パナマ経済(2018年12月報)

平成31年1月11日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●国連中南米カリブ経済委員会は、パナマのGDP成長率見通しとして、2018年は4.2%、2019年は5.6%と発表。
●経済財務省は、本年第3四半期までの実質GDPが309億42百万ドルで、前年同期比3.6%増加した旨発表。
●2019年国家予算は、236億69百万ドルにて承認された。
●習近平中国国家主席がパナマを訪問し、首脳会談及び関係閣僚等が出席する拡大二国間会合等を実施。
 

1.経済全般、見通し等

(1)CEPALによるGDP成長率見通しの発表
国連中南米カリブ経済委員会(CEPAL)は、パナマのGDP成長率見通しとして、2018年は前回2018年8月発表の5.2%から引き下げ4.2%、2019年は5.6%と発表。2018年は主に建設業の失速等の影響を受け成長率は鈍化するが、2019年はパナマ運河第4架橋の建設、メトロ2号線の延伸及び3号線の建設、パナマ~アライハン間の車線拡張等の大型インフラ工事や、コブレパナマプロジェクトによる銅輸出等により回復すると見通している。

(2)2018年第3四半期までの実質GDP
経済財務省は、本年第3四半期までの実質GDPが309億42百万ドルで、前年同期比10億63百万ドル(3.6%)増加した旨発表。運輸・倉庫・通信業は7.8%増と引き続き好調。他方、本年上半期に発生した建設ストライキにより、建設業は2.2%増に留まった。また、ホテル・レストラン業は4.3%減と不調。

(3)2019年の国家予算の承認
議会に差し戻されていた2019年国家予算は、最終的に236億69百万ドルにて2018年法律第67号として官報に掲載された。予算策定にあたり、経済財務省は2019年のGDP成長率を5.9%と見通している。

(4)ターンキーによる支払い
経済財務省は、ターンキーによる支払いを発表。マルティネリ前政権から継承した案件の内、2014年7月から2018年11月までの支払い総額は33億90百万ドル。他方、次期政権に継承することが確定しているのは総額8億40百万ドルで、内訳は現政権分がメトロ2号線の建設(7億25百万ドル)及びコレドールプラジャの建設(90百万ドル)の合計8億15百万ドル、前政権分がアマドールコンベンションセンターの建設(12百万ドル)及び保健所・病院等の建設(13百万ドル)の合計25百万ドル。また、金額は未確定であるが、次期政権にはメトロ3号線の建設(28億26百万ドル)、メトロ1号線の延伸(3億23百万ドル)、メトロ2号線の延伸(1億3百万ドル)及びコレドールプラジャの建設(3億50百万ドル)の合計36億2百万ドル程度も継承される見込みで、確定分と合わせると44億42百万ドルとなる。

(5)貿易産業大臣及び税関庁長官の辞任
26日、大統領府は、アロセメナ貿易産業大臣(31日付)及びゴメス税関庁長官(28日付)が辞任することを発表。バレーラ大統領は、後任にそれぞれN.ゴンサレス貿易産業次官及びL.ゴンサレス・パナマパシフィコ機構長官を任命した。今般の辞任に関し、メディア等では、本年7月の新政権移行後を見越して、批判が高まる現政権と距離を置くことが目的との見方が報じられている。
 

2.経済指標

(1)1月~11月期の新車販売台数
会計検査院は、1月~11月の新車販売台数が45,898台で、前年同期比7,071台(13.3%)減少した旨発表。ただし、11月単月の販売台数は4,713台と前年同月比32.5%の大幅増となり、2017年1月より連続していた前年割れからようやく増加に転じた。

(2)11月期の消費者物価指数
会計検査院は、11月の消費者物価指数(CPI)が105.1(2013年=100)で、前年同月比0.8%上昇、前月比0.4%下落、11ヶ月累計で0.8%上昇した旨発表。本年のインフレ率は1.1%~1.2%の見込み。

(3)1月~10月期の月間経済活動指数
会計検査院は、1月~10月の月間経済活動指数(IMAE)が3.14%で、前年同期の5.42%から大きく失速した旨発表。運輸・倉庫・通信業等が堅調であった一方、建設、娯楽産業及び漁業等が低調であった。

