パナマ経済(2021年11月報)
令和3年12月14日
在パナマ日本国大使館
担当:小松原書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
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主な出来事
●租税の透明性及びマネーロンダリング防止に関する法律の承認
●パナマの輸出は2021年に月間30億ドルを超える見込み
●ブルームバーグは、パナマで初の経済フォーラムを2022年5月に開催
●運河庁(ACP)は米陸軍工兵隊(USACE)とのコンサルティング及びシステム契約を締結
●パナマ最高裁判所は、オデブレヒト(Odebrecht)社によるトクメン空港への告訴を棄却
1.経済全般、見通し等
(1)租税の透明性及びマネーロンダリング防止に関する法律の承認11月11日、コルティソ大統領及びアレクサンダー経済財務大臣は、租税の透明性及びマネーロンダリング防止強化に関する法律に署名を行った。同法は、GAFIやOECDに強く求められている“租税の透明性及びマネーロンダリング防止”を目的とし、テロ、大量破壊兵器拡散のための資金供与を規制強化する法律である。具体的には、従来からある5法案(法律第23号:マネーロンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器の拡散資金調達を防止、法律第51号:税務上の情報交換を実施する枠組みを確立、法律第52号:会計記録の維持、法律第124号:非金融主体の監督、法律第129号:法人の最終受益者の登録)を修正し、違反者への罰則を設けるものである。(2)パナマとコロンは国内総生産全体の76.6%を占める
国家統計センサス局(INEC)の報告によると、2020年実質GDPのうち、パナマ県とコロン県で国の実質国内総生産(GDP)全体の76.6%を占めており、パナマ県 353億1980万ドル(全体の59.7%)、コロン59億7,940万ドル(全体の16.9%)となっている。他方で、住民一人当たりのGDPは1位がコロン県 17,297.3ドルであり、2位のパナマ県の12,731.7ドルを上回っている。パナマ経済学者のモレイラ氏によると、「コロン県の場合、住民一人当たりGDPの数値が高いにもかかわらず、高い失業率と入植者の経済的および社会的状況の改善が一向に見られない。同県のGDPのうりコロンフリートレードゾーン内の一部の労働者へ偏りが大きく、社会問題化している」と述べた。
(3)政府の歳入は改善傾向だが、パンデミック前の水準に届かず
パナマ国税局(DGI)の報告によると、2021年1月から10月までの累積の歳入は合計46.2億ドルであり、前年同期比6億2330万ドル増、16.6%増となっている。そのうち、税収は34億8,870万ドルで、歳入全体の76%を占め、前年同期比4億6,320万ドル・15.3%増加した(直接税、間接税いずれも増加)。また、非税収もパナマ運河、政府持ち株会社などの国庫の納付により改善している。他方、消費税は5億1780万ドル(前年同期比3%増)に留まっており、依然として消費が伸びていない。2019年同期比では、16.3%減となり、パンデミック前の水準には達していない。
(4)新規融資は回復傾向の一方でパンデミックの影響を強く受ける
1日、パナマの銀行監督庁(SBP)は、2021年1月~9月累計で125億7,210万ドル(前年同期比20%増)の新規融資施行を発表した。とりわけ、直近の9月単月では、17億3,280万ドルの融資が施行され、前年同月比46%増加。他方で、2019年の同期比(1月~9月)では38.2%減で、パンデミック前の水準を下回る状況が続く。また、9月30日時点で、約547億ドルの融資残高があり、うち融資契約変更対象は、全体の23%にあたる128億43百万ドルである。そのなかでも32億3700万ドル(全体の約6%)が貸し倒れのリスクが高いとSBPは判断している。
(5)パンデミック前後における雇用状況の変化(民間から公務員へ、貧困層の失職)
