパナマの経済成長率(GDP)予測
●2023年第1四半期の消費者物価指数(CPI)は2%上昇
●パナマ港湾での第1四半期のコンテナ取扱量は前年比わずかに減少
●パナマ運河第四架橋の建設継続に関する文書に署名
 

1.経済全般、見通し等

(1)政府補助金は4年間で9,779百万ドル、財政への負担は重い
経済財政省(MEF)によると、2019~2023年度の4年間で総額9,779百万ドルが政府補助金に費やされており、直近の2023年度期首予算では2,347百万ドル(前年度改訂予算比18.7%減、542.39百万ドル減)であり、パナマ運河の国庫納付2,494百万ドルに匹敵する金額である。
 
(2)コロンビアの外国人預金・債権残高がトップ
パナマ銀行監督庁(SBP)によると、国際銀行センター(IBC)の外部預金は、2022年末で35,745百万ドル(前年比5.5%増)となり、外国人預金残高は、第一位がコロンビア(7,649百万ドル:預金全体の21%)、第二位がペルー(2,359百万ドル)、第三位がベネズエラ(2,144百万ドル)となった。コロンビアの預金が多い理由は、「パナマ国内にコロンビアが出資する企業が多い」「コロンビア・ペソの通貨不安(近隣のドル経済であるパナマへの投資」「コロンビアからの出稼ぎ労働者が多い」ことがあげられる。
 
(3)政府はパナマ貯蓄基金(FAP)に9億7,000万ドルを未払い
FAPによると、FAPに対する経済財務省(MEF)の未払い残高が増え続けており、9億7,020万ドルに達することが明らかになった。2012年6月5日の法律38号では、パナマ運河庁(ACP)の国庫納付額の一部をFAに納めることが規定されているが、MEFは2018年以降未払いを続けている(2020年以降は未払い額が急増)。なお、FAPは2023年度第1四半期の収支発表を行い、純資産総額1,336.7百万ドルで47百万ドル(債券リターン:2.88%、株式リターン:7.44%)の収益をあげたと発表した。
 

2.経済指標

(1)2023年度以降のパナマの経済成長率(GDP)予測
4日、世界銀行は経済レポート「統合の可能性-変化する世界経済における機会」を発表し、そのなかでラテンアメリカ・カリブ海諸国の2023年GDP1.4%(前回1月予測値1.3%)、2024年GDP2.4%とし、国別でパナマは、2023年GDP5.7%、2024年GDP5.8%、2025年GDP5.9%と予測している。世界銀行のラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミストは、「今後のパナマは、地域内では堅調にGDPが推移する見込みである」と述べた。
13日、IMFは春期定期総会のなかでパナマの2023年GDPを域内最高水準の5.0%と予測した。
27日、CAFの年次幹部会合において中米各国のGDP予測の発表があり、パナマは2023年3.8%、2024年4.3%、2025年 5.0%の予測となっている。
 
(2)2023年第1四半期の消費者物価指数(CPI)は2%上昇
国立統計センサス局(INEC)によると、2023年第1四半期(1~3月)のCPIは2%であり、前年同期の1.3%と比べると増加となった。CPI上昇となったカテゴリは、住宅、公共インフラ(水道、電気、ガス)11.4%で最大の上げ幅となり、食品と非アルコール飲料4.9%、レストランとホテル4.3%、教育 3.7%、雑貨及びサービス3.5%、アルコール飲料とタバコ3.2%である。一方で、減少となったカテゴリは輸送6.6%減、保健3.1%減、衣類及び靴0.8%減、通信0.4%減となっている。
 
(3)基礎的食料品バスケット指数(CBFA)は増加傾向
消費者保護・公正取引庁(ACODECO)は定期報告で、パナマ市及びサン・サンミゲリート市のCBFAは、2023年2月平均価格284.38ドル(前年比3.7%増)、3月平均価格286.38ドル(前年比3.89%増)であると発表した。主要品目別平均価格をみると、肉類は2023年2月に98.35ドル(前年比1.6%増)・3月に99.42ドル(前年比3.6%増)、野菜は2023年2月に27.6ドル(前年比15.91%増)・3月に27.32ドル(前年比14.65%増)、乳製品は2023年2月に39.75ドル(前年比4.5%増)、3月に40.75ドル(前年比5.3%増)と増加傾向を示した。
 
