パナマ経済(2023年1月報)

令和5年2月7日
在パナマ日本国大使館
担当:嶋書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
 
主な出来事
●2022年末の公的債務残高は44,274百万ドル
●2022年のパナマのインフレ率は+2.9%
●ドノソ鉱山の銅生産事業に係るコンセッション契約交渉の状況
●中断されていたパナマ運河第四架橋が再開予定
 

1 経済全般、見通し等

(1)2022年末の公的債務残高は44,274百万ドル
 経済財務省(MEF)は、2022年末時点の公的債務残高が44,274.0百万ドルであったと発表した。2021年末時点の40,487.8百万ドルに比して、3,786.2百万ドルの増加となる。エコノミストは、この状況について、「公的債務残高を減少させるためには、予算上の構造改革が必要である。しかし、2024年に控える国政選挙の前年は政治的コストを要することから、次政権発足まで公的債務残高の高止まりは続くだろう。」と見解を示している。
 
(2)世界銀行によるパナマの経済見通し
 世界銀行は、2023年のパナマの経済成長率が+4.5%になるとの予測を発表した。同行は、2022年10月時点で2023年の経済成長率を+5%と予測していたが、世界的な景気後退、インフレ等により下方修正したものである。他方、経済財務省(MEF)は2023年の経済成長率を+5%と予測している。
 
(3)燃料価格の据え置きは2月15日まで延長
 1月12日、パナマ政府閣議は、燃料価格の据え置き(1ガロン:3.25ドル)を2月15日まで延長することを承認した。パナマ政府は、「世界的に燃料価格が高騰するなか、パナマの燃料価格は世界で安価な国の一つである」と説明している。
 

2 経済指標

(1)2022年のパナマのインフレ率は+2.9%
 国立統計センサス局(INEC)は、2022年のインフレ率が+2.9%であったと発表した。物価上昇が顕著であった分野は、食品・ノンアルコール飲料(+5.2%)、レストラン・ホテル(+4.9%)、アルコール飲料・たばこ(+3.9%)等である。
 
(2)2022年10月時点のSEM制度、EMMA制度の登録企業数
 多国籍企業本部制度(SEM)登録企業数は、2022年10月時点で184社に上っている。このうち、2022年1月から10月までの間に新たに承認された企業は11社となる。
 他方、2020年に創設された多国籍企業製造サービス制度(EMMA)登録企業数は、2022年10月時点で3社となっている。貿易産業省によると、本制度については、現在、3~4社から登録申請を受けているとのことである。
 
(3)2022年のトクメン空港利用者数は15.8百万人
 トクメン空港公社は、2022年のトクメン空港利用者数が15.8百万人であったと発表した。この数値は、2021年の約9.16百万人を大きく上回るもので、パンデミック前の2019年の約16.5百万人とほぼ同水準となる。なお、2022年12月の利用者数は約1.45百万人であり、パンデミック以降、単月最高の数値であった。トクメン空港公社は、2023年の利用者数を18.2百万人、2024年の利用者数を19.2百万人とそれぞれ見込んでいる。
 
(4)2022年のパナマへの旅行者数は約1.8百万人
 パナマ観光庁(ATP)は、2022年のパナマへの旅行者数が約1.8百万人であると発表した。この数値は、2021年の440千人を大きく上回るものであるが、パンデミック前の2019年の2.2百万人には及ばないものである。ATPのエスキルドセン長官は、「2023年は、2.0~2.3百万人の旅行者数を見込んでいる。パナマ国内の観光業の強化には、旅行者がパナマに長く滞在し、多くの消費を生み出すような仕組みを構築する必要がある。」と見解を述べた。
 

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)ドノソ鉱山の銅生産事業に係るコンセッション契約交渉の状況
 1月11日、ミネラ・パナマ社の親会社にあたるファースト・クァンタム社は、2022年12月19日付けでパナマ政府より命令のあった銅鉱山の操業停止に対して、運営継続を訴えるべく控訴手続きを執った。本件は、2022年1月にミネラ・パナマ社とパナマ政府との間でドノソ鉱山事業に係るコンセッション契約の改定案に合意されていたものの、最終的には交渉が決裂したことから、パナマ政府は企業側に対して操業停止命令及び操業停止中の維持管理計画の提示を命じていたものである。両者の交渉決裂の理由は、企業側からパナマ政府に支払うロイヤリティの算定方法や支払い時期などとされている。
 なお、ファースト・クァンタム社の発表によると、2022年のドノソ鉱山での銅生産量は、当初想定の331千トンを上回る350千トンであった。同社は、交渉決裂前時点で、2023年は350~380千トン、2024年には400千トンの銅生産を見込んでいたが、今後の銅生産量は上記交渉次第となる。
 
