パナマ経済(2020年4月報)

2020/5/7
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●経済指標に徐々に新型コロナウィルスの影響が反映されてきている。新型コロナウィルスの経済への打撃は避けられず、先行きは不透明であるため、パナマ政府、一部企業は財政安定化に向け資金調達を実施した。
●国際機関による今年のパナマのGDP成長率予想はマイナス2%。パナマはラテンアメリカ地域の物流、旅客輸送のハブ機能を担っており、同地域の経済回復が遅れる場合はその影響を受けること、更にパナマ運河は今後、国際貿易量、原油価格の下落に伴う輸送ルートの変更、LNG輸送量の変動等の影響を受ける可能性がある。
 

1.経済全般、見通し等

(1)政府歳入の減少と資金調達
 新型コロナウィルスの影響を受けて、パナマ政府は手元資金の流動性確保と予算編成の見直しについて発表した。当初、2020年度予算129億73百万ドルに対して財政赤字を22億13百万ドルと想定していたが、3月以降、新型コロナウィルスの影響で経済に急ブレーキがかかり歳入が激減。国税局が発表した3月の単月歳入は4.2億ドルで前年同月比41%減少,4月は同数値が55%を超えると予想されている。今後の経済活動については様々なシナリオがあるなか、年間歳入は予算から30%~40%減少すると考えられている。斯様な状況下、パナマ政府は4つの外部機関から資金調達(融資枠)を確保したと発表。内訳はIMFから5.15億ドル、MIGAから5億ドル、BIDから3億ドル、CAFから0.5億ドル。これにより、3月下旬に発行した25億ドルの長期国債(2056年償還)と合わせて、合計38.65億ドルの資金調達に成功した。更に、政府は予算編成を見直し、一般歳出の削減と未着手投資案件の見送りにより20億ドルを捻出して、同資金をパナマ・ソリダリオ計画(新型コロナウィルスにより打撃を受けた市民への支援活動)に充てる方針を示した。
 
(2)パナマ格付けと財政赤字予想
 Moody’sは2020年度のパナマの財政赤字が35億ドルを超え、財政責任法の上限値であるGDPの2.75%を大幅に超え同5.3%に達すると同時に、年末時の債務残高が348億ドルに上り、こちらはGDPの53.2%(財政責任法の上限値は40.0%)に達するとの予想を発表した。尚、4月15日現在、パナマの格付けはMoody’sがBaa1(2019年3月にBaa2から引き上げられた)、S&PはBBB+、FitchはBBBで、何れも新型コロナウィルスの発生前から変更ないが、S&Pはソブリンリスクの方向性を、安定的から経済環境の悪化を見越してネガティブに変更した。
 
(3)労働契約の一時停止処置
 労働開発省は、雇用主と労働者の間の労働契約の一時停止を認めた3月20日付政令81号に基づき、2,583社が48,498人に対して1ヶ月間の契約停止を申請したと発表した。一時停止されたセクター別労働者の割合は、一次産業が1%、二次産業が14%、最も多いのはホテル、市場、外食、教育従事者を含む三次産業で85%だった。ある専門家は、新型コロナウィルスの発生前は約7%(14.6万人)だった失業率が、今年年末には14%まで上昇する可能性があると示唆している。
 
(4)コパホールディングス社による資金調達
 コパ航空とWingoを傘下に持つコパホールディングス社は、手元資金の流動性を確保するため、4月の1ヶ月間で6.45億ドルを調達した。内訳は,3.50億ドルの社債発行(2025年満期/年利4.50%)と2.95億ドル(無担保与信枠1.5億ドルを含む)の借入れ。同社は、「月あたりの固定費が82百万ドル。今回は今期の残りの期間、売上がストップすることも想定し資金調達を行った」と説明した。第1四半期の速報値は、売上が5.95億ドル(昨年比11.4%減少)、営業利益は98百万ドルだった。同社は経費削減のため労働組合側に、希望退職者制度の設定、政令81号に基づき5月以降に労働契約を一時停止する案、労働保障時間の短縮案を提案したが、労使交渉は合意に至っていない。パナマ政府は3月22日より30日間、人道支援を除く全ての国際旅客航空便を停止した。その後,4月22日から更に30日間の停止延長が発表された。現在、同社は6月1日の運航再開に向けて準備しているが、労使交渉の結果が円滑な再開に向けた障害となる可能性がある。同社飛行機102機がトクメン国際空港にて駐機しており、新型コロナウィルスによる運航停止便数は6月1日再開の前提で約24,500便に及ぶと考えられている。
 

