パナマ経済(2020年9月報)
令和2年10月8日
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事担当:田中書記官
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●9月28日、小売りの対面販売、飲食店、国内航空便の再開許可が下りた。小売り、飲食店の全面再開に向けては需要の回復が必要。
●政府は3月に続き今年2度目の大型長期国債(2,575百万ドル)の発行を行った。
●パナマ運河庁の2021年会計年度予算案が国会承認された。予算額は3,308.9百万ドル。
●パナマ運河庁は水管理システムプロジェクトの入札を実施するにあたり、事前に行う入札資格審査のプロセスを公示した。同プロジェクトの入札は2021年第4四半期に実施予定。
1.経済全般、見通し等
(1)小売り、飲食店、国内航空便の再開8月25日に政府発表された経済再開ロードマップに沿って、9月28日から小売りの対面販売、飲食店、国内航空便が再開された。約6ヶ月ぶりの再開を受けて、飲食店では7割の約5,500店が営業再開、並びに再開準備を進めている。一方、パンデミックの影響による営業停止期間中に約1,500店が店を閉鎖した。パナマレストラン協会によれば、飲食店は定員が5割を下回ると利益が見込めない。国内航空便は、コパ航空傘下のエア・パナマが、アルブルック地区のヘラベルト空港からダビ、チャンギノラ、コロン島への定期便を再開した。また、小売りでは、店舗のキャパシティに応じて販売スタッフの人数が25~35%に制限されている。このため、小売り業に関わる約16万人の労働者のうち85%が、引き続き労働契約を停止されたままとなっている。今後は、新型コロナウィルスの感染防止対策、衛生管理を維持しながら経済再興に向けて需要の回復が待たれる。
(2)長期国債の発行(2,575百万ドル)
9月1日の閣議承認に基づき、22日に経済財務省は、総額2,575百万ドルの国債を発行した。内訳は、海外向け1,250百万ドル(満期2032年/利率2.252%)と1,000百万ドル(満期2060年/利率3.28%)、国内向け325百万ドル(満期2026年/利率2.77%)である。海外向け国債の幹事金融機関はBNY Mellonが担当した。資金調達の目的は、パンデミックの影響で約3,000百万ドル減少した政府歳入の穴埋め、並びに2021-2022年に満期を迎える国債のリファイナンスである。今回の国債発行にあたり、経済財務省は、金融市場から最大10,000百万ドルを調達することも可能であり、パナマの市場価値を再確認する機会となった旨、コメントした。
(3)コパ航空による所有機体数の縮減
航空業界では、旅客需要がパンデミック前の水準に戻るのは2024年頃との見通しがあるなか、コパ航空は、今年末までに運用が復活する便数は従来の4割にとどまると想定し、所有機体数の縮減に着手している。パンデミック直前のコパ航空の所有機体数は約100機だが、現在28機の売却を進めている。このうち、既に14の中型機(Embraer 190)は、豪州のAlliance Airlinesに売却が決まっている。また、多雨多湿のパナマを避けるため、16機を1年間のレイアップに備えて米国ニューメキシコ州ロズウェルに駐機させる計画。
(4)パナマ貯蓄基金による追加国庫納付(20百万ドル)
9月17日、パナマ貯蓄基金(FAP)理事会は、新たに20百万ドルの国庫納付を承認した。今回、納付される資金は新型コロナウィルスのワクチン購入に充てられる。FAPは7月にも、住宅購入補助に80百万ドル、医療医薬品購入に5百万ドルの資金提供を承認している。6月末時点のFAP資産残高は1,417.8百万ドル。FAP資金の使用に関しては、経済の急減速、GDPの0.5%を超える突発的な歳出が発生した場合に限られる。
2.経済指標
(1)GDP成長率が二桁のマイナス成長予想9月20日時点で、10万人あたりの新型コロナウィルス感染者数がパナマは2,482人となり、チリ(2,368人)、ペルー(2,289人)、ブラジル(2,096人)、アメリカ(1,509人)を上回り、米州で最も高い数値となった。パナマ商工会議所が予想した今年のGDP成長率は前年比マイナス12.5%、パナマエコノミスト協会の予想では同マイナス10~12%と、二桁のマイナス成長となる可能性が高い。
