パナマ経済(2022年1月報)
令和4年2月2日
在パナマ日本国大使館
担当:嶋書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:嶋書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●パナマ政府による新規国債(2件合計2,500百万ドル)の発行
●2021年末時点の公的債務残高は40,487.8百万ドル
●フィッチレーティングス社はパナマの格付け見通しを「安定的」に見直し
●2021年の政府歳入は7,366百万ドル
●ミネラ・パナマ社との銅生産に係る契約内容改定の合意
●2021年のコンテナ取扱量は過去最高の数値を記録
1 経済全般、見通し等
(1)パナマ政府による新規国債(2件合計2,500百万ドル)の発行11日、パナマ政府は2件合計2,500百万ドルの新規国債を発行した。内訳は、1,000百万ドルが金利3.298%で2033年に償還を迎えるもの、残りの1,500百万ドルが金利4.5%で2063年に償還を迎えるものである。この国債のうち約1,780百万ドルが債務返済、残りは公共投資に用いられる予定である。
(2)2022年の経済成長率の見通し
アレキサンダー経済財務大臣は、2022年の経済成長率が5%程度になるとの見解を示した。同大臣は、パナマ経済再活性化の柱として、計画的なワクチン接種プログラムの推進、金融および脆弱な経済分野の支援、中小企業支援、国内外の民間投資ならびに輸出促進、公共インフラの推進および金融活動作業部会(GAFI)のグレーリストからの脱却を列挙している。
また、2022年の当国の経済成長率について、世界銀行は7.8%、中米カリブ海経済委員会(Cepal)は7.3%、英国エコノミスト誌は6%程度とそれぞれ予測値を発表している。いずれも2022年の経済成長率に特化すれば地域内で最も高い数値を示すと予測されているが、その中で英国エコノミスト誌では、パナマは経済成長率こそ域内で高い数字であるが、パンデミック以前までの回復という意味では域内他国に比して時間を要するだろうとの見解が示されている。
(3)2021年末時点の公的債務残高は40,487.8百万ドル
2021年末時点のパナマ政府の公的債務残高は40,487.8百万ドルであった。2020年末の36,959百万ドルから1年間で3,528百万ドル増加したこととなる。エコノミストは、この増加の理由は、コロナによる国債発行のほか近年の公務員給与をはじめとする経常支出増加が原因だと見解を示している。
(4)フィッチレーティングス社はパナマの格付け見通しを「安定的」に見直し
格付け会社フィッチレーティングスは、パナマのソブリン格付けの見通しについて「ネガティブ」から「安定的」に見直しを行った。格付けは「BBBー」に据え置きとなっている。同社のパナマに対する信用格付けは、2021年2月に「BBB」から「BBB-」、見通しについても「安定的」から「ネガティブ」に見直されていた。
今回、見通しが「ネガティブ」から「安定的」に見直された理由は、予想を上回る景気の回復ならびに公的債務の削減能力に対する信頼の高まりによるものとされている。
2 経済指標
(1)2021年のトクメン空港の旅客利用者数2021年のトクメン空港旅客利用数は約916万人であった。この数値は、パンデミック前にあたる2019年の約1,650万人の44.8%であるが、2020年の452万人に比して倍増している。また、パンデミック前の月平均利用者数は130万人であったところ、2021年10月以降、単月旅客利用数は100万人を超え、12月には119万6,000人を記録した。
トクメン空港公社によると、同空港はパンデミック前の2019年末時点で90都市に就航していたところ2021年末時点で68都市まで回復するとともに、航空会社も2019年末の24社に対して2021年末時点で19社が再就航している。
(2)2021年の新車販売台数は38,141台
