パナマ経済(2019年7月報)
令和元年8月8日
在パナマ日本国大使館
担当:田中書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
担当:田中書記官
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主な出来事
●7月1日に就任したコルティソ新大統領がニューヨークを訪問。米大手銀行幹部と会談して総額20億ドルの国債発行をとりつけた。
●財政赤字の膨張をうけて政府は歳出削減に着手。総額14億84百万ドルを目標とする削減策を打ち出した。
●失業率が上昇(2019年3月末時点で6.4%)。特に都市部の若年層で悪化しており、経済・治安への影響が懸念される。
1.経済全般、見通し等
(1)フィッチ・レーティング社によるパナマの評価大手格付機関フィッチ・レーティング社は、パナマの評価として、GDP成長率は引き続き堅調で2019年は4.7%、2020年は5.3%と見通した。今後の問題点として、財政赤字の拡大、税収の減少、政府による未払金の増加及び各種福祉政策の拡大による歳出増加等を挙げた。なお、本年に入り、ムーディーズ社及びS&P社は、パナマの格付を上方改定したが、フィッチ社はまだ改定を行っていない。
(2)小売上限価格制度の対象品見直し
貿易産業省は、半年ごとに小売上限価格を定めてきた基礎食料品について、7日よりその対象を従来の22品目から14品目に減少させることを発表。本制度は前政権にて2014年7月より開始された制度であるが、現政権はこれを一般消費者にとって有益なものとなっていないと判断し、今後対象品目は徐々に低減される見通し。
(3)経済財務省による財政赤字の見通し発表
アレクサンダー経済財務大臣は、本年12月末時点の財政赤字額として、今後削減に向けた対策を講じない場合、26億40百万ドル、名目GDPの3.8%まで拡大する旨発表。バレーラ前政権において、本年末時点の財政赤字は名目GDPの2.6%と発表されていたが、各種業者への未払金の増加、人件費の増加及び補助金の増加等を精査した結果、大幅に増加した。同大臣は、歳入の拡大及び歳出の縮小に向け、早急に対応する旨発表した。その後、政府は歳出削減目標を14億84百万ドルとする補正予算を実施すると発表した。主に公共事業への投資抑制、医療補償の見直しが柱となる。
(4)総額20億ドルの国債の新規発行
経済財務省は、総額20億ドルの国債を新規に発行した旨発表。その内訳は、12億50百万ドルが期間12年間、利率3.16%、残り7億50百万ドルが期間40年間、金利3.78%で、米国シティグループが本国債発行の主幹事を務めた。なお、期間20年間超で利率が4.00%未満の国債発行は、パナマ史上初となった。20億ドルのうち60~70%はインフラプロジェクトへの投資、30~40%は下期に償還期限を迎える国債の返済にあてられる見通し。
2.経済指標
(1)3月期の失業率会計検査院は、2019年3月末時点の失業率が6.4%に悪化した旨発表。2016年及び2017年同期の失業率は5.6%、2018年同期には5.8%であったが、本年はさらに悪化した。失業者数は12万9,424人で、前年同期の11万6,321人から増加。女性の失業率は8.2%で、男性の5.0%と比較するとかなり高い。国内都市部の失業率は7.2%で、農村部では4.2%だった。また、年齢別では15才~19才の失業率が19.4%で最高となっている。
(2)6月期の消費者物価指数
会計検査院は、6月の消費者物価指数(CPI)が104.9(2013年=100)で、前年同月比0.5%下落、前月比0.3%下落した旨発表。前年同月比の費目別上昇率はアルコール飲料・たばこが1.9%と最も大きく、医療は1.5%、レストラン・ホテルは1.2%上昇した。一方、運送はマイナス3.6%と最も大きく下げ、通信は同1.6%、衣料品・靴は同1.0%となった。
(3)2019年のラテンアメリカ、パナマのGDP見通し
国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)は2019年のラテンアメリカの実質GDP成長率の見通しを4%と発表。そのうちパナマは4.9%と平均を上回る成長が見込まれるが、パナマを中継してサービスや商品が出入りしている周辺国の経済状況、ならびに米中対立が深まり、パナマ運河を通過する貨物量が減少する可能性があるため、GDPの下振れリスクがあることも示唆されている。
(4)トクメン国際空港の利用者数増加