2.経済指標

(1)GDP成長率予想
 4月12日に世界銀行、14日にIMFが各国の今年のGDP成長率予想を公表したところ、両機関ともパナマの成長率をマイナス2.0%と予想した。ラテンアメリカ・カリブ地域全体の成長率予想は、世界銀行がマイナス4.6%、IMFがマイナス5.2%。予想数値は新型コロナウィルスによる影響を加味したものだが、今後の先行きは依然不透明。
 
(2)新車販売台数予想
 自動車販売者協会(ADAP)は、2020年のパナマの新車販売台数を25,000台と予想した。2016年以降、新車販売台数は右肩下がりで、2016年に66,700台だったが2019年は47,866台まで減少した。今年は新型コロナウィルスの影響により販売台数は大幅に減少する見込み。
 
(3)トクメン国際空港利用者数の減少
 本年度第1四半期のトクメン国際空港の乗り継ぎ客を含む利用者数は346万人で、昨年比16.4%減少した。内訳は入国者が53万人(昨年比19.2%減少)、出国者が52万人(同15.2%減少)、乗り降りを含む乗継ぎ客は240万人(同15.9%減少)だった。特に、新型コロナウィルスの影響で3月の利用者数は75万人で昨年同月比45.9%減少した。トクメン国際空港公社は3月22日以降、2ヶ月間に及び国際航空便の発着が停止されていることを踏まえ、今後も利用者数が回復するまでには一定の時間を要すると見込み、今年の収益は昨年から6割程度減少すると予想している。同公社は空港労働者組合との交渉で、5月以降、事業環境が回復するまで従業員の給与を半額カット、賃上げとボーナスを一時停止するのと引替えに、約1,600名全員の雇用を維持することで合意した。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)FATFによるパナマ訪問調査延期
 国際金融作業部会(FATF)はグレーリスト脱却に向けた評価プロセスを新型コロナウィルスの影響により4ヶ月中断すると発表し、当初5月に予定されていた、資金洗浄・テロ資金供与防止の取組状況に関するパナマへの訪問調査を9月に延期した。
 
(2)韓国とのFTA発効に向けた動き
 4月23日、2018年に中米5ヶ国(パナマ・ホンジュラス・ニカラグア・エルサルバドル・コスタリカ)と韓国の間で署名されたFTAの発効に掛かる承認プロセスとして、貿易産業省が提出した法案第305号が国会の外交委員会(第一読会)を通過した。今後、同法案は第2読会へ移行する。貿易産業省は、日本、中国、韓国が新型コロナウィルスの打撃からいち早く立ち直ると分析しており、韓国とのFTAは、パナマの経済復興にとって有意義なものになると伝えている。
 

4.パナマ運河、海事関連

(1)2020会計年度上半期実績
 4月16日、パナマ運河庁は2020会計年度上半期(2019年10月1日から2020年3月31日まで)の通航実績を発表した。通航登録隻数は7,528隻(予算想定は7,029隻)、通航船舶トン数(CP/SUAB)は2億5,840万トン(予算想定は2億4,740万トン)で何れも予算想定を上回った。しかし、新型コロナウィルスの影響で世界産業は困難な状況に直面しており、今後不確実性は増すことが想定される。パナマ運河庁は、最新データを活用してパンデミックを監視、評価しながら、米中貿易摩擦、IMO規制、原油価格、節水対策、喫水制限、スエズ運河や喜望峰ルートとの競争力、米国のインターモーダル輸送の代替ルートといった影響も加味したうえで、パナマ運河への影響を包括的に判断する。現在、運河はパナマ保健省が定めた保健衛生ガイドラインに則って運用されており、その一環として、通航船舶への乗船を伴うパイロット等の業務は最少人数で実施している。運河を通航する全ての船舶は、到着の2週間前に船員の健康状態と寄港情報を報告する義務がある。
 
(2)船舶関連証明書のリモート提出受付開始
 パナマ海事庁の船舶所有権登録局は、4月27日以降、電子署名を用いて船舶所有権証明書、船舶抵当権証明書、船舶税支払い証明書の提出をリモートで受け付けると発表した。電子登録完了後は各種証明書の発行サービスを利用できる様になる。登録局への支払いは今まで通り、商船専用領事館、オンラインバンキング、パナマ国立銀行窓口で行うことができる。
 

5.インフラ関連

(1)公共調達法の改正
 3月11日に可決された公共調達法改正は、一部、修正を行い、4月29日に改めて国会審議を通過した。コルティソ大統領の承認を得て、正式に施行される予定。本改正案の目的は、汚職やマネーロンダリング等に関与したとして有罪判決を受けた企業が、公共調達等に参加および政府との契約をできないようにすることであり、当初は、企業の当該企業の失効期間を5年間として法案が可決されていたものの企業だけではなく個人にも失効期間を設けること、また、罪を自白した企業に対しては失効期間を3年間にする等の修正が行われた。