パナマ経済(2020年7月報)

2020/8/5
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●CEPAL発表のGDP成長率予想が▲6.5%となり4月時点から大幅に悪化。ラテンアメリカ全体が落ち込んでおり今後も下振れする可能性がある。
●2021年政府予算案は前年比3.3%増の240億ドル。
●長らく外交の懸案事項だったコロンビアとの自動的租税情報交換が今年から始まる。
●韓国とのFTA法案がパナマの国会で批准された。
 

1.経済全般,見通し等

(1)パナマGDP成長率予想▲6.5%
7月に国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会CEPALが発表した2020年のGDP成長率予想で、パナマは▲6.5%となり、前回4月時点から4.5%悪化した。また、ラテンアメリカ・カリブ地域の成長率予想は▲9.1%となった。パナマ経済はコロンフリーゾーンからの再輸出などでラテンアメリカの経済活動に大きく左右されるため、新型コロナウィルスの感染拡大が続く同地域において今後も下振れリスクを伴う。仮に、パナマのGDP成長率が▲6.5%となった場合、名目GDPは2017年と同水準になる。3月中旬以降、ライフラインを除き主要な経済活動が停止しているため、政府歳入が落ち込んでいる。今年上半期の歳入は前年同期比34%減少(11億5,400万ドル)した。また、直近の単月(6月)では同63.5%減少となり、減少幅が広がっている。
 
(2)2021年政府予算案240億ドル(前年比微増)
7月29日、2021年の政府予算案が閣議承認され国会へ提出された。金額は240億8,890万ドルで、本年度予算233億2,240万ドルから3.3%増加した。2021年予算案の前提は、財政赤字を45億ドル、GDP成長率を2020年比プラス4%と想定している。主な分野別の配分案は、医療に36億2,300万ドル、教育に29億4,800万ドル、社会保障に27億6,500万ドル、治安に13億8,000万ドル、司法関連に3億8,300万ドル、インフラ投資に16億1,800万ドルで、このうちメトロに4億4,000万ドル、送電公社ETESAに 3億3,800万ドル、トクメン空港公社に2億8,000万ドル、Mi Busを含むその他機関に2億200万ドルが割当てられる。経済財務省は、歳入が限られており国会での調整余地は小さいとコメントしている。
 
(3)経済再興法案
7月27日、経済財務省は経済再興に向けた3法案(中小企業のための減税、早期納税者に対する10%減税、納税申告の延長と支払い猶予)を国会に提出した。また、13日には貿易産業省も製造業多国籍企業法(EMMA:Empresas Multinacionales para la Manufactura)法案を提出した。同法案は、製造業に関わる外資企業の誘致を通じて、パナマにおける製造業の確立、雇用創出、職業訓練センターの設立、技術と知識の習得、国際的な競争力を獲得することを目的としている。
 
(4)今年1~5月の輸出実績
会計検査委員の発表によれば、今年1~5月の輸出トン数は67万トンで昨年比3.1%増加したが、金額ベースでは2億7,891万ドルで昨年比3.3%減少した。輸出品目別の金額上位は、バナナ6,028万ドル(前年同期比8.1%増)、木材2,316万ドル(同28.9%減)、魚切り身2,032万ドル(同5.6%増)、砂糖1,952万ドル(同34.0%増)、牛肉1,905万ドル(同122.7%増)、だった。その他品目で金額が大幅に減少したのは、金属スクラップ1,446万ドル(同39.1%減)、衣類143万ドル(同63.6%減)。農産品の市場価格が下落しており、バナナは輸出トン数が前年比47.8%増加したにも関わらず金額の増加率は僅かだった。コーヒーは98万トン(同14.6%増)で770万ドル(同1.4%増)だったが、今後、パンデミックの影響でレストラン向け需要の低下が懸念される。
 
(5)FAP資金から8,500万ドル供出
パナマ貯蓄基金FAPは、経済財務省からの要請を受けパンデミック対策として8,500万ドルを国庫に譲渡する。このうち、8,000万ドルは住宅連帯基金プログラムを強化するために使用され、初めて住宅を購入する家庭は同基金から1万ドルの補助金を受ける。残りの500万ドルは医療機器、医薬品などの購入を目的に保健省MINSAに割り当てられる。7月10日時点のFAP資産残高は14億2,700万ドル。
 

2.経済指標

(1)6月末時点の公的債務残高330億ドル
6月末時点の公的債務残高は330億4,450万ドルだった。このうち海外債務が262億6,260万ドル、国内債務が67億8,190万ドル。5月末の残高と比較して2億9,420万ドル増加した。また昨年6月末時点からは64億3,200万ドル増加した。
 

3.通商,自由貿易協定,国際経済関連

(1)コロンビアとの自動的租税情報交換がスタート
3月に2国間で交わされた合意に基づき、今年からパナマとコロンビアの間で租税に関する自動的情報交換が始まる。7月に経済財務省が発表した情報交換国リスト64ヵ国の中にコロンビアも含まれていた。今後、パナマ在住のコロンビア人(自然人・法人)の租税情報がコロンビアに提供される。長らくコロンビア政府はパナマ政府に対して同情報交換を要求してきたが、要求が受け入れられないため、報復措置としてパナマからコロンビアへの再輸出品に関税を課すと圧力を掛けていた。
 
