パナマ経済(2020年5月報)

2020/6/9
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●新型コロナウィルスの影響で停止されていた企業活動の段階的な再開が始まった。しかし,全面的な再開までは時間を要するため政府財政の悪化,失業者の増加など影響は計り知れない。
●5月に入りパナマ運河の通航隻数が大幅に減少した。降雨量も平年値まで回復しておらずガツン湖の水位は通航船舶の喫水制限に関わるため引き続き注意が必要である。
 

1.経済全般,見通し等

(1)政府歳入の大幅減少
パンデミックの影響により政府歳入が大幅に減少している。今年1月から5月の歳入は19億2,200万ドルで予算設定27億6,200万ドルから,30.4%減少した。特に直近3ヶ月は,3月が4億1,190万ドル(予算比42.8%減少),4月が2億6,960万ドル(同48.6%減少),5月が2億3,960万ドル(同57.1%減少)と右肩下がりで減少しており深刻な影響が続いている。政府は20億ドルの歳出削減に着手しているが,歳入減少を補うため追加で12億ドル程の資金調達を検討している。
 
(2)経済活動の段階的再開
パンデミックの影響で,3月20日より長らく停止されていた企業の営業活動が段階的に再開を始めた。政府は,緊急度やソーシャルディスタンスなどを考慮したうえで業種を6つのブロックに分けて,第1ブロックから順次,営業再開許可を発表している。第1ブロック(インターネット販売,修理部品販売工具店,技術サービス,小規模漁業,養殖産業)は5月13日,第2ブロック(優先的なインフラ事業,非金属鉱業,機械製造業など)は6月1日に再開された。政府は今後も実行再生産数Rtなどの感染指標を分析しながら,おおよそ2週間間隔で営業再開対象となるブロックを拡大していく方針。日当たりの新規感染者数が減少している状況ではないが,経済界からの要望もあり,政府は感染拡大防止と経済再生のバランスを取りながら難しい舵取りを迫られている。
 
(3)公的債務残高323億ドル(4月末時点)
経済財務省(MEF)発表によれば,4月末時点の公的債務残高は323億1,050万ドルとなり,前年同期比で53億3,870万ドル増加した。主な増加要因の一つは,パンデミックで打撃を受けた経済対策の一環として,流動資金確保のために今年3月に発行した25億ドル(2056年償還)の国債発行である。債務残高のうち海外債務が255億ドル,国内債務が68億ドル。エコノミストによれば,更なる経済対策,保健衛生対策が必要になれば債務が増加する可能性がある。
 
(4)銀行ローンの支払い猶予
5月4日,パナマ銀行団は,パンデミックがもたらした経済危機の影響により,2020年12月31日まで銀行ローンの支払い猶予を設定することに同意した。5月13日時点で232億ドル(82万件)分のローン条件が見直された。主な内訳は,住宅ローンが91億ドル(12万件),自動車ローンが14億ドル(11万件),個人ローン16億ドル(15万件),クレジットカードローン15億ドル(41万件)で全体の約6割を占めている。その他4割は事業者ローン。
 
(5)年金システムの破綻危機
社会保険庁によれば年金システムは破綻の危機に直面しているという。理由は登録している企業・労働者からの収入が今年に入りパンデミックの影響で大幅に減少しているため。1-4月の4ヶ月間の収入は12億500万ドルで予算比2億6,700万ドル不足した。社会保険庁は障害・老齢・死亡に対する確定給付型年金を維持するためには準備金を取り崩さなければならない。年金収支は2018年が4,800万ドルの赤字,2019年が2億5,000万ドルの赤字で,過去2年連続で準備金を取り崩してきた。それでもパンデミック前は2026年までは準備金を取り崩しながら年金システムを維持できると考えられてきたが,足下の大幅な収入減により,想定より早く準備金が払底するため,年金制度の見直しは現政権の喫緊の課題である
 

2.経済指標

(1)新車販売台数予想
パナマ自動車販売協会(ADAP)によれば,今年の新車販売台数の最新予想は16,500~17,000台で,昨年比で63%減少する見通し(先月時点の見通しは25,000台だったが下方修正された)。今年1~3月の販売台数は9,112台だったが,パンデミックの影響で営業停止となった4~5月の販売台数はほぼゼロ。自動車販売に関する営業再開は6月中旬以降とみられているが再開後も直ぐには需要は戻らず,市場が復活するには最大2年かかる可能性がある。
 