(2)8月の新車販売台数と自動車ローン件数の減少
8月の新車販売台数は1,398台で、6月の631台、7月の1,112台から若干持ち直した。自動車ローンに関しても、依然と買い手と売り手が資金調達オプションに関して、検討を行っている。パンデミック前の今年1月は新車販売台数3,487台に対して、自動車ローンの契約件数は2,297件だった。
3.通商,自由貿易協定,国際経済関連
(1)ゲイシャコーヒーの取引価格が史上最高値更新コーヒー豆の品評会Best of Panama 2020にて、95点を獲得したOlympus Geisha Lavadoが第1位に選ばれ、1ポンド(約453グラム)あたり、史上最高額の1,300.5ドルで台湾のPICK Coffeeが落札した。第2位はGeisha Black Jaguar Natural Limitedで、1ポンドあたり1,000.5ドルで日本のサザコーヒーが落札した。同品評会では、5,000ポンドのスペシャリティコーヒーが取引され、総取引金額は771千ドルに上った。
(2)パナマ大手乳製品・飲料会社の株式売買
9月30日、メキシコのコカコーラ・フェムサ社は、2011年に購入したパナマの乳製品・飲料大手エストレージャ・アスール社の株式をパナマ・デイリー・ベンチャー社へ推定220百万ドルで売却したと報じられた。更に、本取引にはホンジュラスの大手乳製品製造会社ラクトーサが関わっていることも明らかになった。エストレージャ・アスール社は、農家から日当たり12万5千リットル以上の生乳を購入している。
4.パナマ運河,海事関連
(1)パナマ運河庁2021年会計年度予算案の国会承認9月28日、パナマ運河庁の2021年会計年度予算案(2020年10月~2021年9月)が国会で承認された。歳入額が3,308.9百万ドル、うち国庫納付額が1,760.3百万ドルで、金額は先月月報掲載内容から変更なし。
(2)水管理システムプロジェクトの公示
9月7日、パナマ運河庁は水管理システムプロジェクトの入札を実施するにあたり、事前に行う入札資格審査のプロセスを公示した。本プロジェクトは、国民が日常生活で消費し、且つパナマ運河の中長期的な競争力確保の観点で必要となる水資源確保の課題に対応することを目的に、設計、施工、実装までを包括して行なわれる。関心企業は、11月12日までに、事前審査として関心表明、企業基礎情報、財務情報、過去に参加したプロジェクト実績等を提出する。その後、入札参加資格を得た企業は、運河庁が体系的に構築した水管理プロジェクトのポートフォリオに沿って,2021年第4四半期に入札を行う。ヴイアル運河庁財務次長は、本プロジェクトについて、2021年から2025年にかけて総額18億ドルから19億ドルの投資により行う計画であるものの、具体な内容等は、企業側の提案に基づき単一若しくは複数の案を選定することにより決定されることから、現時点では未定であると述べた。
(3)NG Power社によるLNG火力発電所建設計画の進捗
パナマ運河庁理事会は、コロン地区Telfers(運河庁管轄エリア)でのLNG火力発電所建設を承認した。同計画は、上海エレクトリックグループ社が出資するPanama NG Power社が2011年から進めており、発電量670MW、投資金額約800百万ドルのプロジェクトである。発電量は、隣接するAES社のLNG火力発電所(2018年より運用開始)の約2倍で、計画では米国産のLNGを輸入し2020年7月から電力供給を開始する予定だったが完成が大幅に遅れている。また、環境アセスメントに関する適用カテゴリーについても最高裁判所の判断を待っている状況。
(4)パナマ1~8月の自動車荷役取扱台数
パナマ海事庁が発表した今年1月から8月までのバルボア、MITの両ターミナルでの自動車取扱高(トランシップ含む)は55,811台で、昨年同期比52.9%の減少となった。このうち、パナマ向け輸入車の荷揚げ台数は、太平洋側のバルボアが10,939台で同53.2減少、カリブ海側のMITが4,786台で同43.7%減少した。パナマ国内の自動車販売はパンデミックの影響で大きく落ち込んでいる。パナマ自動車販売者協会は、今年の新車販売台数を18,500台と見積もり、パンデミック前の2019年の販売水準(年間販売台数47,866台)に戻るには2年かかるとコメントした。
