パナマ経済(2019年10月報)

2019/11/14
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●10月末に国会が閉会した。本国会で承認,成立した主な経済関連法案等は,来年度予算(233億ドル),FTA批准(英国,イスラエル),改正財政責任法(後述),官民パートナーシップ法である。
●2019会計年度におけるパナマ運河利用状況が発表された。通航隻数は前年度から横ばいであったがネオパナマックス船の隻数が増加し,特に米国からアジア向けのLNG船の隻数が大幅に増加した。
●即位の礼に出席したコルティソ大統領は,訪日中に安倍総理と首脳会談を行い,メトロ3号線事業の継続をコミットした。また,同事業に対する来年度投資予算が正式に確定した。
 
 

1.経済全般、見通し等

(1)財政責任法の改正
経済財務省から提出された財政責任法の改正案が国会で承認された。これにより,2019年度の財政赤字の上限値は,名目GDPの2.0%から3.5%へ引き上げられた。同時に来年度以降の上限値も変更され,2020年度は同1.75%から2.75%へ引き上げられた。法改正による上限値の引き上げは,2009年以降,今回で7回目。現在,本年度の名目GDP見通しは698億ドルであり,財政赤字上限額は24.4億ドル(名目GDP比3.5%)と想定されているが,足下の財政状況は楽観できない水準で推移しており注意が必要。度重なる財政責任法の改正により,大手格付け会社からパナマ政府の財政管理能力に対する信頼低下が指摘されている。
 
(2)住宅ローンと補助金支払額の増加
銀行監督庁発表による今年7月末時点の住宅ローン残高は154億ドル(昨年同期比+6.7%)であった。このうち政府によるローン金利の補助対象物件が58億ドル(同+17%)含まれており,政府は補助金4.2億ドルの拠出を迫られているが,財源を確保できないため,急遽,経済財務省は3.6億ドルの国債を発効する旨,発表した。新政権は住宅ローン金利の補助対象物件をこれまでの物件購入価格12万ドルから,18万ドルまで枠を拡大しており,今後更に補助金の支払いが膨らみ財政を圧迫すると予想されている。
 
(3)新たな輸出促進機構(ROPANAMA)の設立
新政権は海外への輸出促進及びパナマへの投資呼び込みを担う新たな機構として,外務省内にPROPANAMAを設立した。今後,PROPANAMAを通じて,各国の輸出入条件の一元管理やパナマからの輸出品をインターネット上の仮想店から購入して電子決済と通関をワンストップでできる様なプラットフォームの構築を検討している。また,輸出促進策として在外公館のネットワークを活用した輸出拡大案も発表された。この他に海外拠点として,現在,ロッテルダムと上海に農業貿易事務所を設置しており,今後はスペインとポルトガルでも同事務所の開設を検討している。
 

2.経済指標

(1)2019年8月末時点の歳入状況
経済財務省発表による本年8月末時点の政府歳入は43億ドルで,昨年同期比で2.4億ドル減少,予算より12億ドル減少した。特に歳入の約8割を占める税収が大幅に減少しており(8月末時点の税収は34億ドルで,予算より18.8%減少),予算案作成時のずさんな歳入計画が原因で予想以上の財政悪化を招いているとの指摘がなされている。
 
(2)2019年上半期海外直接投資
 会計検査院の発表による本年上半期の海外直接投資は32.3億ドルで,前年同期比で10.5%増加した。上半期は,Favorita社(コスタリカ)によるRey社(パナマ)の買収(株式の60%を5.6億ドルで取得),Millicom社(ルクセンブルグ)によるCable Onda社(パナマ)の買収(株式の80%を14.6億ドルで取得)など海外企業による大型買収案件が成立した。
 
(3)2019年1-9月の新車販売台数
パナマ自動車販売協会による本年1―9月の新車販売台数は34,906台で,前年同期比で5.8%減少したが,10月にパナマモーターショーが開催され盛況だったことから,年末に向けて販売台数が伸びると期待されている。2016年は6.6万台だった年間販売台数が毎年減少して,今年は5万台を維持できるかどうかが一つの目安となる。新車市場が伸び悩む中,政府は2030年までに国内販売の40%を電気自動車にする政策を発表した。併せて市バスの35%,政府公用車の50%を電気自動車にする目標を掲げている。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)FTA発効(英国・イスラエル)
英国、イスラエルとのFTA発効が国会で承認された。現在,中米6ヶ国とEUは包括的なFTAを締結しており,今回の英国とのFTA締結は英国のEU離脱後を見越したもの。英国との貿易規模は年間3.8億ドルで,英国からの主な輸入品は酒類、薬品,パナマからは果物や水産物を輸出している。イスラエルとの貿易規模は年間5百万ドルである。
 
