パナマ経済(2020年3月報)

2020/4/7
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●現時点で新型コロナウィルスによる経済への影響は予測困難だが、パナマ政府は外出禁止令、航空旅客便停止措置により感染の拡大を防ぐとともに、経済支援対策に向けて25億ドルの国債発行を行い資金需要に備えている。またパナマ貯蓄基金および銀行準備金を活用した流動資金の確保を発表している。
●パナマ運河庁は、人道的支援を理由に例外措置として、新型コロナウィルスの船内感染が確認されたクルーズ船Zaandam号の運河通航を承認した。現在、運河庁ではオペレーション人数を大幅に削減して、運河の運営維持に尽力している。
 

1.経済全般、見通し等

(1)新型コロナウィルスによるパナマ経済への影響
新型コロナウィルスによる経済危機はパナマに深刻な影響を与える。当地報道によれば,今後,パナマ運河は国際貿易の減少による需要減少に直面し,港湾やコロンフリーゾーンなど物流セクターも影響をうける。また,足下で原油価格が急落しており船舶コストに占める燃料費の割合が減少,パナマ運河を通航しない遠回りのルートを選択する海運会社が増える可能性がある。現在,ウィルスの感染拡大を抑えるため政府主導で外出禁止令,国内外の航空旅客便停止処置がとられており,外食や観光といったサービス部門にも甚大な影響がでている。GDPの15%程を占める建設業も停止されており,同セクターで働く約10万人が失業リスクを抱えている。現在,各付け会社フィッチレーティング社は2020年のパナマのGDP成長率を0%と予測(2019年は+3%)しているが,世界経済は密接に関係しており各国の実体経済への影響は予断を許さない。
 
(2)パナマ国内外航空旅客便の停止(現状、3月22日からの30日間)
パナマ政府は,新型コロナウィルスの感染拡大に伴い3月22日から30日間,国際航空旅客便を停止すると発表した(人道支援、医療機器、医薬品などの輸送便は除外)。これにより,他国の航空会社同様,パナマの大手航空会社コパ航空は経営面で重大な危機に直面している。コパ航空の昨年の売上高は20億ドル以上,子会社Wingoと合わせて78機の航空機と5,700人を雇用しており,パナマから中南米を中心に約80都市とサービスネットワークを構築していた。しかし,2月以降,新型コロナウィルスの影響を受け,経営資金が急激に減少しており,仮に30日間の停止措置が延長される場合,従業員のリストラも避けられないとみられている。株式市場でも,ニューヨーク証券取引所ではコパ航空の株価が2月20日時点の108ドルから3月19日には32ドルへ急落した。続けてパナマ政府は国内航空便も停止したことから,国内便中心のエアパナマ社も事業を停止。既に100万ドル以上の損失が発生した。ラテンアメリカ・カリブ海航空輸送協会は、新型コロナウィルスの影響により同地域の航空会社は今年80億ドル以上の損失が生じる可能性があると報告している。
 
(3)新型コロナウィルスの影響をうけてパナマ政府による資金調達
パナマ政府は新型コロナウィルスの影響により急速に悪化している国民生活や経済活動への救済措置を講じる目的で,大規模な流動資金の確保に動いた。一つ目は3月26日に発行した25億ドルの長期国債による資金調達である。条件は2056年償還で金利4.5%。これはコルティソ政権において3回目となる大型の国債発行(昨年7月に20億ドル,同11月に13億ドルを発行)であると同時にパナマは新型コロナウィルスの感染拡大後,ラテンアメリカ地域において最初に国債発行を取り付けた国となった。二つ目はパナマ貯蓄基金FAPが保有する資産(2019年時13.93億ドル)を担保に,国民の医療衛生支援,経済救済に限り資金投入することが国会で承認され法律に制定された。三つ目は,政府が銀行監督庁へ銀行準備金12.5億ドルの使用を承認する様に要請した。同準備金を原資としてパナマの銀行団22行は、新型コロナウィルスにより経済的な打撃を受けた顧客に対する救済措置を発表。クレジットカード、住宅ローン、自動車ローン、個人ローンの返済は3ヶ月間(2020年4~6月)の支払猶予期間が与えられることとなった。
 
(4)新型コロナウィルスによるコブレパナマ銅山プロジェクトへの影響
ミネラパナマ社によるコブレパナマ銅山プロジェクトも新型コロナウィルスの影響を受け,上半期における銅採掘が遅れる見通し。コロナウィルス陽性患者は隔離処置を受けなければならないが、プロジェクト用地は1.3万haもあり同社が細部まで把握するのは難しい状況。2019年のコブレパナマ銅山の売上は5.24憶ドル。今年の年間銅産出目標は31万トンだが、プロジェクトにどの程度影響がでるのか、現時点では不明である。
 

