パナマ経済(2022年3月報)
令和4年4月11日
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:小松原書記官
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主な出来事
●会計検査院は、2021年国内総生産(GDP)15.3%を発表
●パナマはマネーロンダリングに関する金融活動作業部会(GAFI)のグレイリスト残留
●消費者物価指数は、2022年2月に2.7%上昇
●パナマは米国に二国間貿易促進協定(TPC)の「見直し」を求める
●メトロ3号線事業トンネル部の実施方針
1.経済全般、見通し等
(1)会計検査院は、2021年国内総生産(GDP)前年比15.3%増を発表3月4日、会計検査院は2021年の国内総生産(名目GDP)63,605百万ドル、(実質GDP)40,736.4百万ドルおよび経済成長率+15.3%と経済指標を発表した。会計検査院は「公的債務対GDP比では、前年68.5%から63.7%へ大きく改善した。また、2021年はパンデミックに起因した外出制限の段階的解除及びワクチン接種の普及により、経済活動が再開されたと言える。増加の要因となった産業分野は、鉱山採掘、パナマ運河、港湾運営、コロンフリーゾーン再輸出が際立っている」との声明を発出した。
(2)パナマはマネーロンダリングに関する金融活動作業部会(GAFI)のグレイリスト残留
3月4日、GAFI本会議が実施され、パナマをグレイリストに残すことを決定した。GAFIはパナマ政府と合意された行動計画完了日が既に満了していることに大きな懸念をする一方で、パナマ政府が既に講じているマネーロンダリングリスクやテロ資金調達の予防体制改善及び対策強化などのいくつかの措置は認識したと表明した。GAFIは、パナマ政府に対して、次回のGAFI本会議が開催される2022年6月までに上記の措置の実効的効果を強く求めている。
(3)2021年の銀行セクターの貸付及び預金は増加
パナマ銀行監督庁(SBP)カスティージョ長官は、2021年末の国際銀行センターの主要業績評価指標を発表し、2021年の新規融資総額16,844百万ドル(対前年14%増)となり、今期の経済回復が農業、製造業、建設業、商業の活動にプラスの影響が出始めていると述べた。同時に、預金も3,328百万ドル(対前年7.4%増、うち、民間預金は企業所有60%、個人所有40%)であり、預金者が国の銀行システムに自信を持っていることを示しているとの見解を示した。また、2022年2月時点で、修正・救済措置融資は9,252百万ドルであり、2020年年末22,933百万ドルからは59%大幅減少となり、ポートフォリオの13%まで低下した(2020年8月では、最大約40%)。他方で、16億ドルを超える回収不能カレゴリ(貸し倒れリスク高)の融資は依然残っており、引当金の最小化が課題として残る。
(4)資産保有する法人に対して、弁護士による会計記録の提出を求める
2021年11月に国会承認された法律254号「金融機関の最終受益者の確認や違法な送金に関しての処罰における法的枠組み」の実効的運用が開始された。海外のみで事業を行う法人(所謂オフショアカンパニー)及び海外に資産保有する法人に対して、毎年4月末を期限として、弁護士による会計記録の提出が義務付けられる。また、法人より会計報告の提出を受けた弁護士は脱税の恐れがないが検査・監督して、国に報告する義務がある。法律に従わなかった者は所定の罰則が適用となり、同法の実効的運用はGAFIのグレイリスト脱却に向けた取り組みの一つである。
2.経済指標
(1)消費者物価指数は、2022年2月に2.7%上昇国立統計センサス局(INEC)は、消費者物価指数は、2022年2月前年比2.7%の上昇を記録したと発表した。主な要因は、「運輸、輸送」カテゴリであり、燃料価格上昇を含め、前年比で10%上昇している。その他、「教育」「ホテル・レストラン」「食品」は増加を記録したカテゴリであるが、学校再開があった「教育」を除いて、いずれも輸送費の価格転嫁を起因としたものであり、消費者の家計や企業の収支に直接的な影響を及ぼしている。更に最近では、ロシアのウクライナ侵攻及び中国でのCovid-19再拡大が物価への圧力高め、この傾向は今後数か月続くと予測されている。
(2)パナマ国内はカーニバル期間中に234百万ドルの経済効果
パナマ観光庁(ATP)統計局によると、2/26~3/1(4日間)のパナマ国内観光の経済効果は234百万ドル(観光客の平均支出は約200ドル)であり、117万余りが公共交通機関、自家用車で国内を移動し、国内のホテルの占有率は100%を記録したと発表した。国内人気観光地は、ボケテ、ボカスデルトロ、サンタカタリナ、タボガ島、コイバ島等である。観光庁(ATP)は感染症対策でイベントが公式中止になったにもこれだけの観光客が各地を訪れたのは、ポストコロナで観光分野が経済の起爆剤であることを示すものだと述べた。