国家統計センサス局(INEC)の報告によると、2020年9月の民間部門の賃金所得者は509,830人であり、2019年8月現在の873,750人より363,920人少ない状況だった。2020年9月から2021年6月までの雇用はわずかな拡大に留まり、その大部分は公共部門によるものである。従って、2年間で民間の正規雇用は35%減少した一方で、公務員への給与支払いは24%増加している。また、職を失った労働者の94%が、「コロナ禍以前の月額750ドル未満の賃金労働者及び、11年以下の学校教育年数」と顕著な傾向を示し、貧困層の失職が表れている。
2.経済指標
(1)パナマの輸出は2021年に月間30億ドルを超える見込みパナマ輸出業者協会(Apex)は、パナマの輸出額は2021年には月間30億ドルを史上初めて超える見通しであると発表した。2021年9月は25億8600万ドルであり、そのうち20億3100万ドルはコロン県のドノソ山脈にある鉱山から採掘されたものである。銅以外の輸出金額は、5億5500万ドルである。主なパナマの輸出先は、中国、韓国、スペイン、日本、ブルガリア、米国、ドイツ、オランダである。
(2)建設許可金額、2019年を39.2%下回る
国家統計センサス局(INEC)によると、パナマ国内の建設許可金額は2021年1月~9月の9か月で合計5億3790万ドル(前年同期比40%増、2019年年比39.2%減)であり、コロナ禍以前の水準を下回っているものの回復傾向。プロジェクト別では、住宅3億9,780万ドル(前年同期比88%増)、非住居1億4,010万ドル(前年同期比18.7%減)となっている。パナマ建設協会(Capac)会長によると、「現在の業界の目標は在庫水準を下げることである。商業施設の過剰供給により、コロナ禍の落ち込んだ需要減を引きずっている状況」と述べた。
(3)パナマの新車販売台数は、2021年1月~9月(9ヶ月間)で27,984台を記録
国家統計センサス局(INEC)によると、2021年1月~9月(9ヶ月間)の新車販売台数は27,984台に達し、2020年の年間24,091台は既に上回っている。2019年同期は、31,335台であり数値はコロナ前に届いていないものの、2021年の回復傾向が鮮明になっている。パナマ自動車販売事業者協会(ADAP)によると、9月までの自動車種別上位は、スポーツユーティリティ(SUV) 11,650台、レギュラーまたはセダンモデルが8,054台、ピックアップ 4,903台となっている。
(4)コブレパナマ銅山生産量は9か月で79.2%増
コロン県ドノソ山脈にあるコブレパナマ銅山(約13,000ヘクタール、露天掘り)の運営を行うミネラパナマ社は、「2021年第3四半期(7月-9月)に売上832百万ドル、87,242トン(2019年同期比40.5%増)の銅が生産され、2021年累計1月~9月(9カ月)では、売上25億1500万ドル、250,970トン(2019年同期比79.2%増)に達した」と発表した。同社は、増加理由を銅の生産率が上がった為と説明し、2021年生産を少なくとも22万トンに達すると予測する。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)ブルームバーグは、パナマで初の経済フォーラムを2022年5月に開催11月19日、メデディア部門を中心とした米国複合企業・ブルームバーグの創設者であるマイケル ブルームバーグ氏は、2022年5月に経済フォーラム・Bloomberg New Economy Gateway Latino Americaをパナマで開催することを発表した。フォーラムでは、持続可能な投資と貿易の未来に取り組む事を目的としている。
(2)トクメン空港は月間100万人の利用者数を突破
2021年10月のトクメン空港会社の報告によると、旅客便を再開(2020年10月12日)して以来、月間利用者数は初めて100万人を超え、102万663人(前月比10.4%増)を記録し、2021年1月~10月では、680万人となった。ただし、2019年と比較すると、単月(10月)50.1%減、累計(1月~10月)50.3%減と約半分の規模である。