(2)失業率の増加
労働開発省は,新型コロナウィルスの影響による経済の停滞で,今年末の失業者数が40~50万人に達するとの予想に基づき,失業率がパンデミック前の7.1%から20%へ大幅に悪化する可能性があると発表した。既に5月中旬時点で21万人以上の労働者が契約を一時停止されている。現在,パナマ政府は業種を6つのブロックに分類して企業活動の再開時期をコントロールしているが,トップランナーである第1ブロックが5月13日に再開された。報道によれば,再開週に36社が284件の労働契約を復活した。
 

3.通商,自由貿易協定,国際経済関連

(1)コスタリカとの国境通過問題
コスタリカは5月18日発効の政令にて,他国からの新型コロナウィルスの侵入を防ぐ目的で南北の国境検問所にて,コスタリカを通過する貨物輸送トラックに対して厳格なウィルスチェックを実施し,コスタリカを最終目的地とする車両については入国禁止とすると発表した。これにより,ニカラグア,パナマと接する南北国境では,国境通過待ちの車両による大渋滞が発生した。中米の地域間貨物輸送の9割が陸路であり,食料,医薬品,消費財を積む物流網が寸断されることは同地域経済にとって致命的であることから,中米経済統合大臣評議会(COMIECO)は即座にコスタリカ政府に対して再考を要請。5月21日,コスタリカ政府は,同国に進入する貨物トラックに対して,厳格な衛生管理,GPSによる位置情報管理,コスタリカ滞在を72時間までとする入出国管理の下,国境を開放した。その後,パナマ側は対抗措置としてコスタリカの貨物トラックに対して同様にパナマ滞在を72時間とする制限を設けた。
 

4.パナマ運河,海事関連

(1)ガツン湖は低水位が続く
2019年は過去70年で5番目に雨が少なく,運河ではガツン湖の水位低下による通航船舶の喫水制限が設けられた。このため,今年の降雨量,並びにガツン湖の水位が注目されるが,今年1月から5月の降雨量は過去の平均値と比較して7%少なく,6月1日時点の同水位は81.36フィートだった。これは,期待されていた水位よりも4.14フィート不足している。運河庁幹部は,今年はエルニーニョやラニーニャの発生しない「中間年」であり今後の雨量に期待するが,世界的な気候変動の影響までは予想することはできないと発言した。
 
(2)パナマ運河通航実績(1-4月)
会計検査院発表によるパナマ運河の1月から4月の通航隻数は4,742隻で,前年同期比で3.2%減少した。パナマックス船が9.2%減少した一方,ネオパナマックス船は23.2%増加した。通航料収入は8億9,184万ドルで,前年同期比で5.6%増加した。5月以降は通航隻数の減少が顕著で,足下では月あたり1,000隻以下となっている。パンデミックの影響により通航隻数が大幅に減少するとみられるのがクルーザー船,自動車船,LNG船である。
 
(3)コンテナターミナル年間取扱実績(2019年)
現在稼働中のパナマのコンテナターミナルは,太平洋側はバルボア港とPSA港の2港(計8岸壁),大西洋側はMIT港,クリストバル港,CCT港の3港(計13岸壁)である。この他に現在,計画・建設中のコンテナターミナルが2港,太平洋側コロサル港と大西洋側PCCP港がある。各ターミナルの2019年の年間取扱実績は,バルボア港192万TEU(昨年比6.3%減少),PSA港97万TEU(60.1%増加),MIT港254万TUE(14.3%増加),クリストバル港105万TEU(18.0%減少),CCT港78万TEU(3.9%減少) 。更に2020年1-4月取扱実績は,バルボア港65万TEU(昨年比10.7%増加),PSA港40万TEU(31.4%増加),MIT港88万TUE(20.0%増加),クリストバル港38万TEU(17.8%増加),CCT港24万TEU(1.9%減少) だった。
 

5.インフラ関連

(1)公共調達法の改正
 4月末に国会審議を通過した公共調達法の改正は,5月8日にコルティソ大統領に承認され,9月以降に施行される予定。本改正の目的は,汚職やマネーロンダリング等に関与した企業が公共調達等に参加および政府との契約をできないようにすることである。これにより,当該企業・個人に対しては5年間,自らの不法行為を自供する等捜査に協力した当該企業・個人に対しては3年間とそれぞれ罰則期間が設けられる。
 
(2)インフラ事業の営業再開について
 上記1.(2)に関連して,第2ブロックに位置づけられている優先的なインフラ事業として,公共事業省所管プロジェクトのうち同省が再開を求めた29プロジェクトのうち,保健省から11プロジェクトの再開が承認された。アライハン-ラ・チョレラ間の高速道路の拡張等は再開される一方で,パナマ運河第4架橋は再開の承認が得られていない状況。