(2)公共サービス庁が新たな携帯電話事業者の入札を行うと発表
 1月12日、公共サービス庁(ASEP)は、個人向け通信サービスのコンセッション契約の入札を行うと発表した。2022年4月にDigicelがパナマでの携帯電話事業から撤退しており、本件は改めて民間企業による運営を行わせることとなる。ASEPは、「現在、パナマでは、Cable&WirelessとTigoの2社が事業を行っているが、競争力確保のためには3社が必要になる。」と述べている。
 
(3)Tigo社が2023年内に100百万ドルの投資を行うと発表
 Tigo社は、パナマにおいて、「デジタル・ハイウェイ(las autopistas digitales)」と呼ばれるインターネット通信サービス等のネットワーク拡大のために、2023年内に100百万ドルの投資を行うと発表した。Tigo社のベニテス代表は、「インターネット利用者の増加に伴い容量拡大が求められることから、継続的な投資を行っていくことが必要である。」と述べた。
 
(4)コパ航空が新たに米国のボルチモア、エクアドルのマンタへの就航を発表
 コパ航空は、本年6月より、新たに米国のボルチモア、エクアドルのマンタの2都市への就航を行うと発表した。これにより、コパ航空は32カ国79都市へ就航することとなる。
 

4 パナマ運河、海事関連

(1)2022年のコンテナ取扱量は8.5百万TEU
 パナマ海事庁(AMP)は、2022年のコンテナ取扱量が8,518,425TEUであったと発表した。この数値は、2021年の8,623,972TEUをわずかに下回る(1.2%減)ものである。パナマのコンテナ取扱量は、2022年こそ対前年に比して微減であったものの、近年のパンデミック等に伴う物流産業の混乱のなか、2019年の7,346,859TEUから増加の傾向にある。有識者は、「パナマがパンデミック禍においても世界的にサプライチェーンを維持するために必要不可欠な場所であった。」と見解を示している。
 
(2)パナマは2022年末時点の船籍登録において世界一位を維持
 1月11日、パナマ海事庁(AMP)は、2022年末時点のパナマ籍登録隻が8,650隻、当該船舶登録トン数が245百万トンであったと発表した。この数値は、世界シェアの16%を占めるもので、昨年に引き続き世界一位を維持する結果となった。
 

5 インフラ関連

(1)中断されていたパナマ運河第四架橋が再開予定
 サボンヘ公共事業大臣は、資金不足により事業が中断していたパナマ運河四架橋について、3銀行からの資金調達の目処が立ったことから本年第2四半期に工事を再開すると発表した。本事業は、2018年に中国企業が受注し、当年末には着工命令が出されていたものの、資金不足が判明したことにより事業の中断を余儀なくされ、以降、コストカットのために設計の見直し及び資金調達に向けた調整が行われていた。本事業は、順調に進捗すれば、2028年に完成予定となっている。
 
(2)トクメン空港公社が2空港のコンセッション契約の入札を発表
 トクメン空港公社のアラブ総裁は、同社が保有する国内4地方空港のうち、ダビ(チリキ県)及びリオ・アト(コクレ県)の各空港の運営について、今年下半期にコンセッション契約の入札を行うことを発表した。これまで、国内4地方空港は毎年合計5百万ドルの財政赤字を生み出していたことから、トクメン空港公社が最適な地方空港の運営方法につき検討を行った結果、両空港についてコンセッション契約を行うことが決定したものである。なお、コロン空港(コロン県)についてはターミナル管理を民間企業に委託するものの空港の運営はトクメン空港公社が行うとともに、パナマ・パシフィコ空港(西パナマ県)はトクメン空港公社が引き続き管理・運営を行う。
 
(3)公共事業省がアメリカ橋の維持管理事業の再入札を公示
 公共事業省は、アメリカ橋の維持管理事業の再入札を公示した。本件は、1月6日に入札が行われたが、入札要件が厳しかったことから応札がなく、入札無効となっていた。なお、本事業の参考価格は5.2百万ドル、履行期限は540日となっている。