パナマ経済(2021年1月報)
令和3年2月4日
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事担当:田中書記官
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●2021年度資金調達計画の一部として2,450百万ドルの国債発行。
●IMFによる2,700百万ドルのクレジットライン承認(2年間)。
●2020年末公的債務残高はパンデミックの影響で36,959百万ドルとなり前年末から約2割増加。
●2020年トクメン空港利用客数は452万人で前年比7割減少。
●二国間問題(コスタリカからの食品輸入制限・パナマ・ベネズエラ間のフライト停止)
1.経済全般、見通し等
(1)2,450百万ドルの国債発行1月21日、パナマ経済財務省は、海外投資家向けに総額2,450百万ドルの国債を発行したと発表した。内訳は、1,250百万ドル(2032年償還・年利2.198%)と1,200百万ドル(2060年償還・年利3.384%)。今回の国債発行は、2021年度の資金調達計画、総額6,000百万ドルの一部である。また、同資金計画には1,822百万ドルの債務返済も含まれている。更に2020年に調達した資金のうち1,000百万ドルを2021年度予算として確保している。今回もパナマ国債に対する投資家の反応は良好で、200以上の投資家から総額6,000百万ドル以上の購入希望があり、経済財務省は、金融マーケットにおけるパナマへの高い信頼性の表れであるとコメントした。
(2)IMFによる2,700百万ドルのクレジットライン承認
1月19日、国際通貨基金(IMF)は、パナマに2,700百万ドルのクレジットライン(信用供与枠)を承認した。同クレジットラインは2年間有効で、各年の上限額は供与枠の50%まで。パンデミックによる直接的な打撃により政府財政が壊滅的な状況に陥った場合に使用可能だが、国家予算への算入は不可。資金用途は、医療や社会機能の維持が対象となる。
(3)2020年政府歳入6,331百万ドル(予算比▲28%)
会計検査院は、2020年の非金融公的部門を除く中央政府の経常歳入が6,331百万ドルで、予算比では28.4%不足、前年比では22.5%減少したと発表した。これは、2012年の歳入6,576百万ドルと同水準である。歳入内訳は、税収が3,852百万ドル(予算比29.5%不足)、非税収が2,444百万ドル(予算比23.7%不足)、その他が33.9百万ドル(予算比80.5%不足)だった。2020年はパンデミックによる経済活動への打撃で税収が落ち込んだ。特に消費税(Itbms)収入は621百万ドル(予算比35.6%不足)となり大幅に落ち込んだ。しかし、法人税収入が集中する12月に限れば、2020年12月単月の税収は610百万ドル(予算比8%不足)と落ち込み幅は小さかった。
(4)2020年保険料1,498百万ドル(前年比3.2%減少)
パナマ保険会社協会(Apadea)が発表した2020年の保険料(インシュランス・プレミアム)は1,498百万ドルで前年比3.2%減少した。項目別では、パンデミックの影響で新車販売が大きく落ち込んだため自動車保険料が258百万ドルで前年比15.2%減少した。一方、医療保険は333百万ドルで前年比5.7%増加した。これはパンデミックにより医療保険を重視する顧客が増えたことが要因とみられている。Apadea加盟保険会社の顧客への保険金の支払いは656百万ドルで前年比4.7%減少した。項目別では、自動車保険の支払いが外出制限下における事故の減少で32.6%減少した。医療保険の支払いも新型コロナウィルスの治療代に支払われた一方で不要不急の通院が減り前年比12.1%減少した。
(5)新規住宅の購入補助金
住宅省は、2020年最後の住宅連帯基金の支払いが45.8百万ドル(4,577家族分)だったと発表した。これは、パナマ人家族が初めての住宅を購入する際の頭金を援助するための基金。条件は、住宅を持たない家族収入が月額2,000ドル以下の家庭で、住宅価格7万ドルまでの物件に対して頭金1万ドルが援助される。住宅省の報告によれば、2020年1月1日から12月31日までに1万ドルの補助金を受け取ったのは13,760世帯。
(6)政府発行電子クーポンの給付額642百万ドル