25日、パナマ自動車流通協会(ADAP)は、2021年の新車販売台数を38,141台と発表した。この数値は、パンデミック前の2019年の47,866台には及ばないものの、当初予定の3万台を上回るもので、2020年の24,090台に比して回復傾向にある。この発表は、ADAPの新体制のお披露目の場で行われ、会長はサレルノ氏からバティノビッチ氏に変更となった。ADAPのサレルノ前会長は、「自動車需要が堅調に伸びていることは非常にポジティブであるが、今後においては官と民が連携して国内経済に発展をもたらすような新たなプロジェクトを生み出すことが必要と述べた。
(3)2021年1月~11月の経済活動指数は2020年同期比16%増
国立統計センサス局(INEC)は、2021年1月~11月までの経済活動指数(IMAE)が2020年同期比で16%増加していると発表した。11月単月の同指数は23.38%であった。
この要因はパンデミックによって制限されていた経済活動が徐々に再開しているためであり、とりわけ運輸・倉庫・通信の分野で好調である。他方で、ホテルや金融などは低調となっている。
(4)2021年の政府歳入は7,366百万ドル
国税庁(DGI)は、2021年の政府歳入が7,366百万ドルであったと発表した。この数値はパンデミック前の2019年の8,177百万ドルには及ばないが、2020年の6,429百万ドルを14.5%上回るものである。また、2022年度の政府歳入は約9,500百万ドルとされている。
DGIのデ・グラシア局長は、「2021年度は予算案の目標を達成できた。2022年はオミクロン株蔓延の影響で出鼻をくじかれたが、予算目標を達成できるように尽力する」と述べた。
(5)2021年11月時点の国内銀行ローン残高
パナマ銀行監督庁(SPB)は、2021年11月時点の国内銀行のローン残高が55,392.8百万ドルであったと発表した。このうち、パンデミックによる所得減でローン返済能力を失ったクライアントに対して返済条件の見直しが行われたローン(修正ローン)については、11,914百万ドルで、2020年同期比の24,773百万ドルに比して51.9%減となった。修正ローンの減少は、経済活動の再開によってクライアント側がローン返済能力を回復して返済したことを意味するので、良い傾向といえる。
3 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)ミネラ・パナマ社との銅生産に係る契約内容改定の合意17日、パナマ政府はミネラ・パナマ社との間でコロン県ドノソ鉱山における銅生産に係るロイヤリティの見直し等契約内容の改定に合意した。また、今次契約内容改定を受けた翌18日、コルティソ大統領は国民に本件合意に係るビデオメッセージを公表した。
現行の銅生産に係るロイヤリティの算定は、ミネラ・パナマ社の収入に対して2%をベースとするものであったが、今次改定案はミネラ・パナマ社の利益をベースに12~16%の支払いを行うものである。また、ロイヤリティの見直しに加えて、これまで免税となっていた法人税などを含む所得税についても、チリなどの他銅生産国同様に25%を徴収されることとなる。
コルティソ大統領は、ビデオメッセージのなかで、「今次改定によって、国は最低でも年間375百万ドルの支払いを受けることとなり、この金額はこれまでの年間支払い額の10倍に上るものである。」と述べた。
これから新たな契約書の作成、公開協議、会計検査院の承認および国会承認などの手続きを経て両者の契約が締結することとなる。
(2)ラテンアメリカ開発銀行は382百万ドルのグリーンボンドを発行
ラテンアメリカ開発銀行(CAF)はスイス市場で382百万ドルのグリーンボンドを発行した。この債券の償還期間は5年で利率は0.45%となる。このグリーンボンドは地球温暖化対策や再生可能エネルギーなどの環境分野への取り組みに特化した資金を調達するために発行される債券である。
4 パナマ運河、海事関連
