パナマ経済(2018年8月報)
平成30年9月10日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事担当:淡輪書記官
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●国連中南米カリブ経済委員会は、2018年のパナマの経済成長率見通しを5.2%と発表。また、経済財務省は、2019年のGDP成長率は5.9%、名目GDPは708億47百万ドルとの見通しを発表。
●AESパナマ社は、LNG火力発電所(コロン県)の開所式を行った。
●パナマは、米国と民間投資拡大に向けた枠組みに合意。
●議会は、パナマ運河庁の2019会計年度予算を32億40百万ドルで承認。
●閣議において、日立製作所、三菱商事及び伊アンサルドメトロ社は、メトロ3号線プロジェクトの指定サブコントラクターとなることが承認された。
1.経済全般、見通し等
(1)GDP成長率見通しの発表(イ)国連中南米カリブ経済委員会(CEPAL)は、2018年のパナマのGDP成長率見通しを前回2018年4月発表の5.6%から引き下げ、5.2%と発表。また、ラテンアメリカ・カリブ地域全体の成長率予測を前回発表した2.2%から1.5%に下方修正。中米3.4%、南米1.8%、カリブ地域1.7%と予測した。国別では、ドミニカ共和国が5.4%と最高で、次いでパナマ5.2%、パラグアイ4.4%、ボリビア4.3%、チリ3.9%、ペルー3.6%、メキシコ2.2%、ブラジル1.6%と続き、アルゼンチンはマイナス0.3%と予測された。パナマは、建設、運輸及び通信業が好調の一方、4月~5月に発生した建設ストライキが足を引っ張った。なお、国際通貨基金(IMF)は4.5%前後と見通している。
(ロ)経済財務省は、2019年のGDP成長率は5.9%で、名目GDPは708億47百万ドルとの見通しを発表。その根拠として、パナマのロジスティックハブとしての成長、ミネラパナマ社による銅生産の開始、メトロ2、3号線の建設及びパナマ運河第四架橋の建設等を挙げた。他方、2018年の成長率見通しについては、建設ストライキや国内産業の失速等を理由に4.0%~4.5%に留まる旨発表。
(2)AESパナマ社によるLNG火力発電所の開業
17日、AESパナマ社は、同社がコロン県にて建設してきた中米初のLNG火力発電所(発電容量381MW)の開所式を行った。総工費は11億50百万ドルで、発電所に加え、LNG貯蔵タンク(容量18万立米)が併設されるが、同タンクの完成は2019年の見込み。タンク容量の25%は自家発電用、残り75%は販売用となる。バレーラ大統領も開所式に出席し、「本プロジェクトは、米企業によるパナマへの信用によってもたらされ、2,500人が建設工事に従事、200名が発電所スタッフとして雇用される」旨述べた。
2.経済指標
(1)7月末時点の公的債務残高経済財務省は、7月末時点の公的債務残高が243億87百万ドルで、前年同月比13億22百万ドル(5.7%)増加した旨発表。その内、海外借入は195億58百万ドル、国内借入は48億29百万ドルであった。
(2)1月~6月期の新車販売台数
会計検査院は、1月~6月の新車販売台数が25,521台で、前年同期比3,766台(12.9%)減少した旨発表。国・地域別占有率は、(1)日本車57.6%、(2)韓国車28.5%、(3)米国車7.2%、(4)欧州車6.2%、(5)その他0.5%。なお、6月単月の販売台数は3,806台で、前年同月比19.6%減と大きく減少した。
(3)1月~6月期の建設許可金額
会計検査院は、1月~6月の建設許可金額が6億62百万ドルで、前年同期比4億56百万ドル(40.8%)減少した旨発表。総額の内、3億70百万ドルが住宅分野で前年同期比43.8%減少、2億92百万ドルが非住宅分野で同36.4%減少。
(4)1月~6月期の月間経済活動指数
会計検査院は、1月~6月の月間経済活動指数(IMAE)が3.2%である旨発表。引き続き運輸業、倉庫業、通信業及び金融業等が好調であった一方、建設業及び非金属鉱業が不調であった。
(5)1月~6月期の輸出総額
会計検査院は、1月~6月の輸出総額が3億71百万ドルで前年同期比37百万ドル(11.1%)増加した旨発表。バナナ、スイカ、パイナップル、エビ、鮮魚・冷蔵・冷凍魚及びコーヒー等の輸出が好調であった一方、メロン、魚粉・魚油及び衣料品等は減少した。1月~6月の輸出は2016年までは減少傾向で、同年には前年同期比8.4%減であったが、2017年には3.1%増となり、本年の増加率はさらに拡大した。
(6)6月期の財政赤字額
経済財務省は、非金融公的部門における6月の財政赤字額は10億61百万ドルで、予想名目GDPの1.6%である旨発表。収入は57億23百万ドルで、前年同期比46百万ドル(0.8%)微増。他方、支出は67億85百万ドルで、人件費及びインフラ等の資本コストの増加により前年同期比10億13百万ドル(17.6%)の大幅増となった。
(7)1月~6月期のコロンフリーゾーン取扱高
コロンフリーゾーン庁は、1月~6月のコロンフリーゾーン取扱高が106億12百万ドルで前年同期比6億43百万ドル(6.5%)増加した旨発表。輸入額は49億57百万ドルで、相手先は、米国、中国、メキシコ、シンガポール及び香港等。他方、再輸出額は56億55百万ドルで、相手先は、米国、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国及びプエルトリコ等である。