(3)パナマの公務員給与は年々増加
国家統計センサス局(INEC)によると、2021年は26万838人(前年比7.7%増)の公務員に対して、給与総額4,738百万ドル(前年比6.8%増)が支払われ、政府支払いも毎月4,000百万ドルを超えた。昨年から増加した公務員は、18,598人(内訳:常勤8,953人、非常勤9,645人)であり、民間企業の雇用抑制などを背景として、中央政府、議会の非常勤公務員の増加が顕著となっている。
(4)2022年1月パナマ国内自動車販売は対前年72%増
国家統計センサス局(INEC)によると、2022年1月パナマ国内自動車販売は2,661台(対前年72%増)であり、とりわけ、SUV 1,267台(98%増)でパンデミック前の2019年を上回り好調、その他乗用車846台(83.3%増)、高級車128台(72.7%増)となっている。パナマの自動車販売産業はGDPの3%を占め、2021年1月~12月自動車販売台数は38,141台であり、2022年は45,000台が見込まれている。
(5)パナマは若年層の失業者が多く、賃金が減少
国立統計センサス局(INEC)によると、2021年10月時点で、108,975人(女性57,791人、男性51,184人)が仕事を求める失業者であり、大多数は20歳~24歳である。また、所得に関して、パンデミック前の2019年12月末では“721ドル/月”から2021年12月末時点の平均給与”719ドル/月“に微減を示しているが、産業別の賃金格差はより広がっている。例えば、「鉱業および採石業」では、パンデミック前の平均給与は1,104ドル/月であったが、2021年末には893ドル/月である。同様に、「卸売業」では739ドルから727ドル、「ホテルやレストラン」では625.6ドルから581ドルに減少した。一部の産業は増加しているものの、目立った賃上げには繋がっていない。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)パナマは米国に二国間貿易促進協定(TPC)の「見直し」を求める3月16日、コルティソ大統領は、2012年から発効している二国間貿易促進協定(TPC)の見直しを米国に求め、米国農務省及び米国貿易局長宛に正式な書簡を外務省経由で発出した。コルティソ大統領は、「現在の関税率が完全撤廃されれば、米、乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉などの国内の畜産農産に深刻な影響を与えるとして、特にパナマ社会にとってかかせない品目の扱いに再考を求める」と述べている。
(2)2021年のパナマ輸出総額はコロナ禍にもかかわらず増加
国立統計センサス局(INEC)によると、2021年1月~12月のパナマ輸出総額は、3,558百万ドル(前年比108.2%)であり、コロナ禍にもかかわらず増加した。輸出相手国TOP5は、中国、韓国、スペイン、バングラディッシュ、ドイツであり、品目別で特に大きな増加率となったのは、銅鉱物および精鉱(164.0%増)、養殖エビを含むエビ(102.6%増)であった。他方で主に減少したのは、バナナ(-3.6%)、メロン(-26.0%)、パイナップル(-27.0%)、である。輸出先は、パナマが貿易協定を結ぶ国、主に欧州連合(EU)、中米統合機構(SICA)、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)に集中した。
(3)トクメン国際空港は2023年に2019年の水準に回復見込み
2022年2月、トクメン国際空港は106万7733人(前年比54%増)で、オミクロン変異種出現、北米の気象事由による便キャンセルにもかかわらず大きな増加を記録したと発表した。ただし、パンデミック前2019年は127万人を記録しており、その水準には達していない。2022年2月は9,727便(19航空会社、76就航地)が運航され、そのうち87%商用便発着、74%トランジット客74%であり、乗客の発地別では、南米45%、北米29%、カリブ海11%、中央アメリカ10%、欧州5%であった。また、トクメン空港公社は現在の回復基調が継続されれば、トランジット含む乗客数は2023年に1,600万人に達し、2019年の水準へ回復することを発表した。この数字は2020年910万人(前年比65%)に比べ、大きな増加となっている。
(4)コロンフリトレードーゾーン(ZLC)の荷動きは、2019年1月のデータを16%上回る
コロンフリートレードゾーンは、2021年1月に1,715百万ドル(対前年45%増、対前々年16%増)の貿易額となり、パンデミック以前の水準を上回り、商業活動が活発化していると発表した。特筆すべきは、内訳の輸入937百万ドル(内49.2%は中国発)、再輸出778百万ドル共に上回ったことである。再輸出先としては、ベネズエラで8.8%、コスタリカ7.8%、チリ6.5%、グアテマラ5.7%の順であり、品目別では電子機器、医薬品、化学品、香水及び化粧品、衣料品、アルコール飲料となっている。
