パナマ経済(2022年9月報)
令和4年10月4日
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:小松原書記官
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主な出来事
●2022年8月末時点の公的債務残高は43,083百万ドル
●2022年第2四半期のGDPは9,925百万ドル
●物価上昇はゆるやかに継続し、そのなかでは食料品の物価上昇率が最も高い
●2022年月7月までの輸出総額は2,121百万ドル
●パナマ運河庁の2023年度予算案(4,652.9百万ドル)が国会承認
●パナマ国内初のPPP事業の事前資格審査に15社が参加
1.経済全般、見通し等
(1)2022年8月末時点の公的債務残高は43,083百万ドル経済財務省財政局は、2022年8月時点の公的債務残高が43,083百万ドル(前年同期比3,413百万ドル増)であったと発表した。同債務残高は、2020年8月時点で33,579百万ドルであったところ、パンデミックに起因する歳入減を補うための資金調達により2年間で10,000百万ドル近くも急増したこととなる。この結果、公的債務残高の対名目GDP比は63%となり、財政責任法に定められた名目GDP比40%を大きく上回ることとなった(2022年の推定名目GDP68,243百万ドル)。有識者は、今後の償還や借り換えに際しての金利上昇に対して懸念を示している。
(2)2022年第2四半期のGDPは9,925百万ドル
会計検査院は、第2四半期のGDPが9,925百万ドルであったと発表した。この数値は、対2021年同期比で9.8%増(886.6百万ドル増)となる一方、新型コロナウイルス感染症の蔓延前の2019年同期比の5.4%減に相当する。第2四半期のGDPにおいては、商業、建設及び運輸といった当国GDPにおいて大きなウェイトを占める産業での回復基調が見られた。他方で、有識者は、7月に発生したデモ活動が第3四半期のGDPに影響すると警告した。
(3)修正ローンのうち約1,100百万ドルが貸し倒れの危機
パナマ銀行監督庁によると、パンデミック時に貸し付けられた修正ローン残高は、2022年7月末時点で3,850百万ドル(前年比72.7%減)であるものの、そのうち、約1,100百万ドルは回収不能カテゴリにあり貸し倒れの危機にあることを明かした。カスティージョ長官は、「修正ローンのなかには貸し倒れリスクの高いポートフォリオが存在し、その額は、1,100百万ドル近いが、パナマの金融システム規模からみれば、管理可能な金額である。他方で、克服すべき課題としては国民のより多くの雇用創出である。」と述べた。
2.経済指標
(1)物価上昇はゆるやかに継続し、そのなかでは食料品の物価上昇率が最も高い8月のパナマの消費者物価指数(CPI)は、前年同月に比べ2.1%の上昇を示した。直近のCPIをみると、6月5.2%増、7月3.5%増、8月2.1%増と変遷しており、インフレは徐々に緩やかになり始めている。内訳をみると、8月に高い伸びを示したグループは、食品・非アルコール飲料5.1%、レストラン・ホテル4.9%、教育2.5%、住宅・水・電気・ガス2.2%であり、政府の燃料補助金の効果が出て「運輸」は0.3%増にとどまった。
(2)8月の基礎的食料品バスケットの平均価格は285.06ドル
消費者保護・公正取引庁(ACODECO)の調査によると、8月の基礎的食料品バスケットの平均価格(スーパーマーケット対象)は、285.06ドル(前月比-7.46ドル)であり、減少に転じた。7月は国内の抗議活動による道路封鎖や物流の混乱により、国内生産者の作物が市場などに出荷できず、店頭価格が高騰した。他方で、8月になると、反対に供給過剰により価格が急落している。
(3)国内のショッピングセンターの売上は、2019年の数字に近い
パナマ・ショッピングセンター協会(Apacecom)によると、2022年上期の月あたりの国内のショッピングセンターの売上は、平均約400百万ドルであり、パンデミック前の2019年に近い数字(90%以上の回復)であることが報告された。同協会会長によると、2019年は、小売・流通業界では経済停滞していたため、楽観視できないが、直近の数字はパンデミックからの回復期において非常にポジティブである。閉店店舗数は減少傾向で、新規出店が増えている。
