パナマ経済(2021年12月報)
令和4年1月12日
在パナマ日本国大使館
担当:嶋書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:嶋書記官
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主な出来事
●アレキサンダーMEF大臣による2022年のパナマ経済の見通し
●デジタルバウチャー(Vale Digital)の発行を2022年6月まで延長
●パナマとコスタリカが電気自動車の運行ルートを開設
●2021年度パナマ運河庁予算より2,080.6百万ドルを国庫納付
●コルティソ大統領によるカボタージュ関連法案の承認
●パナマ運河第四架橋の建設は2022年中に開始予定
1. 経済全般、見通し等
(1)アレキサンダーMEF大臣による2022年のパナマ経済の見通しアレキサンダー経済財務大臣は、パナマ経済がパンデミック前の2019年水準に戻る見通しについて、これまでの2023年から2022年に予測を修正した。これは、2021年第3四半期までの国内総生産(GDP)成長率が15%程度で2021年の最終的なGDP成長率も9~12%になるとの予測を踏まえて修正したものである。今後の経済成長の回復において、アレキサンダー経済財務大臣は観光産業に大きな期待を寄せていると発言した。
また、ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)は、2022年のパナマの経済成長率をラテンアメリカ・カリブ地域で最も高い+8.2%と予測している。
(2)GAFIは2022年1月にパナマの進捗状況の対面確認を実施予定
2021年12月1日、パナマ銀行監督庁(SBP)が、2022年1月にパナマ政府とGAFI当局関係者と直接面談して、GAFIグレイリストに関するパナマ側の取組の進捗状況を確認することを発表した。GAFIはパナマに対して、行動計画に進展が無い場合は、ブラックリストに含めると警告しており、面談の行方が注目される。金融機関の最終受益者の確認や違法な送金に関しての処罰における法的枠組(法令254号)の法整備を了しており、今後の焦点は、「各種規制法令における金融監督が機能し、運用が適切になされ、処罰・取り締まりが適切に実行されること」にある。パナマ政府のGAFIへの説明では、パナマの取組が国際基準に準拠した説得力のある効果を示すことが強く求められる。
(3)パナマ政府の政府債務の償還
パナマ政府の政府債務の償還期間満了が今後数年間にピークを迎える。具体的には、2022年は1,877.65百万ドル、2023年は1,854.82百万ドル(22年と同水準)の政府債務が償還期間の満了を迎え、政権が交代する2024年には3,445.82百万ドルの支払いが予定されている。従って、合計では今後5年間で約12,400百万ドル、約10年間で22,200百万ドルの債務返済を行うこととなる。
(4)パンデミックによる深刻な打撃後、パナマ国際銀行センター(CBI)の純利益は回復
銀行監督庁(SBP)によると、2021年1月から10月にかけて、CBIの純利益は945百万ドル(前年同期比14.3%増加)であった。ただし、2019年同期比では、利益水準は31.8%減である。前年同期比で利益が増加した要因は、収益上昇(+7.3%)、引当金の減少(-28%)であり、コロナ禍における債券放棄や信用リスクの予防的措置として行っていた引当金を調整したことが純利益増加に繋がっている。
(5)2021年1月から11月までの政府歳入は5,066.2百万ドル
国税局(DGI)の予備徴収報告書によると、2021年1月から11月までの政府歳入は5,066.2百万ドル(予算比+496.2百万ドル、10.9%増加)であり、前年同期比17.6%増となった。内訳としては、税収が3,789.9百万ドル(前年同期比15.6%増)で全体の75%を占めている主要な財源である。特に直接税では、所得税1,002百万ドル(前年同期比14.8%増)、法人税440.2百万ドル(前年同期比7%増)、固定資産税112.4百万ドル(36.9%増)といずれも増加。更に主な間接税である消費税も578.9百万ドル(前年同期比4.8%増)と増加傾向となった。ただし、2019年の5,968.1百万ドルと比較すると、901.9百万ドル減(15.1%減少)である。
(6)銀行監督庁(SBP)は貸倒引当金を増やすための措置を発表
2021年12月1日、銀行監督庁のカスティージョ長官は、金融機関のクライアントのデフォルトによる損失をヘッジするため、貸倒引当金(準備金)を増やす措置を発表した。SBPはまず各金融機関にリスクレベルに応じて、ローンを分類するように指示して、算出後に、その金額に応じて実施される(9月30日時点で、高リスクレベルのローンは合計3,237百万ドル。ローン残高全体の約54,700百万ドルのうち5.9%)。パンデミック後に貸倒引当金は増加し続け、2021年1月から9月でも既に588.1百万ドル増加した。
(7)2021年の外資企業誘致制度(SEM・EMMA)の承認企業