2019年上半期のトクメン国際空港の利用者が発表され、8,208,408人(前年同期比3.5%増加)。利用者のうち、乗り換え利用が5,847,097(同0.9%増加)、入国者が1,217,209人(同11.4%増加)、出国者が1,144,102人(同9.65%増加)。一日の平均利用者は45,000人以上。米国、欧州、アジアから入国者が多い。一方、出国先は乗り換え利用も含めてマイアミ、ボゴタ、ハバナ、カンクンなど、中南米向けが64%、北米向けが34%を占める。第2旅客ターミナルが今年4月に運用開始となり、順調に利用者数を伸ばしている。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)デジタル産業フリーゾーンの新設貿易産業省は、パナマ初のデジタル産業フリーゾーンの新設が閣議において承認された旨発表。同フリーゾーンはサンミゲリート市に開設される予定で、コンセッション契約に基づき民間企業により運営される。総投資額は39百万ドル、敷地面積は2.5ha、最終的に1,500人の新規雇用創出につながるとしている。データセンター及びEコマース業界等による進出を見込み、通信テクノロジー技術者の育成センターも併設される予定となっている。
(2)FATFグレーリスト脱却に向けた取り組み
本年6月に金融活動作業部会(FATF)がパナマをグレーリストに掲載する決定を下したことをうけて、大統領府は競争開発戦略局を立ち上げ関係省庁と連携しながら、資金洗浄やテロ資金支援への対策を講じる方針を発表した。FATFからはパナマに拠点を置く企業が株主へ利益を還元するまでの流れに関して透明性が低いと指摘を受けており、グレーリスト脱却に向けて対応が求められている。
4.パナマ運河
(1)パナマ運河庁の2020会計年度予算30日、閣議はパナマ運河庁の2020会計年度予算を承認した。予算総額は前年度比39百万ドル増の32億78.6百万ドルであり、国庫納付額は前年度比31百万ドル増の17億68.4百万ドルである。パナマ運河河拡張プロジェクトにおいて調達した融資の元本の返済が本格化し、2020会計年度以降は2019会計年度よりも返済額が1億15百万ドル増加するが、通航料収入の前年度比1億33.7百万ドル増が見込まれるため、予算総額及び国庫納付額は前年度比からの微増を維持できる見込みとなった。
5.インフラ関連
(1)パナマ運河第四架橋建設事業政府は、パナマ運河第四架橋建設事業における資金調達構造を変更する旨の考えを示した。約15億ドルと見込まれる本事業の資金調達の一部について、バレーラ前政権では、コンセッション契約により事業完了後に橋梁及び道路の維持管理及び料金徴収を担う西高速道路公社(ENA Oeste)がボンドを発行し調達する計画であったが、現政権においては、事業完了前にコンセッションを付与することは法的に有効ではない旨の考えであり、サボンヘ公共事業大臣は、事業を進捗させつつ資金調達構造を再考する旨述べた。
(2)官民パートナーシップ法案
30日、政府は、官民パートナーシップ法案を国会に提出した。同法案は、民間企業がインフラプロジェクトに投資し、整備した施設を維持管理及び運用した後に一定期間が経過した段階で政府に所有権を移すことを可能にするものである。財政難により政府自身の大規模インフラ投資が難しい状況において、民間企業の投資を促進する狙いがある。サボンヘ公共事業大臣は、民間企業が整備した施設の利用料を政府が毎年一定金額支払う方法を検討している旨述べた。
(3)公共調達法改正案
31日、政府は、公共調達法改正案を国会に提出した。主な改正内容は、修正契約が当初の契約金額の25%を超過する場合は国家経済委員会の承認を要する、過去2政権において大規模プロジェクトの入札評価の際に使用されていた経済及び技術評価を分離して行う評価方式を採用しないこと、評価委員会のメンバーは調達機関以外の外部から選定すること、7百万ドル以下のプロジェクトについてはパナマの企業のみが入札に参加できるようにすること等である。
(4)小児病院(Hospital del Nino)新病等建設事業
公共調達局は、入札評価において最高点を獲得したコンソーシアムを構成するAcciona社(西)が同じく本入札に参加していた中国コンソーシアムの入札提案に虚偽の情報が含まれていたとする主張を保健省に提出したため、本入札プロセスの中断を命じた。
(5)アマドール地区国際会議場建設事業
エスキルドセン観光庁長官は、アマドール地区国際会議場建設事業の進捗は99%に達しているため、必要な契約変更に係る会計検査院の承認が得られれば、3~4か月以内に完工できる旨の見込みを報告した。
6.経済指標は別添資料参照
- 主要経済指標(2019年7月)(Excel)
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