(4)米生産者は71,370ヘクタールの米を播種(はしゅ、種まきの意味)
パナマ農業開発省(MIDA)によると、2022年5月~8月で、71,370ヘクタールの播種を行い、2022年度計画9万ヘクタールの播種面積の約79%を完了したと報告した。内訳をみると、93%にあたる66,349ヘクタールが天水栽培(灌漑設備がなく、降雨に依存する土地)であり、1,237人の米生産者によって栽培されている。また、残りの7%、5,021ヘクタールは53軒の農家が灌漑設備で栽培している。MIDAは当該播種による2022年農業年度(農業年度:5月~4月)予想収穫量は940万キンタル(≒4,264万トン)であり、主食として世界的な米消費国家であるパナマ国民の年間消費量600万キンタル(≒2,721万トン)を満たし、自給自足を果たすものであると説明している(ただし、米の収穫量は生育に左右されやすく、天候などの理由で予想収穫量に達しない場合はあり得る)。なお、政府は農業政策の一環として、米生産者に対して米1キンタル当たり7.50ドルの補助金供与等の支援を行っている。
(5)2022年7月の経済活動指数は11.8%上昇を記録
国家統計センサス局(INEC)によると、2022年1月から7月までの月間経済活動指数(IMAE)は、2021年同期比で11.8%上昇した。2022年7月単月では3.36%上昇であり、6月~7月に発生した国内での大規模抗議活動による影響は限定的で、むしろパンデミックからの経済回復基調にあることが示された。業界別内訳をみると、商業(コロン・フリーゾーンからの再輸出)、小売・卸売業、建設業(民間プロジェクト再開)が好調であり、鉱業(銅鉱石と銅精鉱の輸出量一時減少)及び漁業(輸出向けの一部魚種の漁獲量減少)が不調であった。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)2022年月7月までの輸出総額は2,121百万ドルパナマ輸出協会(APEX)は、2022年1~7月の輸出額は、2,121百万ドル(前年同期比9%増)であり、3,558百万ドルを超えた昨年の歴史的な数字を超えそうな勢いであると発表した。内訳をみると、銅の輸出は1,628百万ドル(前年同期比6.4%増)、それ以外は493百万ドル(前年同期比18.5%)であった。銅の輸出先は、主要な買い手である中国、日本、韓国であり、銅以外の品目は米国である。なお、銅以外で増加した品目はバナナ、チーク、パーム油、未精製糖、魚油、パイナップル、エビであり、輸出取引額の75.7%相当が貿易協定を締結している国への輸出であった。
(2)トクメン空港公社の2022年上期収入は115百万ドル
トクメン空港公社の上期決算によると、2022年上期収入は115百万ドル(前年同期比120%増、2019年比10%減)となった(営業利益940万ドル)。アラブ総裁は、「2022年上期の業績は、パンデミックからの順調な業績回復を示している。パンデミックが収束に向かいつつあり、海外渡航に対する乗客の信頼感が改善し、多くの航空会社が復帰したことにより空港稼働率、発着路線数が回復した」と述べた。現在、2022年度(1月~12月)のトクメン空港利用者数は、2021年度の約900万人を上回り、パンデミック前の2019年度の約1,600万人に迫る“1,300万人~1,500万人”と予測されている。
なお、旅客だけでなく貨物も取扱いが増加しており、2022年1月~7月で、139,187トン(2021年同期比31%増、2019年同期比47%増)である。当該上期決算を受け、格付会社BRCレーティングス社(S&P系)は、同社のBBB格付けの投資アウトルックをネガティブからポジティブに引き上げている。
(3)パナマへの格安航空会社(LCC)の誘致を目指す
20日、アラブ・トクメン空港公社総裁は、国会予算委員会で2023年度のトクメン空港公社予算の説明を行い、8月末時点で、2022年度は既に1,000万人以上の乗客がトクメン空港ターミナルを利用し、当該乗客数は2019年パンデミック前と比べて約92%回復を表していると述べた。同社の2023年度予算は265.1百万ドル(対前年+27百万ドル増)であり、トクメン空港の旅客及び貨物ターミナル改修・増設プロジェクト、地方空港の運営・整備・改良などの各種投資計画を推進し、国内空港(特に地方空港)にLCC誘致目指すと説明した。
