パナマ経済(2019年11月報)
令和元年12月11日
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:田中書記官
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主な出来事
●政府は新たに総額13億ドルの国債を発行することを発表。7月に発行された総額20億ドルと併せて,来年1月に控える国債の償還と未払金の支払に充てられる。
●メトロ公社がメトロ3号線事業に係る開札式を行い,韓国企業コンソーシアムが技術点,経済点の合計点で最高評価を獲得した。
1.経済全般、見通し等
(1)総額13億ドルの国債を発行19日に政府は総額13億ドルの国債の発行を発表した。内訳は3億ドル(2030年償還,金利2.83%)と10億ドル(2053年償還,金利3.60%)。経済財務大臣は,今回の国債発行は最適のタイミングで実施されたとコメントした。今年7月にも総額20億ドルの国債を発行しているが,内訳は12.5億ドル(2030年償還,金利3.16%)と7.5億ドル(2060年償還,金利3.87%)であった。今回調達された13億ドルは,来年1月に償還を迎える12億ドルの金融債務の返済にあてられる。一方,7月に調達した20億ドルは主に前政権が残した未払金の返済にあてられる。
(2)9月末時点の財政赤字
経済財務省の発表によると,9月末時点の政府の財政赤字が24.55億ドルに達した(前年同期比で2.5億ドルの悪化)。この赤字額は9月末時点の名目GDPの3.56%に相当し,10月末に議会承認を経て引き上げられた財政責任法の上限値(3.50%)を上回る水準である。期間中の歳入は80.70億ドル(前年同期比3.23億ドル減少),歳出は105.25億ドル(前年同期比0.73億ドル減少)だった。
(3)建設業界の不振
パナマにおける建設業はGDPの18%を占め,多くの労働者を受け入れる主要産業であるが,近年の建設需要の減速に伴い受注が5年前の7割減となっている。民間投資が冷込み,政府によるインフラ投資事業も一巡したため,新規の建設需要が見込めない状況となっている。パナマ建設業協会COPACによれば,同業界で働く労働者は17.5万人。間接的に関わる労働者を含めると26万人おり,これは労働人口の約1割を占める。今年第3四半期までの建設関連の経済活動は前年同期比で10.8%減少している。
(4)パナマ貯蓄基金FAPの資産運用状況
9月末時点のパナマ貯蓄基金FAPの資産総額は13.8億ドルで前年同期から0.9億ドル増加し,FAPの運用が始まった2013年以降で最も運用益が積み上がっている。同基金の資産の85%が米国市場で運用されているが,期中にFRB(連邦準備制度)の公定金利が引き下げられたことで,より高利回りの投資先を求めて活発に取引が行われた結果である。FAPによる資産運用のポートフォリオは,62%がリスクの低い国債や債券,24%が流動資産,14%が株式等流通性の高い資産で構成されている。
2.経済指標
(1)2019年第3四半期の経済成長率会計検査院発表による第3四半期末時点の経済成長率は前年同期比で3.25%増であった。経済活動のうち,運輸,倉庫,通信,国際金融,農業では改善の兆しがみえるものの,足下の経済成長率は国際機関による見通し(CEPALは4.9%,IMFは4.3%)を下回っている。
(2)10月の国内新車販売台数
パナマ自動車販売者協会ADAP発表によると、10月の国内新車販売台数は6,034台と前年当月比で47%増加した。10月に開催されたパナマモーターショーでの販売が好調で,期間中に約90百万ドルの取引が成立した。同イベントでは販売促進に向けた取り組みが実施され、クレジットカード会社はこれまで最長7年だった自動車ローンの支払い期間を最長9年まで延長した。
(3)外食産業の売上不振
パナマレストラン協会の発表によると,外食産業の売上は前年比で35~40%減少している。一方で,飲食業(レストラン,カフェなど)に関する消費者物価指数はここ一年で1.3%上昇している。例年,ブラックフライデーやクリスマスで消費活動が活発になる11月~12月に売上増加が期待されているが,中長期的な売上増加の鍵を握るのは観光客であると見られている。現在,観光業界が取り組んでいる観光客誘致キャンペーンが消費を促すと期待されている。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)SEM登録企業状況今年の多国籍企業本部制度SEM(Sede de Empresas Multinacionales)の登録企業には,10月末時点で新たに17社が加わり,現在,更に7社が登録審査を受けている。今年登録された企業は建設,運輸,エネルギー,通信,食品,飲料に関する企業で約10億ドルの投資と約3千人の雇用をもたらした。今年登録された主な企業は,Uber(蘭),Millicom(盧),現代重工(韓),中国鉄建(中)等で日本企業は含まれていない。2007年から導入された同制度は既に157社(うち日本企業は7社)に利用されている。
(2)Googleによるインターネット回線延伸計画
「Curie」はGoogleが南北アメリカ大陸の太平洋側を結ぶインターネット回線用海底ケーブル敷設プロジェクトである。カルフォルニア発の同ケーブル敷設は,今年4月に南端のバルパライソ(チリ)まで到達した。11月中旬,GoogleはCurieを両端の中間地点に位置するパナマ太平洋側にも延長すると発表した(延長距離約1,000km,工期1年)。現在,パナマは人口の半数以上がインターネットにアクセスできる環境にあり,Curieがパナマに到達すれば中南米諸国全体でインターネット接続環境が向上すると期待されている。
(3)船舶の電子船籍登録
海事庁は船舶の電子船籍登録を2020年末から実施予定と発表した。パナマの船籍登録隻数は前政権時代に8,326隻から7,914隻に減少した。同時に世界の船籍登録シェアも2009年の22.97%から,2018年には17.46%へ低下した。パナマは過去10年間,登録手続の電子化を怠り,国際的な競争力を失ってしまったが,早急に登録管理,登録手続きの電子化に着手する。
4.インフラ関連
(1)メトロ3号線事業事業の開札18日,メトロ公社はメトロ3号線事業に係る開札式を行い,評価結果を公表した。最高評価を得たのは,韓国企業が参加するコンソーシアムHPH Joint Ventureであった。その後,その他のコンソーシアム等より今次評価結果に対する計5件の異議申立が提出された。現在,公共調達局にてこれらの意義申立に対する回答が検討されている。
(2)メトロ2A号線事業に係る調査
メトロ3号線事業に続く都市公共交通事業として,サン・ミゲリート市からパナマ市パイティージャ地区に至るメトロ2A号線事業の実施が検討されている。延長は約10kmが見込まれ,高架橋と地下トンネルを組み合わせた路線が検討されており,今後,都市環境等への影響も考慮し,詳細な路線が計画される見込み。
- 主要経済指標(2019年11月)(Excel)
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