1月6日、政府はパンデミックに伴う給付金としてVale Degital(電子クーポン)を累計1,253,467人に対し、642百万ドル給付したと発表した。一回の給付額は100ドルだったが、2月から120ドルへ増額される。電子クーポンを受け取った地域別人数は、パナマ県が67万人、西パナマ県が23万人、コロン県が13万人で3県が大半を占めている。電子クーポンの送付は国民IDカード(通称Cedula)で管理されている。
(7)ProPamama設立に関する法案の閣議承認
政府閣議は、国益のための優先事項となる投資誘致と輸出促進を図る組織として、Propanama設立に関する法案を承認した。承認された法案によると、同組織は、長官、副長官の元に諮問委員会や運営等部局で構成されるとともに理事会が設置される。理事会メンバーは大統領府大臣、経済財務大臣、外務大臣、農業開発大臣、貿易産業大臣、大統領より任命された民間人2名及び会計検査院の代表1名によって構成される。
2.経済指標
(1)2020年末公的債務残高36,959百万ドル経済財務省は非金融部門の公的債務残高が、2020年末に36,959百万ドルに達したと発表した。過去2年間の年末債務残高は、2018年末が25,686百万ドル、2019年末が31,018百万ドルだった。会計検査院による2020年のGDP発表は現時点で行われていないが、名目GDPに対する公的債務残高の割合(財政責任法の上限値は40%)に関して、12月にJ.P.モルガンが発表したレポートによると、2020年は債務増加とGDP減少が同時に起きるため同割合は、64.6%に達する予想されている。なお、直近の割合は2018年が39.5%、2019年が46.4%で、既にパンデミック前から上昇傾向にあった。また、2020年に実施した政府債務の返済額は、4,225百万ドルで、昨年より749百万ドル増加した。返済額のうち、元本分が2,765百万ドル、利子分が1,460百万ドルであった。
(2)ガソリン消費、公共交通機関利用者数が大幅減
会計検査院が発表した主な経済指標の2020年1月から11月までの数値が前年比で軒並み減少している。ガソリン消費は37.1%減少、メトロ乗客数は45.3百万人で59.5%減少、市営バス乗客数は82.6百万人で53.6%減少した。一方、港湾の貨物取扱高は9.5%増加、輸出額は9.5%増加した。
(3)2020年トクメン空港利用客数452万人(前年比7割減)
航空業界は昨年パンデミックの影響を最も受けた業界のひとつ。2020年のトクメン空港利用客数は、前年比で70%減少した。トクメン空港公社は、2020年の年間利用客数が4,526,663人だったと発表した。このうち、出国者が675,087人(前年比68.2%減少)、入国者が663,177人(同70.4%減少)、乗り継ぎ客が3,188,399人(同70.4%減少)だった。航空機の発着回数は50,976回で、前年の149,808回から65.9%減少した。利用客の主要な行き先は、マイアミ、ボゴタ、カンクン、ハバナだった。
(4)銀行新規ローンの減少
2020年1月から11月までに登録された銀行の新規ローンは13,597百万ドルで、前年同期比で44.1%減少した。これはパンデミックの影響で国内の経済活動が低迷していることを示している。一方、パナマ銀行監督庁によれば、11月時点の銀行の流動資金は26,544百万ドルで、前年同期比38%増加したと発表した。中央銀行をもたないパナマは、パンデミック発生後、海外基金や国際機関から積極的に資金調達を行い流動資金の確保に動いた結果、流動資金が過剰に滞留する不健全な財務状況となっている。
(5)2020年新車販売台数24,091台
パナマ自動車販売協会(ADAP)は、2020年の年間新車販売台数を24,091台と発表した。これは、前年比で23,775台少ない(前年比で49,7%減少)。パナマでの新車販売台数は、2016年の66,670台をピークに減少傾向にあったが、2020年はパンデミックによる外出制限や経済への打撃により、販売台数が大きく落ち込んだ。例年10月頃に開催される新車販売促進フェア(パナマ・モーターショー)が、2020年はバーチャル形式で12月に開催された。同フェアの効果もあり、12月の販売台数は3,742台となり、前年同月3,765台とほぼ同じ販売実績となった。また、1月27日にADAPのアンソニー・サレルノ新会長は就任の場で、2021年の新車販売台数について、30,000台を見込んでいると述べた。