(4)2022年1月~7月までのコロン・フリーゾーンにおける貿易額は12,938百万ドルに達する
21日、コロン・フリーゾーン(ZLC)は、2022年1~7月の貿易額が12,938百万ドル(対前年32%増、2019年比20%増)と発表した。ZLCへの主な輸入元は、中国、EU、シンガポール、米国、メキシコであり、再輸出先は、ベネズエラ、コスタリカ、コロンビア、グアテマラ、ドミニカ共和国、ホンジュラスである。
(5)チリキの珈琲豆生産者、1ポンド(約453.6g)の珈琲豆(ゲイシャ種)を6,000ドル以上での販売に成功
7日、特定のパナマ珈琲豆生産者によるプライベートオークションが実施され、100年以上チリキで珈琲豆生産を続けるラマスタス・ファミリーが、台湾のバイヤー「ブラックゴールドコーヒー社」に、1ポンド(約453.6g)あたり6,034ドルという記録的な価格で、ゲイシャ珈琲豆を販売した。当該オークションの平均販売価格は、1ポンド(約453.6g)あたり341.24ドルであり、ゲイシャ珈琲の根強い人気が証明された。同オークションには、中国、日本、エミレーツ、サウジアラビア、アメリカなど各国の企業が参加した。なお、本年の10月6日には、スペシャルティコーヒー協会が主催するオークションが開催される見込みである。
(6)チキータバナナ農園の収益50%減
27日、パナマで100年以上の歴史を有するチキータバナナ農園のフローレス社長は、「国内のバナナ主要産地であるボカス・デル・トロ県は、世界情勢の変化に起因するプラスチック、燃料、肥料などの価格高騰による輸出量の減少に直面し、収穫量も減少して収益が50%低下した。最近では7月に国内の抗議活動が激化した際、40万箱のバナナが失われ、梱包できなかった事象もあった。加えて、過去4年間でバナナ産業に対する法律や賃金調整があり、労働者の賃金が上がったことで労働者の生産性が低下して、出荷数に影響がでてきているため、労働省及び農業開発省当局と話し合いを行う。」と述べた。
4.パナマ運河、海事関連
(1)パナマ運河庁の2023年度予算案(4,652.9百万ドル)が国会承認27日、パナマ運河庁(ACP)の2023年度予算案が国会で承認された。ACPの2023年度予算は、4,625.9百万ドル(対前年度比18%増、457百万ドル増)、そのうち国庫納付額は2,544百万ドルであり、それぞれ過去最高の数値となる。なお、2023年度予算は、国庫納付の他、ACP職員給与を含む運営経費1,495百万ドル、投資費用738.2百万ドル等で構成されている。なお、投資費用の738.2百万ドルには、運河流域の持続可能な開発のための用地取得費として550百万ドルが含まれる。
5.インフラ関連
(1)パナマ国内初のPPP事業の事前資格審査に15社が参加19日、公共事業省(MOP)は、同日に事前資格審査の提出期限を迎えた国内初の官民パートナーシップ事業(PPP)となるパンアメリカンハイウェイの道路補修並びに維持管理契約について、12カ国(中国、スペイン、メキシコ等)15社(単一企業及びコンソーシアム)より事前資格審査申請書を受理したことを発表した。本事業は、パンアメリカンハイウェイのパナマ市東部のパコラからダリエンのヤビサまでの区間の道路補修並びに維持管理を行うものであり、参考価格は387百万ドルとされている。
(2)メトロ3号線の進捗状況及び予定
メトロ公社のオルテガ総裁は、円借款で実施されているメトロ3号線事業の開業時期について2026年後半との見解を示した。同総裁によると、本事業の現在の進捗は22%、これまでに3,600人の直接雇用及び1,200人の間接雇用を創出している。他方、運河横断に係るトンネル部については、2023年末までにボーリングマシンを用いた掘削が開始される予定である。
- 主要経済指標(2022年9月)(Excel)
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