パナマ経済(2020年6月報)

2020/7/9
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●就任1年を迎えたコルティソ大統領が国会で演説し、経済復興に向けた12の優先計画を発表した。
●第一四半期のGDP成長率は+0.4%だったが、通年予想は-2.0%。
●公的債務が急激に膨らんでおり5月末時点の残高は327億ドルに達した。
●銀行ローンの支払いが7月1日から6ヶ月間猶予される銀行モラトリアム法が制定された。
 

1.経済全般,見通し等

(1)経済復興計画(大統領演説)
7月1日,コルティソ大統領は就任1年の節目に同日開会した国会にて演説を行い,その中で経済復興に向け下記12の優先計画を発表した。
 
ア.中小企業向け長期貸付け銀行ローン(2~5千ドル/返済期限7年)
イ.国立銀行管理下のもと貯蓄銀行やその他金融機関を通じた中小企業向け低金利貸付け基金1.5億ドル
ウ.中小企業が金融機関とローン管理するために5千万ドルの保証基金
エ.小規模農家の生産性向上に向けた技術支援のため農業開発銀行が管理する総額1.5億ドルの融資
オ.地元民の雇用創出を促進する公共インフラ修復計画
カ.パナマ貯蓄基金から8千万ドル拠出し住宅購入補助金プログラムを強化
キ.金融システムの健全性維持と建設・商業・飲食店・ホテルなどパンデミックで打撃をうけた事業の救済を目的とした特別基金に10億ドル
ク.国税庁承認のもと税金の3年間支払い猶予
ケ.58の教育施設整備計画と11の全国高速道路計画を含む公共インフラ事業による経済活性化
コ.2021年夏のメトロ3号線着工
サ.パナマ運河庁の水源プログラムの実現に20億ドル
シ.海外からの投資誘致に向けた政府機関をPro Panamaに統一
 
(2)GDP成長率予想
6月発表のIMFのGDP成長率予想でパナマは4月時点の予想から変化なく-2.0%だったが,ラテンアメリカとカリブ海地域の成長率予想は-9.4%で,4月時点から4.2%悪化した。中央アメリカとドミニカ共和国を合わせた成長率予想は-5.9%で,パナマの落込みは他中米諸国と比べ小さいが,パナマ経済は国際貿易に連動して影響を受けるため,国際的な経済活動の復活が鍵となる。
 
(3)銀行モラトリアムの6ヶ月延長(今年12月末まで)
パンデミックの渦中,3ヶ月間の枠組みで施行され6月末に終了となる銀行モラトリアム(ローンの支払い猶予)に関して,7月1日から12月31日までの6ヶ月間延長する法案に大統領が署名した。新たな法律156号で適用対象となるのは,パンデミックにより雇用契約を一時停止された従業員,個人事業主,パンデミックの衛生対策の影響を受けた事業者。大統領は声明にて,同法律は多くの国民にとって経済的な救済となり,強固な金融システムを保証するうえで大きなサポートになると語った。6月25日時点で103万人以上が銀行への支払い猶予を申請している。
 
(4)政府労使による3者協議結果
6月29日,労働開発省,民間企業代表,労働者代表による3者協議(Mesa Tripartita)は,23項目で合意に至ったと発表した。合意事項のうち14項目は企業の営業再開にあたって保障されるべき保健衛生対策だった。今回,最大の争点は,雇用契約の一時停止期間の延長(労働法で定められている上限は4ヶ月)。労働開発省,企業側は停止期間を最大6~8ヶ月まで延長できるよう提案していたが,労働者側はこれを受け入れなかった。一方,労働者側も歩み寄りの姿勢をみせ,稼働日や労働時間の変更の可能性が合意事項に含まれている。
 
(5)5月末の公的債務残高327億ドル
非金融公共部門の債務残高は,5月末に327億5,000万ドルに達した。内訳は国内債務が79.2%,国外債務が20.8%。債務残高は前年同期比で55億5,950万ドル増加した。今年4月末と比較して4億3,980万ドル増加しているが,この大部分はIMFから支払われた5億1,350万ドルにおよぶ緊急融資による債務である。一般歳入に関しては,経済活動の停止,税金の支払い猶予により3~5月の3ヶ月間で,予算比8億8,150万ドル減少。一方,保健衛生危機や経済対策に伴う歳出が政府財政を圧迫している。専門家や格付機関は本年末の名目GDPに占める債務残高の割合が48%を超えると予想している。
 

2.経済指標

(1)今年第一四半期のGDP成長率は+0.4%
会計検査委員は,今年第一四半期(1~3月)の実質GDPが106億3,430万ドルで,前年同期比で0.4%増加したと発表した。年初の経済活動は活況であったが,新型コロナウィルスの出現により(パナマでは3月9日に初の感染者が発表された),その後はGDPが押し下げられた。GDP増加に寄与したのは5万6千トンの銅輸出を含む鉱業で前年同月比103.8%増加,また輸送・保管・通信も好調で4.4%増加した。一方,建設業は6.9%減少,製造業は3.9%減少,小売り・卸売りは2.9%減少した。
 

