パナマ経済(2019年12月報)

2020/1/17
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●2019年度GDP成長率予想は+3.5%。ラテンアメリカの中では相対的に高い水準だが,パナマでは過去11年で最も低い成長率となる見込み。
●最低賃金が更改され現行比で平均3.3%の上昇となった。足下は景気が冷え込んでおり企業の負担増による雇用へのマイナス影響が懸念される。
●2019年のトクメン国際空港利用者数は乗り継ぎ客を含めて16.5百万人で,前年比+2.09%だった。このうち,パナマへの入国を目的とする利用者が4.7万人で,これは前年比+11%だった。
 

1.経済全般、見通し等

(1)2019年度GDP成長率予想は+3.5%
 経済財務省は,2019年度のGDP成長率予想を前年度比+3.5%と発表した。これが現実となれば2009年以降で最も低い成長率となる(最低は2009年の1.2%,最高は2011年の11.3%)。今年度の政府予算は成長率を5.9%と想定してつくられているため,現実とのギャップが主に税収の大幅減となって現れ,財政赤字が膨らんでいる。来年も引き続き米中貿易摩擦や低迷するラテンアメリカ市況に引きずられ大幅な成長率改善は望めない中,国内の公共事業プロジェクト(主にメトロ3号線事業とパナマ運河第4架橋建設)が経済を牽引すると期待されている。一方,国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会CEPALによるラテンアメリカ全体の2019年度経済成長率予想は0.1%,2020年度予想は1.3%となっており,依然として地域内におけるパナマの経済成長率は相対的に高い水準にある。
 
(2)新規国債(8.88億ドル)の発行
 12月,経済財務省は新たに8.88億ドルの国債の発行を行うと発表した。内訳と調達資金の用途に関して,4.22億ドル(償還期限2029年,利子3.00%)は2011年以降の社会保障費の未払いに充てられる。残りの4.66億ドル(償還期限2027年,利子2.85%)のうち,3.82億ドルは住宅ローン補助資金(新政権は補助対象を住宅価格18万ドルの物件まで拡大した),0.84億ドルはコロンフリーゾーン庁による返済目処が立っていない国立銀行からの借入金(本来はCorredor de Colonの整備資金だったもの)の返済に充てられる。11月末時点の政府の公的債務残高は303.7億ドルだったが,同国債の発行により債務が増加し財政責任法で定められている上限値(名目GDPの40%)を超過する可能性がでてきた。
 
(3)コブレパナマプロジェクトが本格稼働
 ミネラパナマ社によるコブレパナマプロジェクト(コロン県ドノソ銅山採掘事業)は今年2月から採掘が始まり,6月以降,プエルトリンコン港から海外輸出が始まった。9月末までの銅の生産量は8.4万トンで,そのうち中国向けが約6割を占めた。その他の輸出国は日本,韓国,フィリピン,インド,スペイン,ドイツなど。ミネラパナマ社の親会社ファースト・クァンタム社(加)の発表によると,第3四半期のコブレパナマプロジェクトの売上は2.1億ドル,純利益は36百万ドルだった。銅山の稼働率は7割を越え,月あたり約3隻の船が積出しを行っている。プロジェクトは順調で,今年は年間14~17万トンの銅の産出を見込んでいる。
 
(4)最低賃金が更改され3.3%上昇(対象:2020-2021年)
 サパタ労働開発大臣が調整役となり8月に開始した民間企業代表と労働組合による最低賃金交渉は両者妥結に至らず決定権が大統領に移された。12月31日,政府は先2年間(2020-2021年)の最低賃金を現行比で平均3.3%引き上げると発表した。これにより,パナマ市を含む都市部の最低賃金は平均で745ドル,地方は同582ドルとなる。今回の引上げ率は,過去10年間で最低水準だった。企業側の交渉担当機関であるパナマ私企業評議会CONEPは,同引上げにより企業側の負担額が約1億ドル上昇する。足下は景気が冷え込んでおり,企業は現行の雇用を維持できない可能性があると懸念を表明しました。
 