(5)人道的な船員交替に関する海事庁発表
世界海の日(9月24日)に合わせて、国際海事機関(IMO)が主催した「COVID-19と船員交替:人道、安全、経済危機」をテーマにしたセッションの中で、ノリエル・アラウス海事庁長官らは、コロナ禍における船員交替に関して各国の協力・連帯を呼び掛けた。また、パンデミック後の7ヶ月間にパナマが実施した船員交替に関する取組みを紹介した。例として、パナマ籍船の船員に対してメディカル、トレーニングライセンスの有効期間の延長。本年5月に発効されたパンデミック時の船員の処遇に関するIMO決定の遵守、IMOのサーキュラーに基づき設定した船員の安全に配慮した7つ様式からなる乗船・下船・帰国に掛かるプロトコルなど。また、これまで同プロトコルに基づき実施された50ヶ国以上、8,268名の船員交替(客船乗客を含む)の実績が紹介された。
(6)パナマ運河鉄道の運行再開
6月23日に発生した運河通航中の船舶が運河地帯のガンボア地区チャグレス川に掛かる鉄橋に衝突し橋が落下した事故の復旧作業が完了し、9月28日より鉄橋の使用が再開された。これにより、太平洋側バルボア港とカリブ海側クリストバル港を結ぶ鉄道のコンテナ輸送が約3ヶ月ぶりに再開した。
(7)パナマ運河の喫水制限(50フィートへ引上げ)
パナマ運河庁は、9月24日から第3閘門の最大喫水を49フィート(14.94メートル)から50フィート(15.24メートル)へ引き上げると発表した。同喫水値は20ヶ月ぶり。1フィートの差はコンテナ船に積載されるコンテナ換算で330TEU相当と言われている。アメリカ海洋大気庁は今年のラ・ニーニャ発生確率を75%と発表しており、昨年の雨不足から一転して、今年は降雨を通じて運河へ十分な水が供給される見込み。
5.インフラ関連
(1)メトロ3号線事業に係る2021年度予算案の承認9月16日、メトロ公社の2021年度予算343.1百万ドルが国会予算委員会で承認された。そのうち、メトロ3号線事業については、112.5百万ドルが承認された。
(2)既設メトロ2号線事業の債務支払い期限の延長
9月30日、経済財務省、会計検査院、メトロ公社及び銀行事業体は、既設のメトロ2号線事業の債務(526百万ドル)支払い期限について、当初2023年としていたものを2025年に延長することで合意した。アレキサンダー経済財務大臣は、これにより、本件で直近の年度執行予定であった予算を経済再生に向けた優先分野への流用することが可能になると述べた。
(3)建設業の再開
9月14日、建設業が本格的に再開された。本業種の再開は、前週9月7日であるが、当週は衛生プロトコルを遵守するための準備期間となっていた。10月末までに10,000人から12,000人程度の建設労働者が労働復帰すると予想されている。
(4)建設事業による雇用創出
10月2日、公共事業省と労働開発省は、建設事業による雇用創出に向けた覚書に署名を行った。これは、建設工事の受注条件の1つとして労働開発省を通じて地元労働者の雇用を企業側に求める内容となっており、全国で約65,000人の雇用を目指している。尚,この署名は、コロン県の高速道路の設計・施工プロジェクトのプレゼンテーションの場で行われたもので、本事業で初めて適用される予定。
(5)旧市街等の再開発に向けた関係機関合同委員会の開催
9月23日、旧市街等の再開発に向けた関係機関合同委員会が開催された。本委員会は、14の省庁や公的機関及びパナマ観光局等で構成されており、旧市街の再開発により、同地区の観光、商業、地域住民の生活向上等の魅力を高めることを目的としている。旧市街は、パナマ運河とならび観光客が最も訪れる場所であるが、移動手段等のインフラが不足していることが課題となっている。
- 主要経済指標(2020年9月)(Excel)
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