パナマ経済(2020年1月報)

2020/2/19
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
 
●2019年末時点の公的債務残高310億ドルで財政責任法の上限値(名目GDPの40%)を上回ることがほぼ確実となった。
●公的年金制度が破綻危機を迎えている。原因は平均寿命が延びたことによる受給対象者の増加と準備金の減少。
●現時点ではコロナウィルスによるパナマ経済への影響は不明だが,中国からの直行便が一時休止となるなど,今後影響が拡大する懸念がある。
●パナマ運河庁は,長期間にわたる降雨不足を理由に,運河の持続的な利用と必要な水位確保に向けて2月15日より上水サーチャージの徴収及び日当たり予約枠の変更を行う旨発表した。
 

1.経済全般、見通し等

(1)2019年末時点の公的債務残高310億ドル
 経済財務省は2019年末時点の公的債務残高が310億18百万ドルに達すると発表した。これは2018年末時点の256億ドル87百万ドルから,53億31百万ドル増加したことになる。債務内訳は,対外債務が242億ドル23百万ドル,国内債務が67億ドル95百万ドル。債務残高が増えた主な要因は昨年7月に発足したコルティソ政権による国債発行によるものだが,調達資金は主にバレーラ政権時代の未払い案件の解消に充てられた。現在の債務残高水準は,財政責任法で定められている名目GDPに対する上限値40%を上回ることがほぼ確実な状況となっている。
 
(2)年金制度の破綻危機
 15日,社会保険庁は,将来,年金受給対象者が20万人増加すると予想され,このままでは2023年にパナマの年金制度が破綻すると発表した。2019年9月時点の年金準備金は33億ドルで,2018年に48百万ドルだった準備金の取り崩しが,2019年は2億28百万ドルとなり,これは年々増加していくと見込まれている。準備金の運用成績が低調で,不動産資産を除く利回りは3.86%だった。1960年代に61歳だったパナマの平均寿命は,2016年には78歳まで上昇,更に足下で7%を越える失業率や労働者の約4割が非正規社員である現状が年金受給の将来予測を悪化させている。コルティソ政権は前政権から引き継いだ年金未払い分4億21百万ドルを国債発行により解消したが,民間セクターによる未払い分2億83百万ドルは解消されていない。
 
(3)パナマ格付けと公的債務残高増加による影響
 格付け会社ムーディーズ社によるパナマの格付けは,2019年3月にBaa2から1段階引き上げられ,現在Baa1だが,パナマの財政状況が改善しない場合は格付けに影響する可能性があると表明された。パナマは国債発行の際に現在の格付けによる低利子の恩恵を享受できたが,ムーディーズ社によれば2019年末のパナマの公的債務残高はGDPの46%に達し,市場関係者にとってはネガティブサプライズであった。現在パナマ政府が抱えている問題の一つが年金をはじめとする社会保障制度の見直しだが,この過程で政府歳出が更に増えると懸念されている。
 

2.経済指標

(1)2019年GDP成長率(IMF発表)
 IMF発表によるパナマの2019年GDP成長率は3.2%,2020年予想は3.9%。成長率を維持する上で重要視されているのは銅の輸出で,2019年2月に開始したミネラパナマ社によるコブレパナマ銅山の採掘が軌道に乗れば,年間32万トン,GDPに占める割合が3%になると見込まれている。
 
(2)2019年インフレ率
 会計検査院が発表した2019年のインフレ率は▲0.4%であった。食品,消費財,通信,娯楽等のあらゆる分野で物価上昇率がマイナスであった。パナマは2014年のインフレ率が2.6%であったが,2015年以降は1%未満で推移し,2019年は遂にマイナスとなった。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)2019年貿易輸出額
 パナマ輸出協会が発表した2019年の輸出額は7億13百万ドルで,昨年比6.1%上昇した。パナマからの輸出は農産物,畜水産物何れも好調で2020年も5~6%上昇すると予想されているが,目下の懸念材料はコロナウィルスによる世界経済への影響である。コロナウィルスによるパナマ経済への影響は間接的だが,コロンフリーゾーンの取扱高が減少する可能性がある。また,中国国際航空は週1回の北京-パナマシティ直行便(途中ヒューストンで補油)を2月は就航しないことを決めた。
 
(2)輸出業者向け情報プラットフォームIntelcom
 貿易産業省は,生産者と輸出企業の双方に向けた情報プラットフォームとしてウェブサイトIntelcomを立ち上げた。これまでパナマは他国とのFTA等を通じて輸出活性化を図ってきたが,この効果が国内生産者や輸出業者の末端まで十分に浸透していなかったとの反省をもとに,同サイトでは二国協定,貿易統計,関税情報,書類情報,輸出仲介業者に関する情報を一元管理している。同サイトから利用者は輸出品がパナマから輸出先の目的地まで何日かかるか,いくらコストがかかるか,調べることができる。現在,サイト内で輸出先として各種情報が掲載されているのは米国,イスラエル,シンガポール,カナダ,メキシコ,チリ,コスタリカ,エルサルバドル,グアテマラ,ホンジュラス,ニカラグア,ペルーの12ヶ国。
 