(2)FATFによるグレーリスト審査中間報告
 FATF(金融活動作業部会)はパリで開催された会議で,グレーリスト除外に向けパナマはマネーロンダリング(資金洗浄)に関する戦略的な取組が不十分であると発表した。今回指摘された具体的な取組は,事業ライセンスをもたない企業の金融活動の監視と違反企業に対するペナルティの設定、最終的な資金受取主に至るまでの追跡、オフショアビジネスに対する監視体制等の不足である。グレーリスト除外に向けて今回の指摘項目を来年5月までに是正する必要がある。
 
(3)漁業規定違反に対するEU制裁の可能性
欧州連合海事・水産局による漁業監査が1月と7月に行われ、絶滅危惧種の乱獲、違法な漁法を用いた操業、漁獲高制限の超過が報告された。パナマは2016年にEUの定めた漁業規定加盟国となったが、今回の調査を受けて制裁対象国となった場合、今後パナマからEUへの水産物の輸出が禁止される。パナマの海事庁,水産資源庁は今回報告された規定違反項目を早期に改善するため法案の準備に着手した。
 

4.パナマ運河

(1)2019会計年度における利用状況
2018年10月1日~2019年9月30日までの2019運河庁会計年度において,パナマ運河の通航隻数は13,785隻で,前年度比で10隻減少したが,うち,ネオパナマックス船は前年度の2,489隻から約500隻増となる2,963隻となり,引き続き,通航船舶の大型化の傾向が見られた。特に,通航隻数が増加したのはLNG船であり,米国東岸からアジアへのLNG輸出が活発化していることが窺える。なお,国別運河利用ランキング(発着地別貨物重量別)において,日本は前年度の5位から3位に上昇した(1位:米国,2位:中国,4位チリ,5位:メキシコ)。
 
(2)パナマ運河の新水源整備に係る状況
 28日,閣議は,バヤノ水力発電所を政府に移転するため、本発電所の約49%の株を保有するAES Global Power Holdings社と交渉することを経済財務省に許可した。現在,政府は同株の約50%を保有しており,同社が保有する約49%をパナマ運河庁に保有させ,同庁にバヤノ湖からアラフエラ湖等への導水に必要なインフラ投資を担わせることを検討している。なお,アレクサンダー経済財務大臣は,現時点では導水管建設に係る投資額や株の購入額は未定である旨述べた。
 
(3)新係留地の運用開始
21日、ココリ閘門近くの新たな係留地の運用が開始された。同係留地は,ネオパナマックス船が係留する規模を有し,悪天候時や船舶の損傷時停泊することが可能となる。これにより、現状で1日当たり8~11隻である第三閘門の通航隻数を12隻に増加させることが可能となる。
 

5.インフラ関連

(1)2020年予算におけるメトロ3号線計画への配賦
28日,閣議は2020年予算案においてメトロ3号建設事業予算として1.5億ドルを計上する修正を承認した。カリソ副大統領は,これまでメトロ3号線事業に係る資金を確保するために公共事業予算の再検討をしていた旨述べ,コルティソ大統領が訪日中に安倍総理に対し,メトロ3号線事業の継続をコミットした旨報告した。
 
(2)AES社(米)のLNG貯蔵タンクの運用開始
 コロン県にあるAES社(米)所有のLNG貯蔵タンク(18万M3)で開所式典が行われ,コザック米国務次官補代行が参加。同国務次官補代行は,本LNG事業を通じて米国とパナマの経済的な関係が一層深まったと祝辞を述べた。早速,貯蔵タンクには船舶からLNGが供給され,今後はLNG供給拠点として,中南米向けにLNG販売を行う。本格的な輸出は来年から始まるが,パナマは中南米で初めてLNG発電に取り組んだ国であり,今後は同地域のLNG供給拠点として主導していく。AES社はタンクに貯蔵されるLNGのうち25%を国内向け発電用,75%を国外に販売することを計画している。
 
(3)トクメン空港物流ターミナルの公募
トクメン空港公社は,貨物ターミナルエリア内にて運用される物流ターミナル(フリーゾーン)への土地分譲に係る公募を11月に行う予定である旨報告した。現在,同ターミナルの土地整備事業が行われており、同事業の進捗は50%である。
 
(4)トクメン空港第二旅客ターミナル建設プロジェクト
トクメン空港公社理事会は、プロジェクトの請負者であるオデブレヒト社に対し、工期不履行に係る罰金を適用する予定を公表した。罰金は、工期を超過した翌日(10月1日)から発生し、プロジェクトが完了するまで日割りで加算されていく予定である。