パナマ経済(2020年8月報)

2020/9/22
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●経済再開ロードマップの発表。9月28日に小売業、レストラン、国内航空便、10月12日にホテル、観光、国際航空便の再開が予定されている。
●パナマ運河庁の2021年会計年度予算が閣議承認された。予算額33億890万ドル、国庫納付額17億6,030万ドルでともに前年度予算から約3%減少。
●パンデミック発生後、パナマ政府、銀行が国際金融機関等を通じて調達した資金が約60億ドルに到達した。更に今年中にリファイナンス目的の追加資金調達を検討中。
 

1.経済全般、見通し等

(1)経済再開ロードマップ発表
8月25日、パナマ政府は今後の経済活動再開に向けたロードマップを発表した。ロードマップでは外出制限の段階的な緩和・撤廃とともに、9月28日に小売業(接客あり)、レストラン、国内航空便の再開、10月12日にホテル、観光、国際航空便の再開が予定されている。尚、ロードマップを予定通り進めるためには、パンデミックが抑制されていることを示す指標水準をクリアすることが条件となっている。具体的には、実効再生産数(Rt)1以下、致死率3%未満、利用可能な病床ベッド数の20%を確保、同じくICUベッド数の15%を確保していることが条件となる。
 
(2)2021年度政府予算案(6月報告の続き)
経済財務省が国会に提出した2021年度の政府予算案は240億8,990万ドルで、2020年度予算より7億6,700万ドル増加した。予算増額となる一方で、パンデミックの影響による歳入減が見込まれており、来年度は国債等で約47億ドルの資金調達を行う計画となっている。予算案は今後、国会での審議を経て10月中に確定する見込み。
 
(3)パンデミック発生後の資金調達額60億ドル
パンデミック発生後、パナマ政府並びに銀行が国際機関から債権発行や融資枠を通じて調達した流動資金が60億4,800万ドルに達した(6月18日時点)。主な内訳は、3月に実施した国債発行25億ドル、IMFとMIGAから10億ドル、パナマ国立銀行による債権発行10億ドル、米州開発銀行7億ドル、ラテンアメリカ開発銀行3.5億ドルなど。更にパナマ政府は今年中に25億ドルの追加資金調達を行う計画だが、こちらは主に国債のリファイナンスに充てられる予定。
 
(4)公務員給与の上昇
パンデミックによる経済危機の最中、公務員の給与が上昇していることに対して、市民からは不満の目が向けられている。6月末時点の公共セクターにおける公務員の人数は23.9万人となっており、昨年同月比で0.4%増とほぼ横ばいなのに対して、上半期の給与総額が21億7,040万ドルと昨年同期比で6.3%増となっている。パナマ都市部の最低賃金が月給745ドルなのに対し、公務員平均が約1,500ドルと2倍以上の高水準になっており、また制度上、毎年自動的に昇給するため政府財源を圧迫する一因となっている。
 
(5)政府債務の償還期限
政府債務の償還期限に関して、現政権期間の2020年~2024年(2024年7月以降は次政権)に期限を迎える金額が97億5,642万ドルで全返済額の29.1%を占める。この中には来年償還を迎える円建て外債(サムライ債)415億円(期間10年、年利1.81%)も含まれている。7月末時点の公的債務残高は334億ドル。足下の調達金利は歴史的な低水準で、パナマはリファイナンス時に低金利メリットを享受できる可能性がある。
 

2.経済指標

(1)7月末時点の公的債務残高334億ドル
経済財務省の発表によれば、7月末時点の公的債務残高が334億6,640万ドル(うち海外由来が266億ドル、国内由来が68億ドル)に達し、前年同月比で48億8,130万ドル増加した。これは、今年のGDP予想の55%に達しており、財政責任法で定められている上限値(名目GDPの40%まで)を大幅に超過している。パンデミックの影響で3月以降、経済活動が停止され政府歳入が大幅に減少。7月末までの政府歳入は27億1,500万ドルで予算比33.6%減少となった。
 

3.通商,自由貿易協定,国際経済関連

(1)コスタリカへのコビア輸出
養殖魚コビアの輸出を手掛けるパナマ企業Open Blue社がコスタリカ農牧畜産省から輸出許可を取得した。承認期間は2023年までの3年半。コビアは海水魚の一種で、米国、欧州、中国の外食レストランで人気がある。現在、この他にパナマ国内で肉、加工肉製品、乳製品を扱う7工場がコスタリカへの輸出許可を待っている。一方、パナマの食品衛生基準に沿った検査が実施されていないことを理由に、パナマは6月30日からコスタリカの26の食肉や乳製品の工場に対して、パナマへの輸出許可を停止している。これを受けて、コスタリカは、不当な輸出禁止処置としてWTOを通じてパナマを非難した。2019年のパナマとコスタリカの貿易額は約5億ドルで、このうち9割はコスタリカからパナマへの輸出となっている。
 