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)2020年コロン・フリーゾーン取引額14,677百万ドル2020年12月、コロン・フリーゾーンでは一般消費財(雑貨、洋服、家電)の取引が活発になってきた。コロン・フリーゾーンの統計データは会計検査院による監査が終わっていないが、速報値では12月単月の輸入額は714百万ドル(前年同月比17%増加)、再輸出額は758百万ドル(同3%減少)だった。また、2020年の年間取引額は14,677百万ドルで、前年比20.5%減少した。内訳は、輸入が6,754百万ドル(同22%減少)、再輸出が7,923百万ドル(同19.3%減少)だった。取引額上位の再輸出先は、コスタリカ(693百万ドル)、コロンビア(598百万ドル)、アメリカ(505百万ドル)、グアテマラ(472百万ドル)となっている。輸入元は中国が2,497百万ドルで全体の37%を占めている。コロン・フリーゾーンで扱われる主な商品は医薬品、衣類、靴、化粧品、家電など。コロン・フリーゾーン庁によれば、今年はバイヤー向けオンライン・カンファレンスを3ヶ月おきに開催することを計画している。
(2)コスタリカからの食品輸入制限
1月14日、コスタリカは世界貿易機関(WTO)にパナマによる食品輸入制限を提訴した。輸入制限がかけられている対象は、乳製品、生肉(牛・豚・鶏)、加工肉、果物(イチゴ・パイナップル・バナナ)。これは、コスタリカの食品工場の輸出許可期限が2020年6月30日に終了したことに対するパナマ側の処置。パナマの貿易産業省は、WTOの枠組みに沿ってコスタリカが相互利益に基づく商取引関係の継続を望むなら対話の扉は開かれている。また、輸入再開は衛生、及び植物検疫当局による正式な検査を実施したうえで、WTOの多国間合意に基づいて承認されるとコメントした。今回の提訴は、WTO内の貿易紛争協議に移されるが、両国には60日間のコンセンサス形成期間が与えられる。この期間内にコンセンサスが形成されない場合は、仲裁パネルが設置される。
(3)パナマ・ベネズエラ間のフライト停止
2020年12月13日、パナマとベネズエラの航空局によって両国間のフライトが停止されたが、その後、12月23日に両国当局が解決に向けた協議を行った。ベネズエラ航空局は、同席上でドミニカ共和国からのフライトで乗客57名に新型コロナウィルス陽性が判明し、このことがパナマともフライト停止に踏み切った要因だったと説明した。パナマとベネズエラ間の商用便再開の日程は決まっていない。
4.パナマ運河、海事関連
(1)パナマ運河通航実績(2020年10月~12月)パナマ運河庁の2021会計年度第1四半期(2020年10月~12月)の通航実績は3,261隻、前年同期比で155隻減少した。クルーズ船の通航隻数はわずか5隻だった。一方、通過船舶トン数は134百万トンで、前年同期比で1百万トン増加した。また、通航隻数の中にはパナマックス型だがドラフトの問題で第三閘門を利用しなければならなかった本船(通称パナマックス・プラス)が124隻含まれており、これは2020会計年度の年間隻数188隻に比べても増加傾向にある。
(2)パナマ運河のLNG船通航需要増加、条件付通航予約枠の拡大
今季は東アジアで厳冬となり発電用エネルギーの輸送需要が高まっている。このためパナマ運河を通航するアジア向けLNG船が増えており、通航隻数が10月は35隻(前年同月38隻)、11月は53隻(同45隻)、12月は50隻(同44隻)と高水準で推移している。現在の予想では3月頃まで気温の低い状況が続くとみられている。パナマ運河庁曰く、ここ数年、米国の天然ガス液化プラントの稼働が始まり、東アジア(日本・韓国・中国・台湾)向けLNG輸送が増え、利用者から通航予約枠の拡大要請を受けてきた。先進国が掲げる脱炭素社会に向けたエネルギー政策の転換もありLNG需要は増加している。また、これはLNG船の用船料の上昇にも繋がる。当初、2020年はパンデミックの影響でエネルギー消費が落ち込むと予想され、LNG価格はMillion BTU あたり約2ドルに値下がりしたが、その後、反転して足下では上昇基調にある。運河庁はネオパナマックス型の通航需要増を踏まえて、1月23日から当日4日前に空いているネオパナマックス船の予約枠は全てオークション方式で提供される様に予約ルールの変更を行った。
(3)水管理システムプロジェクトの入札資格審査申請日の修正