2.経済指標

(1)1月時点の上向き指標
会計検査院の発表によれば、1月の建設許可は109件で、前月の58件、前年同月の71件から増加した。コンテナ取扱高も68万TEUと前年同月比で17.5%上昇。パナマ自動車販売協会による1月の新車販売台数は3,487台(前年同月は3,324台)と各セクターで経済が持ち直す兆候みられた。一方、会計検査院が発表する多くの指標がN/A(Not Available)となっており、新型コロナウィルスの影響(在宅勤務等)によるものなのかは不明だが、通常よりも集計に時間がかかっている。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)FATFグレーリスト脱却に向けた取組
FATF(国際金融作業部会)からの勧告に基づいて,最終受益者情報の登録義務が法律で定められた。弁護士および企業は,情報登録システムが整い次第,最終受益者に関する情報提供の義務を負う。登録義務が発生する基準は該当企業の株式を25%以上保持しており議決権を有していること。登録代理人は,法人情報(名前,企業番号,登録日,活動内容)と最終受益者情報(名前,ID番号,パスポート,身分証明書,生年月日,国籍,住所,最終受益者となった日付)を非金融監督庁に提出しなければならない。手続きが完了すると,代理人はシステム内で使われる識別コードを手に入れることができる。手続きは無料だが,登録情報の更新を怠った場合は1千~5千ドルの罰金となる。一方,非金融監督庁は登録情報を機密扱いとして不正アクセスには20万ドルの罰金が課せられる。
 
(2)OECDと経済財務省との会談(G20での報告)
3月9-10日にパナマを訪問したパスカルOECD租税政策管理センター長は,経済財務省(MEF)との会談で,2020年2月のG20でパナマは租税透明性の改善に取り組んでいる国のひとつとして報告された旨,通知した(一方,取組不十分とされた国はブルネイ,ドミニカ,トリニダードトバゴなど)。OECDの薦めに従い3条件のうち少なくとも2つの条件を満たさなければならなかった。その条件は,(1)OECDのグローバルForoの基準を満たした租税情報交換,(2)関係する全ての国との間の自動的租税情報交換,(3)財政目的による多国間行政支援条約(Convencion MAC)への署名,である。パナマは2016年にMAC署名済み,2018年からは(2)に取り組んでおり,2020年9月からコロンビアとも自動的租税情報交換を始める。これは,国際社会に対するパナマのコミットメントであり,右のG20で取組不十分とされた国との大きな違いである。
 
(3)2019年のパナマへの海外直接投資は8.7%減少
2019年のパナマへの海外直接投資FDIは48.35億ドルで,昨年比4.62億ドル減少した(=8.7%減)。特に銀行・民間企業による利益再投資の減少が大きく,これは昨年比で6.55億ドル減少した。2018年はカナダを中心に活発な投資を呼び込んだが,一部のエコノミストはパナマがGAFIやEUの金融監視国リストに掲載されていることが海外からの投資にマイナス影響を与えていると指摘する。一方,SEM(多国籍企業本部)制度を利用した海外企業の進出は150社を越え,地域統括拠点としてのパナマの優位性は根強い。新たな投資を呼び込もうと,コルティソ大統領自ら各国大使とパナマへの投資に前向きな企業情報の交換を実施。3月6日にはEnka社(トルコ)のラテンアメリカ担当幹部と会談し,APP(Asociacion Publico Privada)を活用したインフラ投資について直接要請を行った。
 

4.パナマ運河

(1)新型コロナウィルス感染拡大後の対応
3月29日、新型コロナウィルスの船内感染により運河太平洋側沖合で立ち往生していたHolland America社のクルーズ船Zaandam号と、その救援のために急遽駆け付けた同社クルーズ船Rotterdam号は、人道的支援を理由に運河通航が承認され、無事に運河カリブ海側へ渡った。これは保健省と運河庁が連携して特別な検疫対策を施したうえ、最少人数によるオペレーションのもと実施された例外処置であり、現在、新型コロナウィルスに罹患した,或いは感染が疑われる船員を乗せた船舶の運河通航は禁止されている。また、感染が疑われず通航を予定している船舶についても運河庁から発出されているガイドラインに沿って、運河到着前に船員の健康状態や寄港履歴を運河庁へ提出しなければならない。運河庁よれば、運河庁の一部従業員から陽性反応がでたことをうけて該当者、並びに接触した可能性のある従業員を隔離しており、現在、通常時の1万人態勢から3.6千人へ減らしたうえで国際貿易の大動脈である運河の運営維持に尽力している。
 

5.インフラ関連

(1)メトロ事業のマスタープラン策定
 メトロ公社は,同公社の優先事業がメトロ3号線,メトロ1号線延伸事業およびメトロ2号線であるなか,同8号線まで計画がなされている2040年までのマスタープランの策定について継続していく旨発表した。また,トクメン空港が位置するパナマ東部とパナマ中心部の商業地域との接続性が期待されているメトロ2A号線については,官民パートナーシップ(APP)法のスキームにて実施する可能性が示唆された。
 
(2)公共調達法改正案に係る国会審議
 3月11日,公共調達法改正案が国会にて可決された。本改正案の目的は,汚職やマネーロンダリング等に関与したとして有罪判決を受けた企業が,公共調達等に参加および政府との契約をできないようにすることである。罰則対象期間は,永続的なものとしていたが,審議のなかで5年間となった。
 
(3)小児病院(Hospital Del Nino)新病棟建設事業の入札手続き
 Camce(中)は,2月28日に評価委員会が公表した最新評価報告書に対して,意義申し立てを行った。最新評価報告書では,Acciona(西)のポイントがトップであるが,Camce(中)は同社の過去の実績が評価されていないと主張している。
 
(4)パナマ湾海岸再生プロジェクト
 ファブレガ市長は,3月12日に予定していたパナマ湾海岸再生プロジェクトにかかる公開協議,市民投票については,コロナウィルスの影響で中止を発表した。当プロジェクトの2020年予算は3千万ドルであるが,3月末時点で使途は明らかになっていない状況である。