(3)2022年にパナマパシフィコに1億ドルの投資
パナマパシフィコを運営するロンドン&リージョナルパナマ社は、2022年に1億ドルの投資を計画している。当該投資には、産業部門向け約3万平方メートルの施設建設、5,000平方メートルのオフィス及びレストラン、ペットショップ、薬局などに4,000平方メートルの開発がされる。当該経済特区は、350以上の企業が設置され、約1万人の雇用者、4千人の住民がおり、ロジスティクスハブになっている。運営会社ディレクターによると、2007年から累計10億ドル以上の投資されており、2047年までの40年のコンセッション契約(2087年まで更新可能)である。
(4)2021年度のバナナ輸出は2020年度比7%増加
パナマバナナ協会によると、2021年度のバナナ輸出は、2100万箱、38万トン(平均重量18.14kg/箱)を見込み、前年比7%増(3年連続の増加)となった。主要な要因は、良好な管理体制と労使関係によりバナナ農園の規模が拡大しているからである。パナマは世界最高品質のバナナを生産していると言われており、2021年度の主な輸出先は、オランダ、米国、英国、香港、ニュージーランド、イタリア、中国である。
(5)11月第1週目連休における観光業界の経済効果は約2億ドル
観光庁(ATP)によると、11月第1週目連休において、パナマ国内では延べ12万9千台以上の車両が首都以外のさまざまな場所に移動し、約2億ドルの経済効果(1人1日あたり50ドル支出前提:ATP統計部算出)であった。ATPのエスキルデンセン長官は「首都以外のホテルの殆どが連休に100%近くの占有率を記録した。多くのパナマ国民が最大5日間の休暇を取り大きな経済効果となった。他方で、パナマは他国と比して観光客誘致に遅れをとっており、今回の連休はほとんどが国内観光である」と述べた。
4.パナマ運河、海事関連
(1)運河庁(ACP)は米陸軍工兵隊(USACE)とのコンサルティング及びシステム契約を締結11月17日、運河庁(ACP)は、水管理システム最適化及び建設、試運転のために、USACEとのコンサルティング及びシステム契約署名を報告した。当該システムには、ACP会計年度複数年で総額20億ドル規模の予算があり、「パナマ、コロン、西パナマ各県に居住する人口の半数以上に水の供給した上で、持続可能性を考慮した運河運営のために最適解を提供することを目的とし、気候シナリオに基づいた予測」を行う。具体的には、概念設計の準備に必要な既存研究のレビュー及び実行可能な代替案の評価、モデルとシミュレーションの開発を実施する予定。2019年、USACEとACPは、同システムに対して技術支援協定に署名しており、今回はその延長にあるプロジェクトである。
(2)運河庁(ACP)は通行料に新しい計算方式(フォーミュラー)適用を検討
ACPのバスケス長官は2021年度会計年度報告後の会見で、「(新しい通峡料設定ポリシーについて)すでに一部の運河の顧客と話し合っている。新料金体系が透明性、予測可能性を兼ね備えた構造にならなければならない」とした上で、「計算式は通峡する船舶が使用する“1.ロックタイプ”、“2.船舶容量”、“3.市場の需要”という3つの要素を提案し、通航船舶トン数 (PC /UMS: Universal Canal Shipment System)及び船舶が貨物/旅客輸送するか、またはバラスト(空コンテナ)かに応じて課金する方法に統一する」と述べた。
(3)クルーズ船はパナマを本拠地として回復が期待される
パナマ運河庁は、2021年12月以降 (2022年,2023年)で既に106隻のクルーズ船通峡予約を行っており、パンデミック前の209隻(2019年12月以降)には及ばないものの回復傾向である。現在、アマドールのペリコ島クルーズターミナルは試験運用中(進捗率83%、港湾工事はすべて完了)であるが、2022年10月に建設完了予定であり、プロジェクト総工費は2億670万ドルに達する見込み。同クルーズ港が本格稼働され始めれば、クルーズ船がパナマを母港(本船本拠地)とすることで、より多くの観光客誘致の可能性が広がる。