3.通商,自由貿易協定,国際経済関連

(1)世銀との医療機器・医療品調達に関わるローン契約
6月16日,スクレ保健副大臣は、パンデミック対策として医療機器と医療品を調達するために経済財務省と世界銀行の間で2千万ドルのローン契約が承認されたと発表した。この資金を管理する機関は保健省。経済財務省と世界銀行の契約により,保健省は世界銀行側提供者と直接取引できることになるので、調達コストと調達時間の短縮が期待されると語った。
 
(2)コロンビア太平洋側LNGターミナル構想
コロンビアは来年はじめに太平洋側ブエナベンチュラ港でのLNGターミナル建設と運営に関する入札を実施すると発表した。投資額は4億ドルで,輸入,再ガス化,貯蔵ができる施設を建設予定。更に2.6億ドルを投資して内陸へのガスパイプラインの敷設(カリ周辺までの75km)を計画している。来年3月に入札予定だが、その前にステージ毎の建設計画が発表されると,BNamericas天然ガス会議でコロンビアのエネルギー省ディエゴ・メサ副大臣は語った。同計画はパナマ運河庁が発表しているパナマ太平洋側のLNGターミナル構想にも影響を与えると考えられる。
 

4.パナマ運河,海事関連

(1)拡張運河の運用開始から4年
パナマ運河庁は2016年6月26日の拡張運河の運用開始から4年経過したことをうけてコメントを発表。パンデミック下でもこれまでと変わらず国際海上物流において必要不可欠な役割を果たし続けていることを強調した。これまでに拡張運河を通航した船舶は延べ9千隻以上,船種別にはコンテナ船が46%,LPG船が25%,LNG船が12%,バルク船が9%だった。現在,拡張運河を通航する隻数は全体の約3割,トン数ベースでは約5割を占めるまでになった。
 
(2)パナマ運河鉄道橋への船舶衝突事故
6月23日,パナマ運河を太平洋からカリブ海へ通航中のバルク船BLUE BILL号が,運河内のガンボア地区チャグレス川に架かる鉄道橋に衝突して,鉄道橋が落下する事故が発生した。これにより,パナマ両岸のバルボア港とクリストバル港の間でコンテナ輸送をしているパナマ運河鉄道が一時的に利用できない状況となっている。同鉄道は一日あたり平均1,000個のコンテナを輸送しているが,本事故により暫くの間はトラックでの陸送に切り替えられるため,トラックによる陸送コストの増加が敬遠され,コンテナの取扱がパナマ国外の近隣諸国へ流出することが懸念されている。
 
(3)パナマ船籍登録は好調
パナマ海事庁の発表によると,パナマへの船籍登録は新型コロナウィルスの影響にも関わらず好調で,今年1~4月は389隻(トン数ベースで11.4百万トン)が新規に登録され,このうち137隻が新造船だった。パナマ籍船の平均船齢は18.3年。5月発表のClarksons Research社の統計によればトン数ベースでパナマ船籍のシェアは0.4%上昇した。パナマの船籍登録は27年間,国別で首位を維持している。
 
(4)船舶燃料供給実績(1~4月)
海事庁は,運河のオペレーションと密接に関わっている船舶への燃料供給事業が1月から4月までコンスタントに減少したと発表した。前提として今年1月から船舶燃料の低硫黄燃料油規制が開始された。低硫黄燃料油の1月の販売量は388,307トン,これに対して4月は329,456トンで15.1%減少。船舶用ディーゼル燃料(MGO&LSMGOの合計トン)は1月の67,606トンから4月は54,349トンとなり19.6%減少した。1~4月の供給実績は2,550隻だった。
 

5.インフラ関連

(1)国内インフラ
上記1.(1)の優先計画に関連して,コルティソ大統領は,7月1日の演説で,国内の経済回復及び雇用創出を行うべく11件の道路事業及び58件の教育施設整備を推進すると述べた。この11件の道路事業は,先般,公共事業省が再開を求めた29件の公共事業のうち,保健省が承認したものである。
 
(2)メトロ3号線事業の開始時期
上記1.(1)の優先計画に関連して,コルティソ大統領は,7月1日の演説で,上記公共事業とは別にメトロ3号線事業について述べた。本件は,2021年夏(当地の夏は1月以降)の開始を目指すとし,25億ドルの投資により5千の雇用を生み出すとともに,西パナマの住民50万人への裨益に繋がるものだと述べた。
 
(3)メトロ2号線のメンテナンス事業
 会計検査院は,メトロ2号線のメンテナンス事業について,オデブレヒト社-FCC社からなるコンソーシアムとの約950万ドルの契約について承認した。オルテガ・メトロ公社総裁は,多くの雇用創出が期待されるため,国内経済に大きな有益をもたらすと述べた。
 
(4)建設業の再開時期
 6月26日,パナマ政府は,3月24日以降,措置がとられていた建設業の活動停止期間を,7月11日まで延長すると発表した。