(4)1月~10月期の建設許可金額
会計検査院は、1月~10月の建設許可金額が11億22百万ドルで、前年同期比6億88百万ドル(38.0%)減少した旨発表。総額の内、住宅部門は6億76百万ドルで前年同期比41.5%減少、非住宅部門は4億46百万ドルで同31.9%減少。

(5)1月~10月期のコロンフリーゾーン取扱高
コロンフリーゾーン庁は、1月~10月のコロンフリーゾーン取扱高が178億86百万ドルで、前年同期比15億44百万ドル(9.4%)増加した旨発表。輸入額は85億54百万ドルで前年同期比11.2%増、再輸出額は93億32百万ドルで同7.9%増となった。

(6)10月期の基礎食料品バスケット
経済財務省は、10月の基礎食品バスケットがパナマ市及びサンミゲリート市において305.46ドルで、前月比0.45ドル上昇した旨発表。農作物の生産量減少等により、本年5月以降上昇傾向にある。

(7)9月末時点の公的債務残高
経済財務省は、10月末時点の公的債務残高が258億15百万ドルで、前年同月比24億41百万ドル(10.2%)増加した旨発表。2018年予想名目GDPは654億36百万ドルで、公的債務残高の割合は39.5%と財政責任法における上限40%に切迫している。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

習近平中国国家主席によるパナマ訪問
2日から3日にかけて、習近平中国国家主席がパナマを訪問し、首脳会談及び関係閣僚等が出席する拡大二国間会合を実施した。中国からの訪問団には彭麗媛夫人、丁薛祥共産党中国政治局委員、王毅国務委員兼外交部長、鐘山商務部長等が同行した。その他、大統領府では19本(経済及び貿易関連8本、インフラ関連1本、観光関連1本、海事関連1本、開発協力関連7本、外交関連1本)の合意文書への署名式が行われた後、エルナン・デ・レオン最高裁判所臨時長官及びアブレゴ議会議長等が同席する昼食会が実施された。その後、習国家主席は、両国の企業家が集う会合へ出席すると共に、ロイ運河担当大臣兼メトロ公社総裁及びキハーノ運河庁長官等が同行のもとパナマ運河ココリ閘門視察等を行い、同国での公式訪問を終えた。
 

4.パナマ運河

(1)パナマ運河拡張プロジェクトに係る判決
パナマ運河拡張プロジェクトにおける主要事業である第三閘門建設事業を請け負ったGUPCは、事業開始時にパナマ運河庁より返済期限を2018年6月とする資金約850百万ドルを借り入れていたが、別途係争中となっている超過事業費に関する訴訟判決が下されるまで同返却期限は延期されるべき旨の訴訟を提出していた。これに対し、今般、裁判所は、当初の合意どおり同資金を返却すべきである他、返却の遅れによって生じた利子及び訴訟費用等5.4百万ドルについてもGUPCが支払う必要がある旨の判決を下した。

(2)第三閘門の延べ通航隻数が5千隻に到達
10日、13,408TEU積のコンテナ船Cosco Faith号が南向きにパナマ運河第三閘門を通航し、2016年6月26日の運用開始以降、第三閘門の通航隻数が5千隻となった。

(3)2018会計年度における決算報告
パナマ運河庁は、2018会計年度(2017年10月1日~2018年9月30日)における決算報告書を公表した。通航料収入は2,485百万ドル(前年度比11.0%増)、収入計(金融関連収入を含む):3,166百万ドル(同9.7%増)、国庫納付額は1,703百万ドル(同3.2%増)となり、いずれも過去最高額を記録した。
 

5.インフラ関連

(1)パナマ運河第四架橋建設計画の着工命令発出
4日、事業総延長6.3kmで既設道路との接続道路の整備を含むパナマ運河第四架橋建設計画の着工命令が発出された。そのため、工期は2023年12月3日までの5年間となった。

(2)メトロ1号線延伸事業に係る入札提案期限の延期
メトロ1号線延伸事業の入札提案期限は12月12日に予定されていたが、入札参加企業からの要請を受け、メトロ公社は同期限を2019年1月30日に延期した。現在、17者が関心を示しており、今後、順調に入札プロセスが進捗すれば、2019年前半に同者の中から落札者が決定する。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。