(4)2023年第一四半期の建設許可額は2019年を上回る
29日、パナマ会計検査院は、2023年第一四半期の建設許可額 338.9百万ドル(前年比80.4%増、2019年度比39.8%増)となったと発表した。内訳をみると、住宅部門189.1百万ドル、非住宅部門(倉庫、オフィス、インフラ)149百万ドルであり、住宅向けの優遇金利が1月に失効した影響もあり、非住宅部門は住宅部門に比べ大きな伸び率となった。国内地域別に見ると、パナマ(217.7百万ドル)、アライハン(45.5百万ドル)、ラ・チョレラ(34.4百万ドル)の3地区に建設プロジェクトが集中している。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)パナマはボーイングの主要なマーケットの1つ
14日、コパ航空は2023~2028年の中期経営計画のなかで、新型B-737MAXを15機発注して、2,100百万ドルの投資を行うと発表した。直近のコパ航空は2023年に737 MAX9が納品され、99機(B737 MAX9:32機、B737 800NG:58機、B-737-700NG:9機)体制となる見込みである。ボーイング社のランダー・コマーシャル担当エグゼクティブダイレクターは、「ボーイング社は、2023年に全世界で400機~450機を納入するが、そのうちの10%~15%(40~68機)がラテンアメリカ向けにあたる。特に、パナマは主要なマーケットでありビジネス関係は非常に広範となっている。」と述べた。
 
(2)トクメン国際空港の利用者数は1年で24%増加
12日、トクメン空港公社は2023年第一四半期(1月~3月)の利用者数が420万人(前年比83万人増・24%増)となったと発表した。利用者のうちの81%がトランジットであり、旅客出発地別は南米44%、北米28%、カリブ海11%、中米11%、ヨーロッパ6%であった。当該サービスは17社の航空会社が83渡航地で提供している。
19日、パナマ観光局(ATP)によると、2023年1月の海外からの観光客数は28万4,000人(前年比104%増、2019年比7%増)となり、パンデミック前を上回ったと発表した。
 
(3)コロン・フリーゾーンの貿易額は2023年1月~2月で前年比41.5%増
コロン・フリーゾーン(CFZ)庁によれば、2023年1月~2月の貿易額は4,872百万ドル(対前年比41.5%増、対前々年比100.2%増)となり、パンデミック前の2019年の2,846百万ドルも大幅に上回る記録となった。貿易額の内訳は、再輸出2,818百万ドル、輸入2,530百万ドルとなっている。輸入先は中国本土、EU、シンガポール、米国、メキシコ、香港、ベトナムが全体の71%である。他方で、主要な再輸出先はベネズエラ、コスタリカ、コロンビア、グアテマラ、ドミニカ共和国、米国、ホンジュラスである。主要な取扱商品は、電子製品、医薬品、化学品、香水・化粧品、衣料品全般、卑金属、アルコール飲料となっている。
 
(4)国際展示会(Expocomer、Expo Logistica Panama、Expo Turismo)はパナマ国内で経済効果48.2百万ドル
パナマ商工会議所(Cciap)によれば、3月28日~30日の3日間で開催された国際展示会(Expocomer、Expo Logistica Panama、Expo Turismo)の参加企業は8百社で、延べ6,254件のビジネスアポイントメント、16,450件の交信がなされ、合計134.4百万ドルの商取引が行われた。更に、30カ国・2万人以上の参加者のホテル宿泊、交通、観光ツアーなどで48.2百万ドルの経済効果を生み出した。なお、イベントへの参加国・地域は、31カ国であった。
 
(5)サウジアラビア、パナマで投資機会を探る
27日、バドル・アルバドル・サウジアラビア投資・IR担当副大臣及びアブドゥルラフマン・バキル・サウジアラビア投資省米州代表が率いるサウジアラビア代表団がパナマに来訪し、コルティソ大統領、アルファロ貿易産業大臣、テワニー外務大臣等の閣僚と面談を行った。パナマ政府は「パナマとサウジアラビアに二カ国関係の発展には潜在的に大きな可能性があり、特にビジネス面ではジョイントベンチャーやパートナーシップのチャンスを生かして両国で取り組んでいきたい」と発表した。
 

4.パナマ運河、海事関連

(1)パナマ港湾での第1四半期のコンテナ取扱量はわずかに減少
パナマ海事庁(AMP)によると、2023年第1四半期のコンテナ取扱量は1,974,864.5TEU(前年比0.95%減)となった。港湾別には、マンサニージョ港(MIT)625,893.25TEU(前年比6.19%減)、バルボア港522,589.5TEU(0.52%減)、PSAターミナル274,757TEU(1.57%減)、ボカス・フルーツターミナル14,946TEU(24%減)となった一方で、CCTコロン・コンテナ・ターミナル港329,156TEU(8.86%増)、PPCクリストバル港208,122.75TE(4%増)となった。要因として米国の経済失速のため消費需要が落ち、メーカー工場が過剰な在庫をかかえている為、複数の船会社は配船を縮小・キャンセルしている。他方で、パナマは近隣他国に比べれば影響は最小に抑えられており、今後の中国を中心としたアジアからの貨物量回復が期待される。
 
