パナマ経済月報(2023年3月)

令和5年4月14日
担当:小松原書記官
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主な出来事
●2022年度の名目GDP及び実質GDPの発表
●パナマ政府とミネラ・パナマ社とのドノソ鉱山における銅生産に係る契約内容改定案の妥結
●米国によるイラン制裁対象とパナマ船籍舶への影響
●パナマ首都圏都市交通3号線整備事業(第二期)L/Aに調印
 

1.経済全般、見通し等

(1)政府は2銘柄・1,800百万ドル規模のグローバル債券を発行
21日、アレクサンダー経済財務大臣は、パナマ政府のグローバル債券2銘柄を総額1,000百万ドル(2054年満期、クーポン及び利回り6.853%)及び総額800百万ドル(2035年満期、クーポン6.40%・利回り6.161%)で発行したと発表した。同債券発行により調達された資金は、2023会計年度及び次会計年度以降の予算の補填及び過去に締結した債券の購入、スワップ、償還等に使用される。経済財務省担当官は、「当該債券発行の市場の反応はポジティブであり、既に9,500百万ドル以上の入札があり、北米、欧州、アジア、中南米、中東から260名以上の投資家が参加した。この反応は、外国人投資家の同国に対する信頼を示すものである。」と述べている。
 
(2)デジタルバンキング取引件数は1,598百万件
パナマ銀行監督局(SBP)によると、2022年1月~12月のデジタルバンキング取引件数は1,598百万件、過去4年間(2019年~2022年)で62%増となり、その一方で一般銀行店舗数(2022年12月末時点:501店舗、2019年1月末:548店)は減少傾向と発表した。メルガーSBPリスク管理担当ダイレクターは「パナマでは近年、銀行のデジタル化や金融サービスの電子化により、現金への依存度が低下している。取引全体のなかで、モバイルバンキングが最大シェアを占め、4年間で175百万件から557百万件(218.28%増)に急増した。」と述べた。
 
(3)パナマ貯蓄基金が史上最悪の投資結果を記録
政府系ファンドのパナマ貯蓄基金(FAP)の2022年投資結果として、128.8百万ドル(投資収支8.64%減)の巨額の投資損失を計上した。2022年はロシアのウクライナ侵攻、サプライチェーンの混乱、インフレ抑制のための米国連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げの動きは、いずれも市場の不確実性を高め、投資の重しとなり、その結果、債券及び株式ともに大幅な評価額減少となった。他方で、FAPの2012年設立以来の通期運用益はプラス圏を確保している。
 
(4)2023年1月の信用ポートフォリオは上昇し、国際銀行センターの預金は減少
パナマ銀行監督局(SBP)は2023年1月の信用ポートフォリオを報告し、そのなかで国内銀行システムの融資残高は2023年1月末で58,639百万ドル(6%増・33億2,600万ドル増)であり、主に商業及び工業ポートフォリオでの法人融資が増加した為と発表した(唯一の融資減少は建設業のみ)。国内銀行システムの資産合計は、139,838百万ドル(前年比4,863.7百万ドル増)で、不良債権比率は4.1%(30日以上90日未満の延滞1.8%、90日以上の延滞2.3%)となっており、SBPは「世界的な金利上昇や外部金融市場のリスクを考慮すると、2023年はポートフォリオの質にかかる指標に多少の悪化が見込まれる。他方で、直近のSVBの破綻やクレディ・スイスの問題はパナマ国内との取引は確認されず、影響は無い。」と述べた。一方で、パナマ国際銀行センター(海外投資家の預金、ローン含む+国内銀行システム)の預金残高は合計98,379百万ドル(前年比175.6百万ドル減)であり、外国人の資金の流出が確認された。
 
(5)最終受益者登録は50%完了
非金融機関監督庁(SSNF)は、受益者名簿に登録された移住者代理人数が2,500名を超えた結果、2023年3月30日時点で最終受益者登録20万5932件(全体の50%)であり、2022年12月の約65,818件(全体の29%)から大幅に増加したと発表した。
 

2.経済指標

(1)2022年度の名目GDP及び実質GDPの発表
16日、会計検査院(INEC)は、2022年度の実質GDP73,449.3百万ドル・10.8%増、名目GDP 76,522.5百万ドル・13.5%増を発表した。当該発表とあわせて、経済財務省(MEF)は、2022年度末の債務残高対GDPは57.8%と算出している。なお、2022年2月にINECは当該基準年度を2007年から2018年に変更している。
 
(2)パナマの2月のCPI上昇率2%を記録
17日、2023年2月のパナマの消費者物価指数(CPI)前年比2.0%増(1月と同水準)が発表された。カテゴリの傾向は先月と同じであり、住宅、水道、電気、ガスが前年比11.4%増、食品と非アルコール飲料が前年比5.2%増、レストラン及びホテルが前年比4.6%増、教育が前年比3.7%増、アルコール飲料とタバコが前年比3.3%増であった。対照的に減少を記録したカテゴリは、運輸が3.0%減、保健が2.7%減などとなった。
 