2.経済指標

(1)2019年の国内新車販売台数
 自動車販売者協会ADAPは2019年1-12月の国内新車販売台数は47,866台で前年の50,874台から5.9%減少した。自動車関連の国内取引は年間約20億ドルでGDPの約3%を占めている。販売台数の対前年度減少率は,2017年が14.6%,2018年が11.8%となっており,減少幅は年々縮小していることから2020年ではプラスへ反転することが期待されている。
 
(2)2019年トクメン国際空港利用者16.5百万人
 2019年にトクメン国際空港を利用した人数は乗り継ぎ客を含めて16,582,601人(前年比+2.09%)だった。このうち,11.7百万人が乗り継ぎ利用だった(前年比1.5%減少)。パナマからの乗り継ぎ先は世界80都市以上。乗り継ぎ客の減少に関して,ボーイング737MAXの生産中止を受けて,コパ航空が当初計画した機体数を受取できなかったことも要因である。一方,利用者のうち観光をはじめとするパナマへの入国利用者数は4.7万人で,これは前年比+11%。特にスペインやドイツからの観光客が好調だった。トクメン国際空港は第2ターミナルの全面開業が2020年7月に予定されており,年間20万人の利用者増を見込んでいる。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)パナマからの輸出好調
 米州開発銀行は,2019年のラテンアメリカ・カリブ地域からの輸出(金額ベース)が昨年比2.4%減少して,2017年の同12.2%増加,2018年の同8.7%増加から一転して,マイナス成長となる見通しを発表した。中国を含むアジア,EU向けの農産物,石油製品の輸出落込みが主な要因である。一方,パナマに関しては輸出好調で,今年10月までの輸出額は6.1億ドル,前年比で4.6%増加している。他の中米国と比較すると見劣りするが(コスタリカ76.9億ドル,グアテマラ65.6億ドル,ホンジュラス45.3億ドル,エルサルバドル40.7億ドル,ニカラグア34.8億ドル),輸出促進を政策に掲げている新政権の取り組み効果が数値に表れている。
 
(2)企業情報の登録義務化
 19日,企業の最終受益権所有者の登録を義務化する法律が臨時国会で可決された。登録される情報は,名前・住所・国籍など。今後,データベースで管理される予定。仮に登録義務を怠った場合には罰金が課せられる。これはFATFのグレーリストからの脱却に向けた取組みの一環であり,今後,新たに監督庁を設立して厳格な運用を行う方針。現在,パナマで登録されている会社(約75万社)のうち半数は実態がなく(主に不動産,建設,カジノ),資金洗浄等に関わっている可能性がある。
 
(3)パナマ籍船の登録
 民間調査会社(Clarkson Research Service,HIS Market)によると2019年末時点のパナマ船籍の登録隻数は8,289隻で全世界の登録船舶98,027隻のうち8.4%に相当する。また,トン数ベースではパナマ籍船は220,052,855トンで全世界の登録船舶の16%を占めている。2019年に新たに登録されたパナマ籍船は約250隻だった。
 

4.パナマ運河

(1)パナマ運河庁による2019年度国庫納付
 2019年度(2018年10月から2019年9月まで)の国庫納付額が公表され,17億86百万ドルとなった。通航量は469百万トンだった。2000年から2019年までの国庫納付額の総額は168億18百万ドルに達する。12月31日にはパナマ運河の返還20周年を祝う式典がパナマ運河庁で開催された。バスケス長官はスピーチの中で,地球規模の気候変動がパナマ運河の生命線であるガツン湖の貯水に極めて重大な影響を与えていると警鐘を鳴らした。
 

5.インフラ関連

(1)メトロ3号線事業の開札結果に対する異議申立て
 11月18日に実施されたメトロ3号線事業の請負業者を決める開札結果に対して,複数の入札団体から異議申立てが行われ,メトロ公社評価委員会は回答を行った。その後,公共調達局によって同回答の審査を行われたところ,メトロ公社評価委員会に対して,一部の異議申立てについて再評価命令が発出された。具体的には,(技術評価点が基準に満たなかった)China Railway Group Limited(中国)の一部技術提案の評価見直しを行うこと,(開札結果で最高評価を得た)Consorcio HPH Joint Venture(韓国)の資金調達方法に瑕疵がないか再調査のうえ報告することである。