(2)パナマ運河庁(ACP)は水不足によりネオパナマックスの喫水制限を実施
18日、ACPは通航船舶に対して、19日(水)から喫水制限(最大許容喫水50フィートから47.5フィート)を実施することを発表した。ACPは「今期の降雨は例年に比べ不足気味である。3月に運河を通航したネオパナマックス船は全体の27.76%占め、コンテナ船44.7%、ガス運搬船25.4%、ばら積み船13%などの構成となっている。既に、3月下旬に影響が想定される対象顧客には通知を行っている。」と説明した。また、国立水道局(Idaan)も「いくつかの国内浄水場では貯水水位低下により稼働が止まっている。2023年に水不足が更に深刻になった場合に備えて、飲料水の合理的な使用を呼びかけている」と発表している。
 
(3)新規港湾投資に約3,000百万ドルを要する
ブスタビノ・パナマ海事庁(AMP)副長官は、輸出促進機関(PROPANAMA)が開催した「パナマにおける持続可能な投資」に関する最近のフォーラムで、「港湾・海事政策に2,980百万ドルが必要であり、そのうち2,805百万ドルは新規港湾投資、残りがメンテナンスである。AMPは25の国有港(コンセッション契約)を締結しており、そのうち5港が世界的な港である。新規港湾投資先は、太平洋岸59%、大西洋岸41%である。ラテンアメリカ開発銀行(CAF)と共同で策定した2040年海上交通計画によると、ヴァカモンテ、アグアドゥルセ、プエルト・アルムエルス、ペドレガル、プエルト・オバルディアなどの地域を含む全国26港の拠点に投資を行うことを目標としている。」と述べた。
 

5.インフラ関連

(1)パナマ運河第四架橋の建設継続に関する文書に署名
公共事業省は、資金不足により事業が中断していたパナマ運河四架橋の建設について、3月30月に受注者との間で建設継続に関する契約書の別紙(Adenda)に署名したと発表した。この別紙には、メトロ3号線との分離やビューポイント、レストランおよび維持管理等の廃止が盛り込まれた。本事業は、2018年に中国企業が受注し着工命令が出されたが、資金不足により事業が中断し、コストカット及び資金調達の調整が行われていた。
 
(2)パナマに約5,000百万ドルのグリーン水素プラントを建設する計画が進行中
18日、ホルヘ・リベラ国家エネルギー庁長官は、グリーン水素に関する国家戦略を4月28日の公開協議に提示すると発表した。エネルギー庁は、「今次発表は、パナマをグリーン水素のハブとして確固たるものとするための一連の国家戦略である。パナマはグリーン水素生産に関して、2030年、2040年、2050年の目標を明確に掲げており、国内での方向性としては物流、貯蔵、マーケティングの強化が鍵となる。具体的には4つの事前実現可能性調査が準備されており、そのうちの1つは代替燃料の変換、加工、流通のためのプラントの建設となる見込みである。プラントで製造される代替エネルギーは、グリーン水素、エタノール、メタノール、パラフィンの変換プラントで、約5,000百万の投資規模である。当該投資に対して、国内外の投資家に詳細な情報を提供して速やかに調査が実施できるようにする。」と説明した。
 
(3)トクメン空港公社によるコロン県のエンリケ・ヒメネス空港の営業権入札に10社が関心を示す
23日、アラブ・トクメン空港公社総裁はエンリケ・ヒメネス空港の営業権入札の応募に対して、10社が関心を示していることを明かした。同空港は2013年に5,800万ドルの投資を行い開設されたが、燃料貯蔵システムが無い欠陥をかかえている為、旅客や貨物の定期便が就航したことがない。従って、他の4つの地方空港とあわせて年間150万ドル損出を生み出す要因となっている。アラブ総裁は「エンリケ・ヒメネス空港はコロン・フリーゾーンからの物流を強化し物流ハブとしての重要拠点していかなければならない。また、コロン2000ポートに寄航する観光客への補完的な需要がある。」と述べた。
 
(4)公共事業省が国内初のPPP事業の入札期限を再度変更
28日、公共事業省(MOP)は、国内初の官民パートナーシップ事業(PPP)となるパンアメリカンハイウェイの道路補修並びに維持管理契約の入札期限を2ヶ月間延長し、6月30日に変更した。本事業は、パンアメリカンハイウェイのパナマ市東部のパコラからダリエンのヤビサまでの区間の道路補修並びに維持管理を行うものであり、参考価格は387百万ドルとされている。