(5)Expocomerと“通常”に戻るための取り組み
パンデミックのため2年間開催されなかったExpocomer、Expo Logistica、International Tourism Expoが今年から3月23日から26日までの日程で開催され、パナマにおいて、対面型の商談が再開した。この3つの展示会はアマドールにあるパナマコンベンションセンターで開かれ、600社以上の出展企業があり、米国、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアなどの地域大国を含む約30か国が参加した。
(5)ラテンアメリカ開発銀行(CAF)によるパナマへの気候変動対策に係る融資
ラテンアメリカ開発銀行(CAF)は、パラグアイのアスンシオンで開催されたCAF理事会のなかで、パナマに対する気候変動対策への支援プログラムとして320百万ドルの融資を承認した。CAFのディアス氏は、CAFはラテンアメリカ・カリブ海諸国のグリーンバンクになることを目指してるところ、パナマのグリーン経済への移行や環境の持続可能性に資する支援を行うことができ喜ばしく思うと述べた。
4.パナマ運河、海事関連
(1)ガトゥン湖の貯水池、パナマ運河庁(ACP)の選択ACPの水資源プロジェクトのコンサルティングおよび技術アドバイザリーサービスを請け負っている米国陸軍工兵隊(USACE)は、実行可能な代替案の検討および概念設計を進めている。本件では運河流域内に“貯水池”を設けることで水量をコントロール案、バヤノ湖から水を導入する案、リオインディオ河川地域に貯水池を新たに建設する案などACPが過去に検討を行っていた12の代替案の精査等を行うこととなっており、この中から水資源確保方策を1つまたは複数が選定される予定である。現在のUSACEとの契約の履行期限は2024年1月とされており、1年間の延長オプションがあるが、概念設計はそれ以前に提示される見込みである。
5.インフラ関連
(1)建設労働者組合(Suntracs)は建設労働者によるストライキの実施を示唆8日、建設労働者組合(Suntracs)とパナマ建設会議所(Capac)の間で行われてきた2022年-2025年労働協約の協議は建設労働者の賃上げに関して合意に至らないまま交渉期間を終えた。これに伴い、Suntracsの指導者は4月4日より国内全域で建設労働者のストライキ(ゼネスト)の実施を示唆している。ゼネストが行われた場合、20,000人の労働者の経済活動が滞ることとなる。2018年に実際に行われた同様のストライキの際は1ヶ月間にわたり建設業は中断され、270百万ドル相当の経済活動が失われたとされている。
(*その後、4月4日、パナマ建設会議所(Capac)と建設労働者組合(Suntracs)とのあいだで、2022年-2025年の労働協約が合意に達し、4月4日以降のゼネストは回避された。)
(2)メトロ3号線事業トンネル部の実施方針
10日、サボンヘ公共事業大臣はメトロ3号線事業のトンネル部の整備について、本体工事を受注している韓国企業との契約変更において実施すると発表した。また、後日、実施機関であるメトロ公社もこの方針を認め、メトロ公社内で検討を行ったところ、契約手続きに要する時間の短縮により事業遅延リスクがなくなること、トンネルを別途発注することで生じる施工企業間のインターフェースのリスクが少なくなる等の観点により判断したと説明した。
(3)パナマ初のPPP事業の発注
11日、サボンヘ公共事業大臣は、官民パートナーシップ(PPP)のスキームを活用したパナマ初のプロジェクトが5月に入札公示予定であると発表した。本プロジェクトは、パンアメリカンハイウェイにおいて、パナマ県のカニータからダリエン県のヤビサに至る約250kmの区間において道路の補修工事およびメンテナンスを実施していくものである。
(4)ガトゥン火力発電所の着工
22日、コロン県のテルフェルスにおいてガトゥン火力発電所の着工式典が開催され、コルティソ大統領をはじめとした政府関係者、企業関係者が出席した。この火力発電所の事業体であるGEGP(Group Energetico Gas Panama:インターエナジー社が51%、AESパナマ社が49%出資)によると、当該発電所は670MW(メガワット)の容量を持つLNG火力発電所であり10億ドルを投じて行われ、2024年の操業開始を目指している。また、この発電所の整備により約3,000人の雇用も期待されている。
コルティソ大統領は、ガトゥン発電所はパナマ国内の電力料金の安定化、長期的なエネルギーコストの削減に貢献すると述べた。
- パナマ主要経済指標(2022年3月)(Excel)
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