パナマ経済(2018年11月報)

平成30年12月13日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

  主な出来事
●世界銀行は、2019年ビジネス環境ランキングを発表し、パナマは79位。
●バレーラ大統領は中国を訪問した。
●中国とのFTA交渉は、パナマにて第4回交渉ラウンドが開催された。
●公共事業省は、中国企業により構成されるコンソーシアムとの間でパナマ運河第四架橋建設計画の契約を締結した。
 

1.経済全般、見通し等

(1)世界銀行による2019年ビジネス環境ランキング報告
世界銀行は、2019年ビジネス環境ランキングを発表。今回の調査対象は190か国・地域で、パナマの総合順位は前年から変わらず79位。中南米では、メキシコ54位、チリ56位、コロンビア65位、コスタリカ67位、ペルー68位、パナマと続く。パナマは、「信用供与」が22位、「電力事情」が30位、「事業設立」が48位と評価が高い一方、「建設許可」108位、「税制」が174位と大きく出遅れた。

(2)ロンリープラネット社による「ベスト・イン・トラベル2019」の発表
旅行ガイドブック大手ロンリープラネット社は、2019年の推奨旅行先ランキング「ベスト・イン・トラベル2019」を発表し、パナマが国別で4位に選ばれた。国別のトップ10は、1位スリランカ、2位ドイツ、3位ジンバブエ、5位キルギス、6位ヨルダン、7位インドネシア、8位ベラルーシ、9位サントメ・プリンシペ、10位ベリーズの順。

(3)2019年国家予算の閣議未承認
10月末に議会本会議にて承認された2019年国家予算について、閣議承認されず再度議会に差し戻された。議会による使途不明金の計上を問題視したもの。

(4)世界銀行グループ国際金融公社(IFC)のパナマ訪問
世界銀行グループである国際金融公社は、経済財務省等と面談し、パナマに対して各種公共事業やインフラ投資を資金使途として、総額9億38百万ドルの融資枠の準備が可能である旨発表。

(5)1バルボア硬貨の新規発行
パナマ国立銀行は、16日以降1米ドル紙幣の新規流通は行わず、代替としてJMJ記念1バルボア硬貨のみを流通させることを発表。新硬貨は総額40百万ドル相当で10月8日から流通している。

(6)銀行監督庁による国内銀行数の発表
銀行監督庁は、国内銀行数が1997年末時点の計108行から2017年末時点で計86行と20年間で22行減少した旨発表。合併、統廃合及び撤退等の影響を受けたもので、日・米・欧の主要銀行は大半が撤退し、中南米系銀行が大半を占める。

(7)エア・ヨーロッパ社によるマドリッド~パナマ間の直行便就航の延期
スペイン系航空会社のエア・ヨーロッパ(AIR EUROPA)社は、2019年2月25日より就航させるとしていたマドリッド~パナマ間の直行便(週5便)を同年6月3日に延期することを発表。
 

2.経済指標

(1)9月末時点の公的債務残高及び財政赤字額
経済財務省は、9月末時点の公的債務残高が249億38百万ドルで、前年同月比15億58百万ドル(6.7%)増加した旨発表。2018年予想名目GDPは654億36百万ドルで、公的債務残高の割合は38.1%と財政責任法における上限40%に切迫している。また、財政赤字額は24億88百万ドルで、本年予想名目GDP比で3.8%と先般改正された財政責任法における上限2.0%を既に超過している。景気減退による各種税収の減少及びインフラ等への歳出増加によるものだが、経済財務省は年末の運河庁及び各公社からの国庫納付、クリスマス商戦による税収増により、財政赤字は規定を下回る旨併せて発表。

(2)1月~9月期のコロンフリーゾーン取扱高
コロンフリーゾーン庁は、1月~9月のコロンフリーゾーン取扱高が160億59百万ドルで、前年同期比14億77百万ドル(10.1%)増加した旨発表。輸入額は76億48百万ドル、再輸出額は84億11百万ドルで、特に薬品等の取扱いが堅調であった。

(3)1月~9月期の月間経済活動指数
会計検査院は、1月~9月の月間経済活動指数(IMAE)が3.17%である旨発表。運輸業、倉庫業及び通信業等が堅調であった。

(4)1月~9月期の輸出総額
会計検査院は、1月~9月の輸出総額が5億31百万ドルで、前年同期比25百万ドル(4.8%)増加した旨発表。同期比較をすると、2017年は前年比2.8%増、2016年は同8.2%減、2015年は同14.8%減となっており、近年輸出総額は増加傾向にある。

(5)1月~9月期の建設許可金額
会計検査院は、1月~9月の建設許可金額が9億91百万ドルで、前年同期比6億50百万ドル(39.6%)減少し、直近5年間で最低水準である旨発表。総額の内、住宅部門は5億81百万ドルで前年同期比42.9%減少、非住宅部門は4億7百万ドルで同34.2%減少。

