パナマ経済(2023年2月報)

令和5年3月14日
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●GAFIはパナマの行動計画完了期限を2023年6月に再設定
●スペインは、パナマをタックスヘイブンリストから削除
●パナマへの旅客入国者、観光客を中心に対前年94.3%増
●海洋哺乳類の捕獲を禁止
●都市衛生・廃棄物庁が新たな廃棄物処分場の運営に関する調査を開始
 

1.経済全般、見通し等

(1)GAFIはパナマの行動計画完了期限を2023年6月に再設定
24日、2023年第1回金融活動作業部会(GAFI)総会が終了した。GAFIはパナマがマネーロンダリング防止体制を強化する上で一定の進展があったことを認めた一方で、グレイリストに同国を維持し、行動計画の早期の完了を求め、完了期限を次回総会開催月の2023年6月に再設定した。今次総会前まで行動計画15項目のうち、3項目が未解決事項として残っていたが、今次総会にて1項目が達成と評価され、残りが2項目(最終受益者登録の完了、海外への犯罪捜査機関との協力)となっている。
 
(2)スペインは、パナマをタックスヘイブンリストから削除
10日、スペイン財務省はタックスヘイブンとみなされる国・地域の最新のリストを発表し、パナマを削除したと発表した。今次の最新のリストには「非協力的な管轄区域」という基準を新たに設けて評価された。その結果、パナマは経済協力開発機構(OECD)の枠組みで行われた国際レベルでの共同作業に協力的であることから今回の除外に至っている。
 
(3)政府歳入は力強い伸びを記録
パナマ国税局(DGI)によると、2022年1月~12月の経常収入(速報値)は、9,092百万ドル(対前年21%増、1,584百万ドル増)であり、パナマ運河庁からの国庫納付による拠出金3,107.1百万ドル(歳入の3分の1強に相当)を12月末に受け取ったことも公表された。内訳をみると、税収(国庫納付除く)は5,663.8百万ドル(対前年比28.5%増、1,255百万ドル増)であり、そのうち、直接税3,269.8百万ドル(対前年比35.6%増、859.34百万ドル増)、間接税2,394百万ドル(対前年比19.8%増、395.66百万ドル増)であり、コロナ禍後の経済回復を反映して、法人税や消費税などいずれも前年比で大幅な伸びを記録した。
 
(4)公的債務も金利上昇の影響を受ける
1日、米国連邦準備制度理事会(FRB)は0.25%の利上げを実施し、8回連続の利上げとなった。同日の引き上げでは利幅は少なくなり、政策金利は4.5%~4.75%となった。米国の金利上昇により、ドル経済であるパナマでは企業、個人、政府に対してのクレジットラインに対するコストは上昇基調である。例えば、パナマの銀行はノンプライム住宅ローンや個人型ローンについては、3月から0.50~1%の値上げを既に顧客へ通知しており、個人型コーン金利は9%から9.5%、ノンプライム住宅ローンは5%~6%の金利に上昇する見込みである。
 

2.経済指標

(1)2023年1月の消費者物価指数の上昇率2.7%(前月比0.9%増加)
国立統計センサス局(INEC)にると、2023年1月のCPI上昇率は2.7%を記録し、前年同月比0.9%となったと発表した。CPI上昇率の上位内訳をみると、住宅、水、電気、ガス(11.6%)、食品および非アルコール飲料(5.3%)、レストランおよびホテル(4.6%)、アルコール飲料・タバコ(3.6%)、教育(3.1%)、雑貨・サービス(2.6%)となった。なお、1.0%を超える下落率は保健・健康2.6%のみだった。
 
(2)保険産業は2022年の年間保険収入1,700百万ドルを突破
パナマ保険・再保険監督庁によると、2022年の年間保険収入は1,720百万ドル(前年比5.6%増)になったと発表した。内訳をみると、健康保険は421.9百万ドル(前年比13.6%増、契約数15.1%増)であり、総合保険に加え、特定の病気のカバーする保険も人気である。同時に健康保険請求も伸びており、総額314.4百万ドル(前年比8.1%増)となった。また、自動車保険も285.5百万ドル(対前年2.7%増)となっている。
 
(3)国際労働機関(ILO)はパナマでインフレによる実質賃金の悪化を警告
7日、ILOは、世界労働概況報告書を発表し、パナマの2020年のパンデミック以降、賃金購買力低下(過去3年で約5%減)及び、インフレの加速が実質賃金にも負の影響となっていることを指摘した。また、実態として、パナマでは2020年以降に多くの企業が25~50%以上の賃下げを選択し、労働者の解雇や事業活動停止によるレイオフが行われたと記載された。パナマの労働市場専門家は、「特にパナマでは、平均最低賃金が400ドル未満/月である労働者が約19万7,471人おり、所得格差が地域諸国に比べても大きい国である。昨今のインフレ下では低所得者を中心に賃金上昇が物価上昇に追いついておらず、相対的に実質賃金も低下している。」と分析している。
 