(1)2021年のコンテナ取扱量は過去最高の数値を記録2021年の国内のコンテナ取扱量は860万TEUで過去最高の数値を記録した。この数値は2020年の773万TEUを11.5%上回るものである。パナマ海事庁の速報値によると、太平洋側の2つのターミナルは、バルボアが236万TEU(対前年比19.4%増)、PSAが123万TEU(同1.9%増)、大西洋側の4つのターミナルはコロン・コンテナ・ターミナルが105万TEU(同47.5%増)、マンサニージョ国際ターミナルが281万TEU(同5.6%増)、クリストバルが105万TEU(2.6%減)およびボカス・フルーツ・ターミナルが14.5万TEU(23%増)であった。
パナマ海事会議所のクレメント会長は、「コンテナの増加の要因は、カリブ海諸国や米国のコンテナターミナルの混雑によりパナマのコンテナターミナルの利用にシフトしたことが考えられる」と述べた。
(2)パナマ・ポーツ・カンパニーとのコンテナターミナルのコンセッション契約の更新
パナマ・ポーツ・カンパニー(PPC)とのバルボアとクリストバルの両コンテナターミナルのコンセッション契約の更新については、2021年6月23日にパナマ海事庁(AMP)理事会がアラウス長官に承認する権限を与えたものの、その後のPPCとAMPとの正式な手続きの行方は不明であったが、今般、現地紙の調べで、2021年6月28日にAMPからPPCに対して承認の通知を行っていたことが判明した。
AMPから現地紙への回答によると、更新後の契約内容については1997年の当初契約ならびにその後の改定された内容を基本契約とし、契約期間は2047年までの25年間とのことである。
(3)パナマ運河の航行制限に伴う当国港湾の競争力低下への懸念
パナマ運河の太平洋側河口部では、一定以上の大きさの船舶の交差を不可とする航行制限が設けられている。この影響で近傍のバルボア、PSAの2つのコンテナターミナルの利用にあたっては長時間のターミナルの係留ならびに両ターミナルへの着岸するために長時間の沖待ちを強いられることによる利便性の低下が課題となっている。また、これに伴って海運会社が他国ターミナルの利用を選択することに繋がり当国港湾の競争力が低下しかねないと懸念されている。海運会社は、両ターミナルでの荷役において余分な時間を要することから、2021年7月から12月までの6ヶ月間で250万ドルの追加コストの支払いを強いられてたと述べている。他方で、運河水先案内人協会は航行安全のために必要な施策と主張している。
マロッタ運河庁副長官は、一定の大きさまでの船舶の交差は可能となっているが、現状の問題を解決するために可能な施策につき運河水先案内人協会と協議を行う必要があると述べている。
(4)2021年のパナマ船籍登録実績
27日、パナマ海事庁(AMP)は、2021年末時点のパナマ籍登録が8,558隻、当該船舶の登録トン数が236百万トンであったと発表した。2020年末は8,516隻、登録トン数は230.5百万トンであったため、トン数ベースでは2.33%の増となる。また、パナマ船籍のシェアは世界で最も高い15%となる。
AMPは、2022年がパナマ船籍にとって技術的な変革の年を位置づけ、同籍船に対してより良いサービスを提供するための新しいプラットフォームの整備を進めているところと述べている。
5 インフラ関連
(1)ターンキー方式の公共事業の契約が進捗サボンヘ公共事業大臣は、25件のターンキー方式の公共事業(合計金額:1,160百万ドル)の契約手続きが着々と進んでいることを発表した。1月上旬時点で10件(契約金額合計425百万ドル)が契約済み、入札評価中の案件が3件、入札公示中の案件が6件であるとした。残りの案件についても2022年中に契約の予定となっている。
(2)ボカス・デル・トロ県で促進される観光インフラ整備
ボカス・デル・トロ県は観光インフラ整備に258.5百万ドルが投資されるなど、観光を強化している地域である。なかでもコロン島の空港の新ターミナルには72.4百万ドルが投じられ、1,500mの滑走路をはじめ、同時に出発客、到着客それぞれ300名をカバーする旅客ターミナルの整備が行われる。当該空港は、トクメン空港との接続によって国際的にも認知されることから、多くの観光客の来訪が期待される。
なお、同島には空港の他、陸上インフラの修復、下水道網の修復などの投資が行われる予定である。
- 主要経済指標(2022年1月)(Excel)
(287KB)