(8)5月期の基礎食料品バスケット
経済財務省は、5月の基礎食品バスケットがパナマ市及びサンミゲリート市において、302.65ドルで、前月比2.22ドル下落した旨発表。2018年2月以降4月までは上昇傾向にあったが、良好な天候等による農産物等の生産量の増加により価格は下落した。
3.通商、自由貿易協定、国際経済関連
(1)バレーラ大統領のコロンビア訪問(イ)バレーラ大統領は、ドゥケ・コロンビア新大統領の就任式に出席した際、同大統領と首脳会談を実施。両首脳は、経済面に関し、財政・貿易面において未解決のままである関税に係る問題の解決の必要性を強調した。また、観光分野に関し、既存の南カリブルートに加え、欧州、中国及び中東等の成長市場からの観光客誘致のために、様々な旅行先を提示する機会について意見交換した。
(ロ)バレーラ大統領は、ロセジョ・プエルトリコ自治連邦区知事とプエルトリコでのクルージング観光の効果について協議し、また、パナマでの電力供給源の多様化を可能とする同国でのAESパナマ社による最初の天然ガス発電所稼働に向け、エネルギー分野での関係強化を継続することで一致した。
(2)米国との民間投資拡大に向けた枠組み
17日、パナマは米国産液化天然ガス(LNG)の中南米諸国への輸入・流通拡大を狙い、米財務省、エネルギー省と民間投資促進のための枠組み合意に署名。マルパス米財務次官は、今回の合意を中南米における同様の合意の第1弾にしたいとの期待を示し、投資の呼び込みにより、中南米諸国が割安かつクリーンなエネルギーを利用できるようになるとの見方を示した。また、同次官は、AESパナマ事業をグアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアなど中南米諸国への流通拠点とするために、今回の合意が寄与する旨述べた。
(3)李小鵬・中国交通運輸部長のパナマ訪問
バレーラ大統領は、同部長と会談し、パナマ・中国間のインフラ、海洋交通及び航空分野での協力を強化するためのロードマップ策定を行った。バレーラ大統領は、「パナマの有する接続性は、主要な資産であると同時に、パナマ経済の主要な原動力の一つである」と述べ、同部長へ「一帯一路」構想内の共同事業を推進することのパナマの関心を表明。
(4)中国とのFTA交渉
24日、パナマ及び中国のFTA交渉団は、北京において、専門用語、定義及び初期概念の標準化と合意に焦点を当てた第2回交渉ラウンドを完了。今次交渉では、各種定義、知的財産権保護、市場アクセス、原産地規則及び衛生管理等について協議された。両国交渉団は、第3回交渉ラウンドを本年10月9日、パナマにおいて5日間に亘って開催することを合意した。
4.パナマ運河
(1)パナマ運河庁2019会計年度予算案に係る閣議承認14日、パナマ運河庁の2019会計年度予算が議会で承認され、総予算は32億39.5百万ドルで前年度比2億2百万ドル増加。なお、通航料収入は前年度比2億12.7百万ドル増の25億46百万ドルとの見通し。総予算のうち、国庫納付額として前年度比7億74百万ドル増となる17億36.6百万ドルが計上された。
(2)パナマ運河庁による新たな投資
パナマ運河庁は、古くなったタグボート4隻の交換を含むタグボート10隻の新規調達を行う予定で、同調達により、同庁が所有するタグボートは現在の46隻から52隻に増加する。また、同庁は、他にも浮遊式ドックや貯水池の第2放水口の整備等も計画しており、総投資額は3億68.9百万ドルの予定。
5.インフラ関連
(1)アマドール・クルーズ・ターミナルの運用開始予定24日、アマドール地区にて建設中のクルーズ・ターミナルは2019年4~5月に運用開始見込みであることが報告された。なお、同建設の進捗は34%である。
現在、同地区では、クルーズ船からの旅客の乗降は、沖合からボートを利用したはしけ輸送により行われているが、同ターミナルの岸壁が整備されることでクルーズ船の着岸が可能となり、乗降が容易になる。
(2)メトロ3号線プロジェクトにおける指定サブコントラクターに係る閣議決定
28日、閣議はメトロ公社に対し、日立製作所、三菱商事、伊アンサルドをメトロ3号線プロジェクトの指定サブコントラクター(NSC)とし、同NSCとの間でモノレール車輌及びシステムの調達等に係る合意書に署名することを承認。また、30日には、バレーラ大統領が臨席の下、メトロ公社とNSCとの間で合意署名式典が開催された。今後、同プロジェクトにおける土木公示等を請け負う者(メインコントラクター)を決定するための入札が実施されるが、今般署名された合意事項は同入札公示書類の一部を構成することになる。
(3)第四送電線の建設計画
国営送電公社(ETESA)は、第四送電線建設計画の入札に向けた事前資格審査に、(1)コロンビア企業、(2)スペイン企業、(3)中国企業、(4)印・仏・伯企業連合、(5)加・スペイン企業連合及び(6)中国企業の6グループが応札し、(1)コロンビア企業、(2)スペイン企業、3中国企業、(4)印・仏・伯企業連合、(4)加・スペイン企業連合の5グループが資格を満たした旨発表。本案件は、2019年第1四半期に建設開始、2022年第1四半期より運営開始の予定。本送電線の総延長は317kmで、総工費は5億20百万ドルの見込み。
6.経済指標は別添資料をご参照下さい。
- 主要経済指標(2018年8月)(Excel)
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