パナマ経済(2020年2月報)

2020/3/9
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●会計検査院発表による2019年の実質GDP成長率は+3.0%。2020年の成長率は4%台が見込まれている。
●ミネラパナマ社の業績は好調。コブレ銅山採掘はGDPを下支えする重要なプロジェクトであり注目度が高い。
●コロンフリーゾーンの取扱高が低調(金額ベースで2019年は前年比約1割減)。今後もコロナウィルスによる実経済への影響が波及してくる可能性あり。
●メトロ3号線事業に係る落札者が韓国企業コンソーシアムに決定した。
 
 

1.経済全般、見通し等

(1)2019年実質GDP成長率+3.0%
会計検査院は、パナマの2019年実質GDP成長率が+3.0%になったと発表した。これはリーマンショック直後の2009年(同+1.2%)以降、最低の成長率であった2018年(同+3.7%)を更に下回る結果となった。具体的な金額は実質GDPが430.61億ドル(昨年比12.57憶ドル増加)、名目GDPが668.00憶ドル(昨年比16.73憶ドル増加)だった。前年から実質GDP金額が大きく伸びた分野として、鉱業が3.36憶ドル増加(コブレ銅山採掘開始が寄与)、輸送/保管/通信が3.87憶ドル増加した。四半期毎の成長率を振り返ると、第1四半期が+3.1%、第2四半期が2.9%、第3四半期が2.7%、第4四半期が3.3%だった。2020年に関してIMFは成長率を+4.8%と予想しているが経済成長に影響を与える新たな懸念材料としてコロナウィルスの影響等が挙げられている。
 
(2)トクメン空港公社収支と第二ターミナル開業に向けて
2019年のトクメン空港公社の売上は2.57億ドル(前年比+8.5%)で,税引き後の純利益は68百万ドル(前年比+33.5%)だった。パナマ政府には配当金として25百万ドルが支払われ,この他に公社債の利子・手数料として45百万ドルが支払われた。トクメン空港では2019年末時点で11のプロジェクトが進行中であり,第二ターミナル開業に向けた準備が進められている。2019年10月に交わされた取決めではターミナル建設を請け負っているOdebrecht社が今年2月末までに建設を完了してトクメン空港公社へ引き渡すことになっている。その後,公社側が電気系統やシステムの点検を経て,2020年内の開業を目指している。また,トクメン空港は新たに第三滑走路と第三ターミナルの建設に向けた敷地拡大を検討しており,近隣の800ヘクタールの土地に関して,今年前半には土地所有者と購入交渉を始める予定である。尚,土地単価は会計検査院によって評価されるが,1平米あたり10~25ドルと見込まれており800ヘクタールの購入価格は最大2億ドル程になると見積もられている。
 
(3)ミネラパナマ社業績
2019年のミネラパナマ社(コロン県ドノソ地区のコブレ銅山採掘会社)の売上は5.24億ドルだった。生産量は銅が14.7万トン、金が6万オンス、銀が110万オンスで,金銀銅の売上比率は,銅が4.31億ドル、金が0.79億ドル,銀が0.14億ドルだった。2019年2月から本格的な採掘が開始され,6月に近隣のプエルトリンコン港で初めて船積みが行われた。その後,2019年末までに計20隻へ船積みが実施された。採掘された銅の6割は中国向けに輸出され,残りの4割は主に日本,韓国,フィリピン,インド,スペイン,ドイツへ輸出された。コブレ銅山プロジェクトは,ミネラパナマ社(親会社はカナダFirst Quantum社)による20年のコンセッション契約で(鉱山寿命は34年と推定),投資額は60億ドル,2022年には年間35万トンの銅生産が見込まれており,約4,200人の雇用を創出する。
 