(3)FATFグレーリスト脱却に向けたスケジュール
 パナマは2019年6月にFATF(金融作業部会)のグレーリストに追加された。その後,法改正を含めた様々な取組みを実施してきたパナマにとって,脱却に向けたタイムフレームが控えている今年は金融分野での国際的な信頼を取り戻す正念場となる。先ず,2月にこれまでの取組みが発表されるFATFの全体会議が開催される。その後,5月に評価委員会との個別協議が行われる。そこでは違法送金に関する取り締まりと最終受益者の登録義務に関する法律について協議を行う。9月に再度評価委員会と個別協議が行われ,脱却に向けたアクションプランが遂行されていることを証明しなければならない。この審査を通過すると10月の全体会議で進捗状況が確認された,その後FATFによるパナマ訪問と査察が行われ,最短で来年2月の全体会議においてグレーリストからの脱却が宣言される可能性がある。パナマ政府が最優先にしている4つのアクションプランは,(1)テロ組織による資金調達の監視,(2)違法送金の監視,(3)法整備,(4)資金浄化の監視で,国際社会と連携しながら効果的に取り組んでいく必要がある。
 

4.パナマ運河

(1)運河通航における上水サーチャージの導入
 13日,パナマ運河庁は,長期間にわたる降雨不足を理由に,運河の持続的な利用と必要な水位確保に向けて2月15日より上水サーチャージの徴収及び日当たり予約枠の変更を行う旨発表した。本サーチャージは,運河通航船舶に対して一律に10,000ドルを固定サーチャージとして追加徴収し,更に通航時におけるガトゥン湖の水位に応じて通航料の1~10%の範囲で変動サーチャージとして追加徴収するものである(その後,31日に微修正がなされ,固定サーチャージは通航船舶の全長に応じて2,500~10,000ドルの範囲で徴収されることとなった。なお,10,000ドルの追加徴収の対象となる船舶は300フィート以上の船舶である。)
 バスケス長官は,本上水サーチャージは短期的視点での措置であり,長期的視点では最大容量で船舶が通航できるよう水深を確保する必要がある旨述べた。また,乾期におけるガトゥン湖の寿命を延ばすための唯一の方法は通航隻数を減少させる(それにより,海に流れ出る運河内の水を減少させる)ことであり,料金が上がれば(本サーチャージを徴収すれば)運河の通航需要が減少すると理解している旨述べた。
 
(2)政府によるバヤノ湖の買収交渉
 パナマ運河の水不足対策の1つとして検討されているバヤノ湖から運河等への導水に関し,バヤノ湖と同湖と一体となり運営されている水力発電所のコンセッションを有するAESパナマの代表は,政府への同湖の譲渡方法につき,政府が株式を所有する企業との交換等を含む複数案を検討中である旨述べた。現在,同湖の価値を評価しているところであり,評価額は確定後に経済財務省に提示される見込みである。
 なお,バヤノ湖を活用した水不足対策には長期間を要する見込みであるため,運河庁は,より早期に実現可能な対策として,運河の貯水湖であるガトゥン湖に流入するトリニダード川流域にダムを建設し,調整池として機能させる案を検討中である。同建設については,今後,同庁のエンジニアが地盤調査等を行い,適地の検討や事業費の算出等を行う予定である。
 

5.インフラ関連

(1)メトロ3号線事業の入札動向
 公共調達局は,メトロ3号線事業の入札において韓国コンソーシアム(El Consorcio HPH Joint Venture)を最高評価とする入札評価結果に対して中国企業(China Railway Group Limited)及びスペイン・中国コンソーシアム(El Consorcio ACPC Linea 3)が提出した計2件の異議申立を却下する旨決定した。
 なお,30日にはスペイン・中国コンソーシアムが更に別の1件の異議申立を提出している。もし,右異議申立が却下されれば,韓国コンソーシアムが本件入札における落札者として決定する。
 また,オルテガ・メトロ公社総裁は,入札プロセスと並行して,メトロ3号線をトンネルを用いてパナマ運河の下を通過させる案を本事業のプロジェクト・マネージャーである日本工営と協働して検討している旨述べた。右検討に関連して,メトロ公社は,トンネル建設を検討している地点の地盤特性を把握するため,ボーリング調査業務をLCC Ingenieria S.A.と契約した。
 
(2)パナマ湾ビーチ再生プロジェクト
 ファブレガ・パナマ市長は,4月末より1億2千万ドルの事業費が想定されるパナマ湾ビーチ再生プロジェクトを実施(入札公示)する旨発表した。これに先立ち,複数の団体や関係者が反対意見を呈していることも踏まえ,パナマ市は3月11日に公聴会を開催を予定している。ファブレガ市長は,プロジェクト実施の可否は本公聴会の結果に従う旨の意向を示している。
 
(3)アルムエジェ港の活用促進
 アラウス海事庁長官は,バナナ栽培関連企業であるデル・モンテ社やパーム油関係企業,水産関連企業等との間で,チリキ県のアルムエジェ港において将来建設される可能性がある桟橋の利用について意見交換を行っている旨述べた。アラウス長官によれば,本桟橋は,同地域の農業や観光等多くの分野の発展に寄与するものになるとのことである。