パナマ経済(2019年3月報)

平成31年4月16日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●ムーディーズ社は、パナマの格付を「Baa1」及び投資見通し「安定的」に引き上げる旨発表。
●欧州連合は、パナマを税務面で非協力的な国・地域「グレーリスト」から除外した。
●会計検査院は、2018年の実質GDPが416億93百万ドルで前年同期比3.7%増加した旨発表。
●パナマ運河庁は、通航船舶に対する新たな喫水調整を実施。
 

1.経済全般、見通し等

(1)ムーディーズ社によるパナマの評価
 8日、大手格付け機関ムーディーズ社は、パナマの格付を従来の「Baa2」及び投資見通し「ポジティブ」から、「Baa1」及び投資見通し「安定的」に引き上げる旨発表。同社はパナマのGDP成長率として、2018年は若干失速したものの、2019年以降は各種インフラ投資や運河・物流セクターの好調な推移が見込まれており、引き続き堅調に成長すると見通した。また、パナマによる金融の透明性を高める各種財政政策、同格付の他国との比較で健全な財政状況等を評価した。
 
(2)EUタックスヘイブン「グレーリスト」からの脱却
 12日、欧州連合(EU)財務相理事会が発表した「税務面で非協力的な国・地域リスト」を発表し、パナマは監視継続対象の「グレーリスト」から除外された。EUは、パナマの課税逃れ対策が不十分であるとして、2017年12月にパナマを「ブラックリスト」に認定したものの、パナマの外交努力により、2018年1月、パナマは本ブラックリストから除外され、監視(グレー)リストに移行された。その後もパナマは、OECD「税の透明性と情報交換に関するグローバルフォーラム」における共通報告基準(CRS)に沿った自動的情報交換の実施や、財源侵食と利益移転に関するBEPSプロジェクトへも参加してきた。今般、EUは、これらパナマによる税と金融の透明性確保に関する進捗状況を評価し、グレーリストよりパナマを除外した。
 

2.経済指標

(1)2018年のGDP
会計検査院は、2018年の実質GDPが416億93百万ドルで前年同期比14億78百万ドル(3.7%)増加、名目GDPは650億55百万ドル(1人あたり15,643ドル)で同27億71百万ドル(4.4%)増加となり、2010年以降で最低の成長率となった旨発表。実施GDPベースで、運輸・倉庫・通信業は7.3%増と引き続き好調。他方、期中の建設ストライキ等の影響を受け、従来堅調であった建設業が3.2%増(2017年は8.3%増)に留まったほか、ホテル・レストラン業は3.8%減、漁業は3.2%減と低迷した。
 
(2)2018年の公的債務返済額
経済財務省は、2018年の公的債務返済額が30億98百万ドルで前年同期比84百万ドル(2.8%)増加した旨発表。内訳は、元本返済が19億31百万ドルで同48百万ドル(2.5%)増加、金利が11億67百万ドルで同36百万ドル(3.2%)増加した。
 
(3)1月末時点の公的債務残高
経済財務省は、1月末時点の公的債務残高が256億2百万ドルで、前月比85百万ドル減少、前年同月比22億18百万ドル(9.5%)増加した旨発表。
 
(4)1月期のコロンフリーゾーン取扱高
 会計検査院は、1月期のコロンフリーゾーン取扱高が14億74百万ドルで、前年同期比2億9百万ドル(12.4%)減少した旨発表。輸入額は7億16百万ドルで同10.5%減少、再輸出額は7億59百万ドルで同14.1%減少。米中貿易摩擦等の影響を受け、輸入及び再輸出共に米国向けが大きく減少した他、ラ米諸国の経済失速により低調な出足となった。
 
(5)2月期の消費者物価指数
会計検査院は、2月の消費者物価指数(CPI)が104.5(2013年=100)で、前年同月比0.5%低下、前月比0.1%上昇した旨発表。前年同月比の費目別上昇率はアルコール飲料・たばこが1.2%と最も大きく、外食・ホテルが1.1%、厚生が1.0%、教育が0.8%、食品・非アルコール飲料とその他財・サービスは0.6%。家具・家庭用品は前年同月横ばいで、交通はマイナス3.7%と最も下がった。通信はマイナス1.5%、衣料品・靴はマイナス1.2%、レジャー・文化はマイナス0.5%、住居・水道・電気・ガスはマイナス0.3%だった。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)サイン・マロ副大統領兼外務大臣によるOECDへの加盟に関する言及
 17日、サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、OECDへの加盟を望む旨言及した。具体的には、「パナマは、経済水準が先進国基準に達しているにも関わらず、制度面では遅れをとっている。制度面で一定の水準を保ち、その基準となる国々のグループであるOECDへ加盟することにより、パナマは制度強化を推進できる。一方、パナマ文書の経験から、OECDを快く思わない人が少なくないことも認めざるを得ない。しかしながら、パナマは、マネーロンダリングとの闘いに全面的に協力している。OECDは財政分野に留まらず、意思決定の中心且つ世界の先進国が協力する権力機関であり、OECDの定めた基準にその他の非加盟国が従わなければならない以上、パナマはOECDへの加盟を望まざるを得ない。」旨述べた。
 