(4)2022年の建設投資額は918.8百万ドルに到達
パナマ会計検査院によると、2022年1月~12月迄に建設投資額は918.8百万ドル(前年比27%、196.2百万ドル増)と発表した。建設業界は、2019年にパナマ国内総生産(GDP)14%に貢献していたが、パンデミックにより前年比51%減となり、深刻な打撃を受けた。しかし、2022年の同投資額はパンデミック前2019年の水準(1,130百万ドル)には達しなかったものの、年間8~10%増加を見込むパナマ建設会議所(Capac)見通しを大きく上回った。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)パナマへの旅客入国者、観光客を中心に対前年94.3%増
国立統計センサス局(INEC)によると、2022年1月~12月のパナマ旅客入国者(速報値)は264万8696人(対前年94.3%増)であり、入国者の内訳では居住者85万1033人(66万6517人:パナマ国籍、18万4516人:外国籍)、残りが観光客149万1398人、長期滞在29万819人と発表した。トクメン空港に到着した入国者地域別では、中米32.1%、南米27.7%、北米19.7%、ヨーロッパ12.3%、アジア4.3%、カリブ諸国3.4%、アフリカ0.3%、オセアニア0.18%となっている。なお、クルーズ港から入港した乗客数は、8,066人(前年比58.6%増)となっている。
 
(2)トクメン空港は2019年以降初めて月間最多利用者数を更新
トクメン空港公社によると、2022年1月のトクメン空港月間利用者数は、過去最高の1,516,425人(全同月比124%増、2019年同月比2.2%増)を記録し、トランジット利用者は全体の71%であったと発表した。トクメン空港はコパ航空を中心に民間航空会社17社がサービス提供し、83の目的地への直行路線を維持おり、発着地域地別では南米45%、北米28%、カリブ海地域11%、中米10%、欧州5%となった。
 
(3)航空貨物は2022年前年比16%成長する
トクメン空港公社によると、2022年1月~12月までのトクメン国際空港の貨物取扱量は234,935トン(前年比16%増・32,202トン増、2019年比43%増・70,245トン増 )となり、2年連続で荷動きの伸びを記録した発表した。同取扱量のうち、65.77%(154,533トン)は貨物航空会社が輸送し、残りは旅客機の貨物室で輸送している。
 

4.パナマ運河、海事関連

(1)海洋哺乳類の捕獲を禁止
2023年2月6日付の法令第365号(2005年法令第13号の修正・追加)が施行され、パナマの海洋回廊内での海洋哺乳類の狩猟や捕獲は禁止された。ただし、例外的な海洋哺乳類の捕獲には医療リハビリ行為を要するときのみ管轄当局の監督下で許可される。以前の2005年法令から海洋哺乳類の対象種が増加し、「教育・科学、動物衛生目的」での捕獲許可が削除された。
 

5.インフラ関連

(1)都市衛生・廃棄物庁が新たな廃棄物処分場の運営に関する調査を開始
 都市家庭廃棄物庁(AAUD)は、2月14日より、現在の廃棄物処分場として使われているセロ・パタコンに代わる新たな廃棄物処分場の設計、建設及び運営に係る調査を開始した。セロ・パタコンでは、本年2月だけでも2件の火災が発生しており、フィロスAAUD長官代理は、「セロ・パタコンを閉鎖のうえ、新たな廃棄物処分場の整備が必要だ」と述べた。
 
(2)公共事業省が国内初のPPP事業の入札日を変更
 公共事業省(MOP)は、国内初の官民パートナーシップ事業(PPP)となるパンアメリカンハイウェイの道路補修並びに維持管理契約の入札日を3月22日から5月2日に変更した。本事業は、パンアメリカンハイウェイのパナマ市東部のパコラからダリエンのヤビサまでの区間の道路補修並びに維持管理を行うものであり、参考価格は387百万ドルとされている。
 
(3)公共事業省がアメリカ橋およびセンテナリオ橋の補修事業の入札日を変更
 公共事業省は、アメリカ橋の補修事業の入札日を2月28日から3月17日、センテナリオ橋の補修事業の入札日を2月27日から3月16日にそれぞれ変更した。両事業は、各橋の補修を行うものであり、アメリカ橋の補修事業の参考価格は5.2百万ドル、センテナリオ橋の補修事業の参考価格は5.6百万ドルとされている。
 
(4)パナマ市役所がシンタ・コステラに文化センター建設に係る入札を公示
 パナマ市役所は、シンタ・コステラ(Cinta Costera III)付近のエル・チョリージョ地区において、文化センター建設に係る入札を公示した。当該文化センター建設に係る参考価格は3.8百万ドル、入札は3月22日に予定されている。