貿易産業省(MICI)の発表によると、2021年に外国企業18社に対し多国籍企業本部制度(通称SEM)を承認した。2020年に同制度を承認した外国企業は17社であった。なお、2021年に承認したSEM企業の初期投資額は37.8百万ドルであり、2020年の12.5百万ドル、2019年の9百万ドルを大きく上回ることとなった。
また、製造業誘致制度(通称EMMA)については、2021年9月末に初めて船舶関連部品等を扱う外国企業を承認した。
2. 経済指標
(1)デジタルバウチャー(Vale Digital)を2022年6月まで延長2021年、12月14日、コルティソ大統領はデジタルバウチャー(Vale Digital)の発行を2022年6月まで延長することを発表した。パナマソリダリオ施策の一環として開始された同デジタルバウチャーは、既に基準を満たした合計477,894人のパナマ国民に給付された(12月10日時点。2021年2月1日から100ドルから120ドルへ増加)。2020年4月から2021年11月までの間に、政府は合計約1,540百万ドルをデジタルバウチャーに割り当て、その他、年度当初のデジタル配布システムが未整備だった際の紙媒体のクーポンとして2020年4月から2021年8月まで約410百万ドルを支給している。従って、2021年11月までに政府は、合計約1,950百万ドル支給を行っている。
(2)パナマのインフレ率は2021年10月に2.9%上昇
国立統計センサス局(INEC)によると、パナマの消費者物価指数(CPI)は2021年10月に2.9%上昇した。CPIが増加を示した分野・商材は、輸送(特に、個人用輸送機器用燃料および潤滑油:+7%)、教育(+3.1%)、食品(特に、砂糖、ジャム、蜂蜜、チョコレート、砂糖菓子)及びノンアルコール飲料(+2.6%)、住宅/水/電気/ガス(+2.5%)、レストランとホテル(+2.1%)、健康(+0.6%)、家具/家庭用品(+0.5%)である。減少を示したものは、衣類と履物(特にスニーカー、サンダル)(-0.8%)、アルコール飲料(特にビール)とタバコ(-0.3%)、コミュニケーション、レクリエーションおよび文化(-0.1%)である。
(3)パナマ自動車販売協会(ADAP)は2021年新車販売台数37,000台超を予想
ADAPの発表によると、2021年1月から11月の新車販売台数は33,920台(前年同期比67%増、2019年度同期比23%減)であった。従って、2021年月平均販売台数は3,084台であり、年間の販売台数は、年度当初の予想(35,000台)上回り、37,000台を超えると予想される。ADAP会長によると、「世界的にみると、供給が需要に追い付いていない国もあるが、パナマに関しては、“需要を供給できない状況に達しておらず”、足元のデータは順調に回復している。パナマの自動車販売価格は、個々の会社の戦略はあるが、概ねプロモーションや値引きの実施はないだろう」と述べた。
(4)2021年1月から10月までに建築許可を受けた工事金額は2019年の40%減
国立統計センサス局(INEC)の最新のデータによると、2021年1月~10月に建設許可を受けた工事金額は合計6億800万ドルで、2019年同期比40.1%減、2020年同期比45.9%増であった。2021年は非住居の大型建設プロジェクトの承認はほとんど動きがなかった。また、住居建設は2021年半ばまで上昇傾向し、6月以降は承認額が減少し始めたものの、10月には再び増加している。要因としては、商業施設・オフィスなどは既に在庫を多くかかえており、新規投資が抑制される大きな要因となっている。
3. 通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)パナマとコスタリカが電気自動車の運行ルートを開設2021年11月29日、パナマ政府とコスタリカ政府は、電気自動車運行サービスE-Rideが、パナマシティ=サンホセ900km以上のルートの走行及び施設運用を開始したと発表した。同プロジェクトは、コスタリカ電気自動車協会(ASOMOVE)とパナマ国立エネルギー事務局(SNE)が主導しており、初回の試験運行は11月末から12月まで実施される。各急速充電設備は太陽光発電と風力発電を使用し、パナマ側は民間企業複数社、コスタリカ側はコスタリカ電力研究所(ICE)が運営している。
(2)コロンフリーゾーン(ZLC)は荷動きが回復し、2019年の水準に近づく
国立統計センサス局(INEC)によると、2021年1月から9月の貿易収支は、13,144百万ドル(前年同期比27%増加)であり、2019年同期の13,787百万ドルに近い水準となっている。本貿易収支の内訳としては、輸入が6,317百万ドル(前年同期比29%増)、再輸出が6,827百万ドル(前年同期比25%増)であり、いずれも大きく改善している。
(3)トクメン空港の利用状況
2021年1月から9月までのトクメン空港の収益は8.76百万ドルであった。この数値は2020年同期に比しては9百万ドル増となるものの、2019年同期収益の124.2百万ドルには及んでいない。
一方で2021年1月から11月までの利用客数は796万7,142人であり、コロナ感染拡大前の2019年の年間利用客数の約1,600万人には遠く及ばないものとなっている。しかしながら、10月、11月に特化すればそれぞれ100万人以上に利用されていることから回復途上にあるといえる。