(2)バレーラ大統領のコロンビア訪問
19日、バレーラ大統領は、コロンビアを公式訪問し、ドゥケ・コロンビア大統領と会談した。本会談において、両国首脳は、二国間関係における合意事項を再確認すると共に、二国間アジェンダの継続を保証する政策の策定につき合意した。特に、観光分野について、両国首脳は、2018年にパナマを訪れたコロンビア人旅行者数が約22万5千人に達したことを受け、二国間の空路接続の優位性を活用し、アジア及び欧州からの旅行者を惹きつける旅行先の多角化プロジェクトの策定につき協議した。
 
(3)2018年の輸出相手国
 パナマ輸出者協会は、2018年の輸出最大相手国は従来の米国ではなくオランダとなり、史上初めて欧州国がトップとなった旨発表。なお、上位10か国・地域は、オランダ(1億14百万ドル)、米国(1億13百万ドル)、中国(49百万ドル)、インド(42百万ドル)、コスタリカ(36百万ドル)、台湾(31百万ドル)、スペイン(21百万ドル)、タイ(18百万ドル)、ベトナム(16百万ドル)、ニカラグア(15百万ドル)、グアテマラ(14百万ドル)の順。ジャンセン在パナマ蘭大使は、本件は蘭・ロッテルダム港に於けるパナマ農商業事務所の設立、蘭政府及び欧州連合による中米産魚介類、コーヒー及び果物等の輸入計画に基づく成果である旨言及した。
 

4.パナマ運河

(1)通航船舶の喫水調整
 エル・ニーニョ現象による運河流域における降雨量が減少しており、パナマ運河庁は、これまでに通航船舶に対する4回の喫水調整(通常時、ネオパナマックス船の喫水は50フィートまで許容されているが、3月29日から開始した第4回目の喫水調整では、これが46フィートに制限)を実施したが、新たに4月10日より第5回目の喫水調整(45フィートに制限)を行う旨利用者に通知した。今後、十分な降雨が無ければ更なる喫水調整も検討されている。
 
(2)運河沿い物流回廊の運用開始
 15日、パナマ運河庁は、運河沿いの物流回廊の運用を開始した。本回廊は従来同庁の内部運営に使用されていたが、今般、通行料を徴収する形で貨物トレーラーの通行用に供されることとなった。本回廊が利用可能となることで、パナマ・パシフィコからセンテナリオ橋に至るまでの所要時間が平均30分から8.5分に短縮されると推定されている。
 

5.インフラ関連

(1)パナマ・チリキ間鉄道建設に係るフィージビリティ・スタディ
 15日、バレーラ大統領は、China Railway Design社により実施された、中国政府の無償資金協力によるパナマ・チリキ間鉄道建設に係るフィージビリティ・スタディの報告を受領した。本鉄道の第1フェーズは、チリキ県ダビ市からアライハン市シウダ・デル・フトゥロ(メトロ3号線第1フェーズの終着地)までを結ぶ391.4kmであり、事業費は約4億1千万ドルとの結果となった。
 
(2)メトロ3号線建設に係る入札提案
3月22日に設定されていたメトロ3号線建設に係る入札提案期限が、4月2日に延期された。メトロ公社は、入札参加企業が入札仕様の変更に伴う適応のための期間を要求したことを受けての延期である旨報告した。
 
(3)第四送電線建設に係る公共サービス庁の承認
 19日、第四送電線建設に係る入札の実施を承認したが、第三送電線事業において赤字額が増大したことを受け、当初、20年以内とされていたコンセッション契約期間を35年以内とする条件を付与した。
 
(4)メトロ2号線の運用開始予定
 バレーラ大統領は、自身のツイッターにて、メトロ2号線建設計画は97%の進捗に至っており、4月25日に運用開始する旨を報告した。
 
(5)メトロ2号線延伸区間建設に係る着工命令
 20日、会計検査院はメトロ2号線延伸区間建設に係る入札契約に関し承認し、27日、着工命令が発出された。請負者となったオデブレヒト社(伯)及びFCC社(西)には28か月間の工期が与えられる。なお、事業費は1億29百万ドルである。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。