パナマ経済(2019年5月報)

令和元年6月12日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●商工会議所は、2019年第1四半期のパナマのGDP成長率を3.9%、通年で4.5%と見通した。
●経済財務省は、本年3月末の財政赤字額が9億66百万ドルで、予想名目GDPの1.4%である旨発表。
●パナマ運河庁は、運河通航船舶に対する第6回目の喫水調整を28日より開始する旨通知した。
 

1.経済全般、見通し等

(1)商工会議所によるGDP成長率見通しの発表
 商工会議所は、2019年第1四半期のパナマのGDP成長率を3.9%、通年で4.5%と見通した。運送、倉庫、通信、金融業は依然として堅調に推移している一方、建設、不動産、商業等は低迷している。同会議所は、新政権発足まで経済活動は様子見の状況が続くと見込まれること及び米中貿易紛争等の影響を理由に、経済財務省よりも1%程度低い数値で見込んでいる。
 
(2)「Tax Justice Network」によるタックスヘイブンランキングの発表
 英NGO団体「Tax Justice Network」は、2019年タックスヘイブンランキングを発表。トップ10は、1位から、英領バージン諸島、バミューダ、ケイマン諸島、オランダ、スイス、ルクセンブルグ、ジャージー島、シンガポール、バハマ、香港の順。パナマは26位で、前後には24位ドイツ、25位米国、27位スペインが並び、OECD加盟国が名を連ねる。
 
(3)ミネラ・パナマ社による銅生産
 ミネラ・パナマ社は、本年6月より銅の輸出を開始する旨発表。同社は、本年2月より既に試験操業を開始しており、本年の輸出量は14万~17万5千トン、2020年は27万~30万トン、2021年は30万トン、2022年以降は35万トンとなる見込み。2020年以降はGDPを2%程度押し上げることが期待されている。他方、最高裁判所は、パナマ政府と同社とのコンセッション原契約は環境アセスメントの調査不足や契約内容及び手順の不備等により無効との判断を下しており、今後議会にて審議される予定となっている。
 

2.経済指標

(1)3月末時点の財政赤字額
 経済財務省は、非金融公的部門における3月末の財政赤字額は9億66百万ドルで、本年の予想名目GDPの1.4%となり、財政責任法における本年の財政赤字額の上限2.0%以下に収まった旨発表。収入は26億18百万ドルで、法人所得税等の減少により前年同期比1億85百万ドル(6.6%)減少した。他方、支出は35億84百万ドルで、人件費及びインフラ等の資本コストの増加により前年同期比2億85百万ドル(8.6%)増加した。
 
(2)3月期の経済活動月間指数
 会計検査院は、3月の経済活動月間指数(IMAE)は364.34(1996年平均=100)で、前年同月比2.96%上昇し、第1四半期平均では同期比3.41%上昇した旨発表。引き続き、運送、倉庫、通信業が堅調に推移している。
 
(3)1月~3月期のコロンフリーゾーン取扱高
 コロンフリーゾーン庁は、1月~3月のコロンフリーゾーン取扱高が44億46百万ドルで、前年同期比7億96百万ドル(15.2%)減少した旨発表。輸入額は21億51百万ドルで同12.8%減少、再輸出額は22億95百万ドルで同17.3%減少した。米中貿易紛争及び世界経済の伸び悩み等の影響を受けているとみられる。
 
(4)1月~3月期のコンテナ取扱量
 海事庁は、1月~3月の国内主要港湾でのコンテナ取扱量が166万9千TEUで、前年同期比6万1千TEU(3.8%)増加した旨発表。ネオパナマックス型のコンテナ船による運河通航及びコンテナ港湾への寄港が増加傾向にある。
 
(5)1月~3月期の輸出額
 会計検査院は、1月~3月の輸出額が1億57百万ドルで、前年同期比13百万ドル(7.6%)減少した旨発表。全15品目のうち、バナナ、メロン、スイカ及び砂糖の4品目は前年同期で増加した一方、魚介類、エビ、金属くず及び木材等の11品目は減少した。主な輸出先は、オランダ、米国、中国、インド、コスタリカとなっている。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)中米共通税関申告(DUCA)システムの導入
 7日、中米経済統合事務局(SIECA)は、国境施設システムの近代化や税関業務の統合及び迅速化を目指し、中米共通税関申告(DUCA)システムを導入。しかし、各地の税関で申告送信などのエラーに伴う業務停滞により手続きが遅延し、国境に留め置かれたままの貨物が増え混乱しているため、これに対応する不測事態対応計画を継続すると発表した。コスタリカとの国境に位置する街パソ・カヌアスでは、パナマからコスタリカへ向かう貨物量が7日からの10日間で例年比約6割減少している。
 
(2)サイン・マロ副大統領兼外務大臣のスイス訪問
 27日、サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、ベルリンで開催される「ラテンアメリカ・カリブ会合」に出席する一環でスイスを訪問し、ヴァルストローム外務大臣と外相会談を行った。両外相は、パナマがその空路、海路及び金融のハブとしての競争力の高さから、スイス企業及び投資家に提供する機会につき検討した。また、同副大統領兼外務大臣は、二国間での経済関係を構築・強化する多国籍企業へのより緊密な支援を可能にするため、パナマにおけるスイス大使館の設置につき呼びかけるとともに、財政の透明化に向けたパナマ政府による取組及び前進につき強調しスイス政府の支持に感謝した。
 

4.パナマ運河

(1)パナマ運河通航船舶に対する喫水調整
 3日、パナマ運河庁は、今般のエル・ニーニョ現象に起因する降雨量不足の状況に鑑み、パナマ運河通航船舶に対する第6回目の喫水調整を同月28日より開始する旨船会社に通知した。本調整では、第5回目の調整において44フィートに制限されていた第三閘門を通航するネオパナマックス船の喫水を43フィートに制限するものである。また、第一、第二閘門を通航するパナマックス船にも38.5フィートの喫水調整が課されることとなった。
 
(2)パナマ運河貯水湖の水位状況
 9日、24mmの降雨の影響で、パナマ運河貯水湖の1つであるアラフエラ湖の水位が38cm回復した一方、ガトゥン湖にはそれほど多くの水位回復効果はもたらされなかった。
 

5.インフラ関連

(1)パナマ運河第四架橋建設計画の着工
 2日、バレーラ大統領は、パナマ運河第四架橋建設計画の着工式を行った。また、公共事業省は、受注者であるEl Consorcio Panama Cuarto Puenteに対し、第1回目となる67.9百万ドルを支払った。
 
(2)メトロ2号線の運賃の決定
 バレーラ大統領は、13日よりメトロ2号線の運賃を50セントとする旨決定した。なお、メトロ1号線の運賃は従前の35セントのまま据え置かれることとなった。
 
(3)メトロ1号線延伸区間建設計画に係る入札評価
 24日、メトロ1号線延伸区間建設計画の入札評価結果が公表され、OHL社(西)とMota Engil社(葡)が組むコンソーシアムが落札候補者となった。同コンソーシアムの技術提案に対する評価は510点中303点であり、他者より低評価となった一方で、参考価格約219百万ドルに対して204百万ドルを提案した経済提案に対する評価が高く、総合的に最高点を獲得した。本計画では着工命令が出てから33か月間の工期が設定されている。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。