また、パンデミック以前は89の都市と接続していたが、2021年11月時点で接続している都市の数が67の目的地まで回復し、路線供給率は72%まで回復している。国際民間航空機関(ICAO)によると、特にパナマは北米と欧州の都市との便数の回復が顕著で、現在、パンデミック前の85%となった。なお、コパ航空は、12月1日にコロンビア・アルメニアへの週3便、6日にコロンビア・ククタへの週3便、12日に米国・アトランタで週4便の新規開設を発表した。
4. パナマ運河、海事関連
(1)2021年度パナマ運河庁予算より2,080.6百万ドルを国庫納付12月16日、パナマ運河庁(ACP)は、2021年会計年度分として2,080.6百万ドルの国庫納付を行った。ACPの当該拠出金の元手は、2020年10月1日から2021年9月30日の運河収入の余剰金として1,487.8万ドル、トン税収入およびその他事業収入592.8百万ドルである。ACPは2000年以来政府に総額20,000百万ドル近くの国庫納付を行っている。
(2)パナマ運河庁(ACP)が“グリーン船”分類システムを発表
2021年12月1日、バスケスACP長官はパナマ運河の「気候変動の緊急対策」のなかで“グリーン船”分類システムを発表した。当該分類システムは、輸送中の温室効果ガス排出量を20%から100%へ削減するため3要素(エネルギー効率活用デザインインデックス、バウスラスター使用、ゼロカーボンバイオ燃料またはカーボンニュートラル燃料の使用及び運用)に基づくもの。当該システム運用は、全長125フィート(38.1m)を超える船舶の環境パフォーマンスを計測し、パナマ運河のカーボンニュートラルを目指す、GHG付加運賃の徴収を目的としている。
(3)コルティソ大統領によるカボタージュ関連法案の承認
2021年12月23日、コルティソ大統領はパナマ国内海域でのカボタージュ、外国貿易活動を規制する法案を承認した。この法案は海事補助サービス(国内海域内で待機する本船に対する給油、船用品・食料提供、運航補助業務(タグボート等)等のサービス)につき規制を設けるものであり、海事補助サービスの営業許可を申請する企業の株主もしくは企業役員の少なくとも75%をパナマ国籍とする要件が設けられるとともに、国内で運航する船舶においては乗組員の90%をパナマ国籍とする要件が設けられる。
また、この法案では船舶が難破した際の措置として、周辺の監視費用や難破船の海洋汚染防止に係る緊急事態への対応等に係る費用をカバーするための基金が設けられる。
(4)国際海事機関(IMO)理事国(カテゴリーA)に選出
2021年12月10日、パナマは国際海事機関(IMO)理事国(カテゴリーA:主要海運国)に当選した。この理事国は地域ごとにカテゴリーA(主要海運国:10カ国)、カテゴリーB(主要荷主国:10カ国)、カテゴリーC(その他海事関係国:10カ国)の合計40カ国で構成されており、パナマについては予てよりカテゴリーAへの選出を果たしてきた。
(5)ノルウェージャン・クルーズ・ライン社がアマドールの旅客ターミナルをホームポートとして利用
パナマ観光庁とノルウェージャン・クルーズ・ライン社はアマドールの旅客ターミナルをホームポートとして利用することに関する協定を締結した。これにより、2022年、2023年の間のクルーズシーズンにおいて、同社のクルーズ船が16回出港することとなる。
5. インフラ関連
(1)パナマ運河第四架橋の建設は2022年中に開始予定サボンヘ公共事業大臣は、パナマ運河第四架橋の建設が2022年に開始予定であると示唆した。本事業は2018年にel consorcio Panama Cuarto Puente(中国企業のコンソーシアム)が受注していたが、2021年末時点で建設工事は開始されていない。
本事業については、メトロ3号線事業との分離による計画変更等から設計の見直しが行われているところであり、サボンヘ公共事業大臣は、見直し作業のうち90%程度が完了しており、近いうちに事業費や事業期間を発表すると述べている。ただし、本事業を進捗するためのファイナンスの部分や第四架橋の通行を有料とするか否か等は決定していない。
(2)チリキ県アルムエレス港の桟橋事業の入札公示
チリキ県のアルムエレス港の新たな桟橋事業の入札が公示された。本件は設計から建設および運営に必要な資機材の調達までを実施するものであり、実施機関はパナマ海事庁で参考価格は21.98百万ドルとされている。本件は一度入札手続きが行われ2者の応札があったものの、いずれの者も入札要件を満たせていなかったことから改めて入札を行うものである。
(3)バルボア造船所のコンセッション契約締結
パナマ海事庁(AMP)はAstilleros Puerto de Balboaとの間でバルボア造船所の改修、開発及び管理を含むバルボア造船所の運営にかかるコンセッション契約を締結した。コンセッションの期間は20年間となる。同社は20年間でAMPに対して総額14.4百万(契約締結期間中の月額納付、約6万ドル/月の支払い)を支払うとともに造船所の施設改修に20百万ドルを投資することとなる。
- 主要経済指標(2021年12月)(Excel)
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