2.経済指標

(1)コロンフリーゾーン取扱額とコロナウィルスの影響
2019年のコロンフリーゾーン取扱額は,184.69億ドル(昨年比▲10.3%)で,内訳は,輸入が86.55億ドル(昨年比▲11.4%),再輸出が98.14億ドル(昨年比▲9.2%)だった。イーコマースの発達にともない消費者と生産者が国を越えて直接取引を行うプラットフォームが整い,中継貿易を担うフリーゾーンの役割が見直されているなか,コロナウィルスによる実経済への影響が徐々に表面化しており,コロンフリーゾーンにも波及している。コロンフリーゾーンに輸入される一般消費財のうち中国から船積みされる製品が金額ベースで3割以上を占めるが,コロナウィルスの影響で中国の生産活動が落込むことは避けられないため,在庫量が大幅に減る可能性がある。このため,コロンフリーゾーンでは消費財の購入先を中国からインドへ切り替える動きもみられる。
 
(2)消費者物価指数が上昇
2020年1月の消費者物価指数IPCが前年同期比で0.4%増加した。主な要因はガソリン価格で13.5%値上がりした。その他にも輸送関連が2.6%,電気水道が1.6%,教育関連が1.3%,ホテル外食が1.1%値上がりした。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)電気自動車普及に向けた動き
パナマ政府は電気自動車の普及促進に向け電源供給に関する取組みを進める。現在、政府に承認されている配電会社は3社のみで、配電先も家庭と企業に限られているが、将来の電気自動車普及を見越して駐車場等にも充電設備を設置できる様にする。政府は2030年に新車販売の25~40%を電気自動車にする目標を掲げており、国立貯蓄銀行も政府の同取組みに追随して,電気自動車購入者に対して特別ローン(購入金額の75%まで融資可能、最長返済期間が84カ月、金利4.5%)を用意している。
 
(2)DiDi(滴滴出行)のパナマ進出
中国のシェアライド大手DiDi Chuxing(滴滴出行)がラテンアメリカにおいてブラジル,メキシコ,チリ,コロンビア,コスタリカに続きパナマに進出する。DiDiは世界に5.5億人以上の登録者を抱えるシェアライド界を代表する会社である。現在,Uberはパナマにおいて搭乗料金の支払い方法(電子マネーの他に現金を認めるかどうか)を巡る争いに直面しており,またタクシー業界から脅威と見なされているなか,DiDi幹部はパナマ進出にあたりタクシー業界とも連携していくことを強調した。DiDiのドライバーライセンスは犯罪歴のない21歳以上のパナマ人で一定基準を満たす運転免許を有している者に限定するとしている。コミッションについても15%程度と同業他社(25~30%)と比較して安価な設定となる予定。
 

4.パナマ運河

(1)上水サーチャージの徴収開始
 2月15日,パナマ運河庁は,現在の水不足の状況に対応するため,パナマックス船の通航予約枠数を制限すると共に,運河を通航する船舶に対し上水サーチャージの徴収を開始した。
 

5.インフラ関連

(1)メトロ3号線事業に係る落札者の決定
 2月3日,メトロ公社は,メトロ3号線事業の落札者をEl Consorcio HPH Joint Venture(韓)とすることを決定した旨発表した。その後,サボンヘ公共事業大臣は,メトロ3号線事業及びパナマ運河第四架橋事業を分離させる方針を発表した。同発表に関し,オルテガ・メトロ公社総裁は,メトロ3号線がトンネルを通過してパナマ運河を渡る案を検討中である旨述べた。なお,バスケス運河庁長官は,将来のパナマ運河の増深の可能性を考慮し,メトロ3号線が通過するトンネル上部の岩石の発破作業を加速させ,同トンネル建設に影響を及ぼさないようにする必要がある旨述べた。
 
(2)アマドール地区接続道路事業
 経済財務大臣は,公共事業省に対し,アマドール地区に繋がる既存の道路とシンタ・コステラIIIを接続する道路の建設事業についてターンキー払いにより事業を実施することを承認した。本事業は,首都圏からアメリカ橋を通ってパナマ西部地域に向かう帰宅ラッシュによって,アマドール地区への車両通行が困難となることを防ぐことを目的としている。なお,事業費は約5千万ドルと見込まれている。