1月6日、パナマ運河庁は、パナマ運河の中長期的な運営に加えてパナマ国民半数が日常生活で消費する水資源確保を目的とした「水資源管理システムプロジェクト」の入札資格審査内容の修正を行い、申請書類の提出期限を3月4日、同5日に変更した。これまで、申請書類の提出期限は1月25日、同26日とされていた。
(4)2020年末パナマ船籍登録実績
パナマ海事庁が発表した2020年末のパナマ船籍登録状況は、8,516隻、230.5百万トンで、トン数ベースで前年比6.2%増加した。2020年、新たにパナマ籍船として登録された船舶の積載量は29.7百万トンで、2011年以降で最も多くの年間追加登録トン数となった。また、新造船の登録は339隻、14.3百万トンだった。船籍登録におけるパナマの競合国はリベリア、マーシャル諸島など。パナマ船籍の世界シャアはトン数ベースで16%以上、主に日本、韓国、中国、ギリシャ、シンガポールの船主が登録している。
(5)ワクチン供給ルート最適化を支援する覚書
1月22日、パナマ運河庁は、パナマ・ポーツ・カンパニー(PPC)とPSA・パナマ・インターナショナル・ターミナル(PSA)との間で、ラテンアメリカへの新型コロナウイルス・ワクチンの供給ルート最適化を支援する覚書を締結した。この中で、パナマ運河庁、PPC、PSAは、パナマ運河の太平洋側に、ラテンアメリカ地域へ新型コロナウイルス・ワクチンの貯蔵、供給のためのロジスティックセンターの設立に向けた3者連合を立ち上げることに合意した。
(6)パナマ運河ルートの利用による二酸化炭素(CO2)削減量の公表
1月27日、パナマ運河庁は、パナマ運河ルートの利用によって、2020年に世界中の船舶から排出される二酸化炭素(CO2)が1,300万トン以上削減できたと発表した。これは、出発地から目的地までに航行する船舶が、パナマ運河を利用したルートとスエズ運河や喜望峰等の他ルートを利用した際に想定される二酸化炭素(CO2)排出量を比したものである。パナマ運河庁は、本内容を二酸化炭素(CO2)排出削減プラットフォームにて公表し、今後は、毎月、公表を行う予定としている。本件について、バスケス運河庁長官は、パナマ運河の利用は、海上輸送距離の短縮によって、輸送料金のみならず環境上のメリットを顧客に提供する方法をこれまで模索してきたところであり、顧客の持続可能なサプライチェーンの構築に貢献したいと述べた。
5.インフラ関連
(1)メトロ3号線環境影響調査の入札1月21日、メトロ3号線の環境影響調査を行う企業を選定するために入札が実施され、3企業が参加した。入札の参考公示価格は267千ドル。参加した3社は、Planeamiento y Desarrollo社(入札価格169,117ドル)、Proyectos, Ejecucion y Control de Obras社(同220,000ドル)、CSA Group Panama社(同297,500ドル)。受注企業には5ヶ月間の調査期間が与えられる。その他、メトロ3号線建設中の損害事故を保障する保険会社を選定する入札が、2月25日に予定されている。同入札の参考公示価格は7.5百万ドル。
(2)アマドール地区クルーズ船ターミナルのオペレーター入札
パナマ海事庁はアマドール地区のクルーズ船ターミナルのオペレーターを決める入札でPuertos de Cruceros de Colon 2000社を選んだ。12月7日に実施した入札に参加したのは同1社のみで、参考公示価格18.8百万ドルを下回る、16.9百万ドルで落札された。ターミナルはペリコ島に建設され、20年間のオペレーションと維持管理を含むコンセッション方式。オペレーターはターミナル内の商業エリアを開発する権利を有する。
(3)メトロ・ケーブル・プロジェクト入札差止め
メトロ公社は人口増加が著しいサンミゲリート地区におけるメトロ1・2号線へのアクセス向上と移動手段の確保のためメトロ・ケーブル・プロジェクトを立ち上げ、2020年10月7日に参考公示価格1.3百万ドルを発表した。しかし、1月21日の報道によると、公共調達委員会は、フィジビリティスタディ、環境調査の入札差止めた。公共調達委員会は、入札書類の内容のうち、入札者によるボンド差入れ(入札価格の10%)、並びに銀行からの推薦状提出に関して必要条件が満たされていないことを差止め理由としており、メトロ公社は入札書類を修正する必要がある。
- 主要経済指標(2021年1月)(Excel)
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