(6)10月期の消費者物価指数
会計検査院は、10月の消費者物価指数(CPI)が105.6(2013年=100)で、前年同月比1.0%、前月比0.1%、10ヶ月累計で0.8%上昇した旨発表。CPI調査全12項目の内、9項目が上昇した。本年のインフレ率は1.1%~1.2%の見込み。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)バレーラ大統領の中国訪問
5日から9日にかけて、バレーラ大統領は中国・上海を訪問したところ、概要以下のとおり。
(イ)国際輸入博覧会におけるパナマ・パビリオンの開会式
「広い接続性」と題したパビリオン開設に際し、バレーラ大統領は、中国・ラ米域内諸国間の貿易関係におけるパナマの果たす戦略的役割について強調すると共に、パナマはアジア地域とラ米地域、あるいは他地域間を繋ぐ国際貿易のゲートウェイである旨発言。同パビリオンの開会式には、中国側からは中国政府及び上海市外交部代表者、パナマ側からはアロセメナ貿易産業大臣、カルレス農牧開発大臣、インカピエ外務次官及びエスコバル駐中国パナマ大使等が出席した。
(ロ)バレーラ大統領と中国政府要人及び関連企業代表との会合
●李強・上海市書記
国交樹立から一年以上が経過した両国の外交関係の進捗について共有。
●劉紹勇・中国東方航空代表
同社の欧州及び米国ルートを介した、パナマ・アジア地域間の接続性強化の可能性を模索。パナマ政府によると、2018年現時点までのパナマへの中国旅行客数は1万3千人となり、同年末までに3万人超を目指している。
●Xuexuan Zheng中国米州建設公社代表
2019年第一四半期に完成予定のアマドール地区コンベンションセンターの建設を担当する同社代表と建設工事の進捗を評価。
●Leon Wangアストラゼネカ社副社長
心臓血管疾患、高血圧及び糖尿病等の予防及び治療を促進することを目的とし、保健省と共同で行う循環代謝病疾患予防及びフォローアップ試験プロジェクトに関し意見交換を行った。

(2)バレーラ大統領及びサイン・マロ副大統領兼外務大臣のイベロアメリカ企業家会合への参加
14日、バレーラ大統領及びサイン・マロ副大統領兼外務大臣は、イベロアメリカサミットへの参加に併せてイベロアメリカ企業家会合に参加。同会合には、スペイン、メキシコ、ホンジュラス及びグアテマラの首脳及びコロンビア副大統領に加え、域内諸国から200社を超える企業が参加した。バレーラ大統領は、「国外からの投資なくして、持続的開発目標に到達することは不可能」と発言。また、域内諸国の発展のため、民間部門は、公的部門とより積極的に協働すべきである旨強調すると共に、汚職、麻薬密輸及び組織犯罪根絶に向けた、新たな政策を提案した。

(3)中国とのFTA交渉
19日から24日にかけて、パナマ及び中国のFTA交渉団は、パナマにて第4回交渉ラウンドを実施。原産地規則、税関手続き、市場アクセス、サービス貿易、金融サービス、投資及び二国間協力等について協議し、一部の中国側交渉チームは、コロンフリーゾーンも訪問した。

(4)韓国外交部長官のパナマ訪問
30日、バレーラ大統領は、サイン・マロ副大統領兼外務大臣の同席のもと、康・韓国外交部長官と会談。両者は、パナマの物流プラットフォームが提供する接続性について話し合い、バレーラ大統領は、より多くの韓国企業によるパナマ国内プロジェクトへの参画及び域内拠点の設置を呼びかけた。その後、韓国訪問団は外務省を訪問し、二国間アジェンダを深化させ、物流、海事及び科学技術等の分野における協力関係の促進の可能性について一致した。特に、韓国が強みとする科学技術外交の戦略に位置づけられるプロジェクトの決定等、パナマ海事庁と韓国側関連機関との間での覚書の具体化について合意した。
 

4.パナマ運河

パナマ運河の貯水量
20日、パナマ運河庁は、パナマ運河の運用に必要な水を貯めているガトゥン湖及びアラフエラ湖の貯水量が最大水位に達した旨、また、21日より今後の降雨に備えたアラフエラ湖からの放水を開始した旨報告。
 

5.インフラ関連

(1)メトロ2号線延伸計画の契約署名
オデブレヒト社(伯)及びFCC社(西)によって構成されるコンソーシアムは、メトロ2号線延伸事業に係る入札において88百万ドルの価格提案を行い、技術点と合わせた総合得点で最高の評価を受け落札。その後、不落企業からの評価結果に対する異議申立が提出されたものの公共調達局により却下され、27日、同コンソーシアムとメトロ公社との間で契約署名が交わされた。

(2)パナマ運河第四架橋建設計画の契約署名
9日、公共事業省は、中国企業により構成されるコンソーシアムとの間でパナマ運河第四架橋建設計画の契約署名を交わした。今後、会計検査院の承認及び着工命令がなされて工事が開始される予定。

(3)地域人道支援センターの開設
19日、ハワード空港内に建設された地域人道支援センターの開設式典が開催され、サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、「人道的外交及びパナマ・コオペラ2030の一環として、米州地域に対する円滑な人道支援の拠点整備に挑戦した」旨述べた。今後、米州地域で大規模自然災害が発生した場合、被災地への緊急物資輸送において同センター内の備蓄倉庫が利用される。

(4)メトロ2号線建設計画の進捗状況
22日、バレーラ大統領も乗車し、メトロ2号線全区間の試験運行が実施された。2019年1月下旬に開催されるワールド・ユース・デイまでに部分的な運用を開始するとした目標達成に一定の目処がついたことになる。一方、計画全体の進捗は90%で、同年4月に全面開業する見込み。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。