(4)クルーズ船がアマドール港クルーズターミナルに最初の停泊
11月16日、パナマ海事庁(AMP)によると、バイキングスタークルーズ号(ノルウェー籍船)がアマドールにあるパナマクルーズターミナルに3日間停泊し、681人の乗客が下船し、524人の乗客が乗船した。同港は既にターミナルの一部で船や乗客を受け入れることができ停泊も可能であり、試験的な運用を実施。当初の建設計画では、2019年3月~4月の間に完成予定だったが、コロナ禍により工事完了を2022年9月に延長し、コンソーシアムとの契約金額が1億6500万ドルから2億670万ドル(4,100万ドル増)に増額となった。
5.インフラ関連
(1)パナマ最高裁判所は、オデブレヒト(Odebrecht)社によるトクメン空港会社への告訴を棄却10月26日、最高裁判所はトクメン空港会社がブラジル・オデブレヒト社との契約解除に対するオデブレヒト社による告訴にて、行政裁判所(TAC)への控訴手続きで、同社の訴えを退けた。オデブレヒト社は、トクメン空港は当事者間の紛争が発生した場合に仲裁にて話し合われるべきであると定めているため、契約を無効にする権限がないと主張した。他方で、裁判官によると、契約が解約される前に仲裁を申し立てなければならないが、トクメン空港が契約を無効にする決定をした後に、同社が告訴を提出されたと控訴棄却の理由を述べた。
(2)メトロ公社はメトロ3号線の請負企業に十分な品質確認を求める
現在、メトロ3号線事業を請け負っている現代建設とポスコエンジニアリングコンストラクションで構成されるコンソーシアムHPHは、金型の設計、建設、移動に関して韓国企業Kumkang Kind(クムカンカインド)社が下請けを依託する予定である。パナマ・アメリカ紙が、メトロ公社に下請け業者となる同社の経験について質問したところ、同社がモノレール走行路(桁)の金型製造に実績がないことをメトロ公社は認めた。11月24日、メトロ公社は、クムカンカインド社の下請けの責任は請負業者にあるとした声明を発表し、検査など十分な建設品質確認が求めた。
(3)中央アメリカ経済統合銀行(BCIE)は、18,900ドル(払い戻し不可)の技術協力を承認
BCIEは、パナマにおける国家相互接続システム(SIN)のイノベーション戦略の策定のために、18,900ドル(払い戻し不可)の技術協力を承認した。当該技術協力は、BCIEの2020-2024中期計画に基づき、パナマのエネルギー部門を後押しするための優先行動が可能になる。具体的には、発電ネットワークの構築と統合により、パナマの電力ニーズに応じた政策や規制策定を通じた、ネットワーク制御と大規模なエネルギー貯蔵の将来的な参入の側面が検討される。
(4)下水道本管及び支管の補修工事で、CUSA社、Meco社、Ecman社が数千万ドル規模の契約を争う
公共事業省は、ラスラハスとサンタリタの下水道本管及びロヘリオシナンとラモナソの下水道支管の補修工事に関する入札に関する進捗状況の報告を行った。入札は2020年8月に公開され、参考価格は2,250万ドルで、当初は7社が参加表明をしていた。入札を最終的に提出したのは、3社のみでCUSA(Constructora Urbana)社 2,260万ドル、Meco社 2,340万ドル、Ecman社 2,110万ドルであった。パナマ地区及びサンミゲリート地区への下水排水が対象となり、現在3社の入札に関わる計画書の精査が進められている。
(5)メトロ2号線の支線建設プロジェクトの総工費1億5000万ドル超
コロナ禍の移動制限解除後に、メトロ公社はメトロ2号線の支線建設プロジェクトのスケジュール調整を行い、現状、2023年第1四半期に利用開始される見込み。現在、メトロ2号線とトクメン国際空港を結ぶ2キロメートルの区間の建設は82%完了しているが、鉄道システムに関連する工事(GdE)の進捗率は34%であり、作業の進捗に差が生じている。
- 主要経済指標(2021年11月)(Excel)
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