(3)パンデミック後のパナマのホテル業界の現実:回復してもなお4,500室が閉鎖中
パナマホテル協会(Apatel)は、2022年度のホテル稼働率平均52%(2021年度:ホテル稼働率平均39%)であると発表した。ヒメネス・ホテル協会代表は、「パナマ国内には3万室強のホテルがあり、その大部分は首都にある。パンデミックの影響が限定的となり、閉鎖されたホテル・客室数は2022年2月時点で、25~30軒・4,500室(2022年5月:34軒、6,300室)であり以前より改善している。他方で、目標とするホテル稼働率平均60%には届いておらず、国内観光需要喚起の一層の取り組みが官民で求められる。」と述べた。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)パナマ政府とミネラ・パナマ社とのドノソ鉱山における銅生産に係る契約内容改定案の妥結
 8日、当国政府はミネラ・パナマ社との間でコロン県ドノソ鉱山における銅生産に係るロイヤリティの見直し等契約内容の改定案を妥結した。当該契約内容の改定は2021年1月17日に一度合意をしていたが、ミネラ・パナマ社は外部環境の変化(鉱物資源価格等の変化)を理由に1年以上も(事実上の)再交渉を実施してきた。

(2)米国は二国間貿易促進協定(TPC)を再交渉ではなく、枠組み内での実施に重点を置く見込み
3月19日~23日にかけて、アレクシス・テイラー米国農業次官(対外貿易・農務担当)を筆頭とした米国の農業起業家および生産者団体26名の派遣団は、パナマを訪問し、コルティソ大統領はじめ、バルデラマ農業開発大臣、テワニー外相などと二カ国間貿易促進に関する会談、協議をおこなった。会談では、パナマにおけるTPCの取り組みや、パナマの農業分野における能力開発プログラムについて話し合われたが、テスラー米国農業次官は、「TPCは再交渉ではなく、実施に焦点を当てている。双方でどのように実施されているかを確認するメカニズムとして、来月には再度二カ国間協議を実施する」と述べた。
 
(3)2023年1月 コロン・フリーゾーン(CFZ)の貿易額は前年同月比34.1%増でスタート
コロン・フリーゾーン庁によると、2023年1月のCFZ貿易総額は2,300百万ドル(2022年:1,715百万ドル、2021年:1,182百万ドル)と前年・前々年を大きく上回った(前年同月比34.1%増、2019年1月比:53.5%増)。内訳をみると、輸入976.1百万ドル(前年同月比4.1%増)、再輸出1,324百万ドル(前年同月比70.1%増)である。輸入元は中国本土、欧州連合、シンガポール、米国、メキシコ、香港、ベトナムで、輸入全体の71%を占め、再輸出先はベネズエラ、コスタリカ、コロンビア、グアテマラ、ドミニカ共和国、米国、ホンジュラスである。主要な品目は電子製品、医薬品、化学品、香水・化粧品、衣料品全般、卑金属、アルコール飲料となっている。
 
(4)パナマ、UAEで新しいニッチな投資先を探る
16日、PROPANAMA庁は、ヴェルガラ長官がUAE(アラブ首長国連邦)で開催された第18回ドバイ国際木材・機械博を訪問し、UAEのアラブ首長国連邦国際投資家会議(UAEiic)(2009年設立)とビジネス環境向上及び投資促進にかかる協定・覚書を締結したと発表した。会見でUAE側の代表は、「中東湾岸諸国によるラテンアメリカへの投資総額の77%をUAEが占めており、特にパナマ運河は貿易交流の要所であり、約6億5000万人の人口を抱える中南米市場への非常に重要な商業ハブである」と応じた。
 
(5)トクメン国際空港が中米・カリブ海地域の「ベスト・エアポート」に選出
21日、オランダのアムステルダムで開催された「World Airport Awards 2023」の受賞式で、トクメン国際空港が中米・カリブ海地域のベスト・エアポートに選出された。同賞はコンサルタント会社Skytrax社が実施し、全世界550以上の空港を対象に、アクセス、公共交通機関、快適性、清潔さ、セキュリティなど39項目から、各空港が提供するサービスに対する数百万人の利用者の満足度を測定する調査結果に基づいている。1999年以来、Skytrax社はWorld Airport Awardsを実施しており、世界の空港業界にとって最も重要な品質基準の一つとされている。
 