(2)MiBusによる電気バス購入計画
MiBus(公共バス公社)は、今年末から来年初旬にかけて実施が予定されている新規購入バス195台の入札準備を進めている。現在、MiBus理事会で承認されている計画は35台の電気バスと160台のディーゼルバスの購入だが、MiBus会長は、購入車両195台を全て電気バスとする検討について明かした。既に昨年パイロット版として導入した中国BYD社製電気バス2台が市内を運行している。Mibusはバス1,436台を所有しており、2030年までに電気バスの比率を15~30%にする計画を発表している。
 

4.パナマ運河,海事関連

(1)パナマ運河庁2021年会計年度予算案
パナマ運河庁の2021年会計年度(2020年10月~2021年9月)予算が閣議承認された。歳入額は33億890万ドル(うち国庫納付額17億6,030万ドル)で、2020年会計年度比で1億1,720万ドル減少(同6,370万ドル減少)。前提となる運河通航船舶トン数は4億2,900万トン(CP/SUAB)で、これは2020年会計年度比で6,400万トン減少する見通しで、運河庁は世界貿易がパンデミックの影響から立ち直るのに一定の時間が掛かるとみている。足下でもパナマ運河はパンデミックの影響により通航隻数が減り、通常は月間1,000隻を超える通航が、6月は845隻、7月は933隻と落ち込んでいる。一方、2月から導入されたガツン湖の水位に連動したサーチャージによる収入が通航料収入の減少を補い、2020年会計年度の国庫納付額は計画通り18億2,400万ドルを見込んでいる(昨年度比で3,800万ドル増加)。
 
(2)パナマ運河庁システム導入における横領嫌疑
2017年3月、運河庁は第三閘門の運用開始に伴い、プロセス・コアシステムの更新プログラムの一環として効率的な運用をサポートするシステム、具体的には高度なアルゴリズムとモデル解析を駆使して運河水域での船舶の待ち時間短縮、コスト最適化、パイロットの最適配置を実現する蘭ダッソー・システムズ社の製品QUINTIQの採用を決定した。その後、システムの実装に向けて3つの契約(契約総額約1,400万ドル)が結ばれ、2019年10月にテストが終了しているが最終結果が公表されていない。今回、同システムの導入の過程において運河庁内で横領の疑いが生じており検察庁が調査を開始した。
 
(3)7月コンテナ月間取扱高が今年初の減少
7月、パナマ主要6ターミナルにおけるコンテナ月間取扱が前年同月比で今年初めて減少に転じた。海事庁が発表した7月単月の6ターミナルの取扱高合計は61万5,181TEUで、昨年同月比1万4,434TEU減少(2.2%減少)した。何れも大西洋側の主要3ターミナルの取扱減の影響が大きかった。具体的に、CCTは6万5,390TEU(昨年同月比2.3%減)、MITは20万9,872TEU(同16.2%減)、クリストバルは6万8,876TEU(同23.6%減)だった。一方、太平洋側はパンデミックの影響で大型船の直行やめてパナマトランシップに切り替える動きがあり、取扱高が増えた。具体的に、PSAは9万7,518TEU(同29.6%増)、バルボアは16万5,949TEU(同16.7%増)だった。その他、ボカスフルーツ港は7,576TEU(同61.1%増)だった。
 

5.インフラ関連

(1)建設業の再開
 上記1.(1)に関連して、9月7日より建設業及び関連する活動が再開される。ただし,9月4日の保健省令1034号によると、9月7日より12日までは、現場体制の準備期間の位置づけとされており、現場での施工は9月14日以降に順次、再開される予定である。また、各現場にて保健省の衛生プロトコルを遵守する必要がある。
 
(2)メトロ3号線事業の保険契約の状況
 メトロ3号線事業の工事リスクをカバーする保険契約の説明会が行われ、国内外の保険会社12社が参加した。本件の参考価格は750万ドルであり、土木工事及び車両調達を含む一式のリスクをカバーするものである。また,最大の補償額は本体工事の落札価格と同等の約25億ドルとされている。
 
(3)パナマ運河第四架橋事業の着工時期
 サボンヘ公共事業大臣は、本事業の施工が2021年夏に行われると発表した。本事業は、中国コンソーシアムが受注している。(当地の夏は、1月から3月頃)
 
(4)パナマ湾ビーチ再生プロジェクトの中断
 8月28日、パナマ湾ビーチ再生プロジェクトは、第1司法区最高裁判所の判決により地方分権法に定める市民参加プロセスが実施されるまで中断することが決定した。本事業の実施には、第4民事裁判所の判決により市民参加プロセスが必要とされていたが、パナマ市議会はこの判決を取り消すように控訴していた。
 
(5)アルブルックのモジュール病院建設の契約承認
 9月3日、会計検査院は、アルブルックのモジュール病院の契約を承認した。本事業は、すでに完工はしているものの,契約手続、施工(資機材等)に不備の疑いがあり、検察等が調査を行っていた。