(2)貿易促進デジタルプラットフォームIntelcom
貿易産業省が開発したIntelcom(Office of Business Intelligence)への新規登録件数が5月2,897件、6月1,761件となり、アクセスの95%は国内だった。これは特に輸出業者の関心が高いことを示している。同サイトはパナマの貿易促進を目的としたデジタルプラットフォームであり、現在、日本を含む64ヶ国の商取引情報が掲載されている。(サイト情報 https://intelcom.gob.pa/)
 
(3)新規5社がSEM承認
新たに外国企業5社が多国籍企業本部制度SEMの適用を貿易産業省に承認された。これにより、投資3,800万ドルと雇用約155人が生み出されると推定されている。5社は、Spectrum Biomedical Latam(医薬品製造:カナダ)、Inceca Regional Services(飲料製造流通:ニカラグア)社、ABB Centroamérica y el Caribe(重電:スイス)、Alórica Panama(コールセンターサービス:米国)、EY Latam North Holding(会計税監査:英米)。新しい5社を含めてSEM企業は、現在162社で約11億7,300万ドルの投資を行っている。
 
(4)パナマ韓国FTA(パナマ国会での批准)
7月9日、国会第三読会にて賛成46票(総議席71)を獲得し韓国との自由貿易協定FTAの法案が批准された。同FTAには、商品、サービス、投資、知的財産、関税などの24章で構成されている。外交関係委員会は、「韓国からの輸出はパナマの国内産業にいかなるリスクももたらさない」と述べた。パナマからは直ちにコーヒー、ヤシ油、トマトペースト、ラム酒を韓国市場に投入できる。また中小零細企業にとっては、ロジスティック、農業、文化、観光、健康産業、持続可能な開発、映像および共同制作の分野においてFTAの恩恵がもたらされる可能性がある。韓国とのFTAは、中米5ヶ国(パナマ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ)が2018年2月に協定書に署名したにもかかわらず、その後、パナマは批准していなかった。
 

4.パナマ運河,海事関連

(1)クジラ類と船舶の衝突防止策実施
8月1日から11月30日まで、パナマ湾に回遊してくるクジラ類と船舶の衝突を防止する目的で、パナマ湾を通過する船舶に対して推奨ルートと速度制限(10ノット以下)が運河庁から発表された。これは、2014年に国際海事機関IMOが定めた海上交通と速度の年次推奨規定に則ったものである。
 
(2)パンデミックの海事セクターへの影響
パナマ海事会議所CMP(Camara Maritima de Panama)によれば本年上半期のCMP会員会社200社の売上が昨年比で30%減少した。海事セクターに属する企業の多くは年間売上が250万ドル以下の中小零細企業である。一方、海事セクターはニッチ産業でありパナマにおける雇用の受け皿として重要である。CMP代表は、雇用の維持は経済復活に欠かせないと主張し、パナマ国立銀行や中小企業庁に対して手元資金の限られている中小零細企業への資金援助、技術促進サポートを求めている。
 
(3)本年上期のパナマ船籍登録隻数469隻
パナマ海事庁が発表したところ、本年上期のパナマ船籍登録隻数は469隻とパンデミック状況下にもかかわらず好調であった。このうち34%が新造船、更にそのうち45%がばら積み船だった。その他にはコンテナ船、LPG船など。主にギリシャ、日本、韓国、イタリアの船主から大型船の船籍登録を受けた。
 
(4)パナマで船員の交代を実施
海事庁によれば、3月下旬からの4カ月間でパナマから計5,200名を超える船員、乗客の輸送が実施された。パナマから多くの船員が下船し、また交代要員として新たな船員が乗船した。これは保健省、移民局、民間航空庁、税関庁、トクメン国際空港、外務省の協力の下、実施された。パンデミック宣言後、世界中で何万人もの船員が船に取り残され、交代が出来ず問題となっている。
 

5.インフラ関連

(1)建設業の再開時期等
 保健省は、3月24日以降,措置がとられていた建設業の活動停止期間について、7月26日から15日間(8月9日迄)、延長すると発表した。他方で、同省は、トクメン国際空港第2ターミナル工事に100名、同ターミナルの駐車場に60名及びメトロ2号線のトクメン国際空港への支線に100名と各プロジェクトに対してそれぞれ作業人員を制限するかたちで,工事の再開を承認した。
 
(2)メトロ3号線事業関連の発注
 メトロ公社は、7月10日,メトロ3号線事業に関連して、工事のリスクをカバーする保険契約を公示した。本件は,同プロジェクトの工事で想定される条件変更,大災害等各リスクに対して,建設業者に対して補償を行うものである。
 
(3)ビーチ再生プロジェクトの中断
 ファブレガ・パナマ市長は、3月以降、審議が中断となっていたビーチ再生プロジェクトについて,新型コロナウィルスの影響により他に優先事項があると述べた。同市長は、本プロジェクトについては、2022年の完成を目指していた。