4.パナマ運河、海事関連

(1)米国によるイラン制裁対象とパナマ船籍舶への影響
米国国務省は、イランの石油製品及び石油化学製品輸送または販売に関与した6つの事業体(中国、ベトナム、アラブ首長国連邦各国のイラン向け石油化学製品の輸送に関わった4社及びイラン国内の石油化学会社2社)を指定した。ブリンケン国務長官は、大統領令に従って当該措置は実施され、指定事業体は約20隻の船舶(オイルタンカーだけでなく、バルクキャリア、液化石油ガス、家畜運搬船、タグボートも含む)を保有すると述べた。パナマ海事庁は同指定に関するパナマ船籍船の対応について別途協議行っている。
 
(2)世界貿易の成長鈍化とパナマ国内港湾に与える影響
パナマ海事庁(AMP)は、2023年1月~2月のパナマ港湾各港でのコンテナ取扱量は、1,027,524TEU(前年比2.1%減)と発表した。パナマの物流コンサルタントによると、「パナマ港湾では取扱量の90%がトランシップ貨物であり、当該減少はラテンアメリカにおける商品需要の低下や民間投資の減少の直接的な影響と考えられる。今後(2023年度)は米国金利上昇の経済に与える影響や地域諸国通貨の挙動、民間及び公共投資、米国の景気後退などの要因により、取扱量の減少割合が決まるであろう」と述べた。
 
(3)パナマ、船舶登録料をゼロに
2022年7月、パナマ海事庁(AMP)のシガリスタ商船局長はパナマの船籍登録にかかる競争力低下を指摘して、他国(マーシャル諸島、リベリア)の高い成長率により世界一の座を失う可能性を指摘した。その後、2022年11月23日の海事庁決議により、2023年に規定条件をクリアしたパナマ船籍船のすべての新造船に対し、2008年8月6日の法令第57号で規定された船舶登録にかかる手数料割引(30%)に加え、最大100%までを免除することが承認された。なお、パナマ船籍船の手数料には、船舶登録手数料他、領事手数料、事故調査手数料、検査手数料などが含まれ、船舶総トン数あたり0.03%の費用(ドル)が発生する。
 
(4)パナマの今後は水資源に左右される(バスケス長官の国連会議発言)
28日、バスケス運河庁長官は米国ニューヨークで開催された国連会議「水の経済学に関する世界委員会」に出席し、「パナマは、水の確保が経済的な成否に直結する国であり、気候変動は国家にとっても最重要課題である。淡水を利用するパナマ運河は、グローバルサプライチェーンの接続点であり、絶え間ない日々のオペレーションを保証するだけでなく、パナマ国民の50%以上に水を供給し続ける責任を負っている唯一の運河となっている。パナマの水資源管理は運河庁(ACP)にとって戦略的な直面する問題であり、国際的な重要指標でもある。」と各国リーダーの前で演説した。同日に、ACPは、2020年2月に水資源確保のため導入した上水サーチャージによる収入が2022年9月迄に457百万ドルに達すると発表した。
 

5.インフラ関連

(1)パナマ首都圏都市交通3号線整備事業(第二期)L/Aに調印
 16日、パナマ・シティにて、国際協力機構(JICA)とパナマ共和国政府との間で、「パナマ首都圏都市交通3号線整備事業(第二期)」を対象として920億円を限度とする円借款貸付契約(Loan Agreement: L/A)に調印した。本事業は、2016年に開始した「パナマ首都圏都市交通3号線整備事業(第一期)」に引き続き、パナマ首都圏中心部と西部地域を結ぶ都市交通3号線をモノレール方式により整備するもの。大統領府の発表によると、アレクサンダー大臣経済・財務大臣は、3号線がもたらす社会経済的影響について、「西パナマ地区だけでなく、雇用の創出や中小企業の活動など、共和国全体に間接的に反映されることになる」と述べた。
 
(2)トクメン空港へのメトロ2号線支線が開通
 15日、ITSE駅とトクメン空港を結ぶメトロ2号線の支線が開通した。メトロ公社の発表によると、2号線の支線の全長は2キロメートルで、建設期間等に39ヶ月を要した。また、開通により、トクメン空港を利用する何千人もの利用者が市街地への交通手段を手にすることができ、約8000人の空港職員や近隣の学校、コミュニティなどの需要にも貢献するとしている。
 
(3)通信会社Digicelのコンセッション契約にかかる入札は1社のみ
16日、国家公共サービス庁(ASEP)はDigicel (Panamá), S.A.の通信サービスにかかるコンセッション契約入札にかかる応札企業が、「General Internacional Telecom Panamá, S.A. (Gitpan)」 社のみの1社であったことを発表した。応札企業は2021年からイギリスの民間投資会社の出資を受けており、エルサルバドルでの通信会社運営にかかる知見を有する。ASEPによると、入札が1社のみの場合は30日以内に再度事前資格審査プロセス(入札)を案内し、2回目の審査でもその他の応札がなかった場合、現在の応札企業の条件面の審査に入り、